1.戌堂倫太郎 -2
午前の授業終了後、
「おっひるだよー! やすりちゃん!」
待ってました! と言わんばかりに柚月がお弁当箱を2つ持って私の前に現れた。
「今日はカツ丼弁当にしてみたよ」
「ほうほう。何に勝つ気かね」
「5時間目の睡魔」
「一理あるわ」
カパっと弁当箱を開くと、つゆをしっかり吸ったふわふわの衣に包まれたカツが、飴色の玉葱達に囲まれていた。
「いただきます」
「いっただきまー」
食材達に両手を合わせて感謝する。それから大口を開いて一口食べた。
「もぐもぐ」
うむ、美味。
「柚月はほんと、料理うまいねー」
「やすりちゃんがいつもそう言って美味しそうに食べてくれるから上達するんだよ」
「またまた」
「晩ご飯もちゃんとあるから持って帰ってね、ちゃんこなべ(土鍋付)」
ドン! と机の上に土鍋を置かれた。
「ブハッ!!!!!!!?」
「あの土管の中に携帯用ガスコンロあったでしょ? あれで温めて食べて」
「わ、私にその土鍋を持ち帰れと……!?」
「たまには暖かいもの食べないと、風邪引いちゃうよ?」
「いや、有難いんだけどさ、ホント……」
「でしょ!」
「…………美味しく頂くわ」
私は、昔から、柚月の笑顔に弱い。
それを今更ながら痛感していた。