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24 草原に眠る遺跡

夜が明けると、再び私達は日の出と共に移動を開始した


ゼロスさんが指で方向を指し

その方向に合わせフレイアさんが馬車を進ませる


ただ何も無い大草原をただ進み続ける


そして出立してから二刻程が経った頃

突如ゼロスさんが静止を掛け馬車を停止させる


馬車を降りると彼はゆっくりと数歩歩み出る


その様子を馬車の中の私達も観察するものの

周囲は先程と同じくただ草原が広がるだけで

特に変わった様な物は何も見当たらないように見えた


すると彼が何か口を開き僅かに話をしている様だ

内容は距離と声量で聞き取る事が出来なかった

聞き取れたとしても多分理解出来ない言葉なのだろうと思う


そうして程なくして


ゴゴゴゴゴゴゴ...


「な、何でしょう!?」

「地面がっ!」


突如地響きと共に周囲の大地が揺れ始める、そして

突然ゼロスさんの立っている先の地面が真っ二つに裂け始めた


ゴゴゴゴ......


地響きが収まるとそこには

数メートル大に地面が裂け奥へと長く続く巨大な坂道が続いていた

そしてその坂道や周囲の壁の素材には見覚えがあった


遺跡だ




ーーーーーーーーーーーーーーー




途中、救助した聖職者の少女の操る馬車により

行程を大幅に短縮する事が出来た。


この分ならもう間もなく目的地に着く事だろう

二人目の少女も恐らく聖職者、であれば非戦闘要員なのろう

共に自分の意思で随伴に協力的で居てくれる事はありがたいが


現状、止む無いとは言え本来であればこの状況は好ましくない

成るべく早く現状を打開し

可能であれば安全地帯に避難させるべきだ


その為にも今は一刻も早く母艦プロメテウスとのリンクを復旧させなければ


周囲の警戒を絶やす事無く、様々な思考を張り巡らせる

そうしているうちにやがて目標地点の座標が近づく


直ぐに馬車を操縦する聖職者の少女に静止を呼びかける


この二人とは言葉は通じずとも

簡単な意思疎通は大分円滑になった様に思う


馬車が停止すると施設の正面ゲートと思われる位置に移動する


「施設制御プログラムにアクセス

 認証コードLG031151、優先権限SS」


網膜に施設情報、稼働状況等が次々と表示される


(よしメインコンピューターはまだ生きているな

 リアクターは全て停止している...か

 だがエネルギー貯蔵タンクの2つがまだ生きてるな

 送信用アンテナ自体も破損していない様だ

 メイン制御室は...)


目標地点までの最適ルートを表示させる


「メインゲート開錠」


すると、長年使っていなかったであろうメインゲートの巨大な隔壁が

大地を二つに先、轟音を立てながらゆっくりと開放されて行く


内部に腐食は見られず構造自体はそのまま維持されて居る様だ

ゲートが全て開ききると、非常電源で稼働している為

奥に向け左右の誘導灯がのみが光る


二人は...このままここに残していく方が危険か

振り返ると二人は意を察した様に馬車から居り

此方へと歩いてくる


そして再び振り返り硬質な床に金属の足音を立てながら

ゆっくりと進み行く


内部に入ると直ぐに異変に気付く


内部構造自体は完全不動能皮膜が形成された合金により作られている為

腐食による損壊は認められない


しかし所々壁が破損し、外部の岩土が露出している部分が露見される

恐らくだが人ではない何かしらの生物によって外部から破られた様に見える


(敵性生物を警戒した方が良さそうだな)


各種センサー感度を高め、特に後方を警戒しつつ前進を続ける




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




彼にいざなわれる様に少女2人が後に続く

先程まで真っ暗だった通路が、まるで自分達の存在を感知したかの様に

その周囲と少し先の壁が光り道を指し示している


「やっぱりここはエンシェントの遺跡なのですね...凄い技術です...」


「私も直接遺跡に入るのは初めてです...

 まるで法王教会の様な...何と神々しい...」



途中幾度と無く現れる金属と思われる重厚な扉も

私達がその前まで進むと自分から勝手に道を開いてくれた


「これは一体どういう事でしょう...?」


「うーん...多分ですがゼロスさんが空けてるんだと思います...」


「何と...ではあのお方がエンシェントであるという話

 いよいよ信じざるを得なくなってまいりましたね...」


「やっぱりそうとしか説明付かないですよねー...」


本来であれば未知の遺跡の調査は最精鋭の冒険者・傭兵等が

慎重に慎重を重ねて進んでいく物だが

何処と無く気の抜けた世間話をする二人


地下には巨大な空間が広がっていた

その壁、柱一つに至る迄とても今の技術では

到底真似できない様な精度の形状を持ち

そのどれもが理に叶った形状であるのが直観的に見て取れた


進むにつれ、壁に開いた穴から侵入したのであろう

魔物が姿を現すが、まるでそれを全て事前に知っていたかの様に

ゼロスが視界に入るか入らないかのうちに瞬殺して行く


態々相当な強度を持つ外壁を破り、地中深くの遺跡に魔物が集まるのは

やはり魔物が遺跡のエネルギーに引かれていると言う説は正しいのかもしれない


草原のブラッドウルフクラスの魔物は居らず

蝙蝠やネズミ型の魔物が主である様に見えたが

そのどれも通常の人間であれば十分苦戦を強いる物なのだろう

隣に居るフレイアが若干呆れた様に汗を浮かべその光景を見ている


実際セルヴィの勘は当たっていた

実は先日のブラッドウルフは魔物単体としての強さは

ある程度経験の積んだ冒険者・傭兵であればそこまで無理なく倒せる物なのだが


ブラッドウルフの最大の特徴としては群れを成し

集団で連携して襲ってくる点である


その点先程ゼロスが瞬殺していた魔物の中には

魔物単体の強さとしてそれを上回る物も含まれて居たのである


「いやはや...最早あの方の動きは神の御業の域でしょう」


「はい...でもあれでも多分...全然本気じゃないです」


「何と...」


そのまま特に問題も無く...いや

本来普通なら問題になる様な事は幾らでもあったはずなのだが

ゼロスの先導により難なくと遺跡内を進んでいく


そして半刻程内部を進み続けた頃

目の前には今までのどれよりも巨大な扉の前に辿り着いた

神殿の様な荘厳な彫刻等は一切無く

デザインや質感自体は今までの扉と変わらなかった


しかし明らかにその大きさや恐らく厚みも違うのだろう

そんな扉もやはり


ゴォォーーー...


ゼロスが前に立つと重く、しかしどこか滑らかな音を立てながら

ゆっくり巨大な扉が下から上へとせり上がっていく

そしてやはり途中見える扉の厚みは優に10㎝を越していた

恐らく今の人類が如何なる手段をもってしても破壊は不可能な強度を持っているのだろう


後ろの二人は特大の汗マークを浮かべながら

魂の抜けた笑いを浮かべる事しか出来なかった


扉が開いた先には


正面に巨大な黒く塗りつぶされた鏡...とでも言えるだろうか

とても滑らかな表面を持つ巨大な黒い鏡がみっつ横一列に並んでおり

その足元には今までとは比較に成らぬ程精巧な造りをする装置が並べられている


恐らくここが遺跡の中枢であり

この施設の技術の粋が集められている場所なのだろう


そしてゼロスがそのまま奥に進み、装置の一部に手を触れると


ファアアアア


辺り一面が眩いばかりの光に包まれる


先程まで何も映って居なかった正面の鏡の様な者には

様々な文字、記号が光で映し出され

周囲の全ての装置が様々な光を発していた


「遺跡が蘇ったのですか?!」


「おぉ...神よ...」


すると程なくして


ー******、*******、********、*****-

ー*********、**********、*******-


正面の装置から聞き覚えのある無機質な音声によるアナウスが始まる


(あれ...今の最初の部分ってあの神機と同じ)


セルヴィにはそのアナウスの一部に聞き覚えがあった


そう、三日月亭で解析していた神機を起動させた時の物だ


(後半からは少し違いますが...前半は多分...)


すると装置を操作していた彼がその声と会話する様に言葉を発する

少し渋い顔をしている様に見えた

厳密には彼の表情は殆ど動いていない、だがそんな気がしたのだ


自分が何が出来るとも思わなかったが、そっとゼロスの横に近付くと

彼の前には目まぐるしい程細かく文字により何かが表示されている


ただその中で一点、彼女には見覚えのある箇所があった

それは表示右下で点滅を繰り返す


【Y/N】


の記号だった

そしてそのまま無意識にあの時と同じ様に手を翳した

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