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62 理解者に成れなくてもせめて仲間として

コンコン


セルヴィがそっとドアの扉をノックする


「鍵は開いている」


中からゼロスの返事が返る、名乗る迄も無く

彼は誰が来たのか、そのドアを叩くより前に解っていた様だ


「し、失礼します、」


セルヴィがゆっくりドアを開けると

両手を膝の上に置きベットの上に腰掛けるゼロスが此方を向く

ベットには腰を掛けている部分以外に皺一つ付いていない

恐らく一度も横になって居ないのだろう

彼が野宿の時から、彼が休む時はいつも座っていたが

それは宿の部屋でも変わらない様である


「どうした、何かあったのか?」


「あの、いえ、何かあったとかではないんですが、」


「?」


ゼロスは表情を変えぬまま

頭の角度をほんの僅かに横に傾け

はてなマークを浮かべる


入口からゼロスの元まで速足で駆け寄ると

姿勢を今一度ピンとただし、両手を正面で組む


「ごめんなさいっ!」


深く頭を下げながら、その声は部屋に響いた


「...すまない、何の事だろうか、」


セルヴィの突然の行動に目元に若干驚きを浮かべ

少しの間を空け考え込むが再び、分からない、という仕草をする


「あ、あの今日の事で、、いえ、今日だけじゃなくて

 今までの事も色々謝りたい事があってっ!」


「良く分からないが...話したい事があるのなら

 俺で良ければ聞こう、座ると良い」


そう言うとゼロスが2つ並ぶベットのもう一つを差して促す

お互い並ぶベットに腰かけ、向かい会う形になる

セルヴィもゼロス同様、姿勢を正し、両手を膝に置き対面する


そして今日一日帰るまでの間

胸の内にあった物を全てをゼロスに話した


どれ程辛い事でも、村を救う為に行動していたゼロスに対し

一瞬とは言え、帰り際の村人達と同じ様な目を向けてしまった事


村で言い付けを守らず、飛び出してしまった事


そして今まで依存するばかりで、甘えきって居た事

本当であれば仲間として誰よりも

信頼していなければいけなかった筈なのに

それすらも出来て居なかった事


その全てに対して、セルヴィはもてる限りの

言葉と気持ちを込めて全力で謝罪した


「なるほど、その様に感じてしまっていたのか、

 気付けなくてすまなかった」


最後まで黙って聞いて居たゼロスが

一通り聞き終えて口を開く


「い、いえっ!謝るのは私の方でっ」


「当時、敵の情報や特性を知らない中

 状況が理解出来ず、混乱するのも無理はない

 ましてや君は訓練を受けた者ではないのだから

 当然の反応だろう、気にする事は無い」


「確かに私は戦う事の訓練何て受けた事が有りません

 そういった心構えも出来てない、ただの一般人です...

 でも私は今、ゼロスさんと一緒に旅をする仲間です!

 だからこれは謝らなきゃいけないと思います

 救いたかった命を手に掛けなければならない事が

 どれ程辛かったか、誰も理解してくれない中

 せめて仲間なら私が最後までゼロスさんを

 誰より信じて無きゃいけなかったんです!」


「大丈夫だ、慣れている」


「でも慣れてる事と、何も感じない事は違いますよね...」


「ガーディアンズは俺達のシリーズまで皆

 過度な感情の高ぶりはDリアクターに異常を来たす為

 サイバネティック手術の際

 感情抑制を施されている、問題無い」


「でも...抑制って言うのは我慢できるっていう事であって

 痛みを感じなくなる訳では無いのですよね」


「ふむ、そうとも言えるが...」


「プロメさんが前に言ってました

 自分は何処まで人間らしく振舞う事は出来ても機械なのだと

 そしてどれ程人間離れした存在であってもあなたは人なのだと」


「...」


セルヴィが立ち上がり、1歩ゼロスに近付く

背の低い彼女はその状態で座ったゼロスに対し

頭一つ分程、上になる程度だった

そして強い意志を持った瞳でゼロスの赤い瞳を見つめる


「私はもう二度と迷いません

 理解なんて分かった様な事は言いません

 でも私は仲間としてどんな時も信じます!

 今後何があっても私はあなたの味方で居続けます」


「ありがとう、だが大丈夫だ、俺は問題ない」


そう答えた物の一瞬、ゼロスは瞳を逸らしそうになる

それが何故かはわからなかった


「なら、どうしてあなたの瞳は寂しそうなのですか

 大丈夫な事とは辛くない事とは違うのです...」


「俺はそんな顔を...していたのだろうか」


「はい...甘えるばかりで、今まで気付いて上げられなくてごめんなさい...」


「...っ」


その時、セルヴィが更に一歩前に踏み出し

そっとその両腕でゼロスの頭を抱きしめた


「...これは?」


胸の中でゼロスが問う


「良くゼロスさんは、私が不安な時や、辛い時

 頭を撫でてくれるじゃないですか

 それと同じで、良く子供の頃隣に住んでた男の子が

 お母さんにこうして貰っていたので

 少し安心出来るかなって」


「そうか、」


「あ、やっぱり嫌、ですか?

 その私...母性的なの...あんまり無いですし...」


「?」


無い、とは何を挿すのか分からなかったが

顔の温度センサーが彼女の体温を

嗅覚センサーが様々な香りを感知する

それは彼女の温もりであり、匂いなのだろう


「いや、不快ではない」


不思議と不快感は無かった

それはセンサーの情報による物ではなく

機械のパーツではなく、まだ人としての何かが

あたたかいと感じていた気がする


「なら、良かったです」


セルヴィが微笑み、少しだけゼロスの頭に回す腕を

今一度抱き直す


「私には、ゼロスさんがどれ程沢山の物を

 背負ってるかなんて、凄すぎて

 とても全ては理解出来ません

 でもこれからは、ほんの僅かでも

 一緒に背負わせてください...」


「...」


「昔にも、ああいう事は沢山あったのですか...?」


セルヴィがそのまま頭の上から語り掛ける


「...ああ」


「その時、ゼロスさんの隣には

 他の仲間は居なかったのですか?」


「...多くは無いが、居たな、」


—何時だっただろうか...それ程前の出撃では無かったと思う

 同じ様な暖かさを感じる事があった

 俺を仲間と戦友と呼んでくれる者達が居た時の事だ


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