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~動き始める若人たち~

 アルベネロがクレアを危機から救った日の夜、二人はベッドの上で短くも甘い時間を過ごし、クレアは自分の想いを行動と共にアルベネロへ伝える。

 そして、次の日、アルベネロ達が予想した通りに黒いローブを(まと)った集団が学院に現れ、次々と生徒たちが居る教室へ侵入すると、生徒を監禁する。その中で、特科クラスだけはクレアの気転によって、襲撃者を返り討ちにし、混乱するクラスメイトへアルベネロ達は状況の説明を行うのであった。

 

 

 

 

「以上が今の状況だ。先生たちも職員室で倒れてる状況だ」

「た、助けが来るのを待った方がいいんじゃ⁉︎」

「無理ね。ここの先生方より優れた魔法使いなんて、早々、居ないわ」

「その通りです。学院長が今日にも戻ってくるのがわかっていて、のんびり動くとは思えません」

 

 

 

 男子生徒の一人が助けを待つことを提案するも、クレアとレインが瞬時に却下する。

 

 

 

「そもそも、そいつらの狙いはなんなの⁉︎」

「それがわかれば苦労しないわ。でも、この学院を狙うってことは身代金目的より、魔法使いとしての能力狙いかもしれないわ」

「何をしてくるかわからないが、これ以上、後手に回るわけにもいかないのが現状だ」

 

 

 

 女子生徒の一人は襲撃者の狙いが分からずに少し錯乱し、周りの生徒が(なだ)めている。

 アルベネロとクレアも襲撃者の目的が分からず、対策を考えることに苦慮(くりょ)していた。

 

 

 

「助けを待つ選択肢がないなら、やることは決まってんじゃねぇか?」

「確かにそうだが、話を聞く限り、上級魔法を何度も使えるようだ。それでは勝つことは困難だ」

「なら、使われる前に倒しちまえばいい。そこのおっさんが魔法を使うまでの速度はかなりおそかった。他のも同じぐらいの速さなら、問題ねぇ」

「き、気を逸らすぐらいなら、すぐできると思う」

 

 

 

 ガルフ、ドットル、バッシは襲撃者を倒すための作戦を練り始める。その様子に他の生徒たちも待つのではなく、戦うことを考え始める。

 

 

 

「ガルフ、みんなをまとめて、教室に監禁されてる人たちを助けてくれるかしら?」

「構わねぇが……」

 

   

 クレアはガルフに他の生徒達を(まと)めて、監禁されている生徒を救出するようにお願いすれば、ガルフは承諾(しょうだく)するも、()に落ちない様子でクレアを見る。

 


 

「そっちは別行動か?」

「私、アルベネロ君、レインの三人で訓練棟へ向かうわ。そこにあのバカとレーメ先生が居るはずだから。それに、黒幕もそこに居るかもしれないしね」

「おいおい。たったの三人じゃ、さすがに無理だろ」

 

 

 クレアの言葉を聞き、ガルフは別行動をするのかクレア達は確認すれば、あまりにも少人数で行動しようとしていることに呆れてしまう。

 

 

「私たちも同伴。これで六人」

「それでも少ねぇ……が、こっちもこれ以上減らすわけにもいかねぇしな」

「話は決まり。リンカ、アリサ、巻き込まれて」

「勝手に決めたのかよ⁉︎」

 

 

 

 サキがアルベネロたちへ同伴すると宣言すると、ガルフはそれでも少ないと感じるが解放チームの人数を減らしすぎる訳にもいかないため、妥協する。

 

 

 

「サキちゃんが決めたなら、私は良いよ〜〜」

「私だけ取り残されても嫌ですし、役に立たせてもらいます」

「ありがとう。お礼」


 

 

 サキの独断に対してもリンカとアリサは嫌な顔一つせずに受け入れてくれる。二人の様子にサキは感動すると、二人をハグする。

 

 

 

「く、苦しいですから⁉︎」

「さ、流石にこれは恥ずかしぃぃ〜〜……//」

「思わず」

 

 

 アリサとリンカの声にサキは正気を取り戻したのか、ハグを止めれば、アルベネロ達の元へ駆け寄る。

 

 

「助太刀する。よろしく」

「あはは……ガルフ達の方がまだ安全と思うが、いいのか?」

「問題なし」

「サキちゃんと一緒なら、どこでも〜〜」

「覚悟は出来てます」

「ふふ、頼もしい限りじゃない」

 

 

 

 サキの提案により、訓練棟へ向かうメンバーはアルベネロ達に加えて、サキ、アリサ、リンカを合わせた六人となった。

 

 

 

「レイン。外に連絡は出来るか?」

「それは問題ないようです。街の人たちに助けを求めますか?」

「いや、街にいる人たちが学院に来る方が危険だろう」

「わかりました。朝に話した通り、学院長の居場所が分かり次第、テレパシーで助けを……」

「ああ、頼んだ」

 

 

 アルベネロは外との連絡が可能であることをレインに確認した後、訓練棟への最短ルートを黒板へ書き始める。

 

 

 

「問題は訓練棟の結界だな」

「殴って壊す。私とアルベネロ君なら壊せる」

「結界が自己修復型だと、中に入った後に外と隔離されてしまうのが怖いですね」

「なら、フェイクゾーンはどうですか?」


 

 

 アルベネロ達は訓練棟に張られている結界をどのように突破するか話し合えば、アリサが【偽物の領域(フェイクゾーン)】を提案する。

 魔法【偽物の領域(フェイクゾーン)】は指定した空間に存在する魔法を無効にする効果がある。しかし、指定した空間外には魔法の効果が発動するため、使いづらい魔法となっている。

 

 

 

「結界に穴を開けるなら、確かに良いかもしれないな」

「でも、人が通れる穴を作るのは流石に難しいと思うわよ?」

「あ、入る時は破壊してもらって、もし、結界が修復されるようだったら、私が穴を開けますよ」

「結界に少しでも穴があれば、外へ連絡することは可能です」

「よし、なら、アリサの作戦でいこう」

 

 

 

 

 訓練棟の突破についてはアリサの作戦が採用され、アルベネロ達は訓練棟へ侵入後の動きについて作戦を詰めていく。

 また、ガルフ達の方も話し合いは終盤に差し掛かっており、監禁されている生徒の救出について話し合っていた。

 


 

 

「確実に一部屋ずつって言いてぇところだが、そんな時間はねぇだろ。俺とドットル、バッシと他、三人で一つ担当する。残りのメンバーで隣の教室をやってくれ」

「お、俺たちだけで出来るのか?」

「こっちはまだ楽な方を任されてんだ。そんな弱気になってんじゃねぇ。それに、俺らは特科クラスだろ? 特別だってことを()めた黒ローブどもに見せつけてやろうじゃねぇか」

「そ、そうだよな‼︎ 俺たちは特別だ‼︎」


 

 

 

 ガルフの言葉に不安がっていた生徒たちは自信を持ち始める。

 そして、ガルフの指示により、円陣となれば、隣同士で腕を回し合う。

 

 

「敵は大抵一人。アルベネロ達の話から、黒い指輪をつけてるやつは制服着てても敵だ。とりあえず、ぶっ倒せ‼︎」

「「「おう‼︎(はい‼︎)」」」

「俺たちなら出来る‼︎ 全員を助けるぞ‼︎」

「「「おー‼︎」」」

 

 

 

 ガルフの掛け声により、士気が高まれば、二つのグループに分かれて、行動開始の合図を待つ。

 

 

 

「そっちと合わせて、俺たちも始めさせてもらうからな」

「わかった。それにしてもすごいリーダーシップだな」

「ちょっと前向きなことを言っただけで士気が上がるのは楽でいい」

 

 

 

 作戦会議を終えたガルフがアルベネロ達の元に近づいていき、準備が終えたことを伝える。

 

 

 

「急に悪役になってるわよ。それより、私たちの方も準備できたわ」

「なら、行動を開始する前に、ここは一つ、アルベネロから何か士気が上がるような一言でも言ってもらうのが良いんじゃねぇか?」

「なっ⁉︎」

 

 

 

 ガルフはクレアから準備完了の知らせを聞くと、アルベネロに無茶振りをする。

 

 

 

「無茶振りにも程があるんじゃない?」

「アルベネロなら、いけるんじゃねぇか?」

「「「おおっ‼︎」」」

「……逃げれる雰囲気じゃないな」

 

 

 

 ガルフの言葉に他の生徒たちが期待するようにアルベネロに視線を向ける。

 アルベネロは諦めたように教壇へ移動しては、深呼吸をする。


 

 

 

「みんな、これから俺たちを待っているのはルールの無い、命懸けの戦いだ」

「ゴクッ」

「敵は異常な魔導具(まどうぐ)で武装した集団。簡単に倒せる相手じゃないかもしれないが、監禁されている仲間を助けられるのは俺たちだけだ。この先にどんな強敵が待っていたとしても、全員が欠けることなく、勝とう‼︎」

「「「おおーー‼︎」」」



  


 アルベネロの号令により、他のクラスメイトたちは腕を上げて応える。アルベネロは教壇から降りると、クレアとガルフが拍手をしながら出迎える。

 

 

 

「まさか、あそこまでの言葉が出るとは思わなかった。やるじゃねぇか」

「かっこよかったわよ」

「はは……レイン、今はどうだ?」

「問題なしです。廊下には誰も居ません」

 

 

 

 クレアとガルフからの称賛に、アルベネロはくすぐったそうにしながら、レインに状況確認をお願いすると、廊下には誰もいないと判明し、絶好の機会と判断する。

 

 

 

「俺たちが先に出る。なるべく倒しながら向かうが、あとは任せる」

「ああ、任せな。準備は万端だ」

「こっちも大丈夫よ」

「よし。みんな……作戦開始だ‼︎」


  

 

 お互いに準備を終えると、アルベネロは作戦開始の宣言と共に教室の扉を開ける。

 最初にサキが教室から飛び出していけば、クレア、レイン、リンカ、アリサ、最後にアルベネロの順で後に続く。ガルフ達はアルベネロ達を見送れば、教室を後にし、互いに行動を開始するのであった。

 

 

 

 

「階段手前に男子が三人です‼︎」

「私が行く。ビーストソウル‼︎」

「後ろから男子一人と女子一人が走ってきてます‼︎」

「任せろ‼︎ エアブラスト‼︎」

 

 

 

 アルベネロ達は訓練棟へ向かい駆け出しているが、前からも後ろからも敵が現れる。

 廊下で出会う敵は黒い指輪をつけた生徒たちであったが、サキは体術、アルベネロは魔法で倒しては突き進んでいく。

 

 

 

「いつもなら、訓練棟なんてすぐなのに……」

「仕方ないです。敵も少なくないですから」

「まだマシ。レインが居なかったら、もっと時間がかかる」

「でも、見えてきましたよ〜〜」

 

 

 

 いつもならすぐに到着する訓練棟までの道も何度も妨害されては時間が倍ほど掛かってしまうが、訓練棟に繋がる直線まで差し掛かれば、黒いローブを着ている二人組が立っており、道を塞いでいる。

 

 


「まだバレてないですね」

「おそらく、仲間の生徒だと思ってるんでしょうね」

「なら、ここは私がドラゴンブレスで……」

「それだと反撃される可能性があるわ」

 

 

 

 黒いローブを着た二人組はアルベネロ達の存在に気づいては居るが攻撃してくることはなく、絶好の機会とリンカは【竜の息吹(ドラゴンブレス)】を放とうとするがクレアに止められる。

 

 

 

「ここは私に任せてください」

「大丈夫か?」

「すぐに終わらせます」

 

 

 

 アリサが名乗りを上げると、二人組の元へと駆け出していく。走ってくるアリサの姿を確認し、流石に二人組は警戒するように黒い指輪を付けている手を前に出す。

 

 


「おい‼︎ 止まれ‼︎」

「ここはお前のような子どもが来るところではない‼︎ 協力者の生徒なら、階段と教室前の廊下にいろ‼︎」

「すみません‼︎ でも、どうしても伝えた方がいいと思って‼︎」

「なに? それはどう言うことだ?」

「何か緊急事態か?」




 近づいてくるアリサを静止させるが続く言葉に二人組は警戒を緩めると、前に出していた腕が少し下がる。

 

 

 

「さっき、黒いローブを着た人が廊下に倒れてて‼︎」

「何⁉︎ まさか教師どもの仕業か⁉︎」

「待て‼︎ 先に報告した方が良いんじゃないか?」

「何か起きてるのか、怖くなって、助けて欲しいんです‼︎」

 

 

 

 二人組はアリサの言葉に驚けば、結界に包まれている訓練棟に視線を向ける。

 完全にアリサから意識が逸れた二人組はさらに近づくアリサに気づかない。

 

 

「暗技、止水(しすい)

「「うっ……」」

 

 

 

 アリサは二人組の後頭部にそれぞれ片手を近づけると、(うめ)き声と共に二人組は揃って、床に倒れる。

 二人組が倒れたことを確認したアルベネロ達はアリサの元へ駆け寄ってくる。

 

 

 

「何したの?」

「隙だらけだったので、頭に風魔法を当てて、倒してみました」

「お見事です」

「そんな事より、次はサキさんとアルベネロ君の出番ですね」

 


  

 鮮やかなアリサの手口にクレアとレインが感心すれば、話を逸らすように結界に視線を向ける。

 アリサの使用した暗技【止水(しすい)】は相手の脳に直接、魔力をぶつけて、脳を破壊することで外傷無しに対象の命を仕留める魔法である。言うなれば、暗殺のために存在する、裏の魔法である。

 

 

 

「アリサのおかげで、結界を壊す邪魔はされずに済みそうだな」

「アリサに感謝。結界の強度を調べる」


 

 

 アルベネロとサキはアリサへ感謝を伝えれば、訓練棟を包んでいる結界へ目を向ける。は紫色の壁として、視認できる状態であり、軽くサキが叩く。

 

 


 ヴァァン  ヴァァン




 紫色の壁は向こう側が透けて見えるほどの薄さであり、サキが軽く叩くと、叩いた箇所から波紋が広がり、波打つ。すぐに元通りの平な状態に戻れば、サキは何度か結界を叩くと頷く。

 

 


「問題なし。これなら、二人で壊せる」

「どっちが先だ?」

「私が先。ヒビを入れるから、壊すのは任せる。ビーストソウル」

「わかった。アサルトアーマー」

 

 

 

 アルベネロは赤いオーラを(まと)い、サキは白いオーラを(まと)う。

 結界を突破する方法は大きく分けて、三つあり、一つ目は結界を発動している魔導具(まどうぐ)を破壊する方法。二つ目は魔力を送っている魔法使いを倒す方法。三つ目は高火力で結界を破壊してしまう方法である。

 しかし、三つ目の方法は闇雲に高火力を当てればいいものではなく、技術も必要となる。

 

 

 

「始める。みんなは下がって」



 サキの一言でアルベネロ以外の四人が結界から少し離れる。

 

 

「すーー……はーー……轟砕雷鳴(ごうさいらいめい)‼︎」



 ガンッ‼︎ パキパキパキッッッ‼︎

 

 

 

 サキの一撃が結界へ放たれると、紫の壁に大きなヒビが入り、一瞬で結界に広がっていくが、段々とヒビが直って行くが、一撃を放ち終えたサキは間髪入れずに後ろへ飛ぶ。

 

 

 

「はっ……‼︎」

 

 

 バキィィィン‼︎ ガシャァァァン‼︎

 

 

 サキが後ろへ飛んだ瞬間、アルベネロが突き出した拳が紫色の壁に広がるヒビの中心へ打ち込まれ、人が通れるほどの大きな穴が結界に空く。

 

 

 

「再生してる。急いで中に入って」

「アリサ。穴は頼んだ」

「はい。了解ですよ」

 

 

 

 結界に空いた穴はすぐに修復が始まり、どんどん小さくなっていく。

 サキの誘導で結界の中へアルベネロ達は駆け出していき、アリサは作戦通りに魔法【偽物の領域(フェイクゾーン)】で修復が完了する寸前の結界に小さな穴を作っておく。

 

 

 

「ここからが本番ね」

「ああ、みんな、気を抜かないようにな」

「当然」

「大丈夫ですよ〜〜」

「もちろんです」

「今、訓練棟の中を調べます」

 

 

 

 

 アルベネロ達は訓練棟の中へ侵入することが出来ると、改めて、気を引き締め直す。

 訓練棟の何処(どこ)かにいるレオ、レーメ先生の救出、マナの居場所を手に入れる、黒幕の撃破と、いくつもの困難がアルベネロ、クレア、レイン、サキ、リンカ、アリサを待っているのであった。

 

 

 

 

[場面は変わり、監禁されている生徒を救い出すために行動を開始したガルフ達……]

 

 

 

「よし、ここも問題ねぇな」

「これで三つ目だ。かなり順調だ」

「おう。ただ、気、抜くんじゃねえぞ。魔法を使われた時点で逆転されちまうんだからな」

 

 

 ガルフ達はすでに三つの教室から生徒たちを解放しており、黒いローブを着た魔法使いは全員、昏倒している。

 

 

 

「隣の応援に行くぞ。おい、この中に拘束系の魔法、使えるやついるか?」

「わ、私、使える……」

「よし、それなら、そいつを縛ってくれ。目を覚ましても動けないようにしねぇとだからな」

「は、はい……」

 

 

 

 拘束系の魔法が使えると名乗り出た女子生徒はガルフの指示で昏倒している襲撃者を炎の縄で縛る。

 

 

 

「他のやつらはここで待機してろ。もし、他の黒ローブが来たとしても、戦うんじゃねぇぞ」

「「「は、はい‼︎」」」

「よし、行くぞ」

「わかった」

 

 

 

 ガルフは教室を後にすると、同時に奇襲している教室へと移動する。ドアは開いており、問題ないか、中を覗き込む。

 

 

「う、うぅ……」

「ちっ、おい、大丈夫か⁉︎」



 

 ガルフが教室の中を覗くと、解放チームの一人が倒れ、他のメンバーは床に倒れている黒いローブを着た襲撃者を拘束している最中であったため、ガルフは慌てて負傷者の傷を確認し始める。

 

 

 

「反撃されたのか?」

「いや、黒いローブの男は倒せたんだが、後から来たそこの女子生徒にやられたんだ」

 

 

 

 ガルフの代わりにドットルは状況確認を行う。メンバーの一人である男子生徒は教室の端で拘束されている黒い指輪をはめた女子生徒を指で指す。

 

 

 

「こいつに襲われたのか?」

「もう傷は良いのか?」

「ああ、応急処置はしておいた。ただ、保健室に連れて行く必要はあるがな。それよりも、どうなんだ?」


 

 

 負傷者の応急処置をガルフは終えると、ドットルと話している解放メンバーの男子生徒に声を掛ける。

 


 

 

「それが……」

「はっきりしろ‼︎」

「俺たちが襲撃者を倒したあと、やってきたんだが、すぐに攻撃はしてこなかったんだ。だから、倒そうとしたんだが、助けてと言われて……」

「そういうことか……ったく。助けを求められて、てめぇら躊躇(ためら)いやがったな」

「「「……」」」

 


  

 

 ガルフの言葉に、ガルフ達とは別で行動していた解放メンバー全員が無言になってしまう。

 

 

 

「全員、集まれ」

「「「……」」」

「時間がねぇから一度しか言わねぇ。黒い指輪をつけた奴は全員、敵だ‼︎ 躊躇(ためら)っちまったら、こっちがやられる。味方と敵、どっちを守るべきか考えろ‼︎」

「「「はいっ……‼︎」」」

 

 

 

 ガルフは解放メンバーを集めれば、喝を入れ直せば、全員の表情が引き締まる。

 


  

 

「ったく。バッシ、後、いくつだ?」

「あと三つ。ここから少し離れた場所の教室が残ってる」

「よし、ここからは俺たちのチームだけで助けに行くぞ。そっちのチームはここに残れ」

「お、俺たちも助けに行ける‼︎」

「さっきの言葉だけで完全に躊躇(ためら)いが無くなる訳ねぇだろ。それよりもお前らはここを守れ」

「くっ……」


  

 

 

 待機を指示された解放メンバーは悔しそうに顔を(しか)めながらと、反抗はしない。

 

 

 

「はぁ……守るってのも重要だ。そうじゃねぇと、俺たちは後ろのことが気になっちまう。お前らが守ってくれてるから、安心して、助けに行けるんだぜ?」

「わ、わかった……‼︎ ここは俺たちに任せろ‼︎」

「おう、その意気だ。お前ら、行くぞ」

 

 

 

 ガルフはドットル達を呼べば、廊下へ出ると、次の教室へ慎重に向かい始める。

 

 

 

「そろそろ向こうは訓練棟に入った頃か?」

「流石にあのメンバーでも、もう少し時間が掛かーーー」

 

 

 

 ドォォォォォン‼︎

 

 

 

「今、結界を壊しやがったな」

「あはは……本当、すごいメンバーだね」

「俺たちは俺たちの役割を果たす。それだけだろ?」

「その通りだ。こっちは楽させてもらってんだ。今の震動で敵も混乱してるはずだし、一気に行くぞ‼︎」

「「「おう‼︎」」」

 


 

 

 学院全体が震えるほどの衝撃と音に、ガルフ達はアルベネロ達が訓練棟へ侵入に成功したことを察する。

 アルベネロ達が問題なく訓練棟へ入ったことでガルフ達の士気も上がり、生徒達を解放するため、気合いを入れ直すのであった。

 

 

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