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~黒幕の正体~

 アルベネロの号令と共に、特科クラスは二手に分かれて、行動を開始する。監禁されている生徒達を解放するガルフ達のチームは負傷者が出てしまいながらも、教室内にいる襲撃者を倒し、生徒達を次々に解放していく。

 そして、訓練棟へ向かったアルベネロ達は道中の敵を物ともせず、結界を突破し、中への侵入を成功させるのであった。

 

 

 

「レイン、どうだ?」

「一階に五人、階段に二人、二階に三人、いえ、五人……」

「流石に多いわね。全員が黒い指輪をつけてるとしたら、かなり厄介よ」

「夜のうちに侵入されていたとしても、多すぎですよ。これは」

 

 

 

 レインが訓練棟内の襲撃者を確認していけば、十人以上が訓練棟内におり、アルベネロ達の表情は厳しいものとなる。

 

 

 

「はぁ、はぁ……今のところ、十二人です。ただ、教室の中は扉が開いていないと見えないですね」

「ここの教室は広さのために、別空間と繋げてあるからな」

「ただ……私たちが昨日、模擬戦をした教室の前に二人立っているので、怪しいですね」

 

 

 

 レインは訓練棟内を調べ終わると、息を整えながら、アルベネロ達へ訓練棟内の情報を伝える。

 

 

「確実に倒して行くしかないな。クレア、レインのこと、任せていいか?」

「もちろんよ。そういうことだから、レインは休んでおきなさい。かなり魔力を使ったでしょ?」

「あはは……お言葉に甘えます」

 

 

 

 クレアの言葉にレインは申し訳なさそうにしながら、行動を開始してから発動し続けている【千里眼(クレヤボヤンス)】を終える。

 

 

 

「ここは私とアリサさんの出番ですね〜〜」

「階段に誘導は任せてください」

 

 

 レインからの情報より、事前に話し合った作戦の中から、次の作戦を決める。




「アリサ、魔力は大丈夫?」

「まだまだ大丈夫ですよ。サキさんの方こそ、ビーストソウルを連続で使用して、消耗とか大丈夫ですか?」

「まだ平気。使い続けなかったら、そこまで疲れない」




 サキは連続で襲撃者と戦うことになるアリサを心配するが、逆にアリサに心配されてしまう。互いに問題ないことを伝え合うと、リンカとアリサが先行して前に出ては、近くにある柱へ身を(ひそ)める。

 

 

 

「リンカさん、仕掛けますよ」

「いつでも〜〜」

「イリュージョンミスト」



 

 アリサは襲撃者の姿を確認すれば、リンカに声を掛けた後、【幻惑の霧(イリュージョンミスト)】を発動させると、階段付近に霧がうっすらと発生し始める。

 

 

 

「なんだ? 霧か?」

「気をつけろ。さっき、結界が破壊された。侵入してきたやつらの仕業だ」

「この霧に(じょう)じて、奇襲か上へ抜けて行くかもしれん。上には監禁してるあいつらも居る。階段近くに固まって、道を塞げ」

 

 

 

 まとめ役であろう男が近くにいる仲間を集めては、道を塞ぐように階段の登り口に陣取り、深くなっていく霧の中で周囲を警戒し始める。

 

 

 

「幻影で誘導する手間が省けました」

「それでは、行ってきます〜〜」

「思いっきりやっちゃってください‼︎」

 

 

 

 アリスは襲撃者たちの位置を確認すれば、リンカを送り出す。

 リンカは慎重に階段の手前まで移動すると翼を広げて、攻撃の構えを取る。襲撃者は霧によって、視界を奪われているため、目の前に立っている、リンカに気づいていない。

 

 


「す〜〜……」

「んっ、そこに誰か居るのか?」

「ドラゴニックロア‼︎」

「……⁉︎」



 リンカの存在を襲撃者の一人が気付くも、時すでに遅く、魔法【竜の咆哮(ドラゴニックロア)】によって、指向性を持った轟音が放たれる。

 

 


 ガアァァァア‼︎

 

 

 

 階段へ放たれる轟音、そして、重圧によって、階段に集まっていた襲撃者七名が一瞬で気を失い、その場で倒れる。

 

 


「ケホッ、ケホッ……倒せましたか〜〜?」

「問題ないです。全員、仲良く失神して、泡を吹いてます」

「なら、皆さんを呼びましょう〜〜」

 

 

 

 

 リンカの声を合図にアリサは霧の中で倒れる襲撃者たちを確認し、問題ないと判断すれば、後方で待機しているアルベネロ達を呼ぶ。

 襲撃者たちを倒すためにリンカの放った魔法【竜の咆哮(ドラゴニックロア)】は咆哮の衝撃とともに精神的圧力をかける事で相手を失神させることができる。なお、心構えをしておくか、(きも)()わっていると耐えられてしまう。

 

 



「大丈夫? 二人とも怪我は平気?」

「大丈夫ですよ〜〜」

「私は魔法を発動しただけですから」

 

 

 サキはリンカとアリサの元へ駆け寄ると身体を触り始めて、怪我がないか確認する。

 サキの反応に二人は少し照れてしまいながらも問題ないことを伝えれば、サキも頷いて身体を触るのを止める。

 

 


「二人ともお疲れさまだ。サキと一階を頼めるか?」

「わかりました〜〜」

「作戦通りですね。誰も通さないですよ」

「頼んだ」

 

 

 

 アルベネロは一階の掃討を終えた、リンカとアリサを労えば、サキと共に一階の守りを任せる。



「サキも一階の守り、頼む」

「了解。二人は死守する」

「よろしく頼む。ただ、負けると思ったら、二人を連れて、逃げてくれよ?」

「……了解」

 

 

 

 サキは少しだけ目を逸らしながらも頷く。

 仲間意識の強い獣人族だからこそ、二階へ向かうために別行動となるアルベネロ達を置いて、逃げることを躊躇(ちゅうちょ)してしまう。

 

 

 

「俺たちも無茶はしないから、安心してくれ」

「そうよ。あのバカとレーメ先生を助けたら、その後は逃げる前提で黒幕の顔を拝みに行くつもりよ」

「時間稼ぎぐらいで逃げますよ」

「……わかった。三人とも、死なないで」

「「「もちろん(です)」」」




 アルベネロ、クレア、レインの言葉を受けて、渋々ながらも頷くと三人へ声援を送るのであった。

 そして、アルベネロ達はサキ達に見送られる形で階段を上り出す。

 

 

 

「それで? まさか、本当に逃げるつもりじゃないわよね?」

「ああ。ここで敵を止めないと、手遅れになる気がする」

「それなら、急ぐ必要がありますね」

「余力は残しておくのよ?」

「もちろんです」

 

 

 

 アルベネロは真剣な表情でクレアとレインへ考えを伝える。

 アルベネロの言葉を聞き、レインは【千里眼(クレヤボヤンス)】を再度、発動させて、二階の様子を確認する。

 

 


「完全に階段を狙ってます。人数は三人。教室前にいる二人は動かずです」

「それなら、ここは俺に任せろ」

「何か策があるのね?」

「どんな策ですか?」

「いや、特にない」

「「へっ?」」

 

 

 

 リンカの放った【竜の咆哮(ドラゴニックロア)】が二階の廊下に居る襲撃者にハッキリと聞こえていたようで、レインの【千里眼(クレヤボヤンス)】によって、襲撃者が階段を狙っていることがわかる。

 突破方法をクレアとレインは考え始めるが、アルベネロが無策で一人、階段を上り終えたため、二人は呆気(あっけ)に取られてしまう。

 

 


「来たぞ‼︎ 侵入者だ‼︎」

「息を合わせろ‼︎」

「おう‼︎」

「「「デスウィンド‼︎」」」


 

 

 階段を上ってきたアルベネロに向かって、三人から同時に【滅びの風(デスウィンド)】が放たれ、黒い風がまるで壁のように迫ってくる。

 

 

  

「全ての時よ、止まれ。コキュートス‼︎」

「「「ッツ⁉︎」」」



 アルベネロは迫り来る黒い風に動じることなく魔方陣(まほうじん)を三つ作り出し、全てを重ねれば、特異魔法【零へと誘う息吹(コキュートス)】を放つ。

 魔方陣(まほうじん)から白い息吹が放たれては、黒い風を一瞬で呑み込み、そのまま廊下の大部分を凍らせながら、襲撃者に迫っていく。

 

 

 

「に、逃げろ⁉︎」

「無理だ‼︎ 廊下だぞ⁉︎」

「ど、どうにかしなーーー」

 

 

 

 襲撃者たちは迫り来る白い息吹から逃げようとするが、廊下のために壁となりそうなものもなく、最後の一人が言い終わる前に、白い息吹は襲撃者を呑み込み、氷漬けにする。

 

 

 

「よし、これで問題なし」

「問題しかないわよ⁉︎ こんなところで特異魔法なんて使って‼︎ 魔力は大丈夫なの⁉︎」

「相手の意表はつけたと思いますが、流石に特異魔法は……」

 

 

 

 無事に襲撃者の三名を倒し終わると、アルベネロは満足気な表情をするが、クレアとレインは駆け寄ってくれば、叱られてしまう。

 

 

 

「だ、大丈夫だ。すぐに回復するから」

「なんで特異魔法で使った魔力がすぐに回復できるのよ……」

「本当にアルベネロさんは規格外です」

 

 

 

 アルベネロは慌てながら二人に弁解すると、今度は呆れられるようにクレアからはため息を吐かれてしまい、レインからは珍妙(ちんみょう)な物を見るかのような眼差しを向けられてしまうのであった。

 

 

 

「全くもう……それで、後の二人はどこかしら?」

「えーと……何故か廊下の奥で震えてますね」

「……まあ、あんなの見たら、怖く感じるわよね。とりあえず、私が倒しておくわ。ヘルファイア」

「「ぎゃぁあ⁉︎」」

  

 

 クレアはまだ不満そうにしながらも残りの襲撃者を探すも、既に戦意喪失状態で廊下の奥に隠れていた。クレアは廊下の奥で震えている襲撃者を確認すれば、容赦なく【黄昏の炎(ヘルファイア)】で燃やす。残酷に思えるかもしれないがいつ戦意を取り戻すかわからない敵を放置は出来ないため、クレアの攻撃は当然の行動である。

 

  


「さっ、これで二階は掃討完了。サキたちのおかげでかなり温存できたわね」

「はい。攻撃魔法を使わずに済んだので余裕があります」

「敵の増援が来る前に、レオとレーメ先生を助ける。二人とも、準備はいいか?」

「いつでも良いわよ」

「私も大丈夫です」

「よし。行こう」




 二階に居る襲撃者たちを倒した後、アルベネロは昨日の模擬戦で使った教室の扉をゆっくりと開ければ、教室内を確認する。

 

 

 

『中央も見えづらいが、奥はさらに見えないな……』

 

 

 

 教室内は柱や調度品によって、視界が阻まれており、アルベネロは教室の中央や奥側を確認することを断念すれば、扉近くを確認し、振り返る。

 

 


「レイン、教室の中は見れそうか?」

「はい。問題ないです。ただ……おかしいです」

「何かあったの?」

「逆です。教室に変わったところがどこにもないんです」

 

 

 

 教室の扉が開いたことで、レインは【千里眼(クレヤボヤンス)】で教室内を探索することが可能になったが、教室内をくまなく調べても柱に調度品と変わったところは見つからなかった。

 

 

 

「ここじゃなくて、他の場所に居るのかしら?」

「その可能性は低いと思います。この部屋を囮にするとして、二人も見張りを置いておくのは考えにくいです」

「なら、俺たちには見えていないのかもしれないな」

「それって……ガレンの時と同じってことね」

 

 

 

 アルベネロは予想通りであるか確認するため、扉を開けたまま教室内へ入れば、辺りを見渡す。クレアとレインもアルベネロの後へついて行き、辺りを見渡すも目視だけでは特に変わったところは見当たらない。

 


 

「看破を使っても、何も見つからないですね……」

「私も柱を調べてるけど、特に違和感はないわ」

「……」

「えーと……? 何か顔についてますか?」

 

 

 

 レインの【看破(ディテクト)】 ですら、何も見つからず、クレアとレインはアルベネロに視線を向けるが、当のアルベネロは何かを考えながら、レインを見つめていた。

 突然、アルベネロから見つめられていることに気づいたレインは少し戸惑いながらも見つめ返す。

 

 

 

「本当は知られたくなかったんだが、緊急事態だ」

「それって……いいの?」

「ああ。言いふらしたりはしないだろうからな」

「ど、どういうことですか?」


 

 

 アルベネロの言葉にクレアは察すると、少し表情を曇らせてはアルベネロと同様にレインを見つめ、二人から見られている状況にレインは少し緊張する。

 

 

 

「アルベネロ君を見てたら、わかるわ」 

「アルベネロさんを?」

 

 

 

 レインはクレアに言われた通り、アルベネロを見つめており、アルベネロはクレアに頷いたあと、目を閉じる。

 そして、再び目を開けたときには、眼の瞳孔周りに虹色の波が現れており、時間と共に色は変化し始める。

 

 

 

 

「……見つけた。壁に転移門がある」

「……綺麗な眼ですね」

「この眼を見て、最初にそう言ったのはレインが初めてだな」

「ふふ、クレアさんは言わなかったんですね」

「ちょ、ちょっと言いそびれただけよ‼︎ 私だって、すごく綺麗な眼って思ってるからね⁉︎」

「あはは……ありがとう。二人とも」

 

 

 

 警戒することなく受け入れてくれたクレアとレインへアルベネロは感謝すると、結界に隠されている場所まで移動する。

 

 

 

「ここの先に居るのは確実だな。レイン、サキたちの方は大丈夫か?」

「はい。まだ敵の増援も来てないみたいです」

「よし。レイン、転移門の影響で異世界に飛ばされたら、学院を見れなくなるかもしれない。学院長の居場所がわかったら、すぐに戻って、連絡を頼む」

「わ、わかりました」

 

 

 

 転移門の前で三人は泊まれば、アルベネロがサキたちの状況を確認すれば、作戦の最終確認を行う。

 



「クレアも危険を感じたら、転移門でーーー」

「あら、アルベネロ君を置いて、逃げると思う?」

「……思えないな」

「ふふ、その通りよ。最後まで付き合うから、よろしくね」

「……わかった。クレアを守るためにも必ず勝たないとな」

 

 

 

 アルベネロはクレアにも逃げるように伝えるつもりだったが、クレアは話を遮って、アルベネロと最後まで戦う意思を見せる。

 クレアの言葉にアルベネロは呆れてしまいながらも、笑みを浮かべては勝利を約束するのであった。

 

 

 

「二人とも、準備はいいか?」

「「ええ(はい)」」

「よし、俺が先に行く。そのまま後ろをついて来てくれ」

 

 

 

 アルベネロは頷くと手で壁に触れる。そうすれば、手はそのまま壁に沈み込んでいき、そのままアルベネロは前へ歩き出すと壁に呑み込まれてしまう。クレアとサキもアルベネロに続いて、壁の中へ呑み込まれていき、別の空間へ移動する。

 

 

 

「ほう、ここまで来るか。さすがはあの女が推薦したことはある」

「みんな、気をつけろ‼︎ こいつは敵だぜ‼︎」

「他にも敵が居ます‼︎ 気をつけてください‼︎」

 

 

 

 転移門を潜った先は教会のような場所であり、中央には巨大な魔方陣(まほうじん)が描かれていた。

 そして、魔方陣(まほうじん)の中央には以前に決闘の審判を務めたラアン先生が立っており、すぐ側には光の縄で拘束されているレオとレーメ先生の姿があった。

 

 

 

「ラアン先生、あなたが黒幕ですか?」

「その通りだ。アルベネロ君」

「どうしてこんなバカなことをしたんですか⁉︎」

「バカとは酷い。クレア君、今回のことは君たち、生徒のためだというのに」

「意味がわからないわ。学院を襲うことの何が私たちのためって言うのよ⁉︎」

 

 

 

 アルベネロの問いにラアン先生は隠すことなく、自身が事件の黒幕であることを認める。

 クレアは今回の事件を起こした動機をラアン先生に問いただせば、黒幕であることを話した時と同様に隠さずに動機を答えるも、その動機はクレアが理解することが出来ない内容であった。

 

 

 

「クレア君のような優秀な生徒にはわからないだろう」

「だから、どういう意味よ‼︎」

「なるほど……そういうことですか」

「レイン?」

「こう言うことですね……クレアさんのように優秀な生徒では、成績が芳しくない生徒の気持ちなんてわからないだろう、と」

 

 

 

 ラアン先生はまるでクレアを見下すように話すため、クレアはラアン先生を(にら)んでいると、レインが理解したようにラアン先生の言わんとしていることを答える。

 

 

 

「ほう、よくわかったじゃないか。なら、私の目的もわかるかな?」

「ここの学院は成績で授業の内容に差があります。それの撤廃と言うことですか?」

「そのとおりだ。いやぁ、素晴らしい。レイン君のことは頭が切れると思っていたが、まさか、ここまでとは」

 

 

 

 自身の目的をレインが言い当てたことに対して、ラアン先生は嬉しそうにすれば、ゆっくりとレインへ拍手を送るが、レインは隠すことなく不快な表情をし、冷たい視線を返す。

 

 

 

「ここの学院はひどいものだ。全く平等ではない。特科クラスが出来る前でも、優秀な者を優遇していたが、そこまで大きな優劣ではなかった。だが、あの女が特科クラスなんて物を作ったばかりに授業や待遇にハッキリと優劣が出来てしまった。それが不平等と言わずに何という‼︎」

「それは……」

「だからこそ、私は立ち上がったのさ。この学院に居る生徒たち全員が平等であるようにね」

 

 

 

 ラアン先生は自身の目的を堂々と三人へ話せば、クレアとレインはたじろいでしまう。

 しかし、アルベネロは動じることなく、ラアン先生の演説を聴き終えると、一歩前へ出る。

 

 

 

「それが、自分の行動を正当化するための理由として、本当の理由はなんだ?」

「……どういう意味かね? さっき話したことが私の行動理由だとも」


 

 

 アルベネロはラアン先生が話した理由が今回の事件を起こした動機ではないと察し、さらに問いただすもラアン先生は話す様子はなく、はぐらかす。

 

 

 

「なら、学院を改革するために、そこの悪魔(・・)と契約したのか?」

「なっ⁉︎」

「神眼から隠し通せると思っていたのか?」

「神眼だと⁉︎ そんな空想上の存在が実在するわけ……まさか、本当にその眼が⁉︎」

 

 

 

 アルベネロはゆっくりと右手の人差し指でラアン先生の背後を指差す。

 悪魔という言葉にラアン先生は初めて動揺し、さらに神眼の言葉を聞けば、動揺はさらに酷くなる。

 

 

 

「もう一度、聞く。生徒たちのために学院を改革するため、悪魔と契約したのか?」

「くっ……」

「もう無理なんじゃない? 神眼じゃ、動揺した時点で嘘かどうかバレちゃうし」

「あれが、悪魔……」


 

 

 アルベネロはさらに一歩、前は踏み出しては問いただすとラアン先生は唇を噛んで、憎そうにアルベネロを睨めば、ラアン先生の後ろから、蝙蝠(こうもり)の羽を生やした黒髪の少年が姿を現す。

 クレアは初めて見る悪魔に〖ウルスラグナ〗を向けては、いつでも撃てるようにしている。

 

 

 

「時間も限りがあるんだし、さっさと倒しちゃいなよ。懐柔なんて無理なんだから」

「チッ……仕方ない。あの女へのいい切り札になるかと思ったが、とんだ化け物を飼っていたようだ」

「ほらほら、出ておいで。僕のペットたち〜〜」

「アルベネロさん、クレアさん、後ろから三人……いえ、魔物が三体、です」

 

 

 

 悪魔の言葉にラアン先生は舌打ちをすれば、悪魔の声と共にアルベネロ達の背後からヘドロのように流動した身体を持っている魔物〖マッドマン〗が三体、現れると、アルベネロ達へ近づいていく。

 

 


「私が三体とも凍らせます。クレアさんはとどめをお願いします」

「了解よ」

「アイスコフィン‼︎」

「すごいすごい。全く動じてないね。これじゃあ、すぐに倒されちゃうかも〜〜」

 


 

 クレアとレインは迫り来るマッドマン相手に動じることなく、レインが声を掛ければ、すぐに【氷の棺(アイスコフィン)】でマッドマンを三体とも凍らせる。その様子に悪魔は嬉しそうに笑いながら二人へ拍手をする。

 

 

 

『全く焦らない? どうしてだ?』

 

 

 

 ラアン先生も悪魔もマッドマンが倒されようとしているのに焦る様子は一切なく、悪魔に至っては倒されることを喜んでいるようにすら見える。

 

 

 

『まさか……‼︎』

 

 

 

 アルベネロはラアン先生と悪魔に余裕がある理由に辿り着くとマッドマンへ神眼を向ける。

 

 


「クレア、倒すな‼︎」

「ふぇ⁉︎ ど、どうしてよ⁉︎ 今が絶好のチャンスでしょ⁉︎」

「その三体……ガレン達だ。おそらく、黒い指輪の代償だ」

「そ、そんな……」

「まさか、そんなことが……」

 

 

 

 マッドマンへクレアはトドメの魔法を発動しようとする寸前、アルベネロの静止によって、間一髪、マッドマンは氷漬けにされたままでトドメは刺されなかった。

 そして、アルベネロはクレアとレインへ、マッドマンの正体を伝えれば、二人して、信じられないといった表情になる。

 

 

 

「あーあ。バレちゃった。本当は倒れされちゃった後に、バラして絶望させるつもりだったのに〜〜」

「あそこまで強力な呪具が精神汚染だけとは考えにくいからな」

「まあいい。奴らの仕事はすでに終わっている。ここは私が相手をしよう。そして、三人を倒した後、この魔方陣(まほうじん)を起動させるとしよう」




 悪魔が残念そうにするが、ラアン先生はいつの間にか落ち着き、アルベネロ達を相手するために一歩前へ出る。

 

 

 

 

「本当の目的はなんだ?」

「ふっ、気が変わった。特別に教えてやろう。私はここの学院をあの女から奪う。そのために、この魔方陣(まほうじん)で生徒全員を洗脳し、あの女を追放するのさ。そして、私がこの学院をより良い方向へ導くのさ」

「……あの女、あの女と何度も言うから、まさかとは思ったが、マーリンへの逆恨みか」

「あんな若輩者より、私の方が学院長に相応しい。それなのに、ここの教師陣はマーリンという名前だけで学院長であることを疑わん。全く、愚かしい」





 真の目的がマナを学院から追放し、新たな学院長へなることであるとラアン先生は打ち明ける。

 完全に私欲を満たすためだけの目的に、アルベネロは怒りを通り越して、哀れに感じてしまう。

 

 

 

「話を聞いて、確信した。あんたは救いようがないクズだ」

(なん)とでも言うがいい。ただ、君たち三人だけで勝てるとも思っていないだろう?」

「……」

 

 

 

 曲がりなりにも学院の教師を務めるラアン先生と魔物中でも最高位に位置する悪魔が敵の場合、アルベネロ達が劣勢であることは否めず、アルベネロはチラリと後ろにいるクレアとレインへ視線を向ける。

 

 

 

『二人とも、聞こえるか?』

『んっ、聞こえてるわ。どうするの?』

『聞こえてます。どうしますか?』

『俺が二人の相手をする。その間にレオとレーメ先生の救出を頼む』

『アルベネロ君でも、二人を同時に相手するのは無茶よ⁉︎』

『そうです‼︎ ここはクレアさんも一緒に‼︎』


 

 

 アルベネロは【念話(テレパシー)】でクレアとレインへ指示を出すも、無茶な作戦であるとクレアとレインから指摘されてしまう。

 

 

 

『向こうの力量がわからない状況でーーー』

『全くもう……そんな心配は不要よ‼︎ 一人でやろうしないで頼りなさい‼︎』

『お、おぅ……』

 

 

 

 クレアは怒りをこめてクレアは心の中で叫べば、アルベネロは戸惑いながら頷く。

 

 

 

『レイン、レオ達のことは任せるわよ』

『任せてください。二人の方こそ、気をつけてくださいね』

 

 

 

 話は決まったと言わんばかりにクレアはレインへレオ達の救出を任せる。アルベネロは止めることはせずに【念話(テレパシー)】を止めれば、ため息を吐く。

 

 

 

『また、悪い癖が出てたな……マナにも言われたばかりなのにな』

 

 

 

 アルベネロは、クレアかレインと一緒に闘うことを考えていなかった自分自身に対して、苦笑いを浮かべると、入学手続き時にマナから言われた言葉を思い出す。

 

 

 

「アルベネロ君。ちゃんと、約束は守ってくれるでしょ?」

「ああ。必ずクレアのことは守る」

「ふっ、何も知らない子どもが大人に盾突(たてつ)くとどうなるか。身の程を知るがいい」

「神眼持ちの眷属なんて、かなり良さそう。死なない程度に心を折ってあげるよ」

 

 

 

 

 クレアはアルベネロの隣に立つと、今から命を賭けた勝負が始まると言うのにニコッと嬉しそうに笑顔をアルベネロへ向ける。

 アルベネロはクレアの笑顔を見ては、口元を緩ませると笑顔で頷き、守ると約束する。

 ラアン先生と悪魔は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)であり、自分たちが負けることを考えてもいない様子である。

 

 

 

「まずはレオ達から引き剥がす」

「わかったわ」

「ふっ、精々(せいぜい)足掻(あが)いてみせることだ」

「簡単に倒されたら面白くないからよろしくね〜〜」

 

 

 転移門を抜けた先の教会内、〖アルベネロ&クレア〗対〖ラアン&悪魔〗の命を賭けた勝負の火蓋が遂に、落とされるのであった。

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