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17 古の英知

「バイタルチェック」


僅かに赤い瞳の奥が光を放つ


網膜に次々と少女の状態が表示される


<バイタル微弱>


<左肋骨複数骨折>


<一部内蔵に出血>


<左肺内出血により呼吸不全>


<生命維持に問題:即時治療が必要>


「即時メディ...」



グォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ!!



背部から巨大な猛獣の咆哮が轟く


「チッ...まずは此方が先か...」


立ち上がり巨大な化け物へと振り返ると

直ぐに耳に通信が入る


『都市制御システムより情報を取得

 警告、現在都市はコードΩ発動中

 既にファイナルフェイズへ移行

 20分後には都市全体の次元隔離が実施されます』


「...」


『警告、現状兵装制限下では単騎によるソーラス級の撃破は困難

 保護対象の速やかな保護、脱出を推奨』


「ダメだ、現状のまま保護対象を移送した場合

 対象の生命が持たない、先に治療措置を必要と認む

 障害としてソーラス級の撃破を優先する」


『了解、対大型アデス用コンバットアーツプロトコル開始』


スーツ全体のエネルギーラインの光の流れが加速し、輝きを増し始める


ガシャ!ガチ!


背部と小手装甲の一部が開放され微かな光を吹き出す


側面体の武術の構えを取ると、周囲の空気が騒めく、そして


一瞬の踏み込みの後、石畳を砕き一線の閃光を残し一瞬で化け物へと迫る


そして右肘部分から激しい蒼の噴進を伴い全力で殴りつけた


ォオ゛オ゛ッ!


体格差は数十倍あろうかという化け物が咆哮を上げ

首を反対方向に吹き飛ばされながらよろめく


そのまま更にもう一撃蹴りを入れ

間髪入れず化け物を完全に後ろに倒れ込ませる


背部スラスターを吹かし空高く飛び上がり

加速して蹴りを頭部に集中して打ち込む


そのまま途切れる事無く只管ラッシュを打ち込んでいく


その1発1発が砲撃の様な音を上げ化け物の体を揺らし

地面に・建物にめり込ませていく


アデスがその尾で、爪で、牙で反撃を試みるも

一瞬で距離を開きそして次の瞬間には再び別角度から攻撃を咥えて行く


その攻撃が何十・何百と続いた後、一気に後方へ飛び距離を取ると


地面にしっかりと足を踏ん張り両手を正面に突き出し


「リアクター出力最大!フォトンレーザー‼」


両手の小手の各所のギミックが作動し無数のレンズが姿を現す


直後腕から十近くの蒼白い閃光が一斉に化け物めがけ放たれる


オ゛オ゛オ゛ォォオオ!


命中と同時に無数の小規模な爆発を伴い

背後の建物と共に崩れさり化け物は瓦礫の下敷きとなった


ガラガラ...


瓦礫の山をじっと見つめる


「...」


一切表情を変えない


「やはり削り切れないか...」


彼の網膜には未だハッキリと

敵の生体反応を捉えていた


直後


ゴト...ガラガラッ


グゥオ゛オ゛オ゛オ゛オッ!!


再び咆哮と共に瓦礫の中から化け物が姿を現す

所々牙や爪は折れ、幾つかの目玉は潰れ血を流している

しかしまだ十分戦闘力は失われていない事は見て取れた


そしてその巨体とは思えぬ程俊敏な速さで一歩前に飛び出すと

その体を捻り長いリーチを持つ細長い尾を凄まじい速さで叩きつけて来た


レーザーを最大出力で放射した直後の為

背部スラスターの出力が一時的に上がらない


「チッ!」


回避を諦めすぐさま防御の姿勢を取ったその時


キュィイイイ...ドゴォオオオオオン!!


爆音と共にソーラス級が横方向に吹き飛ばされた...


「これはっ...」


すぐさま音源を確認する


そこには片足を膝から失い、横腹を大きく穴を空けた

初老、巨漢の男が脇に武器を抱え壁に持たれかかっていた


ズルッ...ズズズズ


そしてそのまま壁に血の跡を残しながらその場に座り込んだ


(他にも生存者が?何故生体反応に反応しない...センサーの故障か?)


もう一度男を見やるが、網膜ビジョンには識別反応は表示されない


(いや、今はそんな事は良い、それよりあれは...)


「あの兵装を確認出来るか」


『確認、富士菱重工製81式歩兵携行型電磁投射砲です』


(通常兵装ではソーラス級に傷一つ負わす事は出来ない...しかし)


黙って男の方に歩み寄る


男の前に来ると息も絶え絶えの男は

喉に充満した血液により半ば溺れた様な擦れた声で


「*&#(%*...%&#@...$#%...」


聞いた事もない言葉で何かを話しかけて来た

何を言っているのか理解出来ない、だが


ーこの男の目は判るー


恐らくこの男は知っていたのだろう

自分の武器ではあの化け物には傷一つ与えられない事が


勝てる見込みがないと知りながら

それでも尚、何かの為に戦う戦士の目だった


こんな目をした戦士達が散っていく姿を

数えきれない程見て来た


数えきれない犠牲の末に、願いの末に


その為に、俺は、俺達は居るんだ


「後は俺に任せろ」


通じ無かったのだろうか、一瞬男は怪訝な顔を見せるも

その意を汲み取ったのか、直ぐに穏やかな表情になり

その手に持つ武器をゆっくりと、此方へ差し出してきた


そして再び振り返り、吹き飛ばされた化け物へと向き直る


『その兵装ではソーラス級にダメージを与える事は不可能です』


WODウェポン・オーバードライブシステムをダウンロードしろ」


『警告、WODシステムはLG用特殊兵装用であり

 通常兵装ではWODシステムの過負荷に耐えられません

 オーバーロードを引き起こす危険性があります』


『加え、現在補助脳量子領域破損の為容量が不足しています

 これ以上の戦術制御データのダウンロードは行えません』


「通常の脳記憶領域の情報を圧縮をしろ

 今は必要ない、空き容量の確保が優先だ」


『警告、記憶領域に関する圧縮は人格形成に致命的損傷を与える可...』


「時間がない、命令だ」


『了解、記憶領域情報の圧縮を開始します』


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