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~平穏はやはり遠い~

今回から第二章が開始です!!

 聖ソーサリ魔術学院襲撃事件から数週間が経過し、(おおやけ)にはされていないが悪魔も事件に関与したため、終息までにかなりの時間を(よう)したものの、遂に授業が再開されることが決まる。

 そして、授業が再開される日の朝、寮の一室で制服に着替える男子生徒の姿があった。その男子生徒こそ、襲撃事件解決の立役者、アルベネロであった。

 

 

 

「今日から授業か……」

 

 

 アルベネロは今日のカリキュラムを思い出しながら、襲撃事件のことを思い出す。

 

 

『ガレン達は無事に戻れたみたいだが……退学した生徒の中に名前があったな』

 

 

 襲撃事件に協力した生徒たちは全員、退学処分になっていることは周知の事実であり、アルベネロは学院長のマナから退学者の名簿を見せてもらったため、もう出会うこともないだろうと考えるも、元クラスメイトのことが頭に()ぎる。

 

 

 

「……っと、物思いに(ふけ)ってる場合じゃないな」

 

 

 

 アルベネロは襲撃事件においての自身の立ち回りについて、悔やむところがあり、考え込んでしまう。

 しかし、約束(・・)の時間が近いことを思い出しては制服に着替え終えると、寝室に置いてある(かばん)を取り、部屋の外へ出ていけば……

 

 

 

「ふふ、おはよう。アル♪」

「おはよう。ぴったしだったか?」

「ええ♪」

 

 

 

 アルベネロが外に出ると、丁度、隣の部屋から一人の女子生徒が外に出てくる。

 お互いに顔を合わせれば、笑顔で挨拶を交わすと外に出て来た女子生徒、クレアはアルベネロの腕へ抱きつく。

 

 

 

「早速だな」

「嫌だったかしら?」

「いや、かなり嬉しい」

「ふふ♪」

 

 

 

 アルベネロとクレアは襲撃事件解決後、お互いの想いを伝え合い、恋人同士になった。

 そして、授業が開始される数週間で二人は絆をより深め、同じ赤色の宝石が埋め込まれたペアリングをそれぞれ指に着ける程に仲睦(なかむつ)まじい関係となっている。

 

 

 

「教室までの時間がこんなに楽しいことはなかったわ」

「はは……そうだな。好きな相手と一緒に居るだけで楽しいな」

「ふふ♪ すぐに教室に着いちゃうのが寂しく感じちゃうわ」

 

 

 

 クレアはアルベネロと恋人同士になったことで、甘える相手ができ、今までの凛とした姿とは異なり、甘えん坊の姿を見せるようになった。そして、普段とは大きく異なるクレアの姿に、自然とアルベネロの口元は緩む。

 

 

 

「可愛いな」

「と、突然、何よ……//」

「今のクレアを見てると、思わずな」

「もう……//」

 

 

 

 アルベネロから突然、可愛いと言われ、クレアは立ち止まってしまい、恥ずかしさと照れから顔を逸らすも口元は緩んでおり、喜んでいることを隠しきれていない状況であった。

  

 

 

「着いたが……流石に誰も来てないか」

「そうじゃないと、早く来た意味がないわ」

 

 

 アルベネロとクレアは廊下を歩けば、教室にすぐ辿り着き、扉を開けて、中を覗く。朝礼まではかなり時間に余裕があるため誰も居らず、クレアはアルベネロの手を引いては誰もいない教室内へ入る。

 

 

 

「早く座りましょう」

「そんなに急かなくてもーーー」




 クレアは急ぎ足で席へと向かうため、手を繋いだままのアルベネロも、同様に急ぎ足で席へ向かい、お互いに自分の席へ座る。

 

 

 

「いつみんなが来るかわからないんだから、仕方ないでしょ?」

「確かにそうなんだが……やっぱり、教室じゃなくて、部屋の方がいいんじゃないか?」

 


 

 アルベネロとクレアは早めに教室へ到着したため、二人っきりの状況となっているが、他のクラスメイトがいつ来るかはわからない状況である。のんびりとは過ごせない状況に、アルベネロは何度目か分からない、提案をする。

 

 

 

「何度、言われてもダメなものはダメよ。朝から部屋に二人っきりで過ごすなんて……」

「だが……」

「アルもわかってるでしょ? 同じ部屋で過ごしたら……遅刻(・・)するに決まってるわ」

「ちゃんと時間は見ておくから」

「前だって、時間を忘れて話して、いつの間にかお昼になってたでしょ? だから、授業がある日は……流石にダメよ」

 

 

 

 アルベネロは説得を試みるも、クレアは断固として受け入れず、話は平行線になってしまう。

 

 

 

「この話は終わり。何度、言われても授業がある日は教室よ」

「はぁ……わかった」

 

 

 

 クレアが話を終わらせてしまったため、アルベネロは説得を諦めると、ため息を吐く。

 

 

『保険はかけておくか……』

 

 

 アルベネロは教室に誰が来ても問題ないように保険をかけては、一安心と息を吐く。

 

 

 

「アル……//」

「んっ……//」

 

 

 

 クレアは我慢できないように少し顔を赤くしながらアルベネロへ抱きつく。身体に押し当てられる柔らかい感触にアルベネロも冷静な対応はできず、ほんのりと顔を赤くしては抱きしめ返す。

 

 

 

「大好き……//」

「俺も大好きだ……//」

「嬉しい♪ んっ……//」

「んんぅ……//」

 

 

 恋人同士となって、数週間ほどだからこそ、二人は想いを伝え合えば、自然と唇を重ね合う。教室内であるため、二人はすぐに唇を離すが、唇に残る感触に自然と笑みを浮かべる。

 

 

 

 パチッ パチッ

 

 

 

「もう時間みたいだな」

「仕方ないわね。甘えるのはまた、お昼休みの時にするわ」

「あはは……そうだな」

 

 

 アルベネロは教室に誰かが入ろうとしていることに気づくと、クレアは甘えている姿から一転し、凛とした姿で背筋を伸ばし、席へ座り直す。

 

 

 

「おはようございます。急に静電気が来て、びっくりしました」

「おはよう。それは災難だったな」

「ごきげんよう。それは運がなかったわね」

 

 

 

 教室へ女子生徒が入ってくると、アルベネロとクレアへ挨拶をする。片方の手にはいつものように水晶玉を持っており、二人の近くへ駆け寄ってくる。

 

 

 

「お二人とも、早いですね」

「そう言う、レインも早いな」

「早めに行けば、二人のラブラブな姿が見れるかなと思ったので♪」


 

 

 

 アルベネロとクレアが恋人同士であることを知っている女子生徒、レインは教室に二人っきりであることを揶揄(からか)う。

 

 

 

「相変わらずね……」

「ラブラブな二人を見てると思わず♪」

「見るのはまだ構わないけど……邪魔したら、燃やすわよ」

「あ、あはは……もちろんです」

 

 

 レインの言葉にクレアは呆れてしまうと、冗談抜きの声色で釘を刺しておく。

 レインはクレアに釘を刺されてしまい、口元が引()()りそうになりながらも、笑顔を取り(つくろ)えば、何度も頷くと、自分の席へ鞄を置きに向かう。

 

 

 

「これで覗きも少しは減るわね」

「何度も覗きに来てたからな」


 

 

 レインは固有魔法【千里眼(クレヤボヤンス)】によって、アルベネロとクレアのデートを覗きに来ることがあり、その度にアルベネロが魔法で妨害していた。

 しかし、クレアに釘を刺されたことで、デートの邪魔はしなくなるだろうと、二人は考える。

 

 

 

「おはよう‼︎ 三人とも早いな‼︎」

「おはよう。レオも早いな」

「ごきげんよう。朝から元気ね」

「おはようございます。元気が無いレオ君はレオ君じゃ無い気がしますね」


 

 

 元気一杯に挨拶をしながら一人の男子生徒が教室内へ入ってくれば、アルベネロ、クレア、レインも挨拶を返す。自分の席へ(かばん)を置くと元気の良い男子生徒、レオはアルベネロ達の元へ駆け寄ってくる。

 

 

 

「今日から授業再開だからな‼︎ それに副担任が誰か気になって、居ても立ってもいられなかったぜ‼︎」

「あはは……レオらしいな」

「完全に子どもね」

「レオ君らしいですね」

 

 

 

 レオの言葉にアルベネロとレインは思わず笑ってしまい、クレアは呆れてしまう。

 そして、レオが来た後はすぐに他の生徒たちも教室の中へ入って来ると、互いに挨拶を交わしては談笑が始まり、どんどん教室内が賑やかになっていく。

 

 

 

「そろそろ時間だな」

「どんな先生が来るだろうな⁉︎」

「有名な魔法使いの人が来るのでしょうか?」



 

 アルベネロは朝礼の開始時刻を確認すると、残り数分程度まで迫っていた。一方、レオは興奮気味にどんな先生が来るのかをレインと話している。

 

 

 

「かもしれないわね。でも、そんなすぐに教師を増やせるのかしら?」

「もしかしたら、他の先生が兼任するかもしれませんね」

「そ、その可能性を忘れてたぜ……」

  

  

 クレアの最もな疑問に対して、レインは答えると、レオは落胆すれば、とぼとぼと自分の席へ戻っていく。

 

 

 

「わかりやすいわね……」

「本当にな」

「レオ君らしいです。時間みたいなので、私も席に戻りますね」

「皆さん、席についてくださーい」

 

 

 

 レオが落胆した状態で去っていく姿をアルベネロ達は呆れながら見送ると、教室の扉から名簿を持った女性が中へ入って来て、立っている生徒達へ着席を(うなが)す。

 

 

「おはようございます。皆さんの元気な姿をまた見ることができて、本当に嬉しいです♪」


 

 特科クラスの担任である女性、レーメは教壇の上に立つと着席した生徒たちを見渡せば、朝の挨拶と喜びの言葉を口にする。

 

 

 

「朝礼を始めたいと思います。まず、皆さんにお伝えすることがあります。今回の事件を(かえり)みて、全てのクラスに副担任が()くことになりました」

「レーメ先生、副担任の先生はどんなことをするんですか?」

「副担任は担当クラスの授業をサポートすることが、基本ですね。また、緊急時には副担任が生徒の安全を守ることを優先して行動することになっています」

 

 

 

 レーメ先生は新しく副担任が()くことを生徒達へ伝えると、女子生徒から副担任の役割について質問されたため、簡単に説明を行う。

 

 

 

「副担任の先生には扉の前で待ってもらっているので、早速、中へ入ってもらいましょう。お願いします」

「はい♪ 失礼します♪」

 

 

 レーメ先生の合図と共に、明るい声が扉から響いて来ては、腰までの長さがある黒髪を揺らしながら一人の女性が教室内へ入って来る。

 

 

 

「はじめまして♪ 今日から特科クラスの副担任になる、ティーリアです。数日前にこの学院の教師になりました。これから、よろしくお願いします♪」

「す、すげぇ美人だ……」

「それに……」

「「「ごくっ」」」

 

 

 

 中に入って来た女性、ティーリアは黒のVネックのワンピースとマントを着ており、丈は短いため、太ももがかなり見える。

 しかし、それ以上に男子生徒の目を()いているのは、驚くほど綺麗に整っている顔とVネックから覗く、レーメ先生よりも大きいと感じさせる程の豊満な胸であり、人外と感じさせるティーリア先生の美貌(びぼう)に男子生徒のほとんどが目を離さないでいた。

 

 

 

「これだから男子は……」

「でも、女性から見ても羨ましい美しさです……」

「それは……たしかに。くびれもしっかりあって……嫌味を言う気も起きないぐらい綺麗ね」

 

 

 男子生徒ほどではないが、女子生徒もティーリア先生の美しさに目を()かれていた。

 

 

 

「皆さん、お静かに。ティーリア先生、挨拶、ありがとうございました。ティーリア先生は副担任とは別に世界史の授業も担当します。見惚(みと)れて授業に集中できない、なんてことが無いようにしてくださいね?」

「「「は、はい‼︎」」」

 

 

 

 教室内がざわつき始めたため、レーメ先生は紹介を終わらせると、最後に生徒たちへ念押しすれば、男子生徒のほとんどが背筋を伸ばして何度も頷く。

 

 

「最初の授業は世界史なので、このままお任せして、大丈夫ですか?」

「はい♪ 任せてください♪」

 

 

 レーメ先生は朝礼を終えれば、次の授業がちょうど世界史であるため、ティーリア先生に後を任せると、名簿を持って、教室を後にする。

 


「それでは皆さん、授業を……っと言いたいですが、このままだと集中出来ない人が多そうですね」


 

 ティーリア先生は教壇に上がり、どこからか教科書を取り出すも、生徒たちを見渡せば、集中力が散漫なの生徒が大多数であることに気づいて、笑みを浮かべる。


 

「少しですが、自己紹介の時間にしましょう。副担任として、皆さんに私の知ってもらうのも大切ですから♪ ちなみに何か質問はありますか?」


   

 ざわざわ……

   

   

 ティーリア先生は生徒たちに質問が無いかと聞けば、教室内がざわつき始める。何を質問するかを相談しているようで、ティーリア先生はそんな様子を楽しそうに眺めている。

 

 

 

「結構、自由な先生なのね。好感が持てるわ。アルはどう感じたの?」

「……」




 クレアはティーリア先生に好感的に思いながら、アルベネロへもどんな印象を感じたか質問する。しかし、アルベネロはクレアの質問に反応せず、口元を()()らせながら、ティーリア先生を見ていた。

 

 

 

「アル? 大丈夫?」

「ああ……大丈夫だ。目の前の現実が信じられなかっただけだ」

 

 

 

 無言のアルベネロへクレアはもう一度、声をかけると、今度は反応すると顔を(うつむ)かせて、現実逃避をしていたことを告げる。


 

 

 

「どういうこと……?」

「説明するにはまだ確信がないから、ちょっと確かめる」

「何をかしら?」

「こういうことだ」

 

 

 

 アルベネロは確信を得るため、席から立ち上がると、ティーリア先生を見る。当然、座っている生徒たちの視線は自然とアルベネロへ集まり、ティーリア先生もアルベネロを見れば……

 

 

「なんで先生になってるんだ? 姉ちゃん」

「アー君のことが心配でなっちゃった♪」

「「「……ええぇぇぇ⁉︎」」」


 

 アルベネロの問いかけに、ティーリア先生は動揺することなく答えるため、一瞬の静寂が生まれ、次の瞬間、教室に生徒たちのどよめく声が響き渡るのであった。

ここまでお読みしていただき、誠にありがとうございます!!

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作者:@canadeyuuki0718

絵師様:@Eroinstein7027

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