~恋話と小さな変化~
アルベネロ、クレア、レイン、レオの四人は訓練として、ティーリア先生から指導を受けることになる。
それぞれに課せられた目標を達成するため、必死に取り組むが簡単に達成できるようなことはなく、時間はあっという間に過ぎ去るのであった。
「はぁ……‼︎ はぁ……‼︎ きついな……」
「流石に、頭と目が痛いわね……」
アルベネロは時間魔法を何度も発動したため、魔力のほとんどを使い尽くし、地面に手を突くほど疲弊してしまう。
一方、クレアは魔方陣を魔力の線で何度も描いたため、かなり集中力を消耗してしまい、それに伴う頭痛によって、その場で座り込めば、頭を押さえている。
「やっと、見つけました……見つかりそうになったら、移動させてるなんてひどいですよ……」
「ぐへぇ……一秒ぐらいは……発動できるようになったぜ……」
レインは少し服が乱れながらも目標の魔導具を見つけ出しては、仰向けで地面に倒れ込んでおり、レオは【創造世界】を発動しては魔力が枯渇し、ティーリア先生から魔力を貰っていたが脱力感は消えないため、うつ伏せで地面に倒れていた。
「はい♪ 皆さん、お疲れさまです♪ 目標が達成できたのはアー君とレインさんですね。二人にはまた新しい目標を考えておきます♪」
ティーリア先生は疲労困憊の四人の近くに立つと、声を掛け、アルベネロとレインへ新しい目標を考えると告げる。
「まあ、そうなるよな……」
「レーメ先生より、スパルタかもしれません……」
二人はティーリア先生の言葉を聞き、流石に口元を引き攣らせながら、諦めたように息を吐く。
「クレアちゃんとレオ君はこのまま目標達成に向けて、頑張ってくださいね♪」
「は、はい……」
「次こそは三十秒、発動し続けてやるぜ……」
「その意気です♪」
クレアとレオはティーリア先生の言葉に力無く頷くと、ティーリア先生は満足するように頷けば、チラッと森の先へ視線を向ける。
「それじゃ、授業はここまでにするので、教室へ戻りましょう♪」
「「「「少し休ませてください‼︎」」」」
「あら?」
授業の終了を告げると、ティーリア先生は教師の出口へ向かおうとすれば、アルベネロ達から休憩したいと言われてしまい、キョトンとしてしまうのであった。
そして、十数分後……
「何とか動けそうだ……」
「私も大丈夫よ……」
「私も……大丈夫です……」
「ふ、復活したぜ……」
アルベネロ達は重い足取りながらも立ち上がると教室から出るためにティーリア先生を見る。
「しまったわね……人間が疲労から回復する時間を考えてなかったわ……」
「姉ちゃん。動けるから、誘導、頼める?」
「あっ、もちろん♪ さっ、はぐれないように注意してくださいね♪」
アルベネロはティーリア先生がブツブツと独り言を呟いていることに気づくと、声を掛けて、教室の外へ誘導をお願いする。アルベネロの声に、ハッとした様子でティーリア先生は頷くと、四人を教室の出入り口まで誘導し始めれば、出入り口近くにレーメ先生の姿が見え始める。
「あっ、ティーリア先生。大丈夫でしたか? 予定より帰ってくるのが少し遅かったので、心配しました」
「ご心配をおかけしました。生徒たちの指導に熱が入りすぎてしまいました。問題はなかったので、安心してください」
「わかりました。生徒たちの安全もあるので、今後は注意していきましょう」
「はい♪」
「ティーリア先生とお話があるので、アルベネロ君たちは教室へ戻ってください」
「「「「はい」」」」
アルベネロ達が教室の出入り口に到着し、レーメ先生と合流すれば、ティーリア先生はレーメ先生へ謝罪をする。
レーメ先生は次から気をつけましょうとティーリア先生へ伝えた後、アルベネロ達を教室へ戻るように指示を出しては、ティーリア先生に何かを話し始める。
「私はシャワー室に寄ってから教室に戻るわ」
「あっ、私もご一緒します」
「俺は洗浄魔法に頼るぜ……シャワー浴びる体力がない……」
「はぁ……途中でレオが倒れないか心配だから、俺も洗浄魔法に頼ることにする」
訓練棟から出る際には自動で魔法【洗浄】によって、汗臭さや汚れなどを綺麗にし、清潔な状態となる。
しかし、シャワーを浴びたい生徒も中には居るため、訓練棟にはシャワー室が完備されており、クレアとレインはシャワー室へと向かうのであった。
「まさか、ティーリア先生の授業があんなにハードだとは思いませんでした」
「たしかに。かなり大変だったわね」
クレアとレインは脱衣所へ到着すると、お互いに服を脱ぎながら、訓練の時間を思い出す。
「クレアさんはどこまで出来るようになったんですか?」
「スリザリンファイアは使えるようになったわ。まあ、まだまだ速くは書けないし、実用には達してないけど」
「それでも、魔導具無しで使えるのはすごいですね」
レインはクレアより先に服を脱ぎ終えると、専用のカゴへ服を入れ、そのままシャワー室へと入っていく。
「レインの方はどうだったの? 目標は達成できたみたいだけど」
「森の中で動き回る魔導具を見つけるのは大変でしたが……ティーリア先生が邪魔するように体に触れて来るのが……一番の障害でした」
「たまに変な声が聞こえてくると思ったけど、レインだったのね」
「そ、それは言わないでください……//」
クレアも服を脱ぎ終え、指につけている赤い宝石の指輪を外すと、専用のカゴへ入れて、シャワー室へ入る。レインのシャワー室と隣同士であり、完全な個室ではなく、薄い壁で区切られている程度であるため、会話も可能である。
ジャー ジャー
「やっぱりクレアさんは綺麗ですね……」
「こら、覗かない」
「ごめんなさい♪」
クレアがシャワーを浴び始めると、レインが少しだけクレアのシャワー室を覗き込む。後ろ姿だが濡れていく紅色の髪にスラリとした体型、シミ一つない背中が美しさを物語っている。
「クレアさんはとっても綺麗ですから、興味が出てしまって♪」
「全くもう……」
「そんな綺麗な身体をアルベネロさんのいいようにされると思うと……」
「ま、まだされてないわよ⁉︎」
「そうですよね♪ まだ、されてないんですね♪」
「うぅ……//」
クレアは墓穴を掘ったと悔しそうにしながら、シャワーを浴び終えると、備え付けのタオルで身体を拭く。
「本当に甘いお話、ありがとうございます♪」
「……」
レインはシャワーを止め、振り向くと、満面の笑顔でクレアへ感謝を伝える。
流石にクレアは怒りを覚えると、魔導具無しで【火の矢】の魔方陣を作り出す。
「えっ……?」
「ファイアーボルト‼︎」
「あひゅぅ⁉︎」
レインはクレアが魔方陣を作り出したことに唖然としてしまえば、クレアはレインのお尻へ向かって、小さな火の玉を放つと、シャワーの水で火の玉はさらに小さくなるがレインの綺麗なお尻へ命中し、シャワー室に悲鳴が響き渡る。
「何か私に言うことはないのかしら?」
「や、やり過ぎました……ごめんなさい……」
「反省した?」
「はい……」
「それなら、許してあげるわ」
「ありがとうございます……」
レインも今回ばかりはやりすぎたと反省してはクレアへ謝罪をすると、満足したようにクレアは許す。
「うぅ……お尻が痛いです……」
「自業自得よ」
レインはタオルを身体に巻いた姿でシャワー室から出てくると、クレアはちょうど、身体を拭き終え、専用カゴに入れておいた服を手に取る。
余談だが、専用カゴに入れた衣類は自動的に洗浄魔法が掛けられ、洗浄される仕組みとなっている。
「レインも早く着替えたほうがいいわよ?」
「そうします……」
クレアは制服に着替え終わり、レインへ声をかけた後、最後に赤い宝石の指輪を手に取り、右手の薬指につける。
「そんな指輪、つけてましたか?」
「ええ。ずっとつけてたわよ?」
「気付きませんでした……」
「ふふ……」
レインはクレアの薬指に指輪がつけられていることに気づくと、今まで指輪の存在に気づかなかったため、不思議そうに眺める。
「認識阻害の魔法がこの指輪には掛かってるのよ。今、魔力を流したから、見えなくなってるわ」
「ちなみにアルベネロさんの指にも……」
「当然、つけてるわよ♪」
「あはは……本当にラブラブですね」
クレアは隠すことなく、アルベネロも同じ赤い宝石の指輪をつけていることを満面の笑顔で話す。レインは嫉妬する気も起こらず、少し呆れてしまいながら、制服に着替え終える。
「本当は隠したくないんだけど、お父さま達に認めてもらうまでは公に出来ないのよね」
「学院内でもすごいことになるのが目に見えてますね」
クレアは少し残念に思いながら指輪を眺める。大貴族の令嬢に恋人が出来たと知られれば、学院に居られなくなる可能性も皆無とは言えないため、アルベネロと相談して、隠すようにしている。
「だから、今度の長期休暇の時に、お父さまへ報告するつもりよ。もちろん、アルも一緒にね」
「貴族は恋愛一つとっても、大変ですね」
「仕方ないわ。あっ、もし、レインがアルと恋人同士になったら、公にするのは構わないわよ?」
「……えっ?」
クレアは何でもないことのようにレインへ伝えると、シャワー室から出て、教室へ向かおうとする。
一方、レインはクレアの言葉に思考が一瞬、停止してしまう。
「あら? レインもアルのことが好きだと思ってたのけど……勘違いだったかしら?」
「いえ、あの……それ以前に、アルベネロさんが別の女性とも付き合うのはいいのですか?」
「もちろんじゃない。一夫多妻なんて、貴族の世界じゃ、よくある事でしょ?」
「ああ……」
クレアは一夫多妻がさも当然といった価値観を持っていることに対して、レインは貴族の価値観と自身の価値観に大きな差があることに改めて気付いてしまう。
「その……あくまでクレアさんを焚き付けるために言っただけで……」
「あら、そうだったの? てっきり、レインのことだから、本気でアルを狙ってると思ったわ」
レインはクレアへ本当に狙っていた訳ではないと伝えると、クレアは意外と思い、誤解していたことを伝える。
「時々、狙ってる風なことを話すし、特別な人が好きって言ってたから……上手く焚き付けられちゃったってことね」
「そんなことも話しましたね……」
クレアはレインの策略通り、アルベネロへの想いを焚き付けられたことに少し悔しく思いながらも、表情は笑顔で怒っている様子はなく、逆にアルベネロと恋人同士になれたので感謝しているほどである
「とりあえず、本当にアルのことが好きになったら、応援するわ」
「そんな好きになんて……」
「あら、私も最初はそう思ってたわ。でも、今は恋人同士でしょ?」
「……」
レインはアルベネロへの恋愛感情なんて無いと話すも、クレアの言葉に反論する言葉が見つからない。
「ふふ。恋なんて、自分がしないと思ってる人ほど急に訪れるみたいよ」
「そう、なんですか……?」
「ええ。とりあえず、ひとつ、言えることがあるわ」
「なんですか?」
「アルの一番は譲らないわよ?」
「あはは……」
クレアの宣言にレインは苦笑いを溢してしまいながらも、意識しようと思わなかった、恋愛についての見方が変わって行くのであった。
そして、クレアとレインは恋話を終え、教室へ向かえば、特科クラスの教室からザワザワと声が聞こえてくる。
「騒がしいわね?」
「なんでしょうか?」
喧騒の原因が気になり、クレアとレインは教室へ入らずに、扉から中を覗けば……
「ティーリア先生の個人指導を受けれるなんて、羨ましい‼︎」
「俺たちにも受けさせろ‼︎」
「「「そうだ‼︎ そうだ‼︎」」」
教室内ではティーリア先生の個人指導を受けたと知ったクラスメイトがレオへ詰め寄っていた。
「俺より、弟のアルに言う方が可能性があると思うぜ……」
「「「たしかに‼︎」」」
「レオ、勝手に話を振るなよ」
「俺は疲れた‼︎ だから、任せた‼︎」
レオの言葉にクラスメイト一同はアルベネロへ視線を向ける。アルベネロはレオへ抗議しながら詰め寄ってくるクラスメイトから逃げるように教室の扉を目指して、移動して行く。
「全く……あなたたち、いい加減にしないと燃やすわよ? スリザリンファイア‼︎」
「「「ひぃぃ‼︎」」」
クレアは逃げるアルベネロを助けるために【這い寄る火蛇】によって、教室の床に火線を走らせる。もちろん、教室を燃やすつもりはないので、火柱を立てるつもりはないが威嚇には十分であったようで、クラスメイトは逃げて行く。
「ま、魔導具無しで魔法を使ってませんか⁉︎」
「あっ、本当だ‼︎ すごい‼︎」
「いつ使えるようになったんですか⁉︎」
「あら……失敗したわね」
「頑張ってください♪」
クレアはアルベネロを助けることには成功するが、逆に魔導具なしで魔法を発動させたことに対して、クラスメイトの女子生徒から囲まれてしまうと、その様子を見ていたレインはソッと横を通り過ぎて、自分の席へ戻るのであった。
『はぁ……まさか、クレアさんからあんなことを言われてしまうなんて……』
レインは席へ座ると、女子生徒に囲まれているクレアを助けようとしている、アルベネロへ視線を向ける。
『何かきっかけがあれば、私はアルベネロさんのことを好きになるのでしょうか……確かに特別な人で……強くて優しい人なのは分かりましたが……』
アルベネロのことを目で追いながらもレインは恋愛感情と呼べるような想いが分からず、困惑する。しかし、アルベネロを見ている時に抱く感情は確実に変化が生じており、それが良い方向か、悪い方向かはまだまだレイン自身にも分からないのであった。
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