裏側・キャプテンの正体
『学園』はかつて邪神の襲撃を予言した巫女の一族である神崎家が、政府の支援を受けて運営している。学園の職員全て、裏方に至るまで神崎家に関係する人間である。
「……なんなのですか、あの空飛ぶ戦艦と、ロボットは?」
「どうやら、鉄幹のやつが勝手に作っていたみたいです」
「最終防衛作戦……あいつが救世の巫女による儀式の代替案として、10年前に提案したものによく似ています」
「鉄幹め……研究職の立場を悪用して……」
「しかもキャプテンなどと勝手に訳の分からん名前を自称して、テレパシーシステムにまで介入して……」
「とにかく今は、対策を練らなければなりません。邪神の襲撃はこの一回に留まらず、複数回に及ぶことになるでしょう……」
「長期戦だな」
『魔神艦隊センジンフリート』『ダイセンジン』の出現を受けて、学園中枢部では緊急の幹部会議が開かれていた。
話し合わなければならないことは山積みだ。これからの邪神の襲撃への対応、生き残ってしまった救世の巫女200人の処遇、一連の事態についての政府への報告……
「まあ、まずはこいつの話を聞かないと始まらないでしょう……入りなさい」
会議室の扉が開き、ヘルメットを小脇に抱えた、紺色のヒーロースーツを着た青年が入ってくる。
「鉄幹……神崎鉄幹……」
「ばあちゃん、久しぶり」
会議室の一番奥にいる神崎家の現当主に気軽に挨拶をする青年。
彼こそが魔神艦隊センジンフリートをたった一人で率いる、キャプテン・センジンだった。
当主は鉄幹の挨拶を流し、質問をする。
「鉄幹、なんでこんなことしたんだい?」
「儀式だと、邪神が出て来るまでの間、世界は影虫や闇獣の脅威にさらされる。それによって全世界の46パーセントは壊滅する。さらに合法的に拉致してきた女の子たちを200人も犠牲にすると来た……最終防衛作戦は儀式の代替策だ。これで世界は確実に守られる」
これが鉄幹の答えだった。
だから彼は魔神艦隊センジンフリートを作り、邪神の侵攻を遅らせ、影虫と戦った。
「鉄幹……わかっているの? あんたは世界を危険にさらしたのよ?」
「危険にさらしたのはどっちだ? 世界の46パーセント見殺しにするとか正気の沙汰じゃない!」
「それでも一回で終わるのなら、それは必要な犠牲よ」
「……本気か?」
議論は平行線のままだ。
鉄幹はため息をつくと、学園幹部たちに背を向けた。
「もういいか? 次の襲撃に備えないといけないんだ」
「そうはさせん!」
幹部の一人が合図をする。
どこからともなくガタイの良いスーツ姿の男が現れ、鉄幹を拘束した。
「な!? おじさん!」
「悪いが鉄幹、お前にはしばらく謹慎してもらうぞ」
「ちっ……嘘だろ……」
拘束された鉄幹はそのまま会議室から別室に連行された。
当主が指示を出す。
「……後で鉄幹の個人用パソコンから最終防衛作戦のデータを探し出して消去しなさい。それと……」
当主は目を厳しく光らせる。
「……救世の巫女たちの、認定を取り消しなさい」