~無謀で迷惑な挑戦者~
大変長らくお待たせしました!投稿を再開していきます!
アルベネロはクレアと一緒に寮へと戻り、部屋の前で別れる。アルベネロは自分の部屋へ入ると制服から部屋着に着替える前に部屋内に備え付けてある、お風呂場のシャワーを使おうと浴場へ向かう。
「風呂場も広いな……これが全部の部屋にあるとか、いくらかかったんだ」
「私が学院を作るために使った金額を国が払ったら、国が傾く、とだけ言っておこうか」
「なぁ⁉︎」
アルベネロは金額についての情報に驚いたわけではなく、突然、聞こえてきたマナの声に驚き、後ろを振り向く。そこには『イタズラ成功♡』といった表情でニコニコしているマナの姿があった。
「何でいるんだ?」
「アルに会うために決まっている」
「どうやって入ったんだ?」
「この寮に使っている空間魔法は私が作った。そこまで言えばわかるだろ?」
「とりあえず……お仕置き」
「あふん‼︎」
自慢げにたわわな胸を張って説明するマナの言葉に、アルベネロはおでこへデコピンをする。デコピンをされたマナは声をあげると共に、おでこを抑え、涙目になりながらアルベネロを見つめている。
「他の部屋にも勝手に入ってるのか?」
「アルが初めてに決まってるだろ‼︎」
「初犯でまだよかったよ。でも、勝手に人の部屋へ入るな」
「ふんぎゅ‼︎」
次に、マナの鼻をアルベネロは摘む。変な声を出したマナはアルベネロから離れると、鼻を擦る。
「レディーの顔はもっと大事にしろ‼︎」
「大丈夫。ちょっとおでこと鼻は赤いが、マナは綺麗だ」
「ぐぬぅ……嬉しいことを言われているはずなのに……今は喜びづらい」
「とりあえず、リビングで待ってろ」
アルベネロはマナの手を握ると、そのままリビングまで連れていき、ソファーへ座らせる。
「背中を流してほしかったら、いつでーー」
「座ってろ‼︎」
ついて来ようとするマナをソファーに座らせてから、アルベネロは一人で浴場へ移動する。マナがリビングで待っているので、サッとシャワーだけ浴びると、部屋着に着替えて、リビングへ向かう。
「それで、何か用か?」
「素っ気ないな。美女がお忍びで会いに来てるというのに」
「はぁ……紅茶でいいか?」
「もちろん。ふふ、久しぶりにアルが淹れてくれた紅茶が飲める」
アルベネロは|諦めた様子で台所へ移動し、自分とマナ、二人分のティーセットを出す。そして、紅茶の用意ができれば、ティーセットを持って、マナの隣に座ると、テーブルにティーセットを置き、手早く紅茶を淹れる。
「本当に、会いに来ただけなのか?」
「もちろんと言いたいが、伝えておきたいことがある」
「伝えておきたいこと?」
「あぁ♪ アルの紅茶は、いつ飲んでも最高だ♪」
自分のペースを崩さないマナに、アルベネロは同じように紅茶を飲み、一息つく。
「それで、伝えたいことって?」
「最近、下の街で悪魔を見たという噂が流れ始めてる」
「悪魔が?」
マナの言葉にアルベネロは顔を顰める。悪魔とは最高位の魔物であり、悪魔自体が強い力と知性を持つだけではなく、契約と称して、『化け物じみた力』を与える代わりに従属させる力がある。そのため、力を欲する者を狙って、悪魔が現れる。
「噂程度の話だがな。私も探したが見つからなかった。アルなら問題ないと思うが、気をつけてくれ?」
「他の生徒には伝えないのか?」
「悪魔の力を知らない生徒たちに伝えるのは危険だからな。自分なら悪魔を倒せると、無謀者が現れかねない」
「それで契約して、堕落までしたら、か」
「さすがアル。そこまで察してくれたか」
アルベネロの考えに同意するように、マナは何度か頷いた後、また、紅茶を飲んでいく。
堕落とは、悪魔から与えられた化け物じみた力だけでは飽き足らず、さらに力を悪魔へ求めた際に迫られる『化け物になる』契約である。存在が魔物になる代償として、悪魔といった最高位の魔物に匹敵する力を持つことができる。ただし、その悪魔に勝つ程の力を契約だけで得ることはできない。
「悪魔が居るとして、狙いは……」
「生徒たちだろう。この学院には私やレーメ達、教師陣が居るとしても、子どもで、かつ、才能のある魔法使いを狙わない手はないからな」
「面倒だな……」
「まあ、噂程度だ。気に留めておくぐらいがいい」
マナは紅茶を飲み終えると、隣に座るアルベネロとの距離をさらに縮めるように迫り、お互いの肩同士を触れ合わせる。
「伝えておきたいことはこれだけだ。何かアルから私に伝えておきたいことはあるか? ないなら、このまま私と甘い時間を……」
「誰かに魔法で狙われた、かもしれない」
「……は?」
「誰かに魔法で狙われた、かもしれない」
「……嘘ではないな?」
「そんな嘘、つくと思うか?」
「はぁ……とりあえず、状況を教えてほしい」
アルベネロの言葉に、少しの間、理解が追いつかなかったマナではあるが、やれやれといった表情でアルベネロに事情を聞く。アルベネロの説明を聞き終えたマナは考えるように目を閉じ、状況を整理していた。
「聞いてる限りだと、特科クラスの生徒ではない可能性もあるな」
「思い当たる節があるのか?」
「アルの特科クラス編入に文句を言っていた生徒たちだ。プライドが高い分、バカな真似をする可能性も否定できない」
「……この学院で平穏に過ごせるか不安になってきた」
アルベネロは大きくため息を吐いた後、残りの紅茶を飲み干す。しばらく平穏に過ごせると思っていたアルベネロだが、入学直後から、何かに巻き込まれた可能性があることに落胆していた。
「私としては、予想の範疇なのだがな」
「俺としては、もっと平穏に過ごせると思ってたんだ……はぁ、偶然って、考えるのは難しいよな……」
「階段から魔法を発動して、その場から逃げてるのに、偶然と思うのか?」
「怖くなって逃げた……と考えるのは脳天気か……」
アルベネロは諦めたように首を垂れる。落胆しているアルベネロの様子を見て、マナは苦笑いを浮かべていた。
「私も調べてみよう。また、何かあれば教えてくれるか?」
「もちろんだ。ありがとう」
「アルのためなら、苦でもない。調べ物が出来たから、そろそろお暇しよう」
「……転移で帰るのか?」
「生徒の部屋に出入りする学院長、そんな噂が立ってもいいなら、このまま扉から……」
「やめてくれ‼︎」
マナはソファーから立ち上がり、本当に流れそうな噂を口にしながら、部屋の扉へ視線を移動させる。アルベネロはそんな噂が流れ始めては一層、大変なことになると察し、慌てながらマナを止めようとすれば、マナは思わず、笑ってしまう。
「はっはっはっ。冗談だ」
「恋人同士なんじゃないかって噂が立ってるんだから気をつけてくれ……」
「私としては、本当にアルと恋人同士になりたいのだがな」
「……」
「ははっ、困らせてしまったな」
マナは満足げな表情をした後、ソファーに座ったままなアルベネロの前で前屈みになる。前屈みになったマナの前髪がアルベネロに触れそうになるほど、互いの距離は間近であり、マナとアルベネロは目を逸らすことなく、見つめ合う。
「ただ、この気持ちに嘘はない……んっ……」
「んんぅ⁉︎」
「ふふ……今日はこのぐらいにしておこう。それではな。あまり夜更かしするんじゃないぞ?」
マナは微笑を浮かべながらアルベネロへキスをする。アルベネロは突然の出来事に呆然としながら、キスをされた頬に軽く触れると顔を赤くしてしまう。マナはアルベネロの反応に満足すると、転移の魔法でアルベネロの部屋を後にする。マナの顔もほんのり赤くなっていたのは言うまでもない。
「……あれが大人の余裕か」
『……?』
「ならない」
『……?』
「マナのことはもちろん好きだ。でも、家族愛な気がしてな……」
『……♪』
「ありがとう。姉ちゃん」
アルベネロは二人分のティーセットを片付け、ソファーへ座り直す。
そして、鞄を開けば、転校生であるため多めに出された課題を取り出し、テーブルに広げると、順に解いていくのであった。
時間は経過し、翌日、午前の授業を終え、お昼休みの時間にアルベネロは頭を痛める出来事に遭遇していた。
「僕と決闘をしてもらおう‼︎」
「……なんで?」
お昼休みを教室で過ごしていたアルベネロに対して、教室へ乱入してきた金髪の男子生徒が宣戦布告してきたのであった。アルベネロはとりあえず、お昼休みを一緒に過ごしていた、クレアとレインを見てから、男子生徒へ理由を聞き返す。
「決闘で、君を倒せば特科クラスに入れるほど、実力があると証明できるからね。これほど、楽な方法はないよ」
「……」
アルベネロは乱入してきた、男子生徒の言葉に頭痛を覚える。クレアとレインはため息を吐き、男子生徒へ向けていた視線をアルベネロへ移動させる。
「無視して良いと思うわ」
「こういう人は、身の程を知らないって言います」
「……そういうことだから」
「いや、どういうことだね⁉︎ 君たちも、この僕、ギリアン・スカーレットの実力を見たことがないからそんなことを言えるんだ‼︎」
クレアとレインの辛辣な言葉を受けてもなお、金髪の男子生徒、ギリアンは諦める様子もなく、何度も決闘を強要する。
「わかった。決闘は受ける」
「ふっ、今日の放課後、訓練棟で行う。逃げるなんてみっともないことはしないでくれよ」
「そっちは逃げてくれてもいいからな」
「誰が逃げるか‼︎」
アルベネロは渋々、決闘を受けると、ギリアンは決闘の日程を伝え、満足げに教室を後にする。
「はぁ……」
「災難ですね……」
「覚悟はしてたけど、本当に決闘を申し込まれるとは思ってなかったな」
「礼節が全くなってないわ。あれでも、上流階級の貴族なはずなのに」
アルベネロは大きくため息を吐く。レインは同情するような表情をしており、クレアに至ってはかなりご立腹で、完全に見下した態度であったギリアンに対して、同じ貴族として、恥ずかしさすら感じていた。
「それで、アルベネロ君は放課後、どうするのかしら?」
「とりあえず、訓練棟に行って、そのあとは街を見て回るかな」
「何か買うのですか?」
「探検だ。街に何があるか知っておきたいんだ」
決闘に対する緊張など皆無なアルベネロは街へ散策に向かう予定であることを二人に伝える。
「それなら、私が案内しましょうか?」
「いいのか?」
「もちろんです。クレアさんも一緒に行きませんか?」
「わ、私も?」
アルベネロの予定を聞いたレインは案内を申し出て、クレアへは同伴を提案する。
「何か予定がありましたか?」
「今日は、特にないわ……アルベネロ君はいいのかしら?」
「大歓迎だ」
「そ、それなら、一緒に行くわ」
チラチラとアルベネロを見ながら、同伴して、問題ないか確認するクレアに、アルベネロは苦笑してしまう。アルベネロは同伴することを快諾すれば、クレアは冷静を装いながらも、口元が少し緩んでしまっていた。
「そう言えば、あの金髪、名前がスカーレットだから……かなり上の貴族か……」
「そうね。国への発言力も少しはあるわ」
「決闘の後が面倒そうだな」
「大丈夫よ。この学院内なら貴族の権力なんて、ほとんど意味はないわ」
「さすがはマーリンが作った学院だな」
マーリンに感心しながらアルベネロは残りの昼休みをクレアたちと過ごす。
そして、お昼休みが終わり、あっという間に放課後になれば、アルベネロは訓練棟へ向かおうとカバンに荷物を入れては席から立ち上がり、クレアとレインも後を追うように立ち上がっては、三人で訓練棟へ向かう。ちなみにレオは終礼を終えたレーメ先生と一緒に、すぐ教室から出て行ってしまった。
「クレアさんは、何分で終わると思いますか?」
「一分どころか、十秒もかからないと思うわ」
アルベネロ達は教室から出ては訓練棟へ向かう。廊下には同様に訓練棟の方向へ向かう生徒が多くおり、移動に時間がかかっていた。
「……流石に多くないか?」
「いつもはこんなに多くないわね」
「ちょっと見てみますね」
訓練棟へ近づいていくほど、生徒が増えていると感じ、アルベネロは足を止める。アルベネロの疑問にクレアが答え、レインは立ち止まると遠くを眺める。
「なにが見える?」
「人がたくさん……それも、生徒だけじゃなくて、街の人もいます」
「はぁ……大方、決闘を行うことを学院だけじゃなく、街にも触れ回ったのね」
「……訓練棟に入るのか?」
「大丈夫よ。決闘用の施設があるわ」
「……こんなに大規模にするのは聞いてないんだが」
深く溜め息を吐いたアルベネロは諦めたように訓練棟の中へ入れば、待ち構えていたように金髪の男子生徒、ギリアン・スカーレットが踊り場にいた。
「逃げずにきたことは褒めておこう」
「こんなに人を呼ぶとか聞いてないんだが……」
「僕が決闘をするんだ。このぐらいは観客が必要と思わないか?」
「二人はどう思う?」
「身の程、知らずね」
「この後の結果を考えると、かわいそうに思います」
「確かに、これだけの観客に、負ける姿を見られる、アルベネロ君はかわいそう以外の何者でもないね。そちらのレディーは、よくわかっているね」
既に勝利しているとさえ、思わせる態度に、アルベネロ達、三人は口元を引き攣らせていた。
「さっ、君の控え室はあっちだ。あの扉へ入れば、あとは、案内してもらえる。他の二人は、観客席で見ていてもらうよ」
「あぁ……二人とも、また、あとでな」
「やり過ぎには気をつけてね」
「アルベネロさん、頑張ってください」
アルベネロはクレアとレインに見送られながら、ギリアンが指定した扉へと向かっていく。アルベネロの実力を知らないギリアンはこの後、予想外の決闘になるとは夢にも思っていなかった。
ここまでお読みしていただき、誠にありがとうございます。
長く時間が空きましたがなるべく早く、投稿できるように頑張ります!
次の予告としては、決闘と街探検について、書いていこうと思います。
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作者:@canadeyuuki0718
絵師様:@Eroinstein7027




