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21 守護者と少女

ゼロスさんと共に森を歩き続けて今日で三日目となりました


こんな長い間森を歩き続けたり事も

何の用意も無く自然の中で野宿した事も初めての事ばかりで

まるでちょっとだけ冒険者に成った様な気分っ

なんて能天気な事は余り言ってられません


正直私一人ではとっくに野垂れ死んで居たと思います

あれから変わらずゼロスさんに話は通じません

通じないと言うより彼は何も話そうとはしてくれません


ですが常に私の事を気にかけて頂いている様で

出来るだけ顔に出さないようにしているつもりなのですが

歩くのが辛くなってくると察する様に

立ち止まり、休憩する様に促してくれたり


初日の朝、日が昇るとまるでそこにある事を知っていたかの様に

水場につれて行ってくれました


また休憩していると定期的に森の木の実やキノコ

小動物と言った食べ物も見つけてきてくれました


自然にある物を利用し水を煮沸して飲めるようにしてくれたり

不思議な力でキノコや小動物の肉に熱処理を加えて渡してくれたり

本当にどれだけ自分が無知だったのか思い知らされます

私には森にある物で食べれる物とそうでない物の区別すらつきません


夜も火を起こし、眠る私の傍らで

一晩中周囲を見張ってくれている様でした


この3日間ゼロスさん自身が何か口にした様子も眠った様子も有りません

一度持ってきて頂いた食べ物を彼に差し出してみたのですが

彼はゆっくりと首を左右に振り、私に返しました


やはり体と一体化している神機の影響なのでしょうか?


夜、火を灯す際も彼が手の平を翳すと

掌の中央付近から僅かに光が放たれて、突然枯れ枝が発火しました


全く詠唱等を行った素振りは見えませんでした

あれは魔法では無く神機の力なのだと思います

いにしえの時代には魔法が無かったという話は本当かもしれません


無理をさせてしまってないと良いのですが

見る限り彼の足取りは最初と何も変わらず

力強く先を進んでいきます


何処に向かっているのかは見当もつきませんが

明確に何か目標に向かって迷いなく進んでいる様です


目的は何も分かりません、言葉も文化も全く違います

でも、この3日間一緒に居て優しい方なのは分かります

私はきっとこの人を信じるべきなのだと思うのです!


私は歩きながら彼に話続けました


自分の事、私達の世界の事、古の伝説の事、魔具の事


通じてないのは解っています

それでも彼は私の話を聞き続けてくれていた様に見えました


この日も森を歩き続け、お日様が丁度てっぺんに来る頃


「それでですね、ドミルさんったらそのままハンマーを」


ザッ


突然彼が立ち止まり、私の方、後ろへと

手を突き出して静止を呼びかけました


ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー


既に移動を開始し55時間が経過していた


このセルヴィという少女は良く頑張っている

定期的に休息を取っているとはいえ


特に彼女は此方の目的を理解していないはずだ

軍事組織でさえ最も堪える事の一つは

終わりの見えない目標を指定されないまま作戦に投入される事だ


特に彼女はその様な訓練を受けた訳でもない一般人の少女だろう

その肉体・精神共に非常に大きな負担となっているはずだ


しかし彼女の表情を見る限り、過度に疲弊している様子は無い

それ処か通じないのを本人も承知しているであろうが

特に日中はずっとこちらに何か話しかけている


声や雰囲気から察するに

不満や怨嗟の類では無く前向きな内容の様である

それが本人の精神上も良い方向に働いていると思われる

その会話も記録に残し、後に解析に役立つかも知れない

こちらとしても有りがたい事だ


何より少女が元気な姿を見せてくれる事は

自分の精神衛生上も好ましい


定期的にゼロスと言う単語が聞こえて来る所を見ると

どうやらコールサインのLG03(エルジーゼロスリー)の

一部だけを名前と受け取ってしまった様である

まぁ呼び方等区分出来れば何でもいい事だ


こんな顔が出来る子は直近の出撃では見なくなっていた

この世界の少年少女達は、皆この様な顔をしているのだろうか?

だとすれば世界は少しでも救われたのだろうか


もし話が出来る様になれば聞いてみたいものだ


若干気を緩めていたその時


「...っ!!」


ザッ


即座に立ち止まり、少女に手で静止を呼びかける

音響センサーが明らかに自然ではない音を検知した

まだ距離は数百m程あるようで熱源センサーでは感知出来ない


センサーが拾った音の解析を始める


数人の人間の声紋

何かしらの生物の鳴き声

金属の打撃音


それらから導き出せる物は人間が何かに襲撃されているという事だ


「アデスかっ!?」


咄嗟に識別信号を確認するが


(おかしい...この距離ならアデス反応は検知出来るはずだ...)


そこには自分とすぐ背後の少女の緑点グリーンポイント以外

識別表示は何も現れない


(どういう事だ、アデスもだが何故声の主の人間が反応しない

 都市の老戦士の時もそうだったが、センサーの故障か?

 しかし後ろ少女や都市のアデスは...いや考えるのは後だっ)


「ここで待っていろ!」


少女に通じるのを信じ、もう一度手で強く静止を掛け


戦闘モードへ移行


地面を抉りながら風の如く音の方向へ駆けて行く


木々が凄まじい速さで両脇を駆けて行く

駆けだして十数秒程で木々が晴れ、草原に出る


その先には馬車の様な物の周辺に白いローブを着た人間が数人

武器の様な物を構え多数の狼の様な生物と対峙している

馬車には馬が繋がれている筈の部分に奇妙な人工物が繋げられている


既に人間たちの周辺では2名程が、ローブを赤く染めて倒れており

生物に対し苦戦している様が伺える


(何だあれば、アデス...なのか?)


データベースには無いタイプであり

より動物的な猛獣に見える何かと対峙している

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