ずっと一緒に
最後の休日は、朝から晩まで大忙しだった。
まず、エミがいつものようにアヤカを部屋まで起こしに来る。
そしてエミのチョイスで買った、ピンクのかわいい――アヤカの目には可愛すぎる服を着せられる。
「エミちゃん……ちょっと恥ずかしいんだけど……」
「大丈夫! 私もこの服かわいすぎて恥ずかしいから!」
そう言うエミの服は黄色いかわいい服だ。確かにかわいすぎるような気はする。エミちゃんだから似合っていると思うけど。
「さあ、行こう!」
エミに手を引かれ、アヤカは外に繰り出した。
まずは食堂だった。
「エミちゃん……もう食べられない……」
「うえええ……私ももう限界……」
食堂の食べ放題コース。最後の休日ということで、食堂が特別に用意してくれたらしい。和食から洋食まで、デザートまで含めて全制覇しようとしたが、無理だった。
次は、購買部。
「在庫処分だって!」
「全部買うよ!」
在庫処分ということで、タダ同然の値段で服やカバンが投げ売りされている。アヤカとエミはほかの生徒たちの波を押しのけ、掴めるだけのものを掴んだ。
そして図書室。
ここの目当ては映画とゲームコーナーだ。
映画はミニシアターで、冒険ものを中心に3本見た。ゲームコーナーは順番待ちをして、数少ないゲーム――もぐらたたきやプリクラで遊んだ。
「ふう……遊んだ遊んだ!」
「た、楽しかったね……」
天井のライトがオレンジ色に変わろうとする中、アヤカとエミは展望台のベンチに座って休憩する。正直遊びすぎて疲れたような気もするが、アヤカもエミも満足だった。
展望台からは、学園が一望できた。今日行ったところも全部見下ろせる。
そして学園の反対側には、校庭5個分くらいの面積を持ち、アヤカ達救世の巫女の霊力を高める石柱が無数に設置された、巨大な『祭壇』が広がっていた。
明日、審判の日には、救世の巫女200人はこの祭壇に集められ、祭壇ごと地上に上がることになっていた。そこで邪神を滅する『儀式』を執り行う予定になっていた。
「エミちゃん……楽しかった?」
「実はね……ほかにもう一つだけ、やりたいことがあったんだ……」
エミちゃんがやりたかったこと……一体何だろう?
「聞かせてもらってもいいかな?」
「私ね……外の世界が見てみたかった」
外の世界……
ここ、『学園』は地下深くにある。生徒がこの学園内から出ることは、固く禁じられている。
「そういえばエミちゃん、生まれた時から学園にいるんだっけ?」
「そう。だから外の世界から来たアヤカちゃん達が羨ましかった」
アヤカが学園に来た当初、まだ幼かったエミはしつこいくらいに、アヤカに外の世界のことについて聞いてきた。アヤカのどんな話も、エミは楽しそうに聞いていた。
「出たかったね……外」
「そうだね……でも、卒業したら天国に行けるから」
エミは笑って話す。
その笑顔を見て、アヤカは複雑な気分になった。
エミに『天国』のことを教えたのは幼いアヤカだった。
死んでも、良いことをした人は天国に行ける――
「私たち、世界を救って死ぬんだから、きっと天国に行けるね!」
そんなおとぎ話を、エミはまだ信じているのだろうか?
「そうだね……そうだね!」
アヤカは無理やり笑ってみせた。
――天国なんて、本当にあるかどうかわからない
アヤカはエミにそう伝えることができなかった。
どうなるか、考えるのが怖かった。
天井のライトが徐々に暗くなっていく。
「もうすぐ門限だね……アヤカちゃん、今日は遊んでくれてありがとう!」
「エミちゃん……ちょっといいかな?」
「なに?」
「これ……着けてもらっていいかな?」
アヤカは、エミに指輪を見せた。
今、アヤカの指に着けている物と同じ物だ。
「アヤカちゃん……これ……!」
「おそろいの指輪。嫌ならいいけど……」
「ううん……すごく嬉しい!」
エミはアヤカの前に手を出した。まるでプロポーズみたいだなと思いながら、アヤカはエミの手を取り、その指におそろいの指輪をはめた。
「エミちゃん……今までありがとう。卒業しても……天国に行っても、ずっと一緒にいてくれるかな?」
「はい!」
エミは涙を流しながら、満面の笑みで頷いた。
「アヤカちゃん……これで私たち、ずっと一緒だね!」
「うん……ずっと一緒だよ、エミちゃん」
こうして、最後の休日は終わる。
――最後の日くらい、エミちゃんと一緒に寝たかったな……
自室のベッドで、アヤカはそんなことを思いながら眠りについた。
いよいよ明日、全てが終わる。
アヤカ達は卒業し、そして……
アヤカは考えないことにした。とにかく、地獄みたいな日々は終わるのだ。
――本当に、天国に行ければいいな……




