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33 別れ、そして夫々の道へ

「なんと...あんたらは古代人エンシェントじゃと言うのか...」


「あなた方から見れば、そうなるだろう」


一同ドミルの工房に戻り、セルヴィから経緯の説明を受けたドミルが

信じられぬと言う様子で漏らすと

ゼロスが彼女の話が事実である事を肯定する


「あれ程の力を見せられれば信じざるを得なかろうな…」


そう言うとドミル窓から、日も傾き夕暮れに染まる

上半分を失った山々を、納得する様に見詰める


「いや、しかしあんた等が何者であろうと

 この子の恩人であることには変わらんよ

 それどころか村まで救って貰って感謝しきれん程じゃ」


「でも本当に凄かったですよね

 あれ、プロメさんがやったんですよねっ?

 あんな力あればどんな魔物もイチコロですね!」


ドミルの隣に座るセルヴィが

幼い少女の様に目を輝かせる


「フフ、ただあれはあと一回しか使えないんだけどね」


「え、じゃああれは、2回切りの貴重な事だったのですか...?

 あ…だからプロメさんが事前にゼロスさんに確認をっ」


「構わない」


「で、でも…」


「使える物は使える内に使うべきだ

 出し惜しみして使うべき時を逸し

 結局最後まで使えず無駄にしてしまう事もある

 少くとも今回使用した事は意味があったはずだ」


表情一つ変えず、ゼロスが淡々と語る


「あら、貴方にしては良い事言うわね」


「事実を言っているだけだ」


やれやれ、といった感じでプロメが肩を竦めた


「時にお前さん方、これからどうするつもりじゃ?

 行く当てはあるのかね」


プロメが要所を掻い摘んでドミルに説明する


「と言う訳でまずはここから近傍の遺跡都市を目指し

 冒険者登録を行いたいと思っていますのよ

 今回は成り行きで、かなり大きな動きをしてしまったけれど

 出来れば穏便に行動出来ればとは思っております」


「なるほどのぅ...それならここから北西に120㎞程の所に

 バルザックという3級遺跡都市があるのじゃが

 そこでなら冒険者ギルドの登録も出来るじゃろう」


「でもドミルさん、あそこはっ」


セルヴィが心配そうに言葉を挟む


「うむ、あの都市は余りガラが良い場所とは言えんな 

 じゃがだからこそ、多少無理も効く

 ハッキリ言ってあんたら二人は普通じゃない

 通常の窓口での登録は警戒されるかもしれん

 それに、」


ゆっくりとドミルがプロメに視線を向ける


「お嬢さんのその光の輪

 それにその事務的な服装では旅をする

 冒険者に成る者としては余りに不自然じゃ」


そして次にゼロスへと顔を向け


「そして何よりあんたのその鎧、何とか成らんか?

 儂も長年様々な遺物・神機を見て来たが

 そんな複雑で完璧な機械は見た事が無い

 見る者が見ればそれだけで

 尋常成らざる物だとばれるじゃろう」


「ふむ...」


ゼロスが今一度自分の体を確認して頷く


「ミラージュ・イミテーション起動」


そう呟くとゼロスの鎧が霞がかり

淡くぼやける様に、その見た目を変えて行く


基本漆黒の鎧である事には変わらないが

若干フォルムに丸みが加わり

間接や各所装甲部位等のつなぎ目が

あたかも通常の甲冑の様に変化する


鎧全体で光を発していたエネルギーの流れは

水色の水晶上の装飾へと姿を変え

胸・肩・小手・脛等にはめ込まれる様な外観となった


「なんと!その鎧は形状をも変える事が出来るのかっ!」


ドミルが驚嘆の声を上げる


「いや、本当の形そのものは変わって居ない

 光の屈折を利用した、まやかしの様な物だ」


「ほぉ、いやぁ驚かされる事ばかりじゃ」

 

驚きつつも繁々と細部を観察していく

セルヴィ同様少しづつ驚愕に対する

耐性が出来始めている様だ


「本来の体積以下に映す事も出来るが

 完全な透明化は僅かに揺らぎが目に見て取れる

 一瞬ならそれもいいが

 常に見せる物であれば、ある程度

 実体に近い体積と配色になってしまう」


どうだろうか、と軽く両手を開いて見せる


「うむ、これならまぁ大丈夫じゃろう

 多少フォルム的には珍しい鎧

 位には見られるじゃろうがな。

 という事はそちらのお嬢さんも...」


「ええ」


ドミルがプロメに向き直るとニコリと答える

そして席を立つと体全体を白い光で包み

次の瞬間には胸回りを覆っていた光の環は

外回りを覆う金属製の装飾マントへと変わり


耳元につけていた通信用と見られる神機は

ヘアバンドと凝った装飾の方耳飾りに


当初の事務服はネクタイを残し学者の様な

体にフィットしつつ、袖など各所に余裕を残した

ローブへと変化していた


「わぁ...まるで賢者様みたい...」


見ていたセルヴィが漏らす

彼女から見たその姿はまるで、幼少の頃見た絵本に出て来た

どんな魔法をも使いこなす大賢者の様であった


「ちょっと派手過ぎたかしら?」


「まぁ問題ないじゃろ、冒険者何て連中は

 元々酔狂な奴等も多いからのう

 それ位個性が強い方が返って自然かもしれん」


村に居た群衆の中で冒険者らしき者達も見受けられたが

確かに衛兵や王国の兵士などとは異なり

似通った物はあれど、誰一人として

全く同じ服装、装備をしている者は居なかった


冒険者とは皆、ある程度個性を主張する者達らしい


「何にせよ今日はもう日が落ちる

 出立するなら明日がよかろう

 儂はこの後、出発する難民達の

 魔具の調整を依頼されておっての」


そういうとドミルが席を立ち

沢山の工具が入っているとみられる革袋等

身支度を始める


「ここに来る途中、村の堺と工房の中ほどに

 家があったじゃろ、あれが儂の寝床じゃ

 客間もある故、自由に使ってくれ

 こんな事くらいしかできなくて悪いのう

 セルヴィ、工房の戸締りと案内を頼むぞ」


そう言うとドミルは荷物を抱え、工房を出て行った

残された者達に一瞬の間が入る


「あの...」


最初に口を開いたのはフレイアだった


「私はこの村で皆さんとはお別れです」


「え...」


セルヴィが思わず声を上げる

文字通り狂信的なまでにプロメに接していた彼女が

自らその元を離れるという言葉が意外だったのだ


「私はこの後、村の教会に向かおうと思います

 元々私がこの村を目指していたのもその為ですし

 それに今は沢山の方が救いを求めております

 私は明日、彼等《難民》と共に、公国に参ります」


当然と言えば当然の事であった

彼女は元々アール村の教会目指し

救いを求める人々を救う為に旅をしていたのだ

ここ数日の奇行…強すぎる信仰により忘れていた


「そう、寂しくなるわね」


「お傍にお仕えする事叶わず、心苦しく思います

 しかし必ずや貴女様や最高神様の御心

 皆に伝えてまいります、それが私の役目と思っております」


「いいのよ、また何れどこかで会いましょう

 貴女に神の加護あらん事を願っているわ」


彼女なりのサービスだろう、

敢えて神の名を出しエールを送る


「はいっ!ご一緒出来た名誉、決して忘れませんわ

 後、あの馬車は皆さまで自由にお使い下さい

 元々あれは私の物ではございません...

 きっと皆様が使われた方が彼等も喜ぶと思います

 それでは、皆さんお元気で」


席を立ち、深々と礼をすると、

彼女またゆっくりと工房を後にし

工房には3人が残された


「でも...馬車の動力魔具、誰も動かせないですよね...」


ぽつりとセルヴィが呟く


「あの魔具という機械の構造自体は

 それ程複雑な物ではないわ、問題はその動力源ね

 ゼロス、予備電源に使ってた多目的兵装バッテリーは

 もうチャージ出来てる?」


「ああ」


プロメに振られそう答えたゼロスがゆっくりと

襟元から長方形の5㎝程のスティック状の機械を取り出し

そのままプロメに渡す


「あ、それは森で私がゼロスさんに差し込んだ奴ですね」


「そうよ、これはエネルギーと溜めておく機械なの

 これをあの動力魔具に組みこむ事が出来れば

 魔法の力が無くても動かせるはずよ」


「凄いです...それって今までずっと色んな魔技師の方が

 それこそ国を上げて研究して来た事の一つですよ!」


「ふふ、お姉さんに任せなさい

 じゃあ、悪いけど彼を家まで連れてて貰えるかしら

 良いわね?」


前半はセルヴィに向け、後半はゼロスに向け問う


「ああ、分かった」


「あら素直な事、てっきり

 「俺には休息は必要ない」

 とでも言うかと思ったのに」


「あははっゼロスさんそっくりです」


「...」


「ここでジョークの一つも返せない様じゃ、まだまだね

 でもまぁ、貴方にしては大きな進歩よね」


「そうか」


「そうよ、という訳でお願いね?」


「はいっ!任せて下さい!

 じゃあ行きましょう、この村は私の庭も同然です!」


自信満々という様子でゼロスの手を引き

外へと連れだして行った


「あら...戸締りは良いのかしら...?」


一人残ったプロメが困った様に呟いた

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