〜外伝 道を踏み外した者の末路~
第9回ネット小説大賞にエントリーしました!!
いい結果になればいいなと思いながら、今後も投稿を続けていこうと思います!!
学院襲撃事件はアルベネロ達の活躍もあり、大事に至ることなく解決となった。
一方、黒幕のラアン先生、黒いローブを着た者たち、協力した生徒たちは拘束されると、聖ソーサリ学院の都市内にある施設へと連れて行かれ、それぞれが別々の部屋に連れて行かれていた。
「まずはお前たちの処罰だが……」
「「「……」」」
マナは学院長として、事件に協力した生徒たちへの処罰を伝えるため、生徒たちが連れて行かれた部屋を訪れる。生徒たちは動けないようにされてはいないが、全員、地面に座り込んでおり、逃げるような素振りはない。
「わかっていると思うが、お前たちがつけていた黒い指輪は呪具だ。それを使用した時点でお前たちは重罪。さらには学院襲撃に協力し、さらに罪は重くなった」
「「「……」」」
マナの言葉を聞き、協力した生徒たちは何も言えず、無言のまま、俯いた状態であり、自分たちが罪を犯したことを実感する。
「通常なら、このまま牢獄送りとなるが……今回、事件解決に大きく貢献した生徒たちたっての希望により、牢獄送りではなく、退学処分とし、全員、家族の元へ帰ってもらう。なお、再度の入学は認めない」
「あ、ありがとうございます‼︎」
「ありがとうございます……」
「う、うぅ……」
マナは退学処分とする生徒たちへ言い渡すと、予想以上に軽い処遇に生徒たちは驚き、感謝する者や涙を流す者が現れる。
「あとは任せる。全員が落ち着いたら、荷物をまとめさせて、今日中に連れ出せ。長く居るのはどちらも辛いだろう」
「ハッ‼︎」
マナは施設の職員に生徒たちの対応を任せれば、黒いローブを着た者たちを集めている部屋へ移動する。生徒たちとは違い、全員が魔法で作り出した縄で縛られ、拘束されている。
「さて、貴様らには特に温情は無いが……どこの組織だ? 素直に話せば、尋問する手間が省けるんだが」
「はっ、我らが話すとでーーー」
「ヘルファイア」
「ぎゃぁぁ⁉︎」
黒いローブ達の身元を知るためにマナは質問するも、男の一人が話すつもりがないと答えれば、容赦なく黒炎で燃やす。もちろん、命まで取る威力では無いが周りに恐怖感を植え付けるには十分な威力であった。
「さて……次はお前だ」
「ひぃ……⁉︎」
「私は男だろうが女であろうが手加減はしない。それで、お前たちはどこの組織だ?」
マナは次に女の一人に近づけば、女は短く悲鳴を漏らして怯えてしまっている。しかし、そんなことはお構いなく、マナは黒炎を見せながら同じ質問をする。
「い、言えない……裏切るようなことわ」
「そうか。まあいい。まだ何人も残っていることだ。誰かが話してくれるだろう」
女は怯えながらも身元を話さないと答えれば、マナは興味を失ったように他の者たちへ視線を向けては移動していく。
「はぁ〜〜……」
「ヘルファイア」
「あぁぁぁぁ‼︎」
助かったと女が思った瞬間、マナは男と同様に女を黒炎で燃やす。油断していた女は身体中から燃える痛みに、その場で身を捩り、苦しむ。
「さて……」
「「ひぃ⁉︎」」
マナは一人ずつ、時間を掛けずに質問をしていく。答えない者はそのたびに【黄昏の炎】で焼かれ、残った者に恐怖を与える。
「次は貴様だ。どこの組織だ?」
「わ、わかった。答える。だから、助けてくれ」
「お、お前⁉︎」
「早くしろ」
「組織の名前は……真理魔導会」
遂に男の一人が恐怖感から応えようとしており、周りが止めようとする。しかし、マナが鋭い視線を向ければ他の者たちは大人しくなり、男の口から〖真理魔導会〗の言葉が出る。
「そこか……どこに拠点がある?」
「さ、定まった拠点はない。本拠地も知らない」
「知ってることを全て話せ」
マナは可能な限り情報を聞き出し終えると、何も処罰を伝えることなく、その部屋から後にする。
「貴様、裏切りは重罪だ。後で報告するからな」
「し、したかったらしろ。あんな化け物に殺されるよりマシだ」
「貴様たちが襲撃者だな。要請により、ロムルス王国へ連れて行く。そこで改めて、貴様達の処罰を決定する」
仲間内で争いが始まり出したかと思うと、鎧を着た者達が部屋へ入ってくる。兵士と思われる男の一人がロムルス王国へ連れて行くと話し、処罰もロムルス王国で下すと告げる。
「お、俺たちはこの国で捕まったんだぞ⁉︎ それがどうして、他国で裁かれるんだ⁉︎」
「要請によりと言った。学院側からの要請があったときに限り、我らロムルス王国が裁くことが可能なのだ」
「バカな……」
聖ソーサリ魔術学院は本来、教育施設であり、国としての機能は他国に劣る。そのため、元々はロムルス王国の領地であったため、友好の証として互いに様々な条約が結ばれていた。その内の一つとして、捕虜の対応や裁判については要請があった場合に限り、ロムルス王国へ一部を一任することが可能であるというものであった。
「連れて行け」
「「「ハッ‼︎」」」
ロムルス王国の隊長格と思しき兵士が他の兵士へ〖真理魔導会〗に所属する者たちを外へと連れて行くよう指示を出せば、気を失っている者も含めて、連れて行くのであった。
そして……
「ラアン、気分はどうだ?」
「良いと思ってるのか?」
マナは今回の襲撃事件を計画し、実行に移した黒幕のラアン先生が居る部屋へと入る。
ラアン先生は光の縄で四肢を拘束され、動けなくされており、体の至るところに吸魔石が着けられている。
「今回の騒動を起こした理由は既にレーメから聞いている。まさか、そんな下らない理由で学院を襲うとはな」
「貴様にとっては下らん理由だろう。だが、私にとっては十分すぎる理由だ」
マナは呆れながらラアン先生に話しかけると、何も後悔していない様子でラアン先生は告げる。
「私をどうする気だ? ここで消すのか?」
「いや、貴様にはロムルス王国で、真理魔導会の情報と、タロヌフとの関係を洗いざらい話してもらう」
「そこまで知られているか……なら、貴様はどうしてここに来た? まさか、連れて行かれる私の顔を最後に見に来たとでも言うのか?」
マナは〖真理魔導会〗に所属する者たちと同様にロムルス王国へラアン先生の処罰を任せるように要請を出していた。
そのため、ラアン先生は何故、マナが部屋を訪れたのか理解ができず、訝しがる。
「なに……貴様が余計なことを言わないよう、口止めに来たのさ」
「余計なこと……あのアルベネロという生徒のことか……たしかに、神眼と時間魔法……さらには異能まで使える子ども……これをロムルス王国が知ればどうなるか……」
口止めという言葉に、ラアン先生はアルベネロのことを思い出すと少し笑みを浮かべる。
アルベネロの力を大国が知れば、行動を起こさない訳はなく、その事実を隠しているマナの立場が悪くなることは想像に難くない。
そのため、ラアン先生はマナへの嫌がらせとしてロムルス王国へ情報を渡すことを思い付く。
「それで? 口止めというが、私と何か取引でもするつもりか?」
「犯罪者と取引する趣味はない。それに、ちょうど良いものを貴様が用意しただろ?」
「なに?」
ラアン先生はアルベネロの情報を秘密にするために取引を持ちかけてくるのかと考えるが、マナは取引するつもりはなく、一枚の紙を見せる。
「貴様がガレンに与えたテラーの魔方陣が描かれた紙だ。実戦の中で使われることは少ないが……効果は知っているだろ?」
「貴様、正気か⁉︎ 禁術だとわかって、使うというのか⁉︎」
「当然だ。アルのためなら、こんな使用者に代償がない魔法。何度でも使おう」
マナは【恐怖】の魔方陣が描かれた紙を持った状態で、拘束されているラアン先生の元へ歩み寄っていく。
躊躇なく禁術【恐怖】を使おうとするマナに対して、ラアン先生は激しく動揺し、マナの正気を疑う。禁術の使用は当然、重罪であり、判決によっては永久に牢獄へ入る可能性すらある。
「なぜだ⁉︎ そこまでして、どうして守ろうとする⁉︎」
「貴様が知る必要はない」
マナはラアン先生の質問を切り捨てると、紙へ魔力を流し、魔方陣を右手に作り出す。
ガレンよりも洗練された魔力が魔方陣を満たしており、精神を破壊することも容易なほどであろうことが伝わる。
「安心しろ。命は保障する。残りの人生が質問に答えるだけの時間になるがな」
「やめろぉぉぉ⁉︎」
「テラー」
ラアン先生は叫び声をあげる中、マナは【恐怖】の魔法を発動させる。
そうすると、すぐにラアン先生は声を出さなくなり、身動き一つしなくなる。
「これで私の後始末は終わったか……」
マナはラアン先生の処理を終えると、事件の顛末を纏めるために学院長室へ転移すると椅子に座る。
『大体の話は聞いているが……どうするか……』
マナは事前に生徒達から話を聞いたレーメ先生から報告を受けていたが、報告通り記載すると、アルベネロのことが露見してしまうために調整をしていく。
「後は四人の口止めか……」
「その必要はなさそうよ。全員、アー君の秘密を言いふらすようなことはしてないから」
「……‼︎」
マナはアルベネロが時間魔法を使えることを目撃している、クレア、レイン、レオ、レーメ先生への対処方法を検討し始めた直後、自分以外は誰もいない部屋から他の声が響くと、マナは椅子から立ち上がると辺りを見渡す。
「こっちよ」
「……来るとは思っていた」
マナは声が聞こえた方向へ顔を向けると、そこには蝙蝠の羽を生やし、ピンク色の髪を腰まで伸ばしている女性の姿をしている悪魔が立っていた。その姿を目撃したマナの顔に緊張が走る。
「そんなに緊張しなくて良いわ。別に怒ってないから」
「どうしてだ? 今回の騒動、姉としては許せる事ではないはずだろ?」
「もちろんよ。アー君をこの学院から連れ出すぐらいは考えたわ」
「なら……」
怒っていないという言葉に対しては、マナは疑問に思う。姉として、アルベネロのことを溺愛し、安全を最優先する性格と知っているからこそ、怒っていないと理由をマナは知りたかった。
「アー君にとっても良いことがあったのよ。だから、この学院から連れ出しちゃうと、嫌われちゃうわ」
「良いこと?」
「そうね……あなたは知ってた方がいいかしら」
悪魔は嬉しそうに立ったままのマナに近づくと、耳元でとある事を教える。
次の瞬間、マナは地面に手を突き、四つん這いになると身体を震わせる。
「先を越されたぁぁぁ‼︎」
「一緒に戦ったのが効いたみたいね。今頃、大人の階段も上ってるかも?」
「そ、そんなすぐに上るはず……⁉︎」
「そうかしら? ベットもある部屋で二人きりの状況。好き同士の若い男女が何もない方が考えにくいと思わない?」
「そ、それはたしかに……」
マナは四つん這いの状態で悔しそうに地面を何度も叩いており、その様子を悪魔は楽しそうに眺めている。
「絶対、私も……‼︎」
「あなたのこと、私は気に入ってるから応援するわ。それに、アー君の恋人たちは魅力的じゃないと嫌だから」
悪魔から応援されると、マナは何とか立ち上がり、改めて、アルベネロの恋人になると固く決意するのであった。
「元気になったところで本題だけど……今回のことがあって、あなただけにアー君のことは任せてられないわ。だから……」
マナが立ち直ったことを確認すると、悪魔は幾つかの要望をマナへ伝える。
「そ、それは……」
「あなたが懸念していることは安心して。一つ目のゴットシールを維持する必要がなくなって、私は自由に動けるから」
「……わかった」
「それじゃ、細かいところを詰めましょう」
悪魔からの提案にマナは流石に即決することが出来ず、悩んだ表情に変わると、悪魔はすぐに懸念事項を解消して行く。
マナは少しの間、検討した後に悪魔からの提案を受け入れると、二人は今後のことを話し合っていくのであった。
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