~生徒会の宣言~
クレアはアルベネロの姉である、ティーリア先生にアルベネロとの恋人関係を認めてもらい、絆をさらに深め合うと、幸せにすると互いに誓う。
そして、二人は廊下で生徒会長が帰ってきたと興奮する生徒たちを他所に教室へ戻ると、レーメ先生から生徒会長たちがマギリア魔術学院から戻ってきたこと、急遽、集会が開催されることを告げられるのであった。
「全員、広間に入るのか?」
「それは問題ないわ。いつも広間で集会はするけど、全員、並べてるから」
特科クラスの生徒たちはレーメ先生に引率されながら、広間へ到着すると、既に他のクラスは広間に整列し始めていた。
「知らない先生が何人かいるな」
「生徒会に同行してた先生たちね。また、後で名前を教えてあげるわ」
「助かる」
アルベネロは広間の端で話をしている教師陣に目を向けると、知らない顔を見かけ、クレアに話せば、生徒会に同行し、しばらく不在だった教師たちであると説明してくれる。
「皆さん、順番は自由なので、縦方向に並んでください」
「「「はい」」」
レーメ先生から並ぶ様に指示を受け、特科クラスの生徒は順番は気にせず、縦方向に並んでいけば……
「なんで、俺が一番前なんだ?」
「クラスのトップが一番前が普通だろ‼︎」
「そうです♪ 決して、一番前だと生徒会の人たちに見られて、落ち着かないなんて、そんな理由じゃないですよ♪」
アルベネロはいつの間にか最前列に移動させられてしまい、後ろに並んでいるクレア、レイン、レオへ理由を確認するために振り返る。
レオは当然といった感じで胸を張っており、レインに至っては、理由を隠す気が全くない。
「レイン……隠そうともしないな」
「てへっ♪」
「私もクラスのトップ云々について同意見ね。それに、今更、私と代わる方が目立つと思うわよ?」
「はぁ……それもそうだな」
クレアの言葉にアルベネロは諦め、前へ向き直ると、腕章を着けた五人の生徒が後ろから現れ、生徒たちの前に横一列で並ぶ。
五人の生徒は左端からそれぞれ、痩せ型でエルフの男子生徒、身長の低い白狼族の女子生徒、若草色の髪を揺らしている女子生徒、如何にも体育会系と思わせる体格の良い男子生徒、眼鏡を掛けたエルフの女子生徒となっている。
『この五人が生徒会か……』
アルベネロは横一列に並んだ生徒会の技量を見極めようと、意識を集中させれば、眼の瞳孔周りに虹色の波が現れ始める。
『ッツ⁉︎ 予想以上に抑えれないな……』
アルベネロは神眼を抑えきれていないことに気づき、咄嗟に目を閉じれば、神眼を解除する。
『以前よりも神眼の力が増してるのか……? どっちにしても、今まで以上に注意が必要だな』
アルベネロはゆっくりと目を開けると、既に瞳孔周りは元通りに戻っており、流石に生徒会役員の力量を調べることを断念すれば、中央で立っていた女子生徒が一歩、前に出てくる。
「皆さん、揃ったようなので、集会を始めます。まず、突然の集会にも関わらず、集まっていただき、本当にありがとうございます。生徒会長として、お礼を言わせていただきます」
生徒会長である、エンリエット・ライムガルデは感謝の言葉を述べると、頭を下げる。若葉色の髪が揺れ、頭を上げると、例に漏れず、綺麗な顔立ちをしており、身体に凹凸はあまり見当たらないが、スレンダーな体型が凛とした雰囲気を色濃く醸し出し、眉目秀麗な容姿をしている。
「また、学院襲撃事件の際、生徒会として、皆さんの力になることができず、本当に申し訳ございませんでした」
「「「「申し訳ございませんでした」」」」
エンリエット会長は謝罪で頭を下げれば、他の四人も頭を下げる。
その様子に誰かが抗議するようなことはなく、無音の時間が流れる。
「今後はこのような事がないように生徒会として、徹底していきたいと思います。それでは、不要な前置きは無しで、本題に入りたいと思います。どうして、皆さんを急遽、この場に集めたか」
「「「ごくっ……」」」
生徒会全員が顔を上げると、エンリエット会長が前置きなく、本題に入ると、他の生徒たちに緊張が走り、固唾を飲む。
「詳しい日程は未定ですが、マリギア魔術学院との親善試合が決まりました」
「親善試合⁉︎」
「あの学院と⁉︎」
「なんで急に⁉︎」
「みんな、静かにして……会長。このまま、あれも発表しちゃおう……」
「そうですね……」
エンリエット会長の言葉に、生徒会の前で並んでいる生徒たちがざわつき始めると、後ろに控えていた白狼族の女子生徒が前に出て、生徒たちを宥める。
「今回の親善試合ですが、当然、出場できる生徒の人数には限りがあります」
「それって……」
「もしかして……」
「そうです。皆さんの中から出場枠と補欠枠、合わせて八名を決める必要があります」
エンリエット会長から親善試合は人数制限があり、それも八名しか参加できないことが発表され、鎮まっていた空気がまた、ざわつき始める。
「予定としては今日を含めて、三日間、出場希望者を募ります。その後、希望者同士で試合をしていただき、その結果で先生方に出場選手を決めてもらいます」
「さ、参加方法は⁉︎」
「詳しくは放課後までに先生方へ詳しい内容が記載された紙をお渡しします。皆さん、期限まで短い時間ですが、悔いのない選択をしてください。それでは、集会を終わります」
エンリエット会長は頭を下げた後、集会の終わりが告げられ、生徒会はその場を後にする。他の生徒たちも集会が終われば、それぞれの教室へと戻っていくが親善試合のことで話は持ちきりであり、特科クラスも他のクラスと同様に、教室へ向かう道のりから親善試合に出場するかどうかで話は持ちきりである。
「まさか、あそこと試合をするなんてな‼︎ これは腕試しも兼ねて、参加するしかないだろ‼︎」
「やる気が十分なのはわかったが、ちゃんと説明を聞いてからの方が良いだろう」
「アルの言う通りね。何も考えずに参加するなんて、バカのする事だわ」
「レオ君らしいですね♪」
「おい⁉︎」
レオは親善試合への参加をアルベネロ、クレア、レインに話すと、アルベネロとクレアからは諭され、レインからは揶揄われるという、いつもの流れである。
「皆さん、気になるのはわかりますが、早く教室へ戻ってくださいね。そうじゃないと……もっとすごい特別メニューをーーー」
「「「すぐ戻ります‼︎」」」
「あっ‼︎ 皆さん、廊下は走らない‼︎」
「「「はい‼︎」」」
レーメ先生の言葉に大半の生徒が教室の中へと駆け込んでいくため、レーメ先生は注意しながら、最後尾で全員が教室に入ったことを確認する。
「残りの時間も少ないので、授業は無しにします。ただ、チャイムが鳴るまで教室からは出ないようにしてください。それと、この後は実技訓練なので、遅れないでくださいね。お昼休みが終わったのに、帰ってこなかった人たちは特にですよ?」
「「「はいぃ‼︎」」」
レーメ先生はお仕置きを受けた生徒たちへ笑顔で釘を刺すと、何人かの生徒が気をつけの体勢で何度も頷けば、満足したように教室を後にする。
「クレアも希望するのか?」
「どうしようかしら……アルぐらいに手応えがある生徒なんて、向こうに居るとは思えないのよね」
アルベネロはクレアへ出場意思を確認すれば、そこまでクレアは乗り気ではなく、強くもない相手と戦っても仕方ないと考えている。
「アルベネロさん並みの人は何百年に一度ぐらいの存在だと思いますよ」
「そうなのよね……ちなみにレインはどうするのかしら?」
「私は希望するつもりです」
いつの間にか、レインはアルベネロの隣に立っており、話に入って来たため、クレアはレインへ出場意思を確認すれば、出場すると宣言する。
「あら、意外ね」
「少し、あそこの国には思うところがあるので♪」
「そう言うことね……」
レインは希望理由を明確には話さないが、クレアは察した様子であり、ため息を吐きながらも止めるようなことはしない。
「アルは出るのかしら?」
「私も気になります。アルベネロさんと当たったら、勝てる気がしないですから」
「そうだな……出る理由があれば、出るつもりだ」
「なるほどね。なら、私はアルが出るなら、一緒に出ようかしら」
アルベネロは親善試合へ出場する理由が特に無いため、希望するつもりはなく、クレアも特に出場する理由が無いため、アルベネロに合わせるつもりである。
「うへぇ。運が悪かったら、アルに、クレアさんとも戦うとか、骨が折れるぜ」
「本当に折ってあげても良いわよ?」
「「こわっ⁉︎」」
レオの言葉にクレアは笑顔を向けて、応えれば、本気の声色で放たれる言葉に、レインとレオは体を震わせる。
「他に骨が折れそうなのは……やっぱり生徒会だな‼︎」
「強いのか?」
「おう‼︎ 生徒会は成績上位者が集まってるからな‼︎」
「成績上位者……」
アルベネロは生徒会な成績上位者で構成されていると知り、自然とクレアへ視線を向ける。
「クレアは……」
「私は生徒会には入ってないわよ。確かに生徒会に勧誘はされたけど、エリーと相談して、生徒会に公爵家は一人で十分って、私が辞退したのよ」
クレアはアルベネロから質問される前に生徒会に参加することを辞退したと答える。
「なるほどな。公爵が2人も居たら、他のメンバーが大変だろうしな。それにしても、エリーって、生徒会長のことなのか?」
「そうよ。名前がエンリエットだから、縮めて、エリー」
「仲が良いんだな」
アルベネロはクレアがエンリエット会長のことをエリーっと愛称で呼ぶため、親しい間柄なのだろうと感じる。
「同い年で、立場も似てるから、会うたびに話してたら、いつの間にか、ね」
「いつの間にか親しくなったか……そんな相手が居るのは羨ましいな」
「ふふ、そうね。恵まれてたと思うわ」
レッドローズ家はライムガルデ家と同じ、公爵家であるため、クレアと気軽に話せる生徒はごく僅かであり、貴族だからこその話題で会話が出来る相手はエンリエット会長以外は居なかった。そのため、クレアはあまり意識はしていないが、エンリエット会長との交友を大切にしている。
「クレアさんと対等な立場の人はそうそう、居ないですから、アルベネロさんが転校してくるまで、会長と時々、話してましたね♪」
「その通りだけど、どうして知ってるのかしら?」
「……えへっ♪」
レインは当然、知っていると言わんばかりにアルベネロへ説明するため、クレアが軽く睨むと、笑みを浮かべて、誤魔化そうとする。
「やっぱり、どこまで知ってるのか、一度、問い詰めるべきかしら……」
「そ、それは……」
「流石にそこまですると、可哀想だ」
「アルベネロさん……‼︎」
割と本気の眼差しでクレアはレインを見つめており、流石にレインも冷や汗をかき始めれば、アルベネロが救いの手を差し伸べる。
「それにレインが全て話すとは思えないだろ?」
「はぁ……アルの言う通りね……」
「安心してください♪ 悪用もしませんし、売ったりもしませんから♪」
「だから、余計に怖いのよ……」
アルベネロに止められ、クレアは渋々ながらも、レインを問い詰めることを諦めれば、大きなため息を吐く。
キーン、コーン、カーン、コーン
「早く訓練棟に行こう‼︎ 絶対、遅刻はできない‼︎」
「「「おぉ‼︎」」」
チャイムが教室内に響き渡ると、レーメ先生にお仕置きされた生徒たちが教室を飛び出していく。
「俺たちも早く訓練棟に行こうぜ‼︎」
「そうですね。早く行きましょう」
「そんなに急がなくても……」
「遅刻しなかったら、お仕置きなんてされないわよ」
レインとレオも早く訓練棟へ向かおうとするので、アルベネロとクレアは思わず、呆れてしまいながらも席から立ち上がる。
「それはわかってるんだけど、なぁ?」
「流石に早く移動したくなります、よね?」
「はいはい。アル、二人のためにも行きましょう」
「そうだな」
クレアの言葉にレインとレオは顔を合わせながら、問いかけると、互いの言葉に同意するかのように頷き合う。クレアは二人を宥めると、アルベネロの手を引き、廊下へ出る。
「授業がない日も魔法の練習はしたからな‼︎ 俺の成長に驚くなよ‼︎」
「あら、それは楽しみね。私と対等に戦えるぐらい強くなってると良いけど」
「アルとずっとイチャイチャして、練習サボってそうなクレアさんからナンバーツーの座をいただくぜ‼︎」
「ほ、本当に燃やすわよ⁉︎」
レインとレオも廊下に出れば、訓練棟へ向かっていき、レオは自身が数週間で大きく成長していると自信満々に話せば、クレアに勝利する気で宣言する。
レオの言葉にクレアは顔を赤くして、憤慨するも、アルベネロとかなりの時間を共に過ごし、ずっとイチャイチャしていたことは事実であるため、否定はできなかった。
「アルベネロさんは二人の内、どっちが勝つと思いますか?」
「クレアだ」
レインはクレアとレオが戦った際にどちらが勝つかをアルベネロへ質問すると、アルベネロは考える素振りも無く、クレアが勝つと即答する
「即答ですね……」
「レオだけの力なら、クレアの方がまだまだ強いからな」
「ああ……なるほど。納得しました」
レインはアルベネロが即答した理由を知り、納得する。
そして、廊下を歩き始めて、数分も経てば、四人は訓練棟の入り口に到着すると、人だかりが出来ており、訓練棟内への行く手を阻まれてしまう。
「なんだ?」
「レイン、何か見える?」
「えーと……あっ……」
「何が見えた?」
レインは人だかりの先を【千里眼】で確認すれば、原因と思われる存在を確認し、思わず、声が出る。
「ティーリア先生が入り口で立ってますね……」
「原因はそれね」
「他のクラスでも大人気だな……」
「道、開けてくれ‼︎」
他のクラスでもティーリア先生の容姿に魅了された生徒は多かったようで、入り口へ続く道が塞がっている。
いつまでもその場で立っているわけにもいかず、レオが人だかりへ声を掛けると、何人かの生徒が端に避けて、道を空ける。
「大人気ですね、ティーリア先生」
「あ、クレアちゃん。それにアー君とレインさんとレオ君も来ましたね」
「出欠確認ですか?」
「ええ。それと、授業が割り振られていない生徒が来てないかの確認も兼ねてます」
「大変ですね」
「教師として、生徒たちの安全対策は最優先事項ですから♪ 皆さんの教室は上です。遅れないようにしてください♪」
ティーリア先生に送り出される形でアルベネロ、クレア、レイン、レオは階段へ向かっていく。事件後、初めての訓練はどの様なことをするのか期待する生徒も多い中、特科クラスでも選りすぐりの四人が教室の中へ入って行くのであった。
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