掛け持ちしてもいいですか?
「普通の恋がしたい? それって今まではそうじゃなかったって意味に聞こえるけど……いくつだったっけ?」
「わたしですか? 19です」
「……詳しくは聞かないけど、で、何で俺に?」
「圭希さんと一緒に映画観に行ったんです。ラブシーンみたいなシーンがあったんですけど、見終わってから何となくの流れで、ああいうシーンみたいにしたいですか? って聞いたら、触れたいって言うので触れさせたんですけど……それって、おかしいですか?」
「――ん? 触れさせた? いや、言わなくていいけど、圭希のことが好きなの?」
「いえ、別に」
「んーー……おかしくないこともない。いや、おかしいのは言葉を鵜呑みに触れてきた方か。いや、でもなー」
自分でも何を伝えようとしているのか分からなくなっているけれど、あの時の彼の気持ちを知りたくてあんなことをさせてしまったけれど、そういうことをしたいんじゃないんだって怒っていた気がする。その時に美也ちゃんが来たからそれもうやむやになってしまったけれど。
「整理すると、深瀬は誰かとそういうのを望んでる? で合ってる?」
「たぶんそれです。ガトーさん、教えてくれませんか? わたしにその気持ちを」
「俺? 彼女いるし、それは俺には無理っていうか、そもそも深瀬のこともあんまり知ってないしな」
「掛け持ちでいいので知って欲しいです。お願いできませんか?」
「かっ……掛け持ちって、深瀬とも付き合うって意味?」
「はい」
二股とか浮気とかさせるつもりなんて無くて、でも、気持ちをわたしにも掛け持ってくれれば、それならそれでいいかなって思えた。圭希さんは恐らく、美也ちゃんがガードしてるっぽくて、そうまでして仲良くなる気は起きなかった。
「肉体とかそういうの無しってことなら、それでもいいなら……深瀬に付き合うけど、俺でいいんだろ?」
「ガトーさんがいいです」
「んんん……分かった。じゃあ、家まで送る」
「どうもです」
わたしはただ、普通の恋と気持ちが知りたい。それだけなのだから、掛け持ちでも何でもそれが叶うなら教えて欲しい。まずはそこから。