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41 Eランク冒険者

「お疲れ様、大丈夫だった?」


受付に肘を着き、手を顎に当てながらプロメが出迎える


「ああ、問題無い」


「まさかあんた...」


受付の女性が予想した中で

最も低い可能性であった事に思い巡らせた時だった


「リンダぁ!小僧に登録用紙を用意してやれ!」


豪快な声を震わせガルムが入ってくるなり、受付の女性に指示を飛ばす


「は、はいっ!」


考えるよりも先に体が反応する様に、女性がすぐさまカウンター下から

プロメに渡した物と同様の用紙を出す


「彼女に代筆を頼んでも構わないか?」


プロメを示しながら受付に問う

見た文字を瞬時に翻訳表示させる事は可能だが

自分で書くと成ると絵の模写に近い為だ


「は、はい...構いません...」


いつの間にか口調も敬語になっている

それほどまでガルムとの上下関係は強いらしい

プロメが用紙に記入を始めると同時に

装備を外したガルムがやってきた


「俺も昔は冒険者としてそこそこ名も通ってたんだが

 ああも一方的にやられるとはな、はっはっはっ!

 しかし小僧、お前すげぇな、一体なにもんだ?」


「それに答えるのも、試験に必要なのか?」


「いや、冒険者になろうって奴は色々あるもんさ

 冒険者になった後の行動には責任が伴うが

 過去の経歴は関係ねぇ、

 問い詰めるつもりで聴いた訳じゃねぇんだ

 野暮な事聞いちまったな、すまねぇ」


「そうか」


ゼロスが短く答えると


バタン!!


「リ、リンダさん!」


先ほどセルヴィを試験室に案内した若い職員が

あわてた様に試験室から飛び出してきた


「こ、こんどはなんだいっ」


もう勘弁してくれと疲れた様子で問う

すぐさま受付カウンター内に入った若い職員が

1枚の用紙をリンダという受付女性に渡す


「これを見てくださいっ!」


「ん、あの子の答案?...いったい何がって...っ!これは確かなのかい!」


「はい、一切不正を働いた様子は見当たりませんでした

 それどころか殆ど筆を止める間もなく、まだ試験時間も半分以上...」


「ほぅ...特別なのは小僧や姉ちゃんだけでなく

 あのお嬢ちゃんもって訳か、参ったねこりゃ」


カウンターから半身を中に差し入れたガルムが答案を見て頷く


「ギルドマスター...魔技師試験の満点なんで

 うちのギルド始まって以来、初ですよ…」


「その試験で満点合格するっていうのは、どれ程凄い事なのかしら?」


聴いていたプロメが問う


「まぁ知識が重視される魔技師試験を受けようって奴は

 普通はもっと魔技工房や魔技研究が盛んな都市で受けるもんで 

 こんな街のギルドで受ける事自体稀なんだが

 それにしたってそういう大都市のギルドでさえ

 数年に一人居るか居ないかだ、十分過ぎるほど快挙だろう」


「まぁ」


ガチャ...


「あ、あの...」


そんな時試験室に一人取り残されていたセルヴィが

やや不安そうな表情を浮かべ、ドアから顔を除かせる


「もうここから出ても大丈夫でしょうか...?

 試験の結果ってどうだったのでしょうか?」


それを見たガルムがニカッと親指を突き出し


「心配するな、お譲ちゃんは合格だっ!」


「誰ですかっ!?」


ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー


「はわわっ...ギルドマスターさんとは知らず

 先ほどは失礼しましたっ」


必要書類の記入を済ませ

状況を教えてもらったセルヴィが慌てて頭を下げる


「はっはっはっ!構わねぇよ

 そういう役職めいたのが面倒だから

 普段はバーテンしてる訳だしなって、お、もう出来たか」


ガルムが女性職員から3枚の手帳の様な物を受け取る


「おう、これがお前らの冒険者登録証だ!

 無くすんじゃねぇぞ、もし無くした場合は登録した街のギルド

 つまりここに来ないと再発行はできねぇ

 加えて悪用を防ぐ為に紛失した際の状況が詳しく精査され

 再発行の際は手数料としてもう一度金貨2枚

 何度も紛失した場合は転売等の疑いで

 差し止める事もあるから注意しろよ」


一枚一枚、注意説明しながら登録証を手渡していく


開いて中身を確認すると、自分の名前・登録したギルド

任務履歴などを記載する為の空白のページが多く並んでいる

まるで22世紀初頭まで使われていたパスポートという

紙媒体の国家間登録証の様だ

後に完全電子化され、この様な形のあるものでは無くなったが


「他の街で冒険者業を行う場合は、まずその街の冒険者ギルドで登録しろ

 でなきゃ、その街の依頼や冒険者権限の恩恵は受けられねぇぜ

 登録はこいつを見せるだけで良いからそう難しい事じゃねぇ」


「このEというのはなんだ」


手帳最初のページの名前のすぐ横には大きく”E”と

金色の金属性の型がエンブレムの様にはめ込まれている


「そいつは冒険者のランクを示す魔術刻印だ、改ざんはできねぇ

 ランクはEからSまで振り分けられ

 任務達成の実績・期間、冒険者としての素行等により

 昇格する、昇格するとランク指定の依頼を受けれたり

 各ランクに応じて、立ち入り制限等が解除されるって訳だ」


「この街の遺跡にはこれで潜れるのか?」


「ああ?お前らこの街の遺跡に潜りてぇのか?」


意外そうな顔をガルムが浮かべる


「そうだ」


「知ってるかも知れねぇがこの街の遺跡からは

 神機モドキしか出てこねぇぞ?

 態々潜ろう何てトンチキな奴ぁ遺跡学者位なんだが...

 まぁいい、ただどっちにしろ無理だ

 バルザックの遺跡立ち入りが許されるのは

 Dランク以上の冒険者からだ

 これでも遺跡の立ち入り制限の中では最低ランクだがな」


「どうすればランクを上げられる」


「まずはEランクの任務を一定数以上こなした上で

 半年以上の冒険者業の実績が必要だ」


軽く背後の依頼書に目を通すと、Eランクでも受けられる内容は


・薬草採取の手伝い

・下水道の害獣駆除

・巻き割りの助手

・荷物の運送


等といった特に危険性を伴わないような所謂”雑務”が多い様である


「なるほどね、素行調査も兼ねて

 まずは訓練期間を設けているという事ね」


「そういう事だ」


プロメが出した結論にガルムが腕を組み肯定する


半年もの期間があればある程度その者の、人となりは見えてくるだろう

短絡的な癇癪を起こす様なものであればその時点でボロが出る

また、試験を通ったとしても、即時冒険者として

魔物との戦闘や遺跡探索等に従事できるだけの体力、技術があるとも限らない

その期間に少しでもその底上げを行ってから冒険させる

言わばこれは新米冒険者の為の訓練期間という事なのだろう


「それ以外に昇級する手段は無いのか」


ゼロスが続けて問う


「飛び級か、あるにはあるが~...Sランクもそうなんだが

 やろうと思って出来る、なろうと思ってなれる類のもんじゃねぇ

 お前さんらが普通じゃねぇってのは良く分かったが

 こればかりはどうにもならん、あきらめな」


「そうか」


「仕方ないですね...

 今回は皆無事に冒険者になれた事だけでも

 良しとしましょう!」


「セルヴィちゃんの言うとおりね

 因みにその”特例”の条件って何なのかしら?」


「ああ、そりゃ・・・」


ガルムがプロメの問いに答えようとしたその時だった


バタン!! ガシャンッ!!


激しくギルドのドアが開いたかと思うと

突然入ってきた鎧を着た男がそのまま床に崩れ落ちた


「お、おいっ!大丈夫かっ?!」

「こいつ2日前、王都の調査に向かって行方不明になった

 調査隊の捜索に向かった奴らの一人じゃねぇか!」


周囲にいた物が慌てて駆け寄る

どうやらここの冒険等の顔見知りの様だ


男は左肩と右腿に深い刺し傷の様な傷を負い出血している

他にも所々鎧は砕け、打撲、擦り傷が伺える

他の冒険者に抱えられた男が顎を震わせながら口を開いた


「みんな...にげろ...化け物の大群が...やって...くる...」

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