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~クレアーゼ VS Fチーム(前編)~

 観戦する生徒全員が注目する、〖アルベネロ〗対〖Gチーム〗戦は予想を上回る激闘となり、アルベネロが渾身の一撃によって、サキが行動不能となったところで、アリサが降参の宣言をし、終幕となった。

 レーメ先生からの指示により、アルベネロは気を失った状態のサキを所謂(いわゆる)、お姫様抱っこで抱えると、保健室へ運んで行く。

 そして、アルベネロの後ろをサキと同じGチームである、アリサとリンカが心配して、ついていくため、三人がサキを保健室へ運び、教室へ戻るまでの間、授業は一時中断となった。

 

 


「うーん……」

「そんなに考え込んで、どうしたのかしら?」

 

 

 

 授業が一時中断となったため、生徒たちは各々(おのおの)が自由に過ごしている。その中で、クレアは考え込んでいる様子のレインを見かけて、声を掛ける。

 

 

 

「あ、いえ……」

「悩み事?」

「そう言うのじゃないんですが……最後、アルベネロさんがサキさんの攻撃を避けて、反撃するまでの動きが見えなかったんです」

「炎のせいで、私は見えてなかったからわからないけど……レインでも見えないことがあるのね」

「はい……まるで、アルベネロ君だけが一瞬で動いたみたいに、気づいたら、攻撃を当てるアルベネロ君の姿が見えたんです」

 

 

 

 レインは、アルベネロとサキの激戦を知覚魔法で常に観続けていたからこそ、動きを見逃した事実が納得出来ず、考え込んでいたが、納得できる理由が思い浮かぶことはなかった。

 

 

「まだまだ私も知覚魔法を自由に使いこなせてないってことですね」

「……もしかすると、別の原因があるかもしれないけど」

「えーと……それはどういう意味ですか?」

「あぁ……深く考えないで。知覚魔法だけじゃなくて、その時の状況も影響してるのかもってことよ」

「なるほど?」

 

 

 

 クレアが意味深な言葉を呟いたのが聞こえ、レインは言葉の意図を確認するが、はぐらかされるような返答をされてしまう。そのため、レインはさらに気になってしまうが、それ以上は追及はしないことにする。

 

 

 

『クレアさんは何か知ってそうですね……でも、強引なのはやめておくのが良さそうです』

 

 

 

 クレアはかなり親しくしている友人であり、意味のない隠し事は好まない性格であることは分かっているため、レインはクレアを追及しすぎて、困らせないように考える。

 もちろん、恋愛関係のことであれば、困らせる気が満々な困った性格をしている、レインであった。

 

 


「クレアさんのおかげで、整理がつきました。ありがとうございます♪」

「ふふ、どういたしまして。私はそろそろ、準備体操でも始めるわ」

「やる気十分ですね。そんな事しなくても、Fチームに圧勝できると思いますよ?」

油断大敵(ゆだんたいてき)って、言うでしょ? それにアルベネロ君の戦いを見てたら、気合いも入っちゃうわ」

「ここでわざと負けて、動けなくなれば、アルベネロ君にお姫様抱っこ、してもらえるかもしれませんよ?」

「……そんなこと、しないわよ?」

「本当にわかりやすいですね♪」

「むぅ……// うるさい……//」

 


 

 クレアはレインに揶揄(からか)われてしまうと、顔を赤くしながら顔を逸らす。その様子に、レインは逃げるようにレオの元へと移動していき、その後ろ姿をクレアは見送る。

 

 

『変なこと言って……それを少しでも真面目に考えてしまった、私も私ね』

 

 

 クレア自身はレインの甘言に心が揺れながらも、強固(?)な意思で甘い誘惑を振り払い、溜め息を溢す。

 

 

『アルベネロ君にお姫様抱っこ……って、どれだけ単純なのよ、私』

 

 

 

 クレアは、自然にアルベネロにお姫様抱っこされている状況を思い浮かべてしまい、自分が思っている以上にアルベネロへ恋していることを再認識する。そして、恥ずかしさと照れを感じながら、自分で自分を指摘してしまう、恋するクレアであった。

 

 


流石(さすが)に気が緩みすぎてるわね……」

「あ、あの……」

「んっ? あら、Fチームが勢揃いでどうしたのかしら?」

 

 

 

 クレアは、自覚するほどに緩んでしまっている気分を締め直すため、ストレッチを始めるが、すぐにFチームの三人が声を掛けてきたため、ストレッチは継続した状態で、対応する。

 

 

 

「クレアさんと試合するので挨拶をと……」

「あら、んぅ、ご丁寧にありがとう。ふぅ、よろしくお願いするわ」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。 良い試合にしましょう」

「んっ、あんまり期待はしてないけど、頑張って。良い試合にしたいなら、はっ、あんまり早くに降参しないことね」

「は、はい……」

 

 

 

 Fチームは挨拶を行いに来たため、クレアもストレッチを一度止めて、挨拶を返すが、挨拶を終えれば、ストレッチを再開する。

 Fチームの三人は、冷たいと言えるクレアの態度に対して、特に文句を言うこともなく、頭を下げて、挨拶する。

 クレアはFチームに対して、全く期待していない事を隠すどころか、はっきりと伝えたところで、アルベネロ、アリサ、リンカが教室に戻り、レーメ先生と何か話し始める。

 

 

 

「アルベネロ君達も戻ってきたわね。それじゃ、お互い頑張りましょう」

「はい……」

 

 

 

 クレアはアルベネロが帰ってきたことを確認すると、自然と笑顔になり、先ほどとは打って変わって、Fチームにも、笑顔を向けて、軽く頭を下げては、レーメ先生から事前に指示されたエリアへ移動する。




「チッ……」

「が、ガレン君、僕たちも移動しないと……」

「わかってます。それよりも、いいですね? 僕がもしあの合図(・・・・)を出したら、渡しておいた指輪をはめるんですよ?」

「……」

「……」

「返事‼︎」

「「は、はい‼︎」」

 

 

 

 ガレンと呼ばれた、目つきの鋭い、赤髪の男子生徒はクレアの様子に舌打ちをする。そばにいた気弱そうな男子生徒が怯えた様子でガレンに声を掛けており、苛立つようにガレンは声を荒らげ、指示を出すと、クレアと同様に、レーメ先生から事前に指示されたエリアへ移動し始める。

 

 

 

「さっさと貴様らもこい‼︎」

「「はい‼︎」」

 

 

 ガレンの怒鳴り声に、チームメイトの二人が慌てて、ガレンの後を追いかける。Fチームは仲が良い者同士の集まりと言う雰囲気は全くなく、かと言って、魔法の相性が良くて組んでいると言う様子はない。例えるなら、主従関係のような印象を感じさせるチームとなっていた。

 

 


 

[場面は変わり、教室へ戻ってきたアルベネロ、アリサ、リンカ……]

 

 

「サキさんは保健室へ運んでいる間も、目を覚まさなかったので、保険医の保健室のベットに寝かせておきました」

「はい。ありがとうございます。お二人も付き添い、ありがとうございます。ただ、心配でついていくのはわかりますが、ついて行きたい時は事前に言ってくださいね?」

「自分が思っている以上に慌ててたみたいです。すみません」

「す、すみません〜〜」

「大切に思う気持ちはとても大事なことですが、他の人を心配させないようにすることも気をつけてくださいね♪」

「「はい‼︎」」

 

 

 

 アルベネロ、アリサ、リンカの三人は、レーメ先生へ報告を終えると、その場で別れ、各々(おのおの)、観戦する場所を探し始める。

 

 

 

『次はクレアの試合だな……本当は頑張れの一言ぐらい伝えたかったんだが……もう、居ないか』

 

 

 

 アルベネロは先にクレアを探すが姿は見つからず、既に教室の中央へ移動した後と判断すれば、観戦場所を探す。

 

 

 

「おっ‼︎ アル‼︎ こっちで一緒に見ようぜ‼︎」

「私も居ますよ♪」

「二人とも……そうだな。甘えることにするか」



 少し離れた場所から、レオが手を振りながらアルベネロへ声を掛けると、一緒に観戦することを提案する。レオの隣には同じように手を振るレインの姿があり、アルベネロは二人に気づくと、少し苦笑いを溢す。そして、二人の側へ駆け寄り、一緒に観戦することを了承(りょうしょう)する。

 

 


「クレアの対戦相手は……強いのか?」

「弱いぜ‼︎」

「はっきり言い過ぎですよ。でも、このクラスで下から数えたほうが早いのは間違い無いですね」

「なら、クレアが……」

「圧勝だと思うぜ‼︎」

「楽勝ですね」

「あはは……さすが、クレアだな」

 

 

 

 アルベネロはクラスメイト全員の実力を把握しきれていないため、レインとレオへFチームの三人について、実力を確認すると、二人のレインとレオの答えは、弱いと意見ご一致する。クラス内でも下から数えた方が早い程度の実力と説明されれば、アルベネロは苦笑してしまう。

 

 

 

「あ、クレアさんとFチームの方々が位置につきましたね」

「そろそろ開始だな」

「ここからバッチリ観戦しようぜ‼︎ アルも双眼鏡、使うか?」

「いや、大丈夫だ」

「わかった‼︎ 使いたくなったら、いつでも作るから遠慮はいらないぜ‼︎ クリエイト‼︎」

 

 

 レインは【千里眼(クレヤボヤンス)】によって、霧の中までクレアとFチームの位置を確認でき、試合開始が近いことをアルベネロとレオへ伝える。

 それを聞いたレオは、【創作(クリエイト)】によって、双眼鏡をレオは作り出し、観戦に備える。

 

 

 

「レインは千里眼があるから、間近で観戦できるのは羨ましいな」

「ふふ♪ アルベネロさんも遠視を使えば、間近で観戦することもできるんじゃないですか?」

「眼の強化は苦手なんだ。だから、普通に観戦するよ」

「それなら……一緒に見ますか?」

「出来るのか?」

「はい♪ 知覚魔法の中には他の人へ感覚を共有するものもあります。まだ、触れてる相手としか共有はできませんが」

「良いのか?」

「もちろん♪ 手を借りますね♪」

 

 

 

 レインはアルベネロの手に自身の手を移動させると、指を絡ませるように握り、恋人繋ぎをする。

 

 

 

「なるほど。これがアルベネロ君の感触ですか……」

「レイン……この握り方じゃないとダメなのか?」

「しっかり触れ合わせる必要がありますから♪」

「……はぁ、わかった」

 

 

 

 アルベネロはレインと恋人繋ぎをしている状況を仕方なく受け入れれば、その様子にレインは楽しそうに満面の笑みを浮かべる。

 

 

 

「それでは……エンパシー」

「んっ……こ、これは、少し……違和感があるな」

「そればかりは慣れてもらうしかないですね。私も千里眼を初めて発動した時は違和感で気持ち悪くなりました」

 

 

 

 レインが【共感(エンパシー)】を発動すれば、恋人繋ぎをしている手を伝って、魔力がアルベネロへ流れ込んでいく。そうすると、アルベネロの頭に突然、新しい景色が見えるようになるが、視覚情報が増えたことで違和感を抱いてしまう。

 

 

 

「これが千里眼を使ってる時の感覚なのか……これを試合中にも使ってたのはすごいな」

「ふふ、ありがとうございます」

「ここまで違和感があると思ってなかった。慣れたとしても、まともに戦える気がしないな……」

「それはもう、違和感が無くなるまで使い続けましたから♪」

 


 

  アルベネロは、違和感に耐えながらも、レインが千里眼を発動している間の感覚を知り、使いこなしているレインを称賛する。

 アルベネロに称賛され、レインは嬉しそうにしている側で、アルベネロは違和感を抱きながらも、なんとか増えた視覚に映る景色に意識を向けていた。

 

 

 

「あ、レーメ先生も来ましたね」

「遂に開始だな。まだ慣れないが……特等席で観戦できるな。レインのおかげだ」

「あ、ありがとうございます……//」


 


 レインの一言で、アルベネロは自身の目は閉じ、増えた視覚に意識を集中させる。そうすることで、違和感が少し減り、観戦することは可能な程度に余裕ができ、特等席で観戦できることに対して、レインへ感謝を伝える。

 

 

 

『ここまでストレートに感謝されると……流石に照れます……//』

 

 

 

 真っ直ぐに称賛や感謝を受けて、レインは少し顔が熱くなるのを感じながらも、アルベネロに気づかれないよう、顔を教室の中央へ向けるのであった。

 そして……

 

 

 

「どちらも準備はいいですか?」

「「はい」」

「それでは、クレアさん対Fチーム、試合開始‼︎」

 


 

 レーメ先生の合図ともに、最終戦、〖クレアーゼ〗対〖Fチーム〗の模擬戦が開始される。

 霧はゆっくりと晴れ始め、お互いに動きは見せないようである。

 

 

 

「まずは、様子見だな」

「そうですね。先制攻撃出来るのは、このクラスだと、私かアルベネロ君ぐらいです。クレアさんだと、柱が壊れる可能性もありますから」

「霧が晴れてからが本番だぜ‼︎」

 



 まだ、互いに動きを見せないことは予定調和であり、観戦している生徒たちは霧が晴れた後の行動に注意を払っていた。

 余談だが、レオは試合開始前から双眼鏡を覗き続けているため、アルベネロとレインが恋人繋ぎをしていることには気づいていない。

 

 

 

「見えてきたわね。前に一人……後ろに二人かしら。まずは後ろから……ピラーズ・オブ・ファイア」

「わぁぁ⁉︎」

 

 

 霧が晴れてくると、柱の近くでクレアは立ったまま、Fチームが居る方向へ視線を向けると、【燃え上がる火柱ピラーズ・オブ・ファイア】の魔方陣(まほうじん)を後衛に居る、二人の足元付近へ出現させる。次の瞬間には火柱が魔方陣(まほうじん)から立ち昇り、後衛付近の二人を燃やそうとする。

 しかし、後衛二人は魔方陣(まほうじん)から逃げるうに柱の近くへ移動し、火柱を避ける。



 

「流石に当たらないわね……」

「ウィンドボルト‼︎」


 

 

 クレアは【燃え上がる火柱ピラーズ・オブ・ファイア】が避けられたことを確認すると、魔方陣(まほうじん)を消し、次の魔法を発動すべく、魔方陣(まほうじん)(えが)かれた紙を制服のポケットへ仕舞った瞬間、ガレンが【風の矢(ウィンドボルト)】を放ち、クレアへ攻撃する。


 

『ファイアーボルトで相殺するのは簡単……でも、それだと、いつも通り過ぎるわね……』

 

 

 クレアは自身へ向かってくる【風の矢(ウィンドボルト)】の魔力を感じ取ると、柱の陰に移動して、避ける。

 

 

「うぉ、ウォーターボム‼︎」

「ロックブラスト‼︎」

 

 

 後衛の二人は牽制なのか、クレアが隠れている柱に向かって、【水の爆弾(ウォーターボム)】と【岩礫(ロックブラスト)】を放つ。

 クレアは柱を盾にするように動けば、隠れているクレアまで魔法は届くことがなく、柱に傷がついた程度の結果である。

 

 

 

「そのまま続けてろ‼︎」

「「は、はい‼︎」」

 

 

 ガレンが後ろを振り向くことなく、指示を出せば、後衛二人は継続して魔法を放っており、威力は加減されているのか、柱が壊れる様子はない。

 

 

『足止めにしても、杜撰(ずさん)ね……』

 

 

 魔法が放たれ続けるため、クレアは柱から動けずに居るが、特に焦る様子もなく、それどころか、Fチームの作戦に呆れ、ため息を溢している。



「確か……アルベネロ君がしてたのは……」

「ダウンバースト‼︎」

「んっ……‼︎」

 

 

 クレアは後衛二人が何かの拍子に柱が壊れてしまい、模擬戦が終わってしまうのを防ぐために、柱から出ようと思った瞬間、真上に魔方陣(まほうじん)が出現し、そこから激しい風がクレアに向かって、襲いかかる。クレアは膝が曲がり、中腰になってしまいながら、風に耐えている。

 

 

 

「ふふ、僕の風はどうですか?」

「……」

「無言ですか……クレアさんでさえ、何も言えなくなるほど、僕の魔法は強いということですね」



 

 まるで勝ったと言わんばかりにガレンがクレアの前へ歩いてくる。後衛二人も魔法を放つのを止ており、魔力をかなり消耗したのか、息を荒くしている。

 ガレンが発動した魔法【平伏せし衝撃(ダウンバースト)】によって、クレアは歩くことが困難になるほどの衝撃を真上から受けていた。しかし、クレアの表情には余裕があるどころか、自信満々な表情のガレンに呆れた目を向けている。

 


 

「完全に平伏してもらえれば、降参と受け取りますよ?」

「はぁ……私も低く見られたものね。ヘルファイア‼︎」

「ひぃぃ⁉︎」

 

 

 クレアは冷たい視線をガレンへ向けた後、既に取り出していた【黄昏の炎(ヘルファイア)】の魔方陣(まほうじん)が描かれた紙に魔力を流し込む。

 クレアが魔法【黄昏の炎(ヘルファイア)】を発動すれば、ガレンに向かって、黒炎が放たれ、ガレンは悲鳴をあげながらも咄嗟(とっさ)に左へ避けるが、クレアは狙ったようにガレンの真横で黒炎を炸裂させ、黒炎を浴びせる。

 

 

 

「あ゛あ゛づぃぃい⁉︎ 貴様ら、早く助けろ‼︎」

「う、ウォーターボール‼︎」

「はぁ……その程度じゃ、逆効果よ」

 

 

 

 制服のあちこちで黒炎が燃え上がると、熱さにガレンは地面で転げ回りながら、後衛の二人に助けを求める。後衛の一人が水の球をガレンに向かって、放つが、黒炎がさらに大きく広がってしまい、状況を悪化させる結果に終わる。



「ぎゃあぁぁ⁉︎」

「ため息しかでないわね……アルベネロ君との試合に比べると、本当につまらないわ……このまま燃え続けたくなかったら、降参することね」

「だ、誰が、する、かぁ‼︎」

「そう……まあ、他の二人を降参させた方が早そうね」

「「ひぃ⁉︎」」

 

 

 

 ガレンが魔方陣(まほうじん)を維持できなくなり、動けるようになったクレアは優しさで、熱さに苦しむガルフへ降参することを提案するが、ガルフは顔を(しか)めながら拒否する。

 ガルフの返答にクレアは興味を失ったように後衛の二人へ顔を向ければ、後衛の二人は恐怖で尻餅をつく始末である。



「貴様ら、勝手に、こうざん゛ん゛したら、許さないからな‼︎」

「はぁ……」

 

 

 

 ガレンの叫び声に、後衛の二人は萎縮(いしゅく)するように身体を縮こませる。クレアはガレンの言葉を聞き、諦めたように、ホルスターから、魔導銃〖ウルスラグナ〗を取り出すと、後衛の二人へ向ける。

 

 


「こんなことで使いたくなかったわ……」

「あ、あれが噂になってた、新しい魔導具(まどうぐ)……」

「綺麗……」

「三つ数えるまでに降参しなさい。さもないと、二人とも保健室送りにするわ」

「「ひぃ⁉︎」」

「三……二……」

 

 

 

 クレアの冷たい視線が本気であることを二人に直感する。ガレンの事も恐怖の対象だが、今、魔導銃を向けてきているクレアに対しての恐怖感はそれ以上であり、二人の口元は震えながらも開いていく。

 

 


「こ、降参し……」

「デスウィンド‼︎」

「んぐぅ⁉︎」


 

 

 後衛の一人がまさに降参宣言をしようとした瞬間、クレアの背後から黒色の風が放たれると、降参宣言をしようとした後衛の一人を包み込む。そして、黒色の風が消え去ると、白目を剥いて、地面に倒れ伏す男子生徒の姿があった。

 

 


「……自分が何をしたかはわかってるのかしら?」

「僕の許可なく、降参しようとした報いですよ」

「……レーメ先生はどうして止めないの?」

 

 

 チームメイトを倒すというガレンの暴挙をレーメ先生が見逃すとは思えず、クレアはレーメ先生を見るが、レーメ先生は特に何も言わずに静観している。

 

 


「簡単なことです。これの力で、レーメ先生を含めて、観戦している他の人は、僕が奇跡的に立ち上がって、クレアさんと戦っている姿が見えてるからですよ」

「その黒い指輪……アルベネロ君が気にしてた……‼︎」

 

 

 

 ガレンは自慢げにクレアへ説明すると、いつの間にか指にはめていた、黒い指輪を見せつける。

 クレアは見せつけられた黒い指輪が、アルベネロが気にしていた黒い指輪と同じであると気づけば、咄嗟(とっさ)にガレンと距離を離す。

 

 

 

「普通じゃないわ。それに……デスウィンドは上級魔法……あなた程度が使える魔法じゃないはずよ」

「そうさ。いつもの僕じゃ、使えない。でも、この指輪をはめればこの通り……デスウィンド‼︎」

「くっ‼︎ ヘルファイア‼︎」

 

 

 

 ガレンがまた、黒色の風を放ってくれば、咄嗟に黒炎で相殺する。

 ガレンが発動した魔法【滅びの風(デスウィンド)】は黒色の風で相手を包み込むことで視界を奪い、酸素濃度を限りなく薄くする効果もある。

 そのため、急速に酸素濃度を薄くすることで、相手の意識を奪うことが可能である。

 

 


「さすが、クレアさん。それでこそ、僕の妻にふさわしい‼︎」

「指輪のせいで頭までおかしくなったのかしら? それに、貴方みたいな器の小さい男、眼中にないわ」

「僕の器が小さいだって? これはおかしなことを……使えない駒を捨てずに生かしてあげるほど、寛容な僕が? 冗談まで言えるなんて、素晴らしいよ」




 ガレンの酷く偏った価値観に、クレアは悪寒を感じながら、現状の打開策を考える。

 

 

『ここは……試合に負けるとしても、異変を知らせるべきね』



 クレアは模擬戦の勝利を捨てることを即決しては、近くの柱に向かって、魔導銃〖ウルスラグナ〗を構えれば、魔力を最大まで溜め、引き金を引く。

 

 

 ドゴオォォォォン‼︎

 

 

 魔導具店(まどうぐてん)〖マイスター〗の試し撃ち時に響いた音とは比べ物にならない程の爆音と共に柱に大穴が空き、上側は天井から外れ、石床に落ちる。

 

 

 

「これで……‼︎」

「なんて威力だ‼︎ でも、残念‼︎ この指輪が作り出す特殊な結界によって、この中で発生する音は全て、外には聞こえないようになっているのさ。さらに、僕が解除しない限り、出ることもできない」


 

 

 ガレンの言葉にクレアは目を見開く。

 結界とは、決められた範囲に対して、決められた効果を発揮し続けることが可能な空間となる。

 今回、ガレンの発動した結界の効果は、結果の外に対しての幻惑と防音効果であり、爆音も柱が倒れた事もレーメ先生や観戦している生徒たちは全く気づかない。

 

 

 

「なら……やることは決まりね」

「僕を倒すつもりだね? でも、それは不可能だ。クレアさんでも、今の僕には勝てない‼︎ ウィンドボルト‼︎」

「バーストファイア‼︎」

 

 

 ガレンは透明な風の球をクレアに向かって、連射する。放たれる風の球は黒い指輪をはめる前よりも数段早く、クレアは【爆ぜる火球(バーストファイア)】によって、まとめて相殺し、そのまま火球はガレンへ向かう。

 


 

「ふっ、ウィングボルト」

「初級魔法で私のバーストファイアを……」

「君が勝つ術はもうないのがわかるでしょ? 降参してくださったら、この指輪も差し上げますよ?」

「降参? 笑わせないで‼︎ それに、そんな紛い物の力を、私が欲しがるわけないでしょ?」

「いいでしょう。妻にする前に、上下関係をしっかり覚え込ませましょうか」

「その油断が……命取りなのよ‼︎」

 

 

 

 黒い指輪をつけたガレンは、完全にクレアを格下と認識しており、(もてあ)ぶように魔法で攻撃していく。

 一方、クレアは魔導銃〖ウルスラグナ〗に魔力を流し込み続けており、いつでも、ガレンの隙を突こうと狙っている。

 最終戦、〖クレアーゼ〗対〖Fチーム〗の模擬戦はクレアの一方的な試合になると、誰もが思っていたが、レーメ先生や他の生徒たちが気づかぬ間に、命懸けの勝負へと変わってしまうのであった。


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作者:@canadeyuuki0718

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