表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/123

80 ヴァンデルス邸

「ここかしら?」


「はい、上層で一番大きなお屋敷、という事ですので、

 まずここで間違いないと思います...」


かくして一行は、バセリア王城の一つ下の階層

王城に次ぎ、バセリアで最も荘厳で優美と言われる

巨大な邸宅前にやって来た


あたりは既に日も沈みかけている

何事も無く、ただ歩くだけだったとは言え、

遺跡の5階層程を往復し上層のこの邸宅に来るまでには

それなりの時間を消費していた


入口の大門前に差し掛かった頃、横の番兵の詰め所から

一人の兵士が出て来て、門の前に立ち塞がった


「何だ貴様らは、ここはお前たちが来るような所ではない」


随分と横柄な態度で兵士が威圧してきた

仕えている主の性格が透けて見える様である


「私達はヴァンデルス様にお会いしたく参りました

 大目通り叶えませんか?

 亜人特区でお世話になった黒い剣士一行だと

 伝えて貰えれば解ると思います」


プロメが下手に出つつ、穏便に事を図る


「何を言っとるんだ、

 ヴァンデルス様が一介の冒険者風情等と

 直接お会いになる訳無かろう!

 さっさと帰れたわけ者共が!」


「あらあら、それは困りましたね

 余り手荒な事は避けたいのですけど...

 まぁここで衛兵の一人どうこうした所で

 彼の力ならどうとでも出来るでしょう」


顔に笑みを浮かべたまま一歩、兵士に歩みを進める


「な、なんだ貴様...色仕掛けでもしようと言うのか、

 そんな手には乗らんぞ!」


「意外と忠誠心は厚い様ね、

 でも残念、色仕掛け何てしてあげる程私は優しくないの」


するとプロメが手の平に僅かな

電流を迸らせながら、振り上げようとした時


「おーい! 何してるんだ!!」


邸内の警戒に当たっていた兵士が

怒鳴りながら慌てて駆け寄って来る

プロメは上げかけた腕を一旦降ろして、事の成り行きを見守ることにした

場合によっては行動の選択肢を変えなければならない


「お前何やってるんだ!!

 この者が何か失礼な事を致しましたでしょうか?!」


怒号は門の兵に向けられたもののようだ


「あなたは?」


プロメが新たに駆けつけた兵士に声をかけた


「はっ!私はヴァンデルス様直属の警護兵をしている者であります!

 その...亜人達の村にも私も居りました故...」


後半から、歯切れ悪く言葉を濁す

隣の番兵が、疑問の表情を浮かべている様子から察すると

恐らく村での出来事は帰還後、必要最低限の者にしか

知らされていない事が伺えた


「なるほど、あの時いらっしゃったのですね

 ごめんなさいね、沢山の兵士様方が居られたので」


プロメがニコリと微笑むと

警護兵は一瞬、僅かに体を震わせた


「い、いえ!とんでもありません!

 お気になさらないで下さい!」


警護兵を見ていた番兵の顔がどんどん青ざめていく。

格上の同僚ですら最敬礼で迎える相手に対し、

自分はとんでもない無礼を働いてしまったのではないかと恐怖し

彼はこわばった表情のまま姿勢を改めた。


「こんな夕暮れに突然ごめんなさいね、

 ヴァンデルス様にお目通りさせて頂きたいのだけど

 お伝え願えないかしら?」


言葉こそ丁寧であるが、警護兵にとってその内容は

言葉通りの嘆願ではなく、もはや命令に等しかった


「はっ!直ちに伝えさせて参ります!!

 誠に申し訳ありませんが、規則上、

 少しの間だけ、こちらでお待ちください!

 すぐに戻ります故!!」


「あら、助かりますわ」


「おい!くれぐれもこの方々に失礼の無いようになっ!」


「は、はいっ!」


番兵にそう言い残すと、警護兵は

文字通り、全力で屋敷内へと駆けて行った


横にいる兵士にはもう

先程の様な、不遜な態度は微塵も感じられない

まるで新兵の様に全身に力を込め、直立している


「情けない、それでも兵士なの?

 相手見て態度コロコロ変えるなら

 最初から偉ぶんじゃないわよ」


「まぁまぁヴァレラさん...

 その...門番さんも気にしている様ですし...」


セルヴィの言う通り、番兵は顔から大粒の汗を流しながら

微動だにせず、何処か遠くを見つめている


数分程経った頃、屋敷の大きなドアが開き

中から先程の警護兵が、屋敷に駆けた時と同じ速さで

再び全力で戻って来た


「はぁ!はぁ!皆様!はぁ!

 大変お待たせ、はぁ!はぁ!」


「息を整えて頂いてからで構いませんよ、」


プロメの言葉に警護兵が一度両手に膝を尽き

必死に呼吸を整え、最後に大きく息を飲み込み

再び顔を上げた


「大変お待たせ致しました!

 ヴァンデルス様がお会いになられるそうです!

 どうぞこちらへお越しください!」


一行は警護兵に先導されながら

屋敷の正面扉をくぐった


扉の向こうの玄関ホールには、鮮やかな赤絨毯が敷き詰められ

天井から豪華な装飾照明、シャンデリアが下がっている

周囲の壁には価値のありそうな絵画

彫刻等が所狭しと飾られている


そしてゼロス達一行に、左右に並ぶ

数十人ものメイド達が皆一斉に頭を下げている

その角度はまるで軍隊の如く全員ピッタリと揃っており

みな使用人として高い練度を有している事が伺える


使用人の列の一番手前に一人、黒の紳士服に身を包む執事風の男が

一行の前に一歩踏み出すと、片腕を腹部付近に当てて一礼する


「長らくあの様な場所でお待たせしてしまい

 誠に申し訳ございません

 どうぞ皆様、こちらへお越しください」


給仕達のまとめ役と見られる執事の男が

中央の大階段を上り、屋敷の奥へと一行を導く

邸内の床という床には、ふかふかの絨毯が敷き詰められており

かなりの重量を持っているはずのゼロスですら

その重金属の足が音を立てることはなかった


程なくして一行は、それまで邸内で見かけたどれよりも

一際大きな両開きのドアの前までやってくると

執事がそのドアを二度、ノックした


「入れ」


中から男の返事が届くと

ゆっくりと重量感あるドアが左右へと開く

その際も当然の様にドアは軋み音一つ立てなかった


ドアの先には暖炉を背に

男が一人、数十人は軽く座れるだろう

大きな長テーブルの上座に腰掛けていた

亜人の村で見た貴族の男、ヴァンデルスだ


「彼等は私の大事な客人だ

 これより先は私達だけで語らいたい

 皆の者、下がれ」


ヴァンデルスがそう告げると

ドアの横に控えていた護衛の兵士二人、

執事がそれぞれ一礼し部屋から退室する


そして出ると同時に執事がゆっくりとドアを閉め

完全に閉じ切ったその時


貴族の男が突然席を立ちあがり

長テーブルの横を抜け

一行の元へと全力疾走で駆け寄るやいなや

流れる様な仕草でそのまま膝を折り

見事なタイミングで両手と頭を絨毯へと擦り付け


「誠に不遜な態度、申し訳ございませんでしたっ!!!」


男が声の限り叫んだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ