二股でも三股でもいいですよ?
「圭希さんって、美也ちゃんの彼氏ですか?」
「……いや、誤解させてるけど付き合ってないよ。アレは何て言うか、美也が俺のことを見張ってるっていうかね。俺って信用ないのかな。深瀬は俺と付き合いたいって思ったりする?」
「別にどっちでもいいですよ? 好きになるかは自由です」
「自由って、もしかしなくても胸を触ったことを怒ってる? あんなこと誰にでもしてないからね」
「二股でも三股? とかでもどうでも構わないです。それで満足するならそれでも」
圭希さんのことがよく分からないまま映画を観に行った。それで進むかって言うと、響いてこなかったからそうはならないと思っている。私もそうだし、圭希さんも真面目に思っていないはずだし。
「違くて、あんなことは誰にでもしてなくてね。雰囲気とか気分の高揚がそうさせたんだよ。美也にもそんなことしてないよ? そりゃあ最終的にはしたいけど、初めっからそれが目的とか無いっていうか……」
「言い訳です?」
「言い訳だけど、嫌いになった?」
「いえ、好きでもないので嫌いになってないです」
「はは……深瀬ってそういう子なんだよなあ。難しいけど、俺は好意あるし諦めないから。そこは理解してくれる? 美也とか他の子のことはきちんと――」
真面目な人なのは分かったかもしれない。けれど、他の子にも同じことなんていくらでも言えそう。だからここはどう言えばいいのか少し迷う。
「じゃあいいです」
「ど、どっちの意味?」
「あ、だから、二人目でもいいです。それが圭希さんの普通ならそれでも」
「は~~……と、とにかく、やめないよね? ここ」
「あ、はい。だって、名前知らない人結構いるので」
ガトーさんの彼女さんともお話ししたいし、名前の知らない甘そうな男性とも知り合いたい。その上で、普通の恋愛が出来ればいい。圭希さんは泣きそうになってるけど、私のこと本気とかかな?
「好きって何なんですかね?」
「今の俺みたく、深瀬に夢中ってことだよ」
「あー……一理ありますね。それじゃあ、もっと教えてくれるとありがたいです」
「あ、あぁ……何を?」
「私にしたいことを、です」
「ど、どうだろうな……ううーん」
「その答えが出るまで三股していいですよ。それじゃあ、オーダーいいですか? ケーキさん」
結構不真面目。客の入りが少ない時にこんな話とかするようになってる。出来れば店内の他の人ともこういう話がしたいけど、簡単じゃない。バイトを掛け持ちするしかないのかな。




