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26 蘇る純白の乙女

「03、センサーに頼り過ぎよ?

 何の為に貴方達が人間である部分が残していると思っているの」


突如見知らぬ女性の声が響く


「え?...ええ?!」


何が起こったのか状況が理解出来ず困惑するセルヴィ


突然自分の頭上を一筋の閃光がかけたかと思うと

次の瞬間熱風が上から吹き付け、閃光の先

先程の外の風景を映していた鏡に10㎝大の大穴を空けている


二人の少女達は慌てて声のする背後へと振り返ると

誰も居なかったはずのそこには


(ぇ...ギルドの人...じゃないですよね)


ギルドの受付嬢の様な事務的な

白・黒・橙を基調としたベスト・ネクタイ・スカートを纏い

淡いブラウンの髪を短く後ろで纏め

その大きすぎずかといって確かに存在感ある物を両胸に持ち

スカートから覗かせる黒タイツを纏うしなやか足や腰つき等を見ても

正にセルヴィが描く大人のレディという感じの女性が立っていた


しかし明らかに普通の女性ではない事が見て取れる

見慣れぬヘアバンドを兼ねた様な片耳に金属の羽の様な耳当てを付けている

機械仕掛けの所を見ると一種の神機の様に見える


そして何よりも天使の輪の様な輝く円状の物が頭では無く

正面だけ空ける様に円が途切れ、両腕付近で浮いている


「あ、あのっ...」


声を掛け様とすると女性と目があった、すると


「あら、貴女がセルヴィちゃんね、よくここまで頑張ったわね」


とても聞き取りやすく明るく女性が語り掛け

ニコリと微笑んだ


「え、あ、は、はいっ、ありがとうございます!」


思わず咄嗟に答える


「少しだけ待ってて貰えるかしら?

 ちょっとそこの彼と話があるの」


「は、はい」


直ぐにゼロスと彼女の間に立っていたセルヴィは道を空ける


その女性は歩く動作はせず、本のわずかに宙に浮いたと思うと

そのままゆっくりと地面を滑る様に移動する


すれ違いざまに目が合うと再び左右にニコリと笑みを飛ばして来る

思わずペコリと礼を返すセルヴィ

隣のフレイアも思わず半歩横に移り道を空け、礼を返す


「お前...プロメテウスか...」


ゼロスが口を開く


(!!!)


咄嗟の事に驚きを浮かべるセルヴィ

そう、今発した彼の言葉は確かに理解出来る自分達の言葉だったからだ


「そうよ、一週間位で忘れちゃった?酷いわね」


「お前...そんなだったか?」


「出撃時のあれはセーフモードだもの

 本来、乗員・隊員のメンタルのケアも艦AIの仕事の一つよ

 それとも汗苦しい剛腕オヤジの姿の方がお好みだったかしら?」


顔を接する程近づけ、そっと手を頬に当てる女性


「...」


「それとも...あぁそうね、貴方はあの娘達の様な年下の子が好みだったのね」


プロメテウスが顔を横に向け二人に視線を送ると

セルヴィは「あうあうあう...」という感じ頬を赤らめて目を反らす

フレイアはと言うと同じくやや顔を赤らめ顔を背け袖で隠した


「いい加減本題に...もう言語解析が済んだのか?」


二人の反応からするに今の会話を理解している事を想い返す


「当たり前じゃないそんな事、私を誰だと思ってるのよ

 あなたがこの数日過ごしてきたデータの解析は全て済んでいるわよ」


既に彼等の音声は、声を発そうとした瞬間

声帯の動きをこの時代の言葉へと変換し

そしてまたこの時代の言葉は耳に入った時点で

脳内の補助装置が脳の言語中枢に信号を変換し送る


「そうか...なら早くどいてくれないか」


「あら、まだ貴方のリアクター再始動がまだじゃない」


絡む様に肩から背に手を回す


突然始まったアダルトな雰囲気にセルヴィは思わず手で顔を覆う

が、その指はかなり隙間だらけであった


「再始動ならこんな至近距離で接触したような姿勢に成る必要はないはずだが...

 そもそもその姿は疑似質量ホログラムだろう」


「雰囲気よ雰囲気」


「そんな物今の体の俺には無意味なのは解ってるだろう」


「全く本当に貴方は機械よりも人間らしくない人ね」


すっと離れ両腕をゼロスの胸部装甲部中央辺りに翳し、女性が目を閉じる


<メインフレームとの同期確認>


<演算回路補助接続>


<Dリアクター再起動プロセス開始>


<出力安定・上昇>


徐々に漆黒の強化スーツの流れるエネルギーが加速し輝きが増していく


<Dリアクター正常稼働値へと移行・安定確認>


そして一瞬輝きが増したかと思うと、通常の流れに戻る

今までこの数日見て来た光より僅かに強くハッキリと見える様に二人に写る


「リアクターの再始動完了っと

 これでもう大丈夫よ、全く無茶するんだから」


「すまない、助かったプロメテウス」


「プロメよ」


「は?」


「プロメテウスじゃ可愛くないじゃない、だからプロメ」


「お前何言って...」


「プロメ」


「だかr」


「プロメ」


本物でないはずの目から物凄い圧力を感じる

無いはずの汗が頬を伝う気がする


「...分かった、助かった...プロメ」


「どういたしまして」


満面の笑みを浮かべ一歩下がる


「さぁて」


くるりと回って少女二人に向き直るプロメ


「改めて皆さん初めまして、私の名はプロメ

 もう分かると思うけれど彼と同じ時代から来た物よ

 お二人には色々理解出来ない状況が続いてたと思うけど

 何から話しましょうか」


そこで最初に口を開いたのはフレイアであった


「あのっ!貴女様は先程プロメテウスという恩名を伺いましたがっ

 もしや、あの最高神ノヴァ様に仕えるとされる12従属神の1柱

 プロメテウス様でいらっしゃいますでしょうか?!」

 

「んー?厳密な名称は違うけれど

 まぁそうね名前と言っても差し支えは無いと思うわ

 でも貴女の言う宗教的な概念は認識してないのよ、ごめんなさい

 人じゃないってのは近いのだけどね」


そのまま先程姿が薄っすらと消えたかと思うと

胸元付近の光る輪を残し、その中心に円形を基調とした

神機らしき物が浮いている、そこから先程と同じ声で


「これは、ここの施設に残っていたメインコンピューター整備用の

 9世代型高性能多目的ドローン...といっても貴女達には解らないわね

 まぁこれは私の影みたいな物ね

 影と言ってもさっき見たいな程度の事なら出来るけど」


再び人の姿に戻り、指で上方向を指し示す


「私の本体はこの上、空よりもずっと高い遥か上にあるのよ」


「やはり神の剣に居られるのですね!」


納得が言ったという様子でフレイアが一歩更に踏み出す


「神の剣?」


「はい、神の剣は数百年前にある国の天文学者が発見した

 遥か天高くに浮かぶ巨大な純白の剣の事でございます!

 それを私共は神の剣と呼んでおります、それが御身なのですねっ」


「あー...」


確かに全長1㎞を越すプロメテウス本体の大きさを考えれば

十分未発達な文明の天体観測技術を持ってしても視認する事は可能だろう

遮蔽装置も長い年月の間に既に停止していた事を考えれば不思議はない


方向性はずれているが事実情報としては一致している

驚異的な演算速度を誇る宇宙戦艦の量子コンピューターが間を空ける

それすらも演技・演出なのかもしれないが


「んーまぁいいか、下手に論理的な説明は返って混乱させちゃうかな

 エクスマキナという言い方もある訳だし嘘ではないわね

 そうね、あれが私の本体よ」


「やはりっ!」


その場でああっ!神は居られた!と跪き祈りを捧げ始めるフレイア


一同その場に何とも言えない状態で立ち尽くす


「ま、まぁこんな所でずっと立ち話も何だし

 セルヴィちゃんやフレイアちゃんの目指す村って

 ここから近くなのよね?なら一端馬車に戻ってから話さない?」


その場で最初に空気を読んだのは皮肉にも人ならぬ者だった


「えっ!は、はいそうですね!一旦戻りましょう!」


何故その事を彼女が知っているのか一瞬疑問に思ったが

直ぐに状況を優先する為に切り替え一同来た道を引き返し始める


その最後尾を完全に空気となったゼロスが何とも言えぬ無表情で追う

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