~真なる力~
アルベネロ達は訓練棟内に居る襲撃者を倒した後、サキ、リンカ、アリサの三人が一階を守り、残りの三人が二階へ向かう。
そして、アルベネロ、クレア、レインの三人は先へと進み、神眼の力によって発見した転移門を通った先には、ラアン先生と拘束されているレオとレーメ先生の姿があった。
初めはラアン先生の詭弁に戸惑うクレアとレインだったが、アルベネロによって、悪魔の存在を看破されことで状況は一転、ラアンの野望を阻止するため、〖アルベネロ&クレア〗対〖ラアン&悪魔〗の命を賭けた勝負が始まる。
「ピラーズ・オブ・ファイア‼︎」
「ほう。中々の速さだ」
「グラトニー‼︎」
クレアが【燃え上がる火柱】によって、ラアン先生とレオ達の間に火柱を出現させ、分断を試みるが、悪魔が右手に作り出した黒い球体によって、火柱は一瞬で消されてしまう。
「グラトニー?」
「禁術の一つだ。どんな物でも吸収する力があるが、発動するとあの球体は、消えるまでなんでも吸収し続ける」
「そんなの発動した本人も危険じゃない⁉︎」
「ああ、人間には扱い切れない魔法だから禁術に指定されてるんだが……」
「悪魔の僕には関係ないことだけどね。はい、終わり」
悪魔が使用した禁術【暴食者】によって、作り出された黒い球体は火柱を吸収した後、悪魔の手を吸収しようとする。
しかし、悪魔が軽く手を叩けば、黒い球体は消え失せてしまい、人外の強さをまざまざと見せつける。
「厄介な魔法ね。これだと引き離すだけでも一苦労だわ」
「俺に考えがある。バーストファイアを頼めるか?」
「……わかったわ」
レオ達と分断することも一苦労とクレアは思っていれば、何か妙案がある様子のアルベネロがクレアへ指示を出す。その指示にクレアは少しだけ考えると頷く。
「バーストファイア‼︎」
「そんな魔法、僕に届くわけないのに。グラトニーでお終いなのわからないかな〜〜……グラトニー」
クレアは【爆ぜる火球】の魔方陣が描かれた紙を取り出せば、悪魔に向かって、巨大な火球を放つ。
悪魔は迫ってくる巨大な火球に対しても余裕な表情のまま、【暴食者】をもう一度、発動させると、再び現れた黒い球体が火球を救出してしまう
「ほら、全く意味ないじゃーーー」
「エレメンタルカノン‼︎」
「なぁ⁉︎」
「いつの間にーーー」
悪魔の発動した【暴食者】によって、クレアが放った火球が消え去ってしまうと、悪魔は余裕な態度でクレアに対して、黒い球体を放とうとするが、いつの間にかラアン先生達とレオ達の間にアルベネロが移動しており、ラアン先生と悪魔を巻き込むように【四大元素の砲撃】を放つ。
ドォォォォォン‼︎
アルベネロが虹色の光線を放てば、そのまま壁を抉り、光線は消滅する。ラアン先生と悪魔の姿は無くなっており、アルベネロは辺りを見渡し、二人を捜す。
「クレア、後ろだ‼︎」
「ッツ‼︎ ヘルファイア‼︎」
「なっ⁉︎」
アルベネロはラアン先生がクレアの背後へ、霧となって移動していることに気づき、素早くクレアへ敵の位置を伝える。
アルベネロの声を聞いた瞬間、クレアは振り返りながら後ろへ【黄昏の炎】を放てば、見事に姿を現したラアン先生に黒炎が迫っていく。
「くっ‼︎ メイルストローム‼︎」
「相殺されたわね」
ラアン先生は手につけている指輪に魔力を流し込めば、【全てを呑み込む潮流】によって、黒炎を相殺する。
クレアは相殺されたことを確認しては後ろへ下がり、アルベネロの近くまで後退する。
「レイン、解けそうか?」
「大丈夫です。看破で既に解き方は分かってます」
「レイン、頼むぜ‼︎」
「お願いします‼︎」
「クレア、悪魔の方は霧になって、移動し続けてる。気をつけろ」
「霧に……」
レインもいつの間にかレオ達の元に移動しており、レオとレーメ先生を拘束する光の縄を【看破】 で調べて、解除を始める。
そして、クレアはアルベネロから悪魔が霧化していることを聞くと少し考える。
「アルベネロ君、合図したら、悪魔がいる場所を教えて欲しいわ」
「……分かった」
「お願いね」
「ヘルファイア‼︎」
「メイルストローム‼︎」
クレアは霧化している悪魔に対して、対抗策を思いつけば、アルベネロへ悪魔の位置を指し示してもらうようお願いすれば、〖ウルスラグナ〗を取り出す。
敵も待っているだけではなく、ラアン先生がクレアへ黒炎を放つが、アルベネロは【全てを呑み込む潮流】によって、相殺する。
「アルベネロ君‼︎」
「ラアン先生の上だ‼︎」
「スパークフィールド‼︎」
アルベネロは悪魔の位置を指し示すと、クレアは指し示された場所へ、魔法【火花散る領域】によって、無数の火花を空中に出現させると、次々と火花が何かに消し去られていく。
「あぢぢぢぢ⁉︎」
「モードチェンジ。ホーミング」
火花が次々と消え去っては、どこから共なく悪魔の声が響いてくる。クレアは火花が消えていく先に魔導銃を構えると引き金を引く。
魔導銃〖ウルスラグナ〗から放たれた弾丸は真っ直ぐに火花が消えていく先へ向かっていき、そのまま命中……
「おっと。危ない危ない。惜しかったねー」
寸前で霧化している悪魔が避けたのか、弾丸はそのまま天井に向かって、突き進んでしまう。
「そうね。ちゃんと最後まで避けるべきだったわね」
「へっ?」
「後ろーーー」
ドォォォン‼︎
「ぎゃあ⁉︎」
「姿を現したわね」
「流石だな」
「ふふ、アルベネロ君が悪魔の位置を教えてくれたおかげよ」
ラアン先生が目を見開いて、悪魔へ叫ぶが、既に遅く、次の瞬間には、軌道を曲げた弾丸が悪魔へ命中し、爆発音が響き渡る。
悪魔は一部分が焦げながら、姿を現すと、怒りの表情へ変わっており、クレアを睨みつける。
「もう怒った。遊びは終わり‼︎」
「子どもと侮っていたのが間違いのようだ」
アルベネロとクレアの連携にラアン先生と悪魔も流石に余裕な態度から、完全な臨戦態勢へ移行する。
「本気になったみたいだが、遅かったんじゃないか?」
「なに?」
「待たせたぜ‼︎ 俺、復活‼︎」
「ここからは私たちも参加させていただきます」
教会内へ響き渡るような声と共に、レオが戦闘に参戦し、すぐ後に拘束が解かれたレーメ先生も参戦する。
「これでこっちが圧倒的に有利だ」
「まさか、これだけの短時間で解除するとは思っていなかった。いやはや、悪魔と契約し、生徒の力量を調べることを疎かにしたのが裏目になっておるな」
レオとレーメ先生も参戦したことで、さらにアルベネロ陣営は有利となり、拘束がすぐに解除されてしまった事実にラアン先生はため息を吐く。
「諦めてください。直に学院長も戻ってこられます。あなたの処遇はその時に決めさせてもらいます」
「これはこれは。まさか、もう勝ったつもりか? 数の有利を覆すのは魔法使いの得意とするところ」
レーメ先生は教師として一緒に働いてきた情で、降伏勧告を出すも、ラアン先生は降伏するつもりは毛頭なく、軽く笑みを浮かべるほどであった。
「さっきの二人は僕の獲物だから。邪魔しないでね」
「ふむ、なら、私はこっちの二人を始末しておこう」
悪魔は先程の戦闘でアルベネロとクレアを目の敵にしており、ラアン先生は特に悪魔へ意見することなく、レオとレーメ先生を標的に定める。
「レオは大丈夫そうだとして、レーメ先生も戦えますか?」
「もちろんです。それに生徒たちが戦っているのに、私だけ休んでいる訳にはいきませんから」
長時間拘束されていたため、疲弊しているであろうレーメ先生に、アルベネロは心配するが、レーメ先生は真剣な表情で頷けば、ラアン先生と向き合う。
「こっちは任せろ‼︎ あと、これ終わったら、なんで眼がそんなにかっこよくなってるから教えろよ‼︎」
「あはは……わかった」
レオは自信満々にラアン先生の相手は任せろと宣言する。相変わらず元気な様子であり、長時間拘束されていたとは思えない。
そして、レオもアルベネロの眼を見ても、警戒することなく、逆に興味津々な様子である。
「クレア、ここは俺が一人で相手をする。レインを頼めるか?」
「……無茶しないでよ」
「ああ。約束する」
「はぁ、はぁ……すみません。クレアさん……」
「謝らなくて良いわよ。レインはずっと魔法を使い続けてるんだから」
アルベネロは悪魔と一人で戦うことを伝えれば、レインのことをクレアに任せれば、クレアも一瞬、躊躇うも頷く。
レインは常に魔法を発動し続けているため、現時点で既に魔力は枯渇寸前となっていた。
そのため、味方五人の中で最も消耗しており、自身の身を守ることも儘ならない状態である。
「君一人で僕に勝てると思ってるの〜〜?」
「もちろんだ。たかが、低級の悪魔ぐらいなら、十分だろう」
「僕を低級……はっはっはっ。それは間違ってるよ。今からそれを分からせてあげるよ‼︎」
アルベネロから低級呼ばわりされた悪魔は少し苛立った表情に変わると、翼を羽ばたかせてはアルベネロへ突っ込んでいく。
「喰らえ‼︎ グラトニー‼︎」
悪魔は片手にまた黒い球体を作り出せば、アルベネロへ向かって投げつける。
『避けるのはだめだな。クレアたちが危険だ。それなら……』
黒い球体は消えるまで全てを吸収し続けてしまうため、アルベネロはほかの四人に被害が出る可能性を考慮し、両手に魔力を纏わせ、始める。
「どんな魔法でもグラトニーの前じゃ、無意味だよ‼︎」
「それは間違いだ。そのグラトニーは闇。それなら、光をぶつければ良い。ライジングサン‼︎」
アルベネロが両手に纏った魔力が白く輝き始め、誰からも目視が出来るようになる。
そして、アルベネロは迫り来る黒い球体を白く輝く右手で受け止めると握り潰す。
「無傷で僕のグラトニーを消すなんて……そんなの嘘だ‼︎」
「底が知れたな」
「黙れ、この人間風情が‼︎ 僕を本気で怒らせたな‼︎」
最も容易くアルベネロに【暴食者】を消し去られてしまい、悪魔は憤慨すると、身体から黒い魔力を噴き出し始め、自身の身体を包み込んでいく。
「何が起きてるの?」
「本来の姿に戻ってるんだろ。さっきまでは手を抜いてたからな」
「さらに強くなるなら、止めなくて良いの?」
「少しでも余力が残っていれば、悪魔は身体のほとんどが消滅しても復活できるんだ。だから、本来の姿で倒す必要があるんだ」
「なるほどね……」
黒い魔力に包まれていく悪魔に、クレアは驚きながら、アルベネロに何が起きているのか確認する。
アルベネロは悪魔の状態を把握しており、本来の姿に戻っていること、本来の姿に戻るまで待つ必要があることの理由を話す。
パキッ パキパキパキパキ
「出てくる。クレア、気をつけろ」
「ええ。分かってるわ」
「はっはっは‼︎ これがヴァンパイア族である本来の姿だ‼︎」
黒い魔力の一部にヒビが入ると、全体にヒビは広がると、地面に崩れ落ち、霧散する。
そして、少年の姿ではあるが、鋭く伸びた犬歯、長く鋭い黒い爪、赤く染まった瞳、より大きくなった蝙蝠の羽を羽ばたかせ、ヴァンパイアらしい姿へ変貌している。
「本気になった僕は無敵だ‼︎」
「御託はいい。さっさと来い。それとも、本来の姿に戻ると威勢だけが強くなるのか?」
「お、おまぇぇえ‼︎ 言わせておけば‼︎」
本来の姿に戻った、悪魔改め、ヴァンパイアはアルベネロの言葉に激昂すると、アルベネロへ飛び掛かろうとしてくる。
『よし、俺に意識が完全に向いた』
アルベネロがヴァンパイアを挑発したのは、わざとであり、クレア達から少しでも距離を取るためである。その目論見は成功し、アルベネロは飛びかかってくるヴァンパイアから逃げるように移動していくのであった。
[場面は変わり、ラアン先生と対峙する、レオとレーメ先生……]
「ほう。あの悪魔め、早々に本来の姿に戻ったようだな」
「よそ見してんじゃねぇ‼︎ クリエイト‼︎」
「それだけ力の差があるという事だ。ヘルファイア」
本来の姿へ戻ったヴァンパイアの姿に戻ったことを、ラアン先生は戦闘中のレオ達から視線を逸らしてまで確認する。
レオは【創作】によって、ラアン先生の真上にいくつもの剣を出現させては一斉に地面へ放つが、全て黒炎によって、灰にされてしまう。
「レオ君、そのまま続けれますか⁉︎」
「もちろん‼︎」
「流石は静寂の異名を持つ魔法使い。話しながら魔法を撃ってくるとは」
レーメ先生はレオの攻撃をラアン先生が防ぐ瞬間を狙って、魔法を放っており、無詠唱だからこその奇襲性があり、ラアン先生もレオの時より防ぐに余裕がない。
「クリエイト‼︎」
「ヘルファイア。何度試しても私にそんな攻撃が通るとでも」
「クリエイト‼︎ クリエイト‼︎ クリエイト‼︎」
「くっ、バカのひとつ覚えか」
レオはラアン先生の頭上に現れる剣の数はどんどん増やしていき、その度にほとんどの剣はラアン先生によって、灰にされてしまうが少しずつ、灰にされなかった剣が地面に刺さっていく。
「レオ君‼︎」
「リメイク‼︎」
レーメ先生がレオの名前を呼んだ瞬間にラアン先生の背後に向かって、氷の球を放つ。
一方、レオはレーメ先生の声が聞こえた瞬間、【再構築】によって、地面に刺さっている剣を鉄に戻すと、氷の玉が進む進行方向上に鉄壁を作り出す。そうすると、背後へ通り過ぎた氷の玉は鉄壁に当たり、ラアン先生の背中へ跳弾する。
「ぐっ‼︎」
「もらったぜ‼︎ リメイク‼︎」
「レオ君、待ってください‼︎」
「グラトニー‼︎」
跳弾によって、怯んだラアン先生の隙を突くようにレオは鉄壁を液体状に変化させ、ラアン先生を包み込もうとする。
しかし、ラアン先生が発動した禁術【暴食者】によって、鉄の大部分は黒い球体に吸収され、そのまま黒い球体はレオへ迫っていく。
「あ、ぶねぇぇ‼︎ あんたも使えんのかよ‼︎」
「私はあの悪魔と契約したんだ。使えても不思議はあるまい」
「レオ君‼︎ 大丈夫ですか⁉︎」
「ちゃんと避けれてるぜ‼︎」
レオは間一髪で地面を転がりながら、黒い球体を避ければ、慌ててレーメ先生がレオの元へ駆け寄りながら、ラアン先生へ火球を放ち、牽制する。
ラアン先生は黒い球体を手元に戻して、レーメ先生からの攻撃を防ぐ。
「よく避けたと褒めてやろう。だが、これで私にはもう君たちの攻撃は届かない」
「言われて諦められるかよ‼︎ アル達も頑張ってんだ‼︎」
「はっ。威勢だけではどうにもならんことを教えてやろう」
「やれるもんならな‼︎ ジェネレイト‼︎」
威勢よく立ち上がるレオへ、ラアン先生は黒い球体を放てば、レオは【生成】によって、鉄の塊を作り出し、黒い球体を一瞬、止めると、レーメ先生を抱き寄せて、回避する。
「あんなこと言ったは良いけど、このままだとジリ貧だな……」
「あの黒い球体を私たちが消すことは不可能です。なら、狙うのはラアン先生ですが……」
「作戦を考える暇は与えるとでも? フレアフィールド」
黒い球体を回避してすると、レオとレーメ先生は打開策を考える。しかし、ラアン先生は時間を与えないと言わんばかりに【火焔領域】によって、自分自身を中心にして、レオとレーメ先生を炎で囲み、逃げ場を無くす。
「逃げ場がねぇぜ……」
「健闘したと褒めておこう。だが、これでもう、時間の問題だ」
火に囲まれてしまえば、レオたちご黒い球体を避ける場所も極端に減ってしまい、すぐに追い詰められてしまう。
「レオ君、あとはアルベネロ君に任せることになりそうですね……」
「……ちくしょう。向こうの応援にいけないのかよ」
「どうやら諦めたようだな。最後は二人仲良く、消し去ってやろう」
レオとレーメ先生は避けることをやめて、立ち止まる。二人の行動にラアン先生は諦めたと思えば、【暴食者】によって、生み出された黒い球体を手元へ戻せば、二人にとどめを刺そうと狙いをつける。
「トドメだ。グラトニー」
「レオ‼︎ レーメ先生‼︎」
二人の危機に気づいた、アルベネロは名前を叫ぶも【火焔領域】によって、逃れることができない、二人へラアン先生は黒い球体を放つ。
レオとレーメ先生は迫り来る黒い球体を前にして、レーメ先生を守るようにレオが前に出る。
そして、黒い球体がレオの目前まで迫った瞬間……
「クリエーションワールド‼︎」
レオが魔法を発動した瞬間、黒い球はレオの目前で何かに阻まれるように動かなくなってしまう。
「クリエーションフィールドだと⁉︎ バカな。ありえない‼︎」
「俺だけじゃ、無理だぜ‼︎ でも、レーメが居るから、この魔法が使えるんだぜ‼︎」
レオの発動した魔法に、ラアン先生は狼狽えれば、黒い球体を手元に戻す。
ラアン先生の狼狽ように、レオは得意げに話せば、右手の甲に現れている六芒星の紋章を見せつける。
「一気に倒しますよ‼︎」
「おう‼︎ インフィニティークリエイト‼︎」
レーメ先生の言葉に、レオは頷けば、魔法【果てしない創作】を発動させる。
そうすれば、先程までとは比べ物にならない量の剣や槍、果ては鉄板に柱がラアン先生の真上に現れてはそのまま下に落下するのではなく、全てがラアン先生に向かって、落下していく。
「グラトニー‼︎」
「そんな玉で全部、防げねぇぜ‼︎」
「がぁぁ⁉︎」
ラアン先生は必死に【暴食者】で対抗するが、ラアン先生の頭上を埋め尽くすほどの数には間に合わず、幾つもの創造物がラアン先生を切り裂き、そのまま地面へ刺さる。
「グラトニー‼︎」
「二つ出しやがった⁉︎」
「私がこの程度で終わると思ったか‼︎」
必死の形相でラアン先生は黒い球体をもう一つ、作り出すと、次々と創造物を吸収していき、ラアン先生を攻撃することができなくなる。
「はっはっは。この魔法も長くは持たんはずだ。これを防ぎ切れば、今度こそ、私の……‼︎」
「それはどうでしょう。上ばかり見てると、足元を掬われますよ?」
「まさーーー」
耐え切れると踏んだラアン先生は勝ち誇るように宣言するが、レーメ先生の言葉に地面に突き刺さる剣や槍へ視線を向けた瞬間……
「ぐあぁぁぁあ‼︎」
「今です‼︎」
「オペレート‼︎」
頭上からクレアの【爆ぜる火球】よりも巨大な火球がラアン先生に直撃し、絶叫が響く中、レオは魔法【操作】によって、地面に突き刺さる剣や槍を動かし、激痛でまともに動けないラアン先生を四方八方から突き刺す。
「ガハッ‼︎」
「勝った、ぜ……」
「レオ君‼︎」
ラアン先生は口から血を吐き、身体中に剣や槍が刺さった状態で膝をつき、そのまま動かなくなる。
レオは動かなくなったラアン先生を見ては、勝利宣言をするも、力尽きたように前へ倒れそうになれば、レーメ先生に支えられる。
「クリエーションワールド……やっぱりきついぜ……」
「ふふ、おつかれさまです。心苦しいですが、あとはアルベネロ君たちに任せましょう」
「ちくしょう。魔力、早く回復してくれ〜〜」
レオを支えたレーメ先生も魔力が枯渇しているため、地面に座り込む。
レオが発動した魔法【創造世界】は発動者の創造魔法を強化する効果があり、魔力が続く限り、平常時とは比べ物にならない力を発揮することができる。そのため、先ほどのような無数に武器や物を作り出すことができ、自在に操作することも可能であった。
しかし、強力な反面、【創造世界】を維持するためには膨大な魔力を消費し続ける必要があり、一分で特異魔法一発分に相当する魔力を消費するため、レオはレーメ先生の魔力をとある方法で繋げ、魔力を補っていた。
「レオもレーメ先生も無事⁉︎」
「怪我はないぜ。ただ、魔力全部使っちまった」
「クレアさんとレインさんは大丈夫ですか?」
「私は平気です。ただ、レインは魔力が……」
「学院長に連絡するための魔力を残してはいますが、戦うのは難しいです」
レオとレーメ先生の元へ、クレアとレインが駆け寄ってはレオたちの心配をする。
敵を圧倒しているように見えて、五人の内、三人が戦闘不能になっており、残るはアルベネロとクレアだけであり、追い込まれていた。
「レオとレーメ先生が動けるようになったら、アルベネロ君を助けに行くわ」
「それなら、早く回復させるぜ‼︎ うぉぉぉ‼︎ 回復しろぉぉ‼︎」
「……早くなるなら何でも良いわ」
気合いを入れるように叫びながら、魔力を回復させようとしているレオに、いつもなら何かしらツッコむ、クレアであるが、今回ばかりは早くアルベネロを助けに行きたい一心で邪魔はしない。
『アルベネロ君……無理だけはしないで』
少し離れた場所でヴァンパイアと戦っているアルベネロのことをクレアは信じながらも、不安であり、早く助けに行きたいと焦ってしまう心を必死に落ち着けるのであった。
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