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~二人の秘密な特訓~

 複数の生徒が着けていた、見慣れない黒い指輪のことが、頭から離れないアルベネロ。気になりながらも、クレア、レインと共に、お昼休みを過ごしていた。

 

 

「……すごい食欲だな」

「もう慣れたけど、あなたの食欲、本当、すごいわね……」

「甘い物は別腹って、よく言いますよ♪」

 

 

 レインは山盛りのケーキが盛られた皿を前に嬉々として、食べ進めており、その様子に、アルベネロは驚きの表情、クレアは呆れた表情をしていた。

 

 

「そんなに甘い物食べて、どうして太らないのかしらね……」

「食べた分だけ魔法の練習で消費してます♪」

「はぁ……アルベネロ君、私たちは食器を返しに行きましょう」

「ああ、そうだな」

 

 

 どんどん食べ進めるレインを他所(よそ)に、アルベネロとクレアは昼食を終えたため、食器を返すと、レインが座っているテーブルへ向かう。

 

 

「アルベネロ君は、この後、どうするのかしら?」

「特に考えてなかったな」

「それなら、魔法の練習に付き合って貰えないかしら?」

「……授業前にするのか?」

「ええ、放課後は、銃の練習もしないとだから……」

「うーん……」

 

 

 クレアの言葉に、アルベネロは立ち止まると、魔法の練習に付き合うか考え始める。

 

 

「お昼休みぐらい、休んだらどうだ?」

「疲れを感じたら、()めるわ。だから、今日だけでも、ダメかしら?」



 アルベネロが何を心配しているのかを察した、クレアは真剣な表情で、もう一度、お願いする。その様子に、アルベネロは降参したように笑みを浮かべる。

 

 

「わかった。付き合うよ。ただ、疲れて来てると感じたらすぐに止めるからな?」

「ありがとう。助かるわ」

「お二人でこっそりお話ですか?」

「「わぁ⁉︎」」

 

 

 アルベネロとクレアの話し合いが終わった直後、声を掛けられて、二人は驚き、慌てて声を掛けられた方向を見ると、すでにレインが山盛りのケーキを食べ終えて、二人の側に立っていた。

 

 


「お、驚かさないでよ」

「特に驚かすつもりはなかったんですよ?」

「あはは……昼食の後、どうするか相談してたんだ」

「なるほど。どうするか決まったんですか?」

「俺とクレアは早めに訓練棟へ行くつもりだ。レインはどうする?」

「二人っきりで何をするのか気になるので、ついて行きます。あっ、訓練棟にも、休憩する場所はあるので、お二人のお邪魔はしないですよ。授業までゆっくりしてるつもりです」

 


 

 レインは楽しそうに笑顔で、食器を片付けに行く。その様子にアルベネロとクレアは苦笑いを浮かべながら、戻ってくるのを待つのであった。

  


 

「お待たせしました」

「ちゃんと魔導具(まどうぐ)は持ってるわよね?」

「大丈夫です。しっかり持ってます」

「なら、問題ないわね」

「心配性ですね」

「あら、前に、魔導具(まどうぐ)を教室に幾つか忘れて、レーメ先生の特別授業を受けることになってたから、可哀想に思って、聞いてあげたのだけど……」

「そ、それは……その……心配してくれてありがとうございます」

 

 


 クレアは何とも言えない良い表情でレインへ伝えると、反対にレインは口元を()()らせて、顔を少し青くしながら、感謝を伝える。

 

 

「だ、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。はい。本当、大丈夫です……」

「……」

 

 

 完全に目が死んでいるレインの様子に、相当、過酷な特別授業であったことを察した、アルベネロは何も言えなくなり、助けを求めるようにクレアへ視線を向ける。

 

 

「二人とも、早く行きましょう?」

「そ、そうですね‼︎ ここで立ち止まっていても仕方ないです‼︎」

「お、おぅ……」

 

 

 クレアの言葉によって、アルベネロ達は訓練棟へ向かい始める。レインの表情も元に戻っており、アルベネロはホッとする。

 そして、三人は少し歩くと、訓練棟へ辿り着き、中へ入っていく。

 


 

「私はここで……」

(のぞ)かないでよ?」

善処(ぜんしょ)します♪」

(のぞ)く気しかないわね……」

「まあ、見られて困ることでもないんだがな……」

 

 


 レインが千里眼の固有魔法を使えることは学院内では周知の事であるため、クレアは釘をさすが、満面の笑顔でレインは返答すると、アルベネロとクレアに頭を下げて、その場から離れていった。

 

 


(こま)った子ね……」

「確かにな。でも、いい子とは思うな」

「それはわかってるわ。そこまで長い付き合いじゃないけど、変わった子だけど、悪い子じゃないのはわかるわ」

「いつからの付き合いなんだ?」

「特科クラスに入ってからよ。だから、数ヶ月ぐらいかしら」

「なるほどな」

「……って、世間話はこのぐらいにしておかないといけないわね」




 アルベネロとクレアは〖特科〗と室名札(しつめいふだ)に書かれている訓練室の扉を開ける。中には誰も居らず、教室は石造であり、壁や天井には装飾が施されている。差し詰め、城内と、いった雰囲気であり、二人は中へ入ると、壁際へ移動する。

 

 

「それで、魔導具(まどうぐ)無しで魔法を使うには、私はどうするべきかしら?」

「魔力で魔方陣(まほうじん)(えが)くことは問題なかった。まずは、魔方陣(まほうじん)を正しく(えが)く練習だな」

 

 

 アルベネロは右手を前に出す。そして、(てのひら)を上に向け、手の少し上に【火種ファイアー】の魔方陣(まほうじん)が現れる。

 

 

魔方陣(まほうじん)を暗記出来ていたとしても、正確に魔力で(えが)くことができるかは魔法使いの努力、次第だ」

「……つまり、魔方陣(まほうじん)を正確に(えが)けるまで、(えが)き続けるのが今回の練習ってことね」

「ああ。俺は魔方陣(まほうじん)を正確に(えが)けているか、審査するから、あとはクレア次第だ」

「わかったわ。ファイアーの魔方陣(まほうじん)をまずは練習すればいいのかしら?」

「初級魔法なら、ファイアー以外でも構わないが、どの魔法で練習するつもりだ?」

「なら、ファイアーボルトの魔方陣(まほうじん)にするわ。アルベネロ君、審査、よろしく頼むわね」

「わかった。任せてくれ」

 

 

 アルベネロから、練習内容を確認したクレアは右手を前に出すと【火の矢(ファイアーボルト)】の魔方陣(まほうじん)を魔力の線で(えが)いていく。ゆっくりと手の先に線が引かれていく。

 

 

「ど、どう?」

「……細かい部分が違うな。今のままだと、発動した直後に爆発する」

「えっ⁉︎」

 

 

 クレアは魔方陣(まほうじん)を確実に(えが)いているが完璧には遠い状態である。その様子を見たアルベネロは、間違っている事をクレアへ伝えるも、どこが間違っているは指摘はしない。

 

 

「み、見ながらでも構わないかしら?」

「もちろん。正しい魔方陣(まほうじん)が自然と頭に浮かぶぐらいじゃないと、上手く出来ないからな?」

「えっ⁉︎ あ、諦めるつもりはないわ‼︎」

「よし、頑張れ、クレア」

 

 

 クレアは始めた時以上に、気合いが入った様子で火の矢(ファイアーボルト)魔方陣(まほうじん)(えが)かれた紙を見ながら、手の先に魔方陣(まほうじん)(えが)いていく。

 

 

『いい表情だな……』

 

 

 クレアが(えが)魔方陣(まほうじん)は少しずつだが、進歩している。しかし、アルベネロは間違っていることだけを伝え続けていく。

 失敗の連続であっても、クレアは諦めることなく、真剣な表情で、何度も魔方陣(まほうじん)(えが)いており、その様子をアルベネロは無言で眺めている。

 

 

「こ、これはどうかしら?」

「……まだ間違ってるな」

「そ、そう……」

「……そろそろ他の人も来る時間か」

「仕方ないわね……」

 

 

 お昼休みも残り十数分程となっており、特科クラスの生徒たちが授業を受けるために、教室に入ってきてもおかしくない時間である。

 そのため、クレアは【火の矢(ファイアーボルト)】の魔方陣(まほうじん)(えが)かれた紙を仕舞う。練習を終えたクレアの表情は、一度も成功していないのが心残りなのか、少し暗い様子であった。

 

 

魔方陣(まほうじん)(えが)くのは難しいからな。こんな短時間じゃ……」

「フォローありがとう。でも、アルベネロ君に付き合ってもらってまで練習したのに、目に見えた成果を得られないのが……」

「……」

 

 

 暗い表情のクレアに、アルベネロはフォローの言葉を掛けるが、逆効果のようで、軽く溜め息を吐いて、落ち込むクレアにアルベネロは打開策を考える。

 

 

「……クレア。もう一度だけ、魔方陣(まほうじん)(えが)いてくれないか?」

「……良いわよ」


 

 アルベネロの言葉に、渋々といった表情ながらも、クレアは右手の(てのひら)を上に向け、魔方陣(まほうじん)(えが)いていく。

 

 

「どうかしら……?」

「まだ、完璧じゃない」

「やっぱりダ―――」

「だから、少し我慢してくれ」

「えっ……?」

 

 

 クレアが(えが)いた未完成の魔方陣(まほうじん)に、アルベネロは間違っていることを伝えた後、クレアが(えが)いた魔方陣(まほうじん)を消す前に左手をクレアの右手に添える。

 

 

「ひゃっ……⁉︎」

「少し、動かないでくれ」

「は、はい……//」

 

 

 突然、アルベネロの手が触れられ、クレアは驚き、手を離そうとする。しかし、アルベネロの言葉に、クレアは思わず敬語になってしまいながらも頷けば、ジッとしたまま、添えられている手を見つめてしまう。

 

 

「少しだけ、手伝う」

「ど、どうやって?」

「こうする」

 

 

 アルベネロはクレアの(えが)いた魔方陣(まほうじん)より、少し上に【火の矢(ファイアーボルト)】の魔方陣(まほうじん)(えが)く。

 それにより、アルベネロの魔方陣(まほうじん)とクレアの魔方陣(まほうじん)は、どこが異なっているかが、しっかりと確認すればわかるだろう。

 

 

「これで……クレアなら大丈夫なはずだ」

「わ、わかったわ。必ず、成功させてみせるから‼︎」

「頑張れ」

 

 

 クレアは魔方陣(まほうじん)を見比べたあと、一度、自身が(えが)いた魔方陣(まほうじん)を消して、改めて、魔方陣(まほうじん)(えが)いていく。アルベネロは黙って、完成を待っており、その間、魔方陣(まほうじん)は出したままにしている。

 

 

 そして……

 

 

「か、()けたわ……」

「……」

 

 

 新しくクレアが(えが)いた魔方陣(まほうじん)をアルベネロは無言で見つめる。そして、少しして、自身の魔方陣(まほうじん)を消して、添えていた手を離すと静かに頷く。

 

 

「完璧だ。頑張ったな」

「本当⁉︎」

 

 

 アルベネロの言葉に、クレアは驚きながらも喜べば、満面の笑みを浮かべる。

 

 

「本当だ。使ってみたらどうだ?」

「そ、そうね‼︎」

魔方陣(まほうじん)の形を維持したまま魔方陣(まほうじん)を前に向けるんだ」

「わかったわ……‼︎」

 

 

 ゆっくりと魔方陣(まほうじん)が上向きから、横向きに変わる。狙いは教室内にある柱である。

 

 

「ふぅ〜〜……ファイアーボルト‼︎」

 

 

 クレアは落ち着くように息を吐いた後、【火の矢(ファイアーボルト)】の魔法を発動する。魔方陣(まほうじん)からは魔導具(まどうぐ)で発動した時と遜色のない大きさと速さの火球が放たれ、柱にぶつかると四散する。

 


「で、出来たわ‼︎ アルベネロ君‼︎」

「あぁ、上出来……っと⁉︎」

「アルベネロ君のおかげよ♪」

 

 

 感極まったようにクレアはアルベネロへ前から抱きつく。アルベネロは抱きついてきたクレアを受け止めることは出来たが、かなり、強く抱きつかれているため、クレアの女性らしい柔らかさや、良い香りが強く感じとれてしまう。

 

 

「頑張ったのは、クレアだろ?」

「私だけじゃ、こんなに早くは無理だったわ。だから、アルベネロ君のおかげよ♪」

「悪い気はしないんだが……その、流石に離れてくれると助かるんだが」

「あっ、ご、ごめんなさい⁉︎」

 

 

 とても嬉しそうに話すクレアに対して、アルベネロはとても申し訳なさそうに思いながらもお願いすると、クレアは抱きついている事実に気付いたのか、慌てて身体を離す。

 

 

「いや、俺としては、良い思いをさせてもらったんだが……流石に見られたら、クレアは不味いだろうからな」

「そ、そうね。確かに、色々と、誤解されるわね……」



 クレアは顔を真っ赤にしながらも、落ち着こうと深呼吸を繰り返す。アルベネロは流石に照れくさいのか、クレアから少し視線を逸らしている。

 

 

『誤解、ね……』

 

 

 クレアは言葉には出さないが胸の内で思うところがありながらも、気持ちを落ち着かせる。




「あとはどれだけ速く正確に(えが)けるかだ。今度は手伝わないからな?」

「ま、また、付き合ってくれるの?」

「当たり前だろ? これで終わりなんて、無責任なことは出来ないからな」

「あ、ありがとう。助かるわ♪」

 

 

 

 アルベネロのさも当然といった言葉に、クレアは喜ぶのであった。

 そして、二人の会話が終わると、見計らったように他の生徒達が教室の中へ入ってくる。

 教室の中へ入ってきた生徒達の中には、レインとレオの姿もあり、アルベネロとクレアに気づくと、二人は駆け寄って来る。

 

 

 

「仲良く魔法の練習はできましたか?」

「やっぱり覗いてたのね……」

「それが……なぜか覗くことができなくて……原因は大体わかってますけど……」

「調子が悪かったんだろうな」

「調子悪い時なんて、普通、あるから、落ち込むことないぜ‼︎」

 

 

 アルベネロとレオからのフォローに、固有魔法でアルベネロとクレアの様子を確認できなかったレインは、ジト目でアルベネロを見るのであった。

 

 

「見てなかったってことは……鎌、かけてきたのね」

「はい。訓練棟ですることは限られてますから、鎌をかけるのも簡単です♪」

「全く……」

「まあ、知られて、不味(まず)いことでもないんだがな」

「それもそうね……」

 

 

 アルベネロとクレアはレインの言動に呆れながらも、こっそり練習することを伝えていなかったこともあって、複雑な心境であった。

 そして、数分後にはレーメ先生が教室の中へ入ってくる。

 

 

「皆さん、揃ってますか?」

「「「はい」」」

「それでは、授業を開始していきますね。今回の授業は屋内戦です。建物の倒壊といったことも考慮(こうりょ)する必要があるため、力任せに魔法を使う人には、特別授業を行いますからね♪」



 レーメ先生の言葉に、アルベネロ以外の生徒全員が、口元を()()らせる。

 



「今回の屋内戦は、三対三のチーム戦とします。先に相手全員を戦闘不能にさせるか、相手が降参した時点で試合終了とします。また、天井、柱、壁を大きく損傷させた場合でも、試合終了とし、その場合は引き分けとします」

「損傷させた方が負けじゃないんですか?」

 

 

 レーメ先生のルール説明に男子生徒の一人から質問する。通常、違反した側が負けになると言うのが常識であった。

 

 

「建物が破壊される。つまり、壊され、倒壊した場合、どちらも巻き込まれてしまう事が多いので、引き分けとします。もちろん、勝ち負けで成績は決めないので、負けたくないから、最後に壊すなんてことをしたら……どうなるかはわかってますね?」

「「「はい‼︎」」」

 

 レーメ先生は生徒からの質問に答えた後に放った最後の言葉に、全員の背筋がピンと張る。

 

 

「試合開始の位置は、チームが組み終わり次第、それぞれにお伝えします。試合開始の合図をするまでは、私の魔法で姿を見えづらくするので、お伝えするエリア内で、どの位置に居るか考えてください。また、既にある瓦礫(がれき)は壊しても問題ないです」

瓦礫(がれき)ですか?」

 

 

 教室の中には、傷のない柱があるだけで、瓦礫(がれき)がある様子はなく、レーメ先生が言うような瓦礫は特に見当たらない。

 

 

「レオ君、お願いしますね♪」

「ジェネレイト‼︎ そして、クリエイト‼︎」

「「「……」」」

 

 

 レオの【生成(ジェネレイト)】と【創作(クリエイト)】により、次々と地面から、横倒しになっている壊れた柱が教室内に現れる。

 その様子を生徒たちは口元を()()らせながら、見守るのであった。

 

 

 

「それでは、三人一組を作っていただきたいのですが、クレアさんとアルベネロ君は一人で戦っていただきます。また、レオ君とレインさんは二人で組んで、戦っていただきます」

「お、レイン、よろしく頼むぜ‼︎」

「レオ君もよろしくお願いしますね」

 


 レーメ先生がルールを説明し終えると、教室内の中央が霧で包まれていく。

 早速、チームを組むために、生徒達は話し始める。仲良し同士が組んでいるチームもあれば、使える魔法の相性を考えてチームを組んでいく。

 一人で戦うアルベネロとクレア、既にチームが組めているレインとレオは全員が組み終わるまで待つことになっている。

 

 

「一対三か……」

「あら、不安かしら?」

「少し不安だな」

「仕方ないわ。アルベネロ君と私は、他の人と実力が違いすぎるから」

「……その物言いだと、いつも一人で戦ってるのか?」

「そう、ね。たまにチームを組むこともあるけど、どうしても、チームメイトが私に頼っちゃうのよね」

「なるほどな」

 

 

 一対三、一対二の変則ルールで模擬戦を行うことになっているアルベネロたちは、特に気にする様子はなく、二人で組む、レインとレオは何かを話し合っていた。

 

 

「一人で戦うことは別にいいけど……ただ、ウルスラグナが使えそうにないのが残念ね……」

「室内でも使えるんじゃないか?」

「使おうと思えばね。でも、皆には悪いけど、魔法だけで、きっと、終わっちゃうから……そんな相手にウルスラグナは使えないわ」

「弾も無限じゃないしな」

 

 

 残念そうにクレアは制服内に手を入れて、ホルスターからウルスラグナを引き抜く。

 魔導銃〖ウルスラグナ〗の表面をクレアが撫でていると、周りの生徒たちも興味深そうに見ていた。

 

 

「皆さん、チームは組めましたか?」

「「「はい」」」

「それでは、紙を配ります。この紙には、それぞれAからGの文字が書かれています。試合をする時はこの文字で呼びます」

 

 

 特科クラスは二十五人が在籍しているため、アルベネロ、クレア、レインとレオ、他の七組、合計、十組が出来上がる。

 他の七組はそれぞれ、レーメ先生から紙を受け取る。

 


「それでは、早速、組み合わせを発表します。Aチームと、レオ君とレインさんチームです」

「おっ、早速、出番だぜ‼︎」

「レオ君、話した通りにお願いしますね」

「任せとけ‼︎」

 

 

 レインとレオは霧に包まれている中央へ向かう。同様に対戦相手と思しき三人組も移動し始めており、Aチームは男子生徒のみで構成されており、レインとレオの二人を見ては、一人が大きく溜め息を吐いていた。

 

 

「運がねぇな。まさか、あいつらと試合か……」

「が、ガルフ、どうする?」

「作戦変更だ。千里眼相手に隙をつくなんて現実的じゃねぇ。ドットルはバッシを守れ。俺が前に出る」

「大丈夫か? バッシが攻撃するとしても、お前に負担が掛かり過ぎじゃ無いか?」

 

 

 ドットルと呼ばれた、大柄で筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な茶髪の男子生徒は、心配するように話す。

 ガルフと呼ばれた、長身で引き締まった身体をしている銀髪の男子生徒は、バッシの言葉に、大きな溜め息を吐くと、諦めた表情になる。

 

 

(みな)まで言うな。貧乏くじって割り切ってんだから」

「……無理だと思ったら、降参して構わないからな」

「おう。バッシ、お前が唯一の勝ち筋だ。あれ(・・)をどれだけ早く発動できるか、わかってるな?」

「ま、任せて‼︎」


 

 バッシと呼ばれた、小柄で細身な緑髪の男子生徒が何度も頷く。

 

 

「よし、それじゃ、行くぞ」

「「おぉ‼︎」」

 

 

 三人は気合いを入れるように試合の開始位置として、前もって、指示されているエリア内で陣形を組み始める。

 

 

「すごい気合いだな‼︎ 燃えてくるぜ‼︎」

「熱くなって、前に出過ぎないでくださいね? 私の範囲内でも、遠くなると援護が間に合わない可能性もあるので」

「おう‼︎ それじゃ、俺らも位置に着こうぜ‼︎」

「本当に大丈夫ですか……?」

 

 

 自信満々なレオに対して、少し不安を感じながらもレインは指示されたエリアの中へ移動する。レオが前でレインは後ろに下がる。

 

 

 

「準備はいいですか?」

「「はい」」

「それでは……Aチーム対レオ君、レインさんチーム、試合開始‼︎」

 

 

 レーメ先生が試合開始の合図が教室内に響き、遂に第一試合が始まる。

 固有魔法を持つ、レオとレインに対して、何かを狙う、ガルフが(ひき)いるAチームがぶつかり合っていくのであった。

ここまでお読みしていただき、誠にありがとうございます。


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作者:@canadeyuuki0718

絵師様:@Eroinstein7027

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