~大切だからこそ~
遂に授業が再開されると、初めにレーメ先生から全クラスに新しく副担任が就くことが発表される。
そして、特科クラスの副担任として、新任のティーリア先生が紹介され、その美し過ぎる美貌に性別問わず、大半の生徒を魅了するが、アルベネロの姉発言によって、教室内はどよめくのであった。
「お、お姉ちゃん⁉︎ ティーリア先生が⁉︎」
「嘘⁉︎ で、でも、たしかに黒髪だし?」
「予想外。これはまさかの展開」
突然、発覚した新事実にアルベネロとティーリア先生以外の全員が動揺しており、色々な憶測が教室内を飛び交う。
「驚くのは無理ないですが、静かにしてくださいね。他に質問はありますか?」
「い、良いですか?」
「はい♪ たしか、レインさんですね。何でも聞いてください♪」
「本当に、アルベネロさんが心配で教師になったんですか?」
「その通りですよ♪ あんな事件の後ですから、姉としては大切な弟のことが心配で、出来る限り近くに居てあげるために教師になりました」
「それだけの理由で……この学院の教師に……」
レインの質問にティーリア先生は淀みなく答えるため、本当のことを話しているとレインは判断すれば、何かを考え始める。
「他に質問はありますか?」
「前の仕事は何をしてたんですか?」
「詳しくは話せないですが、魔法の研究などをしていましたね♪」
「魔法は何が得意ですか?」
「そうですね……満遍なく使えるので、汎用魔法で特に得意なものはないですし、不得意なものもないですね」
レインの質問を皮切りに次々と生徒たちは質問を投げかけて行き、その都度、ティーリア先生は答えていく。
「世界史を担当することにしたのはどうしてですか?」
「元々、詳しい分野であったことと、ちょうど、空きがあったからですね」
「恋人はいますか?」
「居ないですね」
「「「おぉ‼︎」」」
「好きなタイプは」
「優しくて、守ってくれる人がタイプですね♪」
「「「おぉ‼︎」」」
「スリーサイズは⁉︎」
「秘密です♪」
「「「うぉぉぉぉ‼︎」」」
一部の男子生徒が煩くなりながらも質問は続くと授業時間の半分が経過したところでようやく質問の波が収まる。
「これで少しは私のことを知ってもらえましたか?」
「「「はい‼︎」」」
「それじゃ、授業を始めていきますね♪」
ティーリア先生は授業を始めると、主に男子生徒たちのやる気はすごく、かなりの集中力を見せており、そんな様子に女子生徒たちは呆れた表情を見せるのであった。
[そして、時間は過ぎて、授業も終わる頃……」
「このようにロムルス王国は建国当初から優秀な魔法使いの中から勇者を選出し、魔王打倒を目指しています」
キーン、コーン、カーン、コーン
「今日はここまでですね。皆さん、わからない箇所や質問があったら、遠慮なく言ってくださいね♪」
「「「はい‼︎」」」
チャイムの音が響き渡ると、ティーリア先生は授業を終えると、教室を後にする。
『流石は姉ちゃん……心を掴むのが上手いな』
アルベネロはティーリア先生が教室を後にするのを見送れば、教科書を片付けると、隣に座るクレアへ顔を向ける。
「クレア、ありがとう。教科書は仕舞ったから、大丈夫だ」
「アルがそう言うなら……」
アルベネロはクレアが【火焔領域】を発動して、他の生徒を近づけないようにしてくれていることに感謝を伝えた後、火線を消すようにお願いすれば、アルベネロとクレアの席を囲うように出現していた火線が消える。
「姉ちゃんのことを聞きたいなら、直接、聞いた方が早いと思うんだが……」
「そんな勇気がないから、アルに詰め寄ってきたのよ」
アルベネロは火線の影響で少し離れていた男子生徒たちへ視線を向ける。授業が終わった直後、アルベネロは男子生徒たちに囲まれてしまい、クレアが【火焔領域】で追い払ったのであった。
「弟だから、知ってることとかあるだろ⁉︎」
「あったとして、話す理由はないだろ?」
「「「ぐぬぬ……」」」
男子生徒たちの目的はティーリア先生であることは明らかであったため、アルベネロは当然のように何も話すつもりはなく、取り囲む男子生徒たちは悔しそうにする。
「用が済んだら、さっさと離れなさい。こんなに集まってたら、暑苦しいわ」
「「「は、はい……」」」
クレアの一言で、男子生徒たちは諦めた様子で離れていき、ティーリア先生の騒ぎは一旦、収まる。
「やっと、静かになったな」
「ええ。でも、また、騒ぎ始めそうね」
「アルベネロさん、お疲れさまです」
「アルにあんな美人の姉が居るなんてな‼︎ 男子が暴走するのも仕方ないぜ‼︎」
アルベネロはやれやれといった様子で一息吐いていると、レインは労いの言葉を掛け、レオは元気よく頷きながら声を掛ける。
「授業の後に確かめた方が無難だったな」
「そうね……知らない内に噂が広まって、問い詰められる気もするけど」
「ありえるな‼︎」
「ですね♪」
アルベネロは失敗したかと考えるが、結果は変わらないだろうとクレアに言われてしまい、レインとレオはその言葉に同意すれば……
「皆さん、席に座ってください。地理の授業を始めますよ」
「っと、もうそんな時間か‼︎ さっさと座らないとな‼︎」
「ティーリア先生のこと、また教えてくださいね♪」
「あはは……」
教室内に地理と歴史を担当している、ケレン先生が入ってくれば、立っていた生徒たちが自分の席へ戻っていく。
レオも席へ戻っていくが、レインだけはアルベネロへお願いをしてから戻っていくため、思わず、アルベネロは苦笑いを浮かべる。
「まあ、あの子が何も聞かない訳ないわよね」
「レインらしいな」
「……ねぇ。アル」
「どうした?」
「本当にお姉さん……なのよね?」
「……ああ。それは本当だ。詳しいことはまた今度、話すよ」
「そう……それなら、今度、お願いね♪」
クレアはアルベネロ本人から学院へ入学するまでに経験したことを聞いていたため、姉が居ることに疑問を感じていた。しかし、アルベネロはティーリア先生が姉であることを断言すると、クレアは少し考えるも笑顔で頷き、アルベネロを信じようと決めるのであった。
[そして、地理の授業が始まって以降、特に目立つ出来事もなく、午前中に予定されている全ての授業が終わり、お昼休みが始まる頃……]
「アル、今日はどうするのかしら?」
「そうだな……何か買って、一緒に食べるか?」
「食堂だと、二人で一緒に食べるのは大変だから、それが良いかしら?」
「ああ……んっ」
アルベネロは昼食をどうするかをクレアと相談していれば、突然、頭の中に声が響くと、教室の扉へ視線を向ける。
「……クレア。ちょっと、俺の部屋までついて来てくれないか?」
「えっ? それは構わないけど……急にどうしたの?」
「少し用事が出来た」
アルベネロは詳しいことは何も言わず、クレアを連れて、教室を後にすると、廊下に出ては寄り道をすることなく、寮へ向かう。
「ご飯はどうするの?」
「それはもう、大丈夫みたいだ」
「そうなの?」
「よし、着いた」
クレアは昼食の心配をするが、アルベネロは大丈夫と答えると、ちょうど部屋に到着し、鍵を開けて、ドアノブに手を掛ける。
「ただいま」
「お邪魔します」
「おかえり♪ アー君♪ クレアちゃん♪ 二人とも早かったわね♪」
「急にテレパシーが来たからな。一応、まっすぐ帰って来た」
「えっ、これってどういう状況……?」
アルベネロが扉を開けると、エプロンを着ているティーリア先生が出迎える。アルベネロは予想していたので驚いていないが、突然の状況にクレアは戸惑ってしまう。
「もうご飯出来るから、リビングで待っててね♪」
「昼食はこれで大丈夫だな」
「そ、そうね。その……私も同席して良いのかしら?」
「もちろん♪ だって、アー君の恋人なんだから♪」
「……と言うことだ」
「ありがとう……ございます」
昼食の同席を歓迎されてしまい、クレアは少し緊張しながらもティーリア先生へ感謝を伝えると、アルベネロに手を引かれながら、リビングへ向かう。
「はい♪ 冷めない内にしっかり食べて♪」
「いただきます」
「い、いただきます」
「召し上がれ♪」
ティーリア先生は三人分の料理が載った食器が宙に浮かせると、テーブルへ並べてい。パンやスープなど洋食の献立となっており、食堂の料理と遜色がない質である。
「すごく美味しい……」
「ありがとう♪ お口に合ったみたいでよかったわ♪」
「久しぶりに食べたけど、流石は姉ちゃん。美味しい」
「アー君に喜んでもらえて嬉しい♪」
クレアはティーリア先生の手料理に驚いてしまいながら、三人は食事を楽しめば、あっという間に昼食を食べ終えてしまう。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
「満足してもらえて、良かったわ♪」
ティーリア先生は二人が食べ終わったことを確認した後、テーブルに置いてある食器を魔法で台所へ運んでいく。
「アー君。私、久しぶりにアー君が淹れてくれた紅茶が飲みたい」
「……わかった。クレアも飲むよな?」
「ええ。いただくわ」
「ゆっくりで大丈夫だからね♪」
アルベネロはティーリア先生の意図を察すると台所へ向かい、ティーセットを取り出しては紅茶の用意をしていく。
「それじゃ、アー君が紅茶を淹れてくれてる間に……少しお話をしましょう♪」
「は、はい」
「先に確認だけど……私のことはアー君から聞いてた?」
「特には何も……」
「そっか……アー君らしいわね」
ティーリア先生はクレアと二人だけになれば、自分のことを聞いているかを確認する。
クレアはアルベネロから特に聞いていなかったことを話すとティーリア先生は少し考える素振りを見せる。
「……私、本当は悪魔なの」
「……えっ?」
「それも……あのヴァンパイアとは比べ物にならないぐらい、ずっと高位の、ね」
「……」
ティーリア先生の言葉にクレアは思わず固まってしまうと、当の本人は固まるクレアの様子で笑みを浮かべて眺めている。
「信じられない?」
「そう、ですね……でも、アルのお姉さんならって、思ったりもしてます」
「ふふ♪ それじゃ、これで信じられる?」
ティーリア先生は立ち上がり、クルンとその場で回転した瞬間、髪の毛は黒からピンク色に変わり、頭からは角、背中には蝙蝠の羽が現れる。
「本当に……悪魔なんですね……」
「ええ。本気を出せば、クレアちゃんが気付く間も無く、消し去ることもできるわ」
「……‼︎」
ティーリア先生は悪魔としての姿を現せば、クレアでも視認できる程に魔力を手へ集める。
「私はね……アー君に恋人が出来て、嬉しく思う反面、ただ守られるだけの弱い子がアー君の隣に居ることが許せないの。誰のことを言ってるか、分かるかしら?」
「……私が弱いって言いたいんですか?」
「ええ。それはクレアちゃんもわかってるでしょ?」
「……」
クレアはティーリア先生の言葉に反論することが出来ず、悔しそうな表情をする。クレア自身、襲撃事件の際にアルベネロのサポートを行ったが敵を倒すまでには至らず、力不足を感じていた。
「だから、ここでクレアちゃんを消しても良いかなと思ってるの……絶対、アー君はすごく怒るし、嫌われちゃうかもだけど、あの子の家族だからこそ、嫌われてでも、今後の足枷は減らしてあげたいと思ってるわ」
ティーリア先生は本心で語れば、魔力を集めた手をクレアへ向けると同時に威圧を放つ。
「うぐぅ……」
「アー君のことが好きなら、アー君が将来、幸せになるために消えて? もちろん、痛みなんて感じる前に終わらせてあげる」
クレアはティーリア先生から放たれる威圧に身体を締め付けられていると感じるほどの重圧を感じ、本気で消そうとしていることを否が応でも理解する。
『私は弱い……アルに守られてばかりで……ティーリア先生の言う通り、私が居るだけで、アルの邪魔になるなら……』
クレアはティーリア先生の言葉が正しく思えば、アルベネロの邪魔になるぐらいなら消えた方がいいのではとさえ、思えてしまう。
「私が居ない方がアルは……幸せに……」
「ええ。その通りよ」
「それなら……私なんて……」
「クレアちゃんが良い子で助かるわ」
クレアはアルベネロのことを考えるほどに自分が居ない方がいいのではないかと答えれば、ティーリア先生はゆっくりと魔力を纏わせている手をクレアの顔へ近づけていく。
『アル……』
クレアはアルとの短くも幸せだった時間を思い出していき、それと同時に幸せな時間が終わってしまうことを考える。
『ここで私が居なくなったら、アルはもっと幸せに……』
クレアはアルベネロが幸せになることを願いながら、アルベネロの隣に自分以外の知らない誰かが立っている姿を思い浮かべれば……
「い……や……」
「んっ?」
「いや……消えたくない」
「アー君のことが好きじゃないの?」
「好き……大好き。だからこそ……アルの隣に私の知らない女が居るのは許せない……‼︎」
「でも、その方がアー君が幸せになるのよ?」
「それでも、いや‼︎ わがままなのはわかってる。けど、私はアルとずっと一緒に居たい‼︎ 私がアルをもっと幸せにしてあげたい‼︎」
誰かも知らない相手がアルベネロを幸せにしている状況がクレアには我慢出来ず、自分勝手であるとわかっていても、他の誰かではなく、自分自身がアルベネロを幸せにしてあげたいと叫ぶ。
「ふふ……」
「はぁ、はぁ……」
ティーリア先生はクレアの言葉を聞けば、威圧を止めて、手を下ろすと悪魔の姿から人間の姿に戻る。
「あぁん♪ 本当にクレアちゃんは一途で可愛い♪ こんなにアー君のことを考えてくれてるのも知れて、大満足♪」
「ひゃっ⁉︎」
「あっ、ちゃんとさっきの言葉はアー君には聞こえないようにしておいたから安心して♪」
「あ、ありがとう……ござい……もごもご」
ティーリア先生はとても嬉しそうにクレアを抱きしめる。
当然、クレアの顔は谷間に埋もれてしまうため、うまく喋ることができず、先程とは違いすぎるティーリア先生の態度にクレアは戸惑いを隠せないでいた。
「話は終わったか?」
「ええ♪ クレアちゃんがアー君のことをとっても大好きなことがわかったわ♪」
「うぅ……//」
クレアとティーリア先生が抱き合っている状況の中、アルベネロはティーセットを持って、二人へ声を掛けると、ティーリア先生はクレアを離してあげる。一方、クレアはいつも以上にアルベネロのことを意識してしまい、直視することができず、顔を真っ赤にしながら、俯いてしまうのであった。
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