~終幕と新たな始まり~
ヴァンパイアを吸収したことで更なる力を得たミノタウロスはアルベネロを倒し、クレアをあと一歩のところまで追い詰めるが、振り下ろされるハルバートを復活したアルベネロが異能の刀で受け止める。そして、ミノタウロスから悪魔が分離したことで形勢は一転する。
一方、レインからの【念話】を受けた学院長のマナは学院内へ転移すれば、教室内を順に確認しながら、訓練棟へ向かうのであった。
「カハッ‼︎ ぼ、僕、生きてるの⁉︎」
「チッ‼︎」
「あ、お前‼︎ よくも僕を食ったな‼︎」
「ヨワイ、オマエ、ガ、ワルイ」
ミノタウロスと分離し、地面へ吐き出されたヴァンパイアは目を覚ますと、戸惑いながら身体を確認したあと、ミノタウロスに向かって、怒ったように詰め寄るも味方同士で争い始めるようなことはしない。
「マナギフト」
「んっ……」
「クレアならすぐに馴染ませられるはずだ」
「わかったわ……後は、お願いね」
「ああ。任せろ」
アルベネロは【魔力譲与】によって、クレアへ魔力を分け与える。他人の魔力が身体に流れ込んできたため、クレアは少し身体を震わせながらも、ミノタウロスとヴァンパイアのことを任せれば、アルベネロの邪魔にならないようにその場から離れる。
「あれ、その刀……なんだ、君も同類だったんだね。だから、そんなに強かったんだ。契約者はどこにいるのかなー?」
「ソンナコト、ハ、ドウデモ、イイ。アト、ハ、オマエ、ヲ、タオセ、バ、オワリ、ダ」
「それもそっか。手と足のお礼をしないといけないしね」
アルベネロが持つ刀をヴァンパイアは観察すると、異能の力であるとすぐに看破し、辺りをキョロキョロと見渡す。ミノタウロスはどうでもいいことと切り捨てれば、ヴァンパイアは辺りを見渡すことを止めると、アルベネロに爪を向ける。
「エアスラッシュ‼︎」
「サバキノテッツイ‼︎」
ヴァンパイアは鋭い爪を何度も振ることで、アルベネロに向かって、風の刃をいくつも放つ。そして、ミノタウロスは逃げ場を無くすようにハルバートを地面に叩きつけては、既にある地割れに繋げるようにして、地面を割る。
「たしかに同類かもしれないな。ただ……同格じゃないんだ。輪廻割断」
アルベネロは刀を一振りすれば、風の刃が放たれた過去は消え、地面が割れた過去すら消え去ってしまい、いつの間にか地面が元に戻る。
「そ、そんな……う、うそだ……異能に時間魔法の力が融合してる……そんな、こと、ある訳……」
「ウロタエル、ナ」
「うるさい‼︎ お前は知らないからそんなことが言えるんだ‼︎ 異能は魔法とは次元が違う力。融合して、新たな力に変われるわけが……」
吸収された自身がどうやって、分離したのかについて、ヴァンパイアは知らず、今、アルベネロの刀に宿る力を目撃すれば、取り乱し始める。ミノタウロスは落ち着くように指示するも、より一層、ヴァンパイアは取り乱せば、後ずさる。
「言っただろ。格が違うんだ」
「う、うるさい‼︎ そんなことあるわけないんだ‼︎」
「チッ、コドモ、ガ」
ヴァンパイアは現実を否定するようにアルベネロへ飛びかかっていく。ミノタウロスは浅はかな行動をするヴァンパイアに舌打ちをすれば、ハルバートを構えたまま、後を追うようなことはしない。
「デススラッシュ‼︎」
「そんな攻撃、当たる訳ないだろ」
ヴァンパイアは鋭い爪に黒い魔力を纏わせ、アルベネロへ攻撃するも、大振りな攻撃が今のアルベネロに当たるわけもなく、少し後ろへ下がって、避けると、刀を返し、刃を上へ向ける。
「七星皆照流、一の型、煌星」
大振りの攻撃を空振りし、隙だらけのヴァンパイアに向かって、アルベネロは刀を肩の高さまで持ち上げ、先を向ける。その瞬間、瞬く間にヴァンパイアの身体には五つもの穴が空く。
「かはっ……な、何したんだ⁉︎」
ヴァンパイア本人すら、攻撃された後、五つもの穴が空いたことに気づいており、血を吐きながら胸を押さえる。
「次で最後だ」
「ひぃ⁉︎ ま、待って‼︎ もう、消える‼︎ 二度と会わないから‼︎」
「……終わりだ。三の型、紅炎」
命乞いをして、往生際が悪いヴァンパイアに対して、アルベネロは刀を上段に構えると、刀の刃に赤い炎を纏わせ、振り下ろす。
「ぎゃぁーーー‼︎」
「燃え尽きろ」
「ココマデ、トハ……」
ヴァンパイアは正中線に沿って、真っ二つに切り裂かれ、そのまま炎に焼かれると、叫び声共に灰塵となる。戦闘にすらなっていなかった圧倒的なアルベネロの力にミノタウロスは呆然とするしかなかった。
「オマエ、ドウシテ、イママデ、チカラ、ヲ、カクシテイタ」
「話す理由はないんだが……ゴットシールで力を封じていたからだ」
「ゴットシール、ダト⁉︎」
アルベネロの言葉を聞いた、ミノタウロスは目を見開き、動転した様子を見せる。
アルベネロが口にした魔法【神の封印】は最強の拘束呪文であり、特異魔法に分類される。その効果は力の抑制であり、一流の魔法使いですら、魔法が一切、使えなくなるほどの拘束力がある。
「ソレ、ガ、シンジツ、ナラ、オマエ、ハ、ホントウ、ニ、ニンゲン、ナノ、カ⁉︎」
「ミノタウロスになったお前に言われたくないな。それと、俺はちゃんとした人間だ」
「ソンナ、バカ、ナ……」
ミノタウロスはアルベネロとの戦いについて、勝機を全く見出すことができず、無意識にハルバートを持つ手が震えてしまっている。
「お前もここで終わらせる」
「マ、マテ⁉︎ オマエ、モ、イマ、ノ、ガクイン、ノ、アリカタ、ガ、タダシイ、ト、オモウ、カ⁉︎ コンナ、ユウレツ、ガ、トウゼン、ノ、システム、ガ」
ミノタウロスは先ほどのヴァンパイアと同様に命乞いを始め、アルベネロを説得しようとする。
「アノ、オンナ、ニモ、オマエ、ト、ワタシ、ガ、テ、ヲ、クメバ、カナラズ、カテル」
「……」
「ワルイ、ハナシ、デハ、ナイ、ダロ? オマエ、モ、コノ、ガクイン、ヲ、ジユウ、ニ、デキル」
ミノタウロスは口元に笑みを浮かべながら、甘言を口にし、その話をアルベネロは無言で聞くと刀を地面に向ける。
「ワ、ワカッテ、クレタ、カ?」
「ああ。わかった」
「ソ、ソウ、カ……‼︎」
「お前がどうしょうもない奴なのがな」
ミノタウロスはアルベネロの懐柔に成功したかと期待するが、アルベネロは説得に応じる気は最初から無く、話を切り捨てる。
「クッ‼︎ コノ、ガキ、ガァァ‼︎」
「クロノアクセル」
ミノタウロスはアルベネロの態度に、懐柔することを諦めれば、激昂しながらハルバートを構えて、突進する。
アルベネロはミノタウロスが迫ってきても、動じることなく、【加速する時間】で肉薄し、刀を下から振り上げる。
「輪廻割断‼︎」
「ガァァァぁぁ⁉︎ か、身体が⁉︎ 元に⁉︎」
「あのヴァンパイアと分離した今なら、ミノタウロスへ姿を変えた過去を斬れる」
アルベネロはラアン先生に一太刀を浴びせると、ミノタウロスに|変貌した過去は消えてなくなり、ミノタウロスからラアン先生の姿へ戻る。当然、持っていたハルバートは地面に落ちるとまるで何も無かったかのように霧散する。
「ラアン先生、あなたの負けです。諦めてください」
「ま、まだだ‼︎ この魔方陣を起動させれば‼︎」
「それをアルと私が許すとでも?」
「この声は⁉︎」
アルベネロは元の姿に戻ったラアン先生に敗北を告げれば、悪足掻きをするように地面に残る巨大な魔方陣に魔力を流し込もうとするも、転移門が存在した場所から聞こえてきた声に手が止まる。
「貴様が用意した黒ローブと協力者の生徒は全員、拘束させてもらった。あとは貴様だけだ」
「お前はあの方の屋敷で拘束されているはず⁉︎」
「やはりグルか。結界を張っていた時点で予想はしていたが、それはあとだ。貴様を拘束させてもらう」
「だ、誰がお前のいうことなど‼︎」
「拒否権があると思うな」
「なんーーー」
マナの言葉を聞いても、ラアン先生は降参せずに抵抗しようとするが、無詠唱で放たれたマナの魔法によって、意識は刈り取られ、その場で失神する結果となった。
「アル、それにレッドローズも、無事で何よりだ」
「ボロボロだけどな」
「学院長……他のみんなは?」
「問題ない。負傷者も保健室で対応できる程度だ」
「よかった……」
クレアは他のクラスメイトが無事であることを確認すれば、ホッと息を吐き、落ち着く。
その様子にアルベネロは笑みを浮かべては、刀を異空間へ戻し、瞳の色を元に戻す。
「あとは私に任せておけ。レッドローズについては、傷が深いようなら、保健室で治療を受けるように」
「わかりました」
「よし。アル、細かいことはまた、後で話すことにする。それと、本当にありがとう。皆を守ってくれて」
「俺一人の力じゃない……感謝なら特科クラス全員にも頼む」
「わかった」
マナはアルベネロへ感謝を伝えれば、アルベネロの言葉に特科クラス全員へ感謝を伝えることを約束すれば、今回の事件を収拾するため、自身が作り出した転移門から学院へ戻っていく。
「やっと、終わったのね……」
「ああ。みんなの勝利だ」
「ええ。みんなで勝ったわ……」
クレアは遂に今回の事件に終止符が打たれたと思えば、力が抜けたようにその場で仰向けに倒れる。
「……暴れるなよ?」
「ひゃっ……⁉︎」
クレアが地面に仰向けで倒れている状態にアルベネロはクレアの側へ移動すれば、お姫さま抱っこで抱える。
クレアは突然、お姫さま抱っこをされてしまい、驚きながらも落ちないようにアルベネロの首に腕を回す。
「このまま、部屋まで連れて行くからな?」
「へ、部屋って、アルベネロ君の部屋?」
「ああ。別にクレアの部屋でも良いが、俺が入って良いのか?」
「そ、それは……えーっと……アルベネロ君の部屋で……//」
アルベネロの提案にクレアは混乱しながらも頷けば、お姫さま抱っこで寮まで運ばれていく。二人の道中、誰かと通り過ぎるようなことはなく、まるで時間が止まっているかのように、教室の中から声が聞こえることも、外から音が聞こえることもなかった。
「身体は大丈夫か?」
「え、ええ。大丈夫。魔力も馴染んで、動けるぐらいには回復したわ」
「なら、よかった」
「あ、アルベネロ君の方こそ、大丈夫なの?」
「時間を戻して、斬られた傷を無かったことにしたから大丈夫だ」
「それなら、大丈夫そうね」
アルベネロとクレアは道中、相手の心配をするも、互いに問題なしと答えれば、少し苦笑いが溢れてしまう。
そうこうしていると、寮の転移門の前まで移動すると、アルベネロはクレアを降ろし、一緒に転移門から寮へ移動し、アルベネロの部屋へ入り、隣同士でソファーに座る。
「まずは……身体と……制服も合わせて治さないとな」
「そ、そうね……//」
「それじゃ、少し失礼……」
「んっ……//」
「グレーターヒーリング」
クレアは今更ながらに所々、制服に穴がいていることに気づくと、恥ずかしそうにしながらも、アルベネロに任せる。
アルベネロは傷の回復を行うため、クレアの頬に手を添えては魔法【上位治癒】で痕が残らないように治す。
「んんぅ……暖かいわ……//」
「痛みはひいたか?」
「ええ。大丈夫よ……//」
クレアは頬に伝わってくる手の感触にほんのりと顔を赤くしながら、治療を受けては身体の傷は痕も残ることなく治癒されるのであった。
「クロノブレイク」
「本当、すごい魔法ね……//」
「これで元通りだな」
「あっ……」
アルベネロは傷の治癒を終えては、躊躇うことなく、時間魔法【巻き戻る時間】によって、クレアが着ている制服を元に戻すと、頬から手を離せば、クレアは思わず、声が出てしまう。
「どうした?」
「な、なんでもないわ……」
「……」
「はぁ……//」
アルベネロはクレアが寂しそうな声を上げたことに気づき、声を掛ける。
しかし、名残惜しそうな表情ながらもクレアは何でもないと答えるため、アルベネロは少し無言でクレアを見つめる。
「……」
「んんぅ……//」
「これで、あってるか?」
「うん……//」
アルベネロはクレアが求めることを察すると、もう一度、頬に手を添えると、今度は優しく頬を撫でてあげる。クレアは撫でられる心地良さに表情を緩めては、隣に座るアルベネロへもたれかかる。
「ねぇ、アルベネロ君……//」
「どうした?」
「どうして、保健室じゃなくて、部屋に運んだの?」
「……何でだろうな」
「むぅ……」
クレアは表情を緩ませながらアルベネロへ質問するが、アルベネロは一呼吸の後、答えをはぐらかせば、不満そうにクレアは唸る。
「そこは嘘でも、私は独り占めしたかったって、言うところでしょ……」
「……そこまで、真っ直ぐに伝えるのは恥ずかしいだろ」
「……//」
クレアは不服そうに口を尖らせるも、アルベネロの言葉と反応に、何かを察しては、互いに顔を赤くする。
「……」
「……//」
互いに無言の時間が続くが、居心地の悪い空間というわけでもなく、相手の存在を意識してしまって、何か言うのではないかと遠慮が出ていた。
『もう姉ちゃんの助言もない……それなら、後は……自分が思ったように……』
アルベネロは覚悟を決め、答えを出すと、頬に添えていた手を離し、クレアを見つめる。
「クレア」
「ひゃ、ひゃい……//」
アルベネロに名前を呼ばれ、クレアは身体をビクッと震わせながらもドキドキと鼓動を高鳴らせ、期待するようにアルベネロを見つめる。
「まだ出会って、日も短いが、それでも一緒に過ごして、クレアのことが……好きになった。まだまだ、互いに知らないことの方が多いけど、一緒に知っていきたい」
「アルベネロ君……‼︎」
「おっと……」
アルベネロはすこし詰まりながらもクレアへ自身の想いを伝える。クレアはアルベネロの言葉に表情を緩ませては、嬉しさで抱きつく。
「私も好きよ。時間なんて関係ないわ。アルベネロ君のこと、もっと知りたい。私のことも、もっと知って欲しいわ」
「ありがとう……‼︎」
クレアはアルベネロへ抱きつくと、アルベネロを見つめて、自身の想いを伝える。
アルベネロはクレアの告白を受けて、感謝を伝えれば、抱きしめ返す。
「んっ……アルベネロ君……//」
「クレアのことが好きだ。だからこそ、話しておく必要がある。俺の過去について……」
「アルベネロ君の過去?」
「ああ。今から話す話は全て事実だ……聞いてくれるか?」
「もちろん」
アルベネロの真剣な声色にクレアは先程までの笑顔から真剣な表情に変わり、身体を離すと、アルベネロは意を決して、自身の過去を話し始める。
「まず、俺は孤児だ。それも……親が金のために売ったらしい」
「そ、それって……」
「ああ。非合法だ。だが、国絡みなら、非合法であろうと、関係ない」
「……」
しばらくアルベネロの話は続き、全てを話し終えると、壮絶な話にクレアは唖然としてしまい、何を話せばいいか戸惑う。
「話した通り、俺は普通じゃない。今の力も努力で得たものでもない、まともな方法じゃないの話した通りだ。それに、悪魔と契約をしている……ラアン先生と同類なんだ」
「そんなことないわ‼︎」
アルベネロは自虐するように自身がまともではないと話し、異能の力を使える理由がラアン先生と同じく、悪魔と契約したからと話すと、クレアは顔を上げて、アルベネロを見つめれば、強く否定する。
「あんな奴とアルベネロ君は同類なんかじゃないわ。悪魔と契約した理由も目的も全然、違う。だから、そんな自分を卑下にするようなこと言わないで……」
「……わかった」
クレアの言葉にアルベネロは驚きながらも頷けば、自然と笑みが溢れる。悪魔と契約しているという事実を知っても、なお、自分のことを考えてくれることに嬉しく思う。
「嫌われるんじゃないかと、少し心配だったんだが、杞憂だったな」
「当然でしょ? 驚きはしたけど、今のアルベネロ君のことを私は好きになったんだから」
「ありがとう。俺もクレアのことが好きだ。これから先は……恋人として、一緒に居てほしい」
「恋人で終わらないって思っていいのかしら?」
「はは……当たり前だろ。結婚を前提として、恋人になってほしいんだ」
「ふふ、喜んで♪ これからもよろしくね♪ 未来の旦那さま♪」
学院に入学してから始まった、短くも濃密な時間を共に過ごした、アルベネロとクレア。 二人は共に事件を乗り越え、遂に恋人同士となり、抱きしめ合うのであった。
「本当に嬉しい。ありがとう。アルベネロ君……恋人同士だから、呼び方は変えたほうがいいかしら……?」
「はは……任せるよ」
「なら、アルって呼ぶわ。ア〜ル♪」
「はは……クレア」
クレアは呼び方を決めては甘えた声で愛しい相手の名前を呼ぶ。アルベネロも返すように名前を呼び返し、甘い空気が部屋を満たす。
「クレア……」
「アル。お願い……//」
「ああ……」
甘い空気が漂う中、若い恋人同士が抱きしめあっている状況で何も行動しないほど、枯れていないアルベネロはクレアを見つめる。
クレアは見つめてくるアルベネロの意図を察すると、目をゆっくりと閉じ、軽く唇を突き出す。
「んっ……」
「んんぅ……//」
アルベネロとクレア、二人の唇が重なり、互いに伝わってくる柔らかい感触に抱きしめる腕にも力が入り、どのぐらい時間が経ったのか分からないほどに夢中でキスを続ける。
「ぷはっ……//」
「はぁ……// はぁ……//」
アルベネロがゆっくりと唇を離せば、クレアは思い出したように息をしており、お互い頬を上気させ、自然と見つめ合う。
「アルベネロ君……//」
「はぁ……// どうした……?」
「もっと、って言ったら、はしたないかしら……?」
「ッツ‼︎」
「んんぅ♪」
恥ずかしそうにしながらも蕩けた表情で甘えてくるクレアにアルベネロは鼓動を高鳴らせては、再度、唇を重ねる。
恋人になりたての二人がキスを終え、落ち着くまでにどのぐらい時間を要したかは二人だけの秘密であった。
[場面は変わり、聖ソーサリ魔術学院を囲む外壁の外側を進んだ森の中……]
「何とか、逃げ切った……危うく、灰になるところだったよ……」
アルベネロの一撃を受け、灰塵となったと思われていたヴァンパイアは命からがら、姿を隠して、逃走することに成功していた。
満身創痍の状態ながらも学院から脱出し、追跡が難しい森林の中を今も歩いている。
「復讐はするとして、まずは休んで、魔界に戻らないと……」
「その必要はないわ」
「誰だ⁉︎」
ヴァンパイアは今後の行動を考えていれば、不意に知らない声が後ろから響き、慌てて、後ろを向く。
そこには……
「こんにちは。ヴァンパイア」
「な、なんだ、悪魔か……」
後ろに振り返ったヴァンパイアの目に入ってきたのは、蝙蝠の羽を生やして、空中で静止している女性の姿であった。
ピンク色の髪を腰まで伸ばしており、頭部には角が左右に生えている。そして、最も目が引くのは人外の美しさを感じさせる身体であり、豊満な胸に反するような腰のくびれなど情欲を否が応でも刺激する美貌であった。
「その姿、サキュバスか何か?」
「教える理由はないわ」
「あっそ。それで、何かよう? 魔界に送ってくれたりするの?」
「言ったでしょ、その必要はないわ。あなたはここで私に消されるから」
正体を教えない悪魔に対して、ヴァンパイアは警戒する様子はなく、上から目線で話す。
悪魔はその態度に反応することはなく、端的に目的を伝える。
「何を言ってるのかわかってる? 魅力しか脳のない種族が僕に勝てると思ってるの?」
「もちろん。それじゃ、さよなら」
ヴァンパイアは悪魔の言葉に対して、正気を疑うような目を向けるも悪魔は目的を果たした様子で別れを告げれば、背中を向ける。
「何? やっぱり逃げるの?」
「もう終わってるわよ」
「はっ?」
悪魔が背中を向けたことでヴァンパイアは諦めたのかと思うも、告げられた言葉に疑問の声が出た瞬間、ヴァンパイアはその場で身体が朽ち、砂のように崩れさると、その生涯を終えた。
「アー君の敵はこれで終わり、ね。クレアちゃんと上手くやってるかしら。部屋に戻って、イチャイチャの邪魔をしたくないし、先にマナとお話しね」
ヴァンパイアを一瞬で葬ったことを何でもないことのように済ませれば、愛しの弟が上手く恋人を作れたかとワクワクしながら、転移門を作り出し、聖ソーサリ魔術学院へ戻るのであった。
[そして、学院が襲撃される事件が解決されてから、数週間後……]
事件の事情聴取や、生徒たちのカウンセリングが行われており、行動に問題のない生徒たちはそれぞれの時間を過ごしていた。
「アル〜〜♪」
「はは……」
「何度見ても慣れないですね……」
「おう。まさか、ここまで変わるとは思ってなかったぜ」
日が暮れた頃、寮の談話室には、椅子に座って寛ぐ、アルベネロ、クレア、レイン、レオの姿があった。
そして、当然のようにクレアはアルベネロの隣に座っており、甘えるように腕に抱きついている。その甘々ぶりにレインとレオは驚きを通り越して、呆れすら感じていた。
「改めて、おめでとうございます。お似合いですね」
「だな‼︎ クレアさんに釣り合う奴なんて、ここじゃ、アルぐらいだと思ってたぜ‼︎」
「二人とも、ありがとう」
「ふふっ♪ ありがとう♪」
アルベネロとクレアが、レインとレオに付き合い始めたことを伝えたのは、数日前のことであり、二人から改めて祝われるとアルベネロもクレアも嬉しそうに笑みを浮かべる。
「それにしても、こんなに変わるんですね。やっぱり、頼れる相手ができたから今までの反動が?」
「俺もここまで変わるとは思ってなかった。まあ、そこも可愛いんだがな」
「しれっと惚気ないでください」
アルベネロもクレアと恋人関係になったことで、惚気るようなこともあったりと、以前よりさらに明るく過ごしていた。
「熱いぜ、二人とも〜〜」
「物理的に熱くしてあげてもいいわよ?」
「今回は揶揄ってないだろ⁉︎」
クレアとレオのやりとりは相変わらずであり、二人のやりとりを見て、アルベネロとレインは笑みを溢すのであった。
「そう言えば、遂に明日から授業再開ですね」
「そうね。空いた分を補うために、さらに授業が早くなって、それが理由かわからないけど、担任と副担任の二人態勢にもなるみたいよ」
「副担任か……誰がなるんだろうな?」
「明日の楽しみね」
明日から授業が再開され、早くなる授業速度に心配する生徒や、新しい副担任の存在に色々と期待する生徒と、様々な反応を見せる。
「そろそろ帰りますねー」
「ああ。また明日」
「はい。また明日、会いましょう♪」
「俺も帰るぜ。また、明日‼︎」
「夜に声が大きいわよ。二人とも、また明日」
レインとレオが椅子から立ち上がると、自室へと戻っていく。二人きりになったアルベネロとクレアは何も言わずに見つめ合えば、自然と唇を触れ合わせるだけのキスをする。
「ふふ、自分でもわかるぐらい、浮かれてるわ」
「俺もだ。浮かれてるな」
「……この後、部屋に行っても良いかしら?」
「ああ。もちろんだ」
お互いに浮かれていることを自覚しながらも、それを嗜めるようなことはしない。
そして、アルベネロとクレアは互いに幸せを噛み締めながら、二人きりの時間を過ごすため、部屋へと移動する。
明日から再開される授業で自由な時間が減ってしまうため、いつもよりも長く一緒に過ごしたことは言うまでもなく、この後もずっと、この幸せが続くと信じて、アルベネロとクレアは見つめ合うと想いが溢れてくるように……
「アル、大好き♪」
「俺もクレアのことが大好きだ」
二人は愛を伝え合うのであった。
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