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78 遺跡観光事業

「あらまぁ、バルザックとは偉い違いね」


「まるでお祭りみたいなのです...」


「本当にここが遺跡の入り口なの?

 市場か何かと間違えたんじゃない...?」


女性陣3人が思い思いの声を上げる


一行はギルドで手続きを終えると

そのまま、その足でバセリアが管理する

遺跡入口へとやって来たのだった、が


左右には様々な出店が立ち並び

通りかかる冒険者に

威勢のいい呼び込みの声が飛び交っている


「ギルドで聞いた限りでは

 入口はこの先で間違いないはずなんですが...

 先程から冒険者の人達もちらほら見かけますし

 多分あってるはずです!」


「何よこれ...食べ物ばっかりじゃないっ!」


「これから命がけの探査に向かうって人達に

 みんなちょっと浮ついた感じですよね...」


「いや、そうじゃなくて、ギルドのランチ

 もう少し控え目にしておけばよかった!

 これ以上食べたら動きに影響が出ちゃうわ...

 あんなに美味しいそうな物が沢山、悔しい!」


「そっちですか!」


セルヴィがヴァレラにツッコミを入れるも、

確かに周囲からは香ばしい

何とも食欲をそそる匂いが漂ってくる


「しかし、バルザックと違って

 出入りする多くの冒険者目当てに

 お店が集まるのは解るのですが...あ、お土産屋さん...?

 どうして冒険と関係無い様なお店ばかりで

 肝心の探索に必要な実用品を売ってるお店が

 殆ど見当たらないのでしょう?」


不思議そうにあたりを見回しながら

一行は更に多くへと歩みを進めると

巨大な地下へと続く入口がぽっかり口を開ける


今まで見て来た埋没された遺跡の入り口とは異なり

バセリア自体が遺跡構造をそのまま活かして作られた都市の為か

ハチの巣の目を横に寝かせた様な形状の、六角形の入り口は

遺跡がそのまま表層に露出していた


入り口前に設けられた、遺跡の関所には

複数の列が出来ており

バルザックとは、文字通り桁違いの盛況さで

数十名の衛兵が皆忙しそうにしている


ただ、入場待ちの列の中に、異様さを持つ列があった

その列には、明らかに冒険者ではない、一般市民と見られる

普段着の者達、そして子供達の姿さえ見えた


「え、ええ?!、あの人達、遺跡に入っていきますよっ

 大丈夫なんでしょうか?!」


検査を終えた一団がそのまま遺跡の中に入っていくのを見て

セルヴィが慌てた、その時


「ん?お嬢ちゃん達はバセリアの遺跡は初めてかい、

 お上りさんかな?」


大きなリュックを背負う

小太りの男性が声をかけて来た


「は、はい、そうですが、貴方は...?」


「おお悪い悪い、怪しいもんじゃないよ、ほら

 お仲間だろ?さっきギルドで見かけたぜ」


そう言うと男は胸元から

見覚えのある手帳を差し開いて見せた

男はDランクの冒険者だった様だ


「俺はここを拠点にしてもう2年、バセリアで潜り続けてるんだ

 初めてこの街に来た冒険者は皆、

 最初はそうやって不思議そうに見るんだよ

 冒険者なら真ん中の列だ、右側は国絡みの連中用だな」


「あの左列の人達は冒険者では無い様ですが、子供達まで

 あんな無防備な状態でどうして遺跡に...?」


「バセリアの遺跡は、世界中にある遺跡の中では

 状態が良い方でね、他の遺跡に比べて内部に

 潜んでいる魔物が少なかったんだ。

 そこで十数年ほど前に、10階層までは

 安全宣言が出されたんだ、

 そこで表層の3階層までは

 国から許可をもらった旅行会社や教育機関が引率する

 観光客や学生達に限り、遺跡見学者として

 出入りが認められてるんだよ

 彼等もそういった連中さ

 俺も8階層の残留物の調査に行くだけだから

 見ての通り、武器の類は不要って訳さ」


そう言うと男は軽く両腕を開いて見せる


確かに装備品の中には武装の類は見当たらず

食糧や簡単な日用品、遺物を持ち帰る為の収納品ばかりであった


「なるほど...凄いですね!

 確かに冒険者さんや傭兵の方でも無ければ

 普通は遺跡に入る機会何てありませんから

 もしテストラもそうだったら私も参加してたと思います!」


「ほぉ、お嬢ちゃんはテストラから来たのか、

 あそこは眠ってる物の価値も高いが

 いかんせん魔物や崩落でかなり危険度の高い遺跡だからなぁ

 あっちで揉まれてたなら心配要らんだろう

 お嬢ちゃんも見た目に寄らず凄いんだな!

 ただバセリア遺跡も、10階層以降は魔物よりも

 遺跡の防御施設が厄介だから気をつけるんだぞ

 じゃあ俺もそろそろこの辺で、頑張ってな!」


「あ、ありがとうございました!」


テストラには冒険者として居たわけではないのだが

呼び止めてまで訂正する事ではないと

ペコリと一例して親切な冒険者を見送った


「なるほどねー、だから土産屋みたいな物が

 こんなに沢山あるわけだ」


隣で聞いて居たヴァレラが辺りを見回し、納得した様に呟く


「うーん...何か不思議な遺跡ですね...

 本当にこの街は、遺跡と共に有るんですね」


そして一行は男から教えて貰った通り中央の列に並ぶと

衛兵が手早く遺跡立ち入りの手続きを行った


「固定パーティだな、

 ええと、ガーディアンズ、ね

 メンバー4人全員揃ってるな、よし」


全員パーティタグを首元に付けていた為

出入管理は代表1名が書類に記入させられる以外

他の者は皆冒険者証を一度提示するだけ済む

という非常にスムーズな物であった

受付嬢の気遣いに感謝である


いよいよ新たなる遺跡に足を踏み入れる

関所から遺跡内まで、観光客や学生が進む箇所は

ロープによって立ち入り可能なエリアが示され

万が一にも遺跡内で一般人がはぐれ

迷子に成らない様に区切られていた


観光客の一団を横目に見ながら

セルヴィが関心していると

遺跡に1歩踏み入れた時プロメが立ち止まり、口を開いた


「都市のドーム状の外壁

 表の入り口の構造

 この内部施設...

 間違いない

 ここは私達の時代の技術によって築かれた物よ」


プロメが静かに続けた


「そして...

 

 ここは私達の時代に築かれた物ではない」

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