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ラナ markⅢ  作者: ススキノ ミツキ
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第8話 迷宮の罠

・・・3時間程、揺られてベレンモル遺跡の入り口付近に近付いた。コーストが到着の声を上げる。


「着いたぞ。」


 馬車から、1人ずつ降りて行った。ラナはある事に気付き数哉に話す。


『数哉様。』


--「ん?」


『この遺跡はベレンモル遺跡と呼ばれている様ですがパラユヤン遺跡でもあります。』



--「もしかして繋がっているのか?」


『はい。ただ、この世界では別の遺跡と思われている様です。昔、パラユヤン王国にはベレンモルと言われる都市があった様ですが間違えて別の王国と思われています。』


--「なるほどな・・もしかして、パラユヤン遺跡と繋がっているって事はエルラだらけか。」


『はい・・。エルラが殺しあい個体数が元の状態に落ち着くには1ヶ月は掛かりそうです。』


「そうか・・前途多難だな。」


『はい。』


 全員、馬車を降りてパラユヤン遺跡と同様のエレベーターに近付いた。エレベーターより警告が発せられる。


{警告致します!現在、エレベーター付近にエルラが7体居ます。D級が4体、E級が3体です。警告します!・・・・・。}


 冒険者達が冗談じゃ無いぞとの顔で見合わせる。コーストも顔をしかめた。仕方ないといった表情でエレベーターに近付くコーストを出っ歯の男が呼び止める。


「お待ち下さい!コースト様!まだ警告が止まっていません!」


「エルラが何処かに行くのを待っていたのではフィリップに負けてしまう・・行くぞ。」


 冒険者達は動かない。コーストは冒険者達を叱責した。


「何をしている!?さっさと来ぬか!」


 出っ歯の男が土下座しだす。


「申し訳ございません!コースト様!私はここで下ろさせて頂きます!罰は後でしっかりとお受け致します!私は死にたくありません!」


 他の冒険者達も出っ歯の男と同様に土下座をした。コーストは怒りの表情を見せる。


「貴様達!もう良い!私の荷物を寄越せ!」


 出っ歯の男の傍にある荷物を引っ手繰るように持つと、コーストは1人でエレベーター前に立った。エレベーターに向かい話す。


「・・開けてくれ。」


{畏まりました。}


 扉が開くとコーストはツカツカと入り、数哉もそれに続いた。コーストが数哉をジロリと見る。


「エルラが沢山居るらしいが、精霊は逃げ出さないのか?」


「勿論だ。」


「そうか、では行くぞ。」


「ああ。」


・・・エレベーターが降りて遺跡に着く。コーストが荷物を降ろそうとして数哉が止めた。


「俺が先に出る。荷物は下ろさなくて良い。」


「良いのか?エルラが7匹居るのは聞いていただろうな。」


「聞いていた。問題無い。」


「ふ・・実力を見てやろう。」


・・・エレベーターが到着して、扉を開く事を許可すると遺跡が見え始める。3匹のエルラは数哉とコーストと言う獲物を認識して走り出した!数哉は扉を出て剣を抜き、突進して来たエルラを軽く斬り捨てて行く。


ズバ!ズバ!ズバ!


 実力の片鱗も見せていないが数哉を見て、コーストが見事だと背後で頷いた。他のエルラ、4匹のサラウィーがドシドシと音を立てて数哉に迫る!サラウィ一は、牛の胴体にクワガタの頭を付けた様なエルラであった。4匹一斉に相手取ろうとしている数哉に、コーストが焦りつつアドバイスを送る!


「カズヤ!サラウィーの牙に挟まれるな!強烈な力で挟まれて、死ぬまで放さないぞ!」


「ん?」


 数哉が気の抜けた感じでコーストに振り向くと、その隙を狙って一匹のサラウィーが数哉の腹を挟んだ!数哉の鎧がギシギシと音を立てる!コーストは急いで荷物を下ろし、数哉に向かおうとするが数哉がそれを止める。


「来ないでいい!」


「しかし!?」


「俺の一張羅の鎧を壊すな。」


 数哉は落ち着いた様子でエルラへ話し、挟んだ牙を両手で持つと、外へ広げていった。


ギギギギ!


 コーストは牙が広がって行く様子を見ると驚きを見せる。


「なんと言う力だ!」


バキッ!


 サラウィーが更に力を込めた為に牙が折れた!折れた牙を向かって来たサラウィー2匹の頭に突き立てる!


バシュ!


 刺されたサラウィーは、呻きながら倒れた。数哉は牙の折れたサラウィーを蹴り飛ばし、最後のサラウィーはそれを牙で挟み込み止める。挟まれたサラウィーは肉に食い込み血を流していた。


「ナイスキャッチだ。」


 数哉はそう話して2匹へ剣の先を向けて走り込む!近付いた所で剣を突き出した!


 ザシュ!ズズズズ!


「お?」


 2匹纏めて貫くつもりであったが、剣の刀身が足りず2匹目まで届かない!2匹目のサラウィーは数哉の剣に刺さったサラウィーを放して回り込み、数哉の腹を挟もうとした!


「よ。」


 数哉は避けず、剣に刺さったサラウィーを襲おうとしているサラウィーにゴルフの要領で当て振り抜いた!


ドオ!ゴロゴロゴロゴロ!ドスン!


 2匹は勢いよく転がりビルに当たって動かなくなる。コーストは数哉の戦い方を見て驚いていた。7匹のエルラをまるで小さな玩具を扱う様に倒してしまったからである。


--まさか!?本当に精霊なのか・・?いや・・その様な物が存在する筈ない・・しかし・・・。


 ボーっとしているコーストに数哉が話した。


「どうした?進まないのか?」


「行こう・・。」


 コーストが先を進んで行く。次々と襲い掛かる多くのエルラを数哉は蹴散らしていった。コーストはCランクの魔物でさえ軽々と倒す数哉を見て、迷宮の入り口に到着した時には数哉の事を精霊だと信じている。


「教えられたのは、この場所だ・・着いたぞ。カズヤ殿。」


「ああ、早く入ろう。」


 到着した場所には大きなビルが建っていてコーストが扉の前で荷物から出した杖を持つ。杖で空中に魔法陣を画くと、扉に同じ模様の魔法陣が現れて扉が両側に開いていく。中に入ると扉は閉まり、外に出るのはボタンを押せば出られるとコーストが話した。中の様子は一つの大きな下に続く階段しかない。大きなビルを上がるのではなく、地下深くに迷宮は作られていた。


「ここからの道は私にも分からない。ただゴールに着けば、この水晶に後継者の証を灯す装置がある筈だ。」


--「ラナ、ゴールの場所は分かるか?」


『少しお待ち下さい・・分かりました。御案内致します。』


「・・ここからは、俺が先導する。」


「もしかしてゴールが分かるのか?」


「勿論だ。」


「ふ・・流石、精霊様だな。」


「行こう、こちらだ。」


 数哉は二股に分かれた道を左へ進んで行く。左側の通路は綺麗に舗装されておらず洞窟といった感じである。


「向こうの道の方が良さそうだが?」


--「ラナ?」


『はい、向こうは遠回りとなっています。』


「向こうは遠回りだ。」


「そうか、分かった。」


『フィリップ達を追い越すにはこちらの道がベストです。こちらの道にはエルラが多いのですが罠が少ないので、お勧めです。』


--「A級とB級のエルラはどうだ?居るか?」


『はい、こちらのルートにはB級のトルノルベアが2匹配置されています。向こうのルートはA級のビレストケラマックと言うエルラが1匹居ます。』


--「トルノルベアはどんな奴だ?」


『力が突出していますが動きは速くありません。それに力が突出していると言っても他のB級エルラと比べての話で、数哉様の力には及びません。』


「そうか。」


『但し、ナラドロックと言う魔法で大きな岩を生み出し飛ばして来ますのでお気をつけ下さい。何も着けていない頭に当たると、少しタンコブが出来ます。』


「少しね。」


--それ程、気を付けなくても良さそうだな。


・・数哉を先導に歩いて行く。


「そこの岩は踏むな。大きな岩が向こう側から落ちてくる。」


「分かった。」


・・1時間程歩くと、行き止まりで扉が見えた。


『数哉様、この向こうにはサッカーコート程の広場がありD級以下のエルラが32匹一斉に襲って来ます。』


--「多いな。」


『所詮は雑魚です。スタミナさえ持てば全く問題ありません。』


「俺に、うってつけか?」


『はい。』


 数哉はコーストに話す。


「ここで待っていろ。」


「どういう事だ?」


「この部屋にはエルラが多くいる。雑魚とは言え、アンタの体力が持たない。」


「カズヤ殿なら持つとでも?」


「勿論だ。」


「分かった・・。」


--ルノーテに感謝しなくてはな。


 数哉が扉を開けて中に入ると、少しずつ外側にある全ての檻が上に開いていった。


ガラガラガラガラ。


「「「「「「「グルルルルルルル!!」」」」」」」


「「「ゴルルル!!」」」


「「「「「ドホォ〜!!」」」」


「沢山居るな。これだけ一斉に掛かって来れば適当に剣を振っても、どれかに当たるだろう・・来い!」


 数哉の声が聞こえたかの様に、一斉に飛び出した!


ドドドドドドドド!!


「おお!凄い迫力だな。」


 数哉が剣を構える!近付いて来たエルラに回転しながら剣を横に振った!


ズババ!!


 3匹のエルラを一撃で倒すが、他のエルラ達が斬られまいとジャンプして数哉の上に覆い被さって行く!!


「え!?」


ドサ!ドサ!ドサ!ドサ!ドドド!・・・ドサ!


 数哉の姿が見えなくなり、エルラの山が出来ていた。静かになった部屋の外側でコーストが叫ぶ!


「大丈夫なのか!?カズヤ殿!」


 エルラの下敷きになっている数哉がボソリと答えた。


「・・あぁ、問題無いが少し暑苦しいな・・ラァ!!」


 数哉は地面で腕立て伏せをする形で、思いっ切り地面を押した!エルラの山であった物が爆発した様に吹き飛んで行く!


ブォ!!ドサ!ドサ!ドサ!・・!!


 数哉は宙に少し浮いた後、地面に着地してエルラの集中攻撃をさせない様に走った!そのまま適当に剣を振り続ける!


ズバッ!バシュ!ズバ!ズバ!!

 

「ラァァ〜〜〜〜!!」


ズバ!ズバ!・・・・・バシュ!


・・エルラは最後の一匹となり、4本足の前足2本を上げて立ち止まっている数哉を背後から襲った。


「後はお前だけだな、ラァ!」


ゴヒュ!ドサ!!


 数哉は裏拳で背後のエルラの胸を叩くと、胸は凹んで後ろに倒れる。


「終わったか?」


『はい、この部屋のエルラは全て絶命しております。食べられるエルラは・・5匹、転送を開始します。』


「頼んだ。さて、コーストを呼びに行くか?」


ギキギ。


・・数哉は扉を開けると、荷物を傍に置いて待ち遠しく壁に凭れて待っていたコーストを呼んだ。


「終わったぞ、行こう。」


 コーストが中に入り、数哉の倒した多くのエルラを見て唾を飲み込んだ。


「この数を1人で倒した・・のか。」


ゴクリ。


・・数哉はラナの言う通り、多くの罠を潜り抜けて行く。


『数哉様。この横にある穴から、ロープで下に降りる事をお勧め致します。』


--「ん?この前の部屋には何の罠が有るんだ?」


『臭いエルラがいます・・ドリアン、スカンクの屁、ワキ臭、足の裏の臭さ、及びピ〜をミックスして1.725倍にした臭いです。もっと正確に倍率を?』


「ロープを出してくれ。」


『畏まりました。』


 数哉がロープを杭を打った箇所に固定し、下に伸ばそうとした所でコーストが尋ねた。


「この下に近道が?」


「そうだ!間違いなく近道だ!」


「??・・そうか。」


 下を見ると、ゴツゴツした岩の洞窟が更に続いていて通路にはエルラが3匹見える。数哉はコーストの荷物を背負ったまま15m以上残る高さからロープを放した。


「先に降りる。」


ビュ!


「カズヤ殿!」


 数哉は荷物と共に落ちて一匹のボッゴの背に降りる。


ドォッ!

 

「ゴエ!」


 ボッゴは少し呻きながら、荷物を背中に持ち飛び降りて来た数哉を受け止めた。


「流石、図体が大きいだけあってこの程度では潰されないか。ラァ!」


 数哉は右足を上げて凄いスピードで踵を降ろす!


ベコッ!


 地面に挟まれてボッゴの背中が大きく凹む。そして背中からジャンプして次のエルラを蹴ろうとした!


ビュッ!!


 飛び過ぎて数哉の蹴りは届かず、そのままタレデックの頭上を飛び越す。


「あれ?また外れか。」


ズザザ!


 地面に着地して後ろを振り向くとタレデックが2匹、数哉を狙い走って来る。


「タレデックか、また食べられない奴等だな。土産にならん。ラァ!」


 タレデックは数哉の首へ目掛けてジャンプするが、張り手で顔を叩かれ顔を半分凹ましながら回転しゴツゴツの岩壁に衝突して死んだ。


バゴ!ビュン!ベチャ!


 もう1匹のタレデックはそれを見て急停止し、方向転換して逃げて行く。少ししてコーストも3mの高さから手を放して降りて来た。


ダン!


--エルラが逃げる所を初めて見たぞ。実力差がかなりある場合にエルラの生存本能から起こる現象と言っていたな。つまり精霊殿は高ランク者と同等以上の実力を持つと言うのか?


『数哉様、次は右に行くと例のBランクのエルラが居ます。』


--「左は駄目なのか?」


『はい、左には中央まで進んだ際に90℃の蒸気に襲われます。数哉様は少し暑い程度で済みますがコーストは耐えられません。何らかの防御手段を持っていれば別ですが。』


--「念の為、コーストに確認してみよう。」


「1つ聞きたいのだが?」


「急にどうした?カズヤ殿。」


「全身を熱風から守れるアイテムか魔法を持っているか?」


「いや・・残念ながら急に決まった儀式故に、大した物は用意出来ていない。」


「そうか、ならば右の部屋だな。また少しここで待っていてくれ。」


「分かった、が左は熱風の罠で右には何がある?」


「トルノルベアが2匹居る。」


「トルノルベア2匹だと!?カズヤ殿は正気か!A級ランクの者でも1人で相手するのは難しいエルラだぞ!力が突出していて一度捕まれば一瞬で雑巾の如く扱われてしまう!本来ならば一匹に素早い前衛2人で撹乱して後衛が仕留めるのだ!無茶も程がある!」


--「ラナ、そうなのか?」


『通常の冒険者からすると、そうかもしれませんが数哉様の力の約3分の2程の力です。オストラルエネルギーも約157分の1しか有りませんね。更に身体が重い為にタレデック程の速度しか出ません。』


--「余裕っぽいな。」


『はい。』


「心配しなくても良い。サラウィーの牙も防いで見せた筈だ。」


「トルノルベアの力はサラウィーの牙等、比較にならない!2mの大木をも腕力で引き千切れるのだ!」


「それなら俺にも出来る。」


ギキギ!


 数哉はそう話しながら横引きの鉄扉を開けて入って行く。コーストは何気なく凄い事を話す数哉に驚きを隠せない。


「な!?」


--・・精霊とは、どれ程の力を持つと言うのだ・・・。


 中に入ると2匹のトルノルベアが他のエルラを捕食している所であった。天井に穴が空いていて遺跡にある罠に掛かったエルラを迷宮に配置しているようである。数哉が部屋に入ると、骨をパキパキと噛み砕いていた。


「ふむ、カルシウムは沢山取っている様だな。中々強そうだ。」


 トルノルベアの身長は3m30cm有り、茶色の剛毛に覆われている。頭には1本の筍型の角が生えていた。1匹のトルノルベアが数哉に気付き、血走った赤い目で数哉へ向かって来る!更にもう1匹のトルノルベアも追い掛けて走り出した!


ドシ!ドシ!ドシ!ドシ!ドシ!・・・!!


「ラナの言う通り、タレデック程の速さしかないな。」


『はい、体重がおよそ2.1トン有りますので。』


「力比べと言いたい所だが体重差もあるし、正面からぶつかるのは得策じゃないか・・よし!」


タタタタタタタタ!!


 数哉は2匹のトルノルベアに捕まらない様にサッカーコート半分程の洞窟部屋を走り出す!トルノルベアは数哉を追うが一向に追いつけない。トルノルベアの速さを把握した数哉が攻撃に転じた。トルノルベアの背後を取っては剣で斬り付けて行く。


ガッ!タタタタタタタタ!ガッ!タタタタ!!ガッ!


「「グォォオ〜〜!!」」


 トルノルベア2匹が怒りの咆哮か、悲鳴の区別がつかない声を上げた。少しずつ身体を削るが数哉の剣の斬れ味は悪く、剛毛に覆われている為に決定打とならない。


「硬いな。」


『大丈夫です。そのまま続ければ、もう直ぐ動けなくなります。』


タタタタタタタタ!ガッ!


「どうしてだ?」


『斬る方では、あまり効果が無い様に見えますが数哉様の重い剣撃は骨にまで響き、全身の骨に無数のヒビを与えていますので。』


「そうか。」


『それよりも気になる事が。』


「どうした?」


タタタタタタタタ!ガッ!


『フィリップ達の進む速度が罠の数にしては速い為に迷宮の監視カメラで確認した所、向こうはゴールまでの地図と詳細資料が手元にある様です。』


「急がないとな。」


『もう1点気になる事が。』


「ん?」


『この迷宮の出入り口に、AからBランク冒険者と思われる者が2名現れ、隠れております。』


「こちらが先にゴールすれば、後継者の証を奪うつもりだな。」


『はい、如何なさいますか?』


「俺の今の強さをそいつらで確かめてみたいし、そのまま保留だ。それにまだ奪う者と決定した訳じゃないからな。」


『畏まりました。』


・・一匹のトルノルベアが追いつけない数哉を見て戦法を変えた。両手を上に上げて上空に魔法陣を画き出す!数哉は走りながら、それを見た。


--お?ナラドロックの魔法か?


・・魔法陣が完成すると直径3mもある巨大な岩が現れる!


「ラナ、あれタンコブじゃ済まないぞ・・。」


タタタタタタタタ!


『いえ、タンコブの筈です。・・正解であれば今日のお風呂は御一緒させて頂いて宜しいですか?』


「ん?いや、駄目だ。」


ガクッ。


「それ以前に試す気にならないぞ。あんな大きな岩・・。」


 トルノルベアは現れた岩を支えようとするが、ヒビの入った腕の骨はその重みに耐えられず折れた!


メキ!ドスン!!


 巨大な岩がトルノルベアの頭を直撃して倒れ動かなくなる。


「馬鹿だな・・。」


『馬鹿ですね・・。』


 数哉はトルノルベアに乗っている巨大な岩に指を突き刺し持ち上げて、もう一匹のトルノルベアに近付いた。


「大きいから持ち上がらないか?ラァ!」


ズボ!


「よし!上がりそうだ。よ!」


 もう一匹のトルノルベアも全身の骨が限界で身体が上手く動かず、数哉が迫るのを怯えた様子で後ずさっている。


「これで終わりだ。ラァ!」


ゴ!ドスン!


 トルノルベアは飛んで来た岩に当たり、背後に倒れて絶命した。トルノルベアは滋養強壮にもなる上に食べられると言うのでラナが転送する。先を急ぐ為にコーストを呼びに出た。


ギキギ!


「行くぞ。」


「・・本当に倒したのか?」


--あ・・トルノルベアは転送したな。


「何処に居るのだ?トルノルベアは?」


「・・居なかった。」


「しかし戦った音もしていたし、あの岩はトルノルベアの魔法であろう。」


--良く知っているな。


「まぁ、細かい事はいい。それより先を急がないと負けるぞ。」


「あ、ああ。急ごう!」


タタタタタタタタ・・・。


・・・ラナの案内で殆どの罠を回避すると今までの無骨な鉄扉とは違う豪華な赤い扉が行き止まりの壁に見えた。


『あの部屋がゴールです。フィリップ達はおよそ15分後にやって来ます。』


--「分かった。」


「そこがゴールの部屋だ。」


「おお!フィリップ達が、まだ来てなければ良いが。」


タタタタタタ・・ガチャ。


 扉を開けると、綺麗な大理石のような石の床で50畳程の広さがある。部屋の中心部に黒い台座があり、水晶を嵌め込めるようになっていた。コーストは急ぎ近付きリュックから水晶の玉を取り出すと穴に嵌め込んだ。音も無く、水晶にアルトデルト公爵家の家紋が光って浮かぶ。それを見てコーストは安堵した。


「どうやらフィリップは、まだ辿り着いていない様だ。」


「何故分かる?」


「この装置は一度作動すると、次に使用出来るのは10年後以降らしい。」


「そうか。よし、急いで戻ろう。」


「こちらが勝ったんだ。急ぐ必要はない。」


「その後継者の証を奪いに来る可能性は?」


「まさか!・・いや、フィリップならば有り得るか。分かった、急ごう!この部屋には迷宮入り口付近までの移動装置がある筈!子供の頃に、お祖父様から聞いたからな。それを探そう。」


--「ラナ。」


『はい、数哉様から見て右手の部屋の角にスイッチがあって押せば作動します。分からなければ隅にコーストと立って頂ければ、私が動かします。』


--「そうか。」


「後継者の証を持って向こうへ付いてきてくれ。」


「もしかして、それも?」


「分かる。」


「そうか・・。」


--精霊と言う者が本当に存在するとはな・・。


 コーストが数哉の後ろに続いて部屋の隅に立つと数哉は部屋の角を探す。少し下を調べた所でボタンのように凹んだ。


ウィイ〜〜。


 天井から壁が降りて四方を囲むと、横や縦に移動して僅か5分程で入り口付近まで移動して行く。到着すると一部の壁が開いてそこから降りた。降りると直ぐに移動装置は元の場所へ走り出す。


・・・迷宮の入り口に差し掛かった所で、数哉と同年代の顔の良く似た双子の冒険者が数哉達の行く手を阻んだ。1人は黒髪のロングで1人はショートカットである。黒髪の長い方は典型的な魔女タイプの服装をしていて杖を持っていた。杖上部のクルリと回った部分には宝玉らしき物が付いている。もう一人は細みの剣を持ち、黒髪は短い。タキシードの様な服の上に心臓を護る胸当てを装備している。


『話していた冒険者は、この2人です。』


--「こいつらか・・。」


 コーストが怪訝な表情で2人へ話す。


「邪魔だ、そこをどけ。」


 剣を持った男がそれに応えた。


「ふ・・それは出来ないな。僕達は貴方達を殺すように命じられているのでね。」


「なに!?私がアルトデルト公爵家のコーストと知ってか!」


 黒髪ロング女子が今度は答えた。


「あはは!知ってるに決まってるじゃん!アンタ達を殺せば1億ディルくれるんだってさ!」


「フィリップか!」


「そうよ〜。」


 女が舌なめずりして、男が妹を嗜める。


「イロア!喋り過ぎだ・・。」


「はぁ〜い!黙ってま〜す!」


「・・と言う訳でお前達には、ここで死んで貰う。」


 男が剣を構えるのを見て、数哉がコーストの前に出る。数哉も剣を抜いた。


「ほう、大人しく殺されて欲しいんだけどな。」


「馬鹿じゃな~い!この子!Aランクのミロアに敵う訳ないじゃない!」


「コースト殿、離れていろ。」


「分かった・・。」


 コーストが離れた瞬間、ミロアが残像を残して消える!ミロアは数哉の首を突こうと踏み出して剣を出した!数哉には何の予備動作も無く目の前に剣が現れた為に、驚いて壁に飛び衝突してしまう。


--「な!?速い!」


ビュッ!ダン!ガラガラ・・。


「ぐ!」


『数哉様!』


--「大丈夫だ、ちょっと避けるのに飛び過ぎたな・・手を出すなよ、ラナ。」


『畏まりました・・。』


--見えているのに、対応出来ない?これが高ランク冒険者の技術か。


 まだ生きている数哉を見て、イロアが驚いている。


「え!?アイツ、ミロアの剣を避けた!」


「剣の構えからして冒険初心者と思ったが違う様だな。だが・・。」


 ミロアが数哉へ走り込んで、フェイントを織り交ぜた剣撃を見せた。


タタタタタ!ビュン!


「く!こっちか!?」


シュッ!シュッ!


「く!」


 数哉は素早く避けたつもりだが頬、と左腕に切り傷が出来て血が流れる!


「甘いね。」


ビュッ!


 更に剣が迫り、スウェーして避けられたと思った瞬間!数哉の後頭部に強烈な衝撃が走った!


ゴォ!・・ダン!


 後頭部をミロアに蹴られて、数哉は回転して吹き飛び地面に仰向けに倒れる!


『数哉様!!』


「カズヤ殿!」


「ぐぐ・・。」


 ミロアは吹き飛んだ数哉に近付き、鉄鎧の心臓部に躊躇いも無く剣を突き刺した!数哉は血を吐いて気を失う!


「ぐぁ!!ゴホッ!・・・。」


『数哉様!!』


--{傷修復システム作動!生命維持装置作動!・・ゆるさない!!よくも!数哉様に傷を!!}


 ミロアが数哉を踏んで剣を抜く。血を払いながら話した。


「力は中々だが、技術がまるでなってない。僕の敵じゃないね。」


「カズヤ殿!」


「流石!ミロア!・・え!?」


「どうしたイロア?・・ん?」


 ミロアが背後を振り向くと、目の血走った数哉ラナがゆっくりと起き上がる!


「誰が誰の敵ではないと?お前など、わ・・俺の力の足元にも及びません。」


「フフ・・言うね。心臓を貫いて生きてる人間ってのも初めて見たよ。今度は頭を貫かなきゃね。」


 数哉の背後に一瞬で移動したミロアの蹴りが再び後頭部を襲った!数哉は避ける素振りを見せない!ミロアは笑みを浮かべるが、蹴りは数哉の頭を通り過ぎた!


ビュン!


「え!?」


 残像の頭を通り過ぎた瞬間!後頭部に衝撃を受けて今度はミロアが吹き飛ぶ!


ゴォ!・・ドォ!メキメキ!!


 数哉ラナは吹き飛んだミロアを、瞬間移動の様に先回りして何度も蹴り飛ばした。ミロアの全身から悲鳴の音が聞こえる!


ドォ!メキメキ!・・・ドォ!メキメキ!


・・12回、サッカーボールのパス回しの如くミロアは蹴り飛ばされ、骨は砕け口から血を大量に吐いて気絶していた。ラナが手加減しているとは言え、冒険者ランクAでなければ最初の蹴りで死んでいた所だ。


「ミロア!」


「・・このクソ野郎!速動魔物用の超速射ホーミングアイスランスでぶっ殺す!!」


 イロアが怒りを顕にし、杖を振り上げ素早く魔法陣を画いていく!


「え!?ゲホッ!・・。」


 数哉ラナはそのイロアをチラリと見ると、イロアの傍に一瞬で現れて鳩尾にパンチを埋め込んだ!倒れて息が出来ずに呻いているイロアの右足を握り、床を引き摺っていく。そして気絶して床に倒れているミロアの傍に放り投げた。


ドサッ!


 数哉ラナは右手を出すとミロアの顔の上に水を転送する。コーストは何がどうなっているのか分からないと言った表情だ。


「起きなさい・・転送。」


ザバァ〜!!


 ミロアの鼻に水が入った様で、目を覚ます。


「ゴホッ!ゴホッ!」


スパッ!スパッ!スパッ!・・・!!


「グァ!(キャア!)」


 数哉ラナは落ちていた細剣を拾い、仰向けに倒れている筈のミロアとイロアの全身の腱を斬った。ミロアとイロアは痛さを感じつつ、動けない。数哉が剣を捨てると少し安心した様子をイロアが見せる。

 

カラン!


「ほ〜・・。」


--動けなくするだけなんて、とんだ甘ちゃんね。いつかこの仕返しをしてやるわ!ギッタギタにして殺してやる!


 しかしイロアの予想は外れ、数哉ラナは腕輪の着いた右手を2人に向けると、青白い稲妻の様な光を放った!2人は光に襲われながら空中に浮き上がっていく。


バチ!バチ!!バチ!!・・!!・・・・!


「グァァァ〜〜〜!!(キキャァァ〜!!)」


「い!!・・い!・痛ッ!・・お!お願ッ!!も・・う!・・やめてぇぇ〜!!・・・・・・あ・・あぁ・・・。」


 イロアが凄まじい激痛に叫び・・1分程続けると二人共煙を出しながらピクリとも動かなくなった。


「・・死んでしまいましたか?やめてと言われても、まだまだコレからですがね。」


--{数哉様を殺そうとした罪は永久に許されるものでは有りません・・生命蘇生システム作動・・・傷修復システム作動。}


「「・・・グ!カハッ!!・・ゴホッ!」」


「半分だけアナタ達の身体を回復しました。如何でしたか?死んだ感想は?」


--正確には脳死手前迄ですけどね。


・・二人が宙に浮かんで光を帯びたまま、恐怖に顔を引き攣らせている!イロアが恐る恐ると尋ねた。


「・・アンタ・・一体何者なの?魔法も魔法陣を画かず使えるなんて・・。」


「お前が知る必要は有りません。」


バチ!バチ!!バチ!!・・・!!


「グァ〜〜〜!!(キャァ〜〜!!)」


 生き還らせては稲妻で殺す事を繰り返して4度目、イロアが泣きながら許しを請い出す。


「・・お願い・・もう助けて・・奴隷でも何でもやるから・・・。」


 ミロアは耐性がイロア程では無く、横で気絶していた。ラナはイロアの提案を受けるか考えている。


--{通常は数哉様を傷付けた者など即死刑ですが、数哉様は敵でさえ出来る限り殺そうとはしていない・・は!もしかして、許可なくこの者達を殺すとお叱りを受けるのでは!・・しかし数哉様の命を狙った連中を生かすのは・・。}


「・・先程、奴隷でも何でもすると言いましたね。」


「はい・・。」


「・・良いでしょう。お前は、今から俺の性奴隷兼下僕となりなさい。約束出来るのであれば、罪は消えませんが殺しはしません。」


「・・はい。」


「しかし、この男は殺します。男では俺の性奴隷になれませんからね。」


--{数哉様にバレない様に塵も残さず消滅させましょう。}


 数哉ラナが右手の平を向けた。イロアが慌てて声を上げる!


「待って下さい!ミロアも女です!恰好と仕草は男だけど!」


「なるほど・・僕っ娘でしたか。ですが、この女もお前の様に性奴隷を了承するか分かりません。やはり、この女は殺しましょう。」


「待って!お待ち下さい!私が必ずミロアに言い聞かせます!お願いです!殺さないで!!」


「・・そうですか。では・・転送。」


「痛ッ!何?」


「ミロアも起きなさい・・覚醒!」


「ん・・んん・・・。」


「起きましたか。今お前達の頭の中に、この小さなチップを埋め込みました。お前達が反抗した場合こうなります。」


「「グァァ〜〜!!(イヤァァ〜〜!!)頭が!・・割れる!!・・・。」」


「分かりましたか?更に、アナタ達の俺への殺意に反応するとこうなります。」


 数哉ラナは、チップを少し離れた場所に投げた。


ボン!


 チップが小さな爆発を起こす。2人はそれを見て再び青褪めていた。


「さて、もう良いでしょう。お前達に最初の仕事を与えます。」


「「は!はい!」」


「今から公爵家に我々は向かいます。道中にお前達の様な邪魔者が居るか、事前に確認して排除しなさい。後は適当に過ごしていれば構いません。そのチップは通信器にもなっています。呼んだ場合は直ぐに来る様に。いいですね。」


「「はい!」」


「さっさと働きなさい。」


 ミロアとイロアはお辞儀をして消える様に走り出す。ラナは数哉に意識を戻した。


--「・・アイツらは?」


『はい、数哉様を傷付けたので叩きのめしました。』


「殺して無いだろうな。」


『殺していません。』


--{ほ・・危ない所でした。}


--「アイツらは何処に消えたんだ?」


『罰を与えると、数哉様の下僕を望んだので帰り道の掃除を命じました。』


--「俺は人を平気で殺せる様な危ない下僕なんて要らないぞ。」


『・・大丈夫です。数哉様の言う命令に背くと激痛に襲われるようにしておきました。』


--「だったら、出来るだけ他の人の命も奪うなと命じておいてくれ。」


『畏まりました。名前はミロアとイロアです。2人共女のようでして数哉様の性奴隷としても望んでいる様でした。』


--{性奴隷と言うワードが数哉様の心に性欲の炎を!}


--「必要ないと伝えてくれ。」


ガク!


『・・畏まりました。』


--「フィリップ達は?」


『コーストに先を取られた事を知って、急ぎ移動装置を使って戻ろうとした様ですが移動装置を道中で停止させています。永久に閉じ込める事も可能ですが如何致しますか?』


--「24時間閉じ込めて卑怯な手を使った事を反省させよう。」


『畏まりました、24時間後に移動装置を正常な状態へ戻します。』


--「ああ。」


--さてと・・ん?


 数哉がコーストを見ると、今までの数哉の力を見て固まっている。数哉が近付いて話した。


「コースト殿、屋敷に戻ろう。」


「・・すまない!も!戻ろう!・・本当にカズヤ殿か?」


「ん?」


「いや!何でもない!・・。」


--元のカズヤ殿みたいだな・・。先程のカズヤ殿は一体??だが1つは分かる事があった・・精霊を絶対に怒らせては、いけない。


・・・迷宮から出ると既に辺りは夜となっている。コーストも数哉が戦う中、食料や水分補給しながら休憩して来たが体力も限界なのか顔に疲れが見えた。横にはコーストの沢山の荷物を持ち、全く疲れて居ない様子の数哉が左手でパンを咥えながら右手で剣を持ちエルラを次々と撃破していく。


「カズヤ殿は疲れていないのか?疲れているのであれば、建物でキャンプをと考えているのだが。」


「ん?全く疲れてないな。ああ、疲れてるのか?遺跡を出たら馬車は俺が運転しよう。馬車で寝てたら良い。」


「すまない。」


--一度も休んでいない筈なのに、精霊殿の体力は無尽蔵なのか・・?


・・・屋敷に馬車で戻る頃には、深夜となっていた。コーストを心配した者達が屋敷の周りに携帯ランプを持ち、待っている。その中の執事であるドルトンが、馬車が着いて仮眠を取ったコーストが出て来ると深々とお辞儀をした。顔を上げた表情は少し涙を流しているが明るい。


「コースト様!おめでとうございます!」


「「「「「「おめでとうございます!!」」」」」」


 ドルトン以外の使用人達も祝福した。ルノーテも夕方までは居たが何日後にコーストが戻って来るか分からない上、公爵の怒りを買う恐れもあるのでドルトンが手配した馬車で家に帰されていてる。


「皆!ありがとう!この通り、後継者の証は手に入れたぞ。父上は?」


「はい、既にお休みになられております。深夜に戻られた場合、結果を私が報告する事となっています。」


「そうか。」


 二階の窓に、1人の男が立っていてコースト達を見て呟いた。


「あれ程お膳立てしてやったにも拘わらず・・無能者であったか。」


・・翌日、公爵の部屋へ来る様にコーストは呼ばれて入った。公爵はカーテンを締め切った薄暗い部屋の書斎の机の前に立っている。


「失礼致します!」


 前置きも無く、アルトデルト公爵はコーストに伝えた。


「お前をアルトデルト家の正当後継者と認める。」


 コーストは喜ばしい表情で頭を深々と下げる。


「ありがとうございます!」


「但し、ルノーテとの結婚は認めん。」


「何故ですか!?」


「ルノーテは貴族では無い。このアルトデルト公爵家に相応しくは無いからな。」


「相応しいとか相応しく無いとか等、関係あるのですか!?」


「ある・・王国の晩餐会に出てみろ。貴族は面子を重んじる物だ。下の貴族共からの突かれる弱点になりかねない。余計な仕事を増やす事となる。」


「・・私が公爵になった時に、私が上手くやればよい事では・・。」


「そうだな。」


「では!」


「20年後、お前が公爵となった時に結婚すれば良い。話は終わりだ。」


 公爵はクルリと机に振り向くと、そのまま大量の書類に目を通していく。コーストは肩を落として数哉の待つ客室に向かった。数哉は御礼が貰えると言うのでコーストが用意した客室に泊まっている。ラナは寝る時のみ実体化して、キングサイズのベッドで数哉と一緒に寝ていた。今は腕輪化している。入って来たコーストの様子を見て数哉が問い掛けた。


「どうした?元気がないようだが、後継者として認めてくれなかったのか?」


「いや、後継者としては認めてくれたがルノーテとの結婚は許して貰えなかった・・。」


「何か理由でもあるのか?」


「ルノーテが貴族でない為だ。」


「・・貴族になれる方法は無いのか?」


「ある・・が簡単では無い。王国への貢献度が高い者には、特例で王国に推薦が出来る事になっている。」


「貢献度とは具体的に言うと?」


「通常では倒せない様な害獣を倒したり、遺跡の新たな情報発見、新魔法開発や他の技術開発等だな。」


「発見か・・昔、パラユヤン王国にベレンモルと言う都市があったと言うぐらいでは発見にならないだろうな・・。」


 数哉がそう呟くと、コーストが目を大きく開きながら問い掛ける。


「待て!?それはまことか!」


「ん?ああパラユヤン遺跡とベレンモル遺跡は中央部と呼ばれる場所近くで繋がっている。」


「証明出来る物は!?」


--「ラナ?」


『・・有りました。中央部近くに有った施設内に遺跡内部を大まかに記した地図を見つけました。お手を後ろに。』


--「ああ。」


『転送。』


 数哉は地図をコーストに渡した。コーストは、その古い地図を慎重に受け取りテーブルへ置いた。そっと4つ折りになっている地図を開く。


「凄い!!凄い発見だ!遺跡の、こんなに詳しい地図は見た事が無い!」


『肝心な中央部の地図は載っていませんが、あれで宜しかったのでしょうか?』


--「良いんじゃないか?喜んでるし。」


「カズヤ殿!申し訳ないがコレを譲ってくれないだろうか!これさえ有ればルノーテを貴族に出来る!頼む!何でも望む物を用意するから!この通りだ!」


 コーストが深く頭を下げ続ける・・。


「分かった。それならばこの世界に伝わる美味しい物の全てが載った本をくれ。」


「へ?」


 コーストが顔を上げて、間の抜けた声を出した。


「聞こえなかったか?一言で言えばグルメ本だ。あと土産になりそうな綺麗な物が載った本も良いな。」


「・・直ぐに用意させよう。本当にその様な物で良いのか?」


「ああ。それとこの都にある薬関係を売っている所を教えて欲しい。」


「分かった、本を用意した後に話そう。それと・・コレも持って行ってくれ。」


 コーストは自身の首に掛けてあった、アルトデルト公爵家の紋の入った高価なペンダントを数哉に差し出す。


「これは?」


「友情の証だ。この王国で困った事があれば、これを見せると良い。きっと役に立つ筈だ。」


「頂いておこう。」


・・・翌日、コーストはルノーテにそれを渡し二人で公都の有名な考古学者達を訪ねた。


「何用でしょうか?コースト様。私は忙しいんですがね!」


「相変わらずだな、オトスナー教授。」


 コーストの小さな頃、家庭教師の1人としても呼ばれるが遺跡調査の費用が貯まると直ぐに辞めて冒険者と共に遺跡に出発した男である。


「用がなければ、これで失礼致します。」


 お辞儀をして屋敷に戻ろうとするオトスナーにコーストは話した。


「教授にとって重要な話だぞ。此処に居るルノーテが偶々、遺跡で地図を見つけたらしい。」


 ルノーテが緊張の表情でお辞儀をする。


「ん?」


 オトスナーは怪訝な表情で振り向いた。今まで沢山の地図が見つかるが偽物や、一部の狭い範囲の地図が見つかるだけであった為に今回もそうだろうと思っている。しかし、居間兼食卓のテーブルに載せ地図を開いた瞬間、目を剥き食い入る様に顔を近付けた!


「そんな!?まさか!いや!・・確かに思う所はあった。ではあの施設はやはり!・・・これは凄いぞ〜!!」


ダダダダダダ!!


 オトスナー教授が真剣な表情をし、早歩きでルノーテへ狭って来る。怯えるルノーテの両手を取ると一気に捲し立てた。


「これは凄い!パラユヤンとベレンモル遺跡の情報革命だ!暫くは王国の考古学者がこのアルトデルト公都に集まる事となるだろう!お嬢さん!アンタにも王国から凄い報酬が出る筈だ!期待していたら良い!それじゃあ悪いが私は忙しい!王国の報酬が決まればコースト様に連絡を取るから、これで失礼するよ!」


バタン!


 屋敷の扉が閉められ、コーストがルノーテに微笑むとルノーテもコーストに微笑み返した。


「カズヤ殿に感謝だな。」


「はい、でも精霊様の発見を本当に頂いて宜しかったのでしょうか?」


「ああ、カズヤ殿はルノーテの発見にする事も快諾してくれている。」


 ルノーテは両手を顔の前で合わせ、祈る様な仕草を取る。


--精霊様・・ありがとうございます。


 フィリップは移動装置が動いた時点で、コーストの後継者の証を奪おうと睡眠もせず急いで屋敷に戻るが、時既に遅くコーストが後継者と認められた翌日であった。フィリップが父である公爵の書斎のノックする。


コンコン。


「入れ。」


 フィリップは書斎に入るなり、頭を下げた。


「申し訳ございません!父上!折角私めを後継者にと言って下さったのに!兄の妨害で達成出来ませんでした!今一度!私にチャンスを頂けないでしょうか!」


「頭を上げよ、フィリップ。私は私を煩わせる者が嫌いだ。コーストが平民であるルノーテを今も婚約者にと話すのが煩わしい。」


 フィリップがそれを聞いて明るい表情で頭を上げた。


「ならば!」


「しかし・・もっと嫌いな事がある。それは無能な者だ。お膳立てをしてやったにも拘わらず負けた敗者だ。」


「え?・・そ!それは!兄の妨害が!」


「お前には兄の妨害をして良いとも話してあった。それは行わなかったのか・・?」


「勿論!行いましたが・・。」


「コーストはその妨害の中、今までの記録にある最短時間で後継者の証を持って来た。」


「ただ!運が良かっただけです!」


「前に、運も実力の内と話した筈だ。コーストならば、ルノーテを貴族にする事も出来るかもしれない・・お前には相応の地位を与えよう。アルトデルト公都のマルンア町の町長を任命する。」


「そんな!あんな公都の片田舎で過ごせと仰られるのですか!あんまりです!父上にあれ程忠誠を尽くしておりましたのに!」


「だから町長の地位をやると言っておる。それとも勘当が良いか?私の子供は他にもおる。お前が私を煩わせるのであれば、代わりにそれを養子に取ろう。」


「な!?」


「つまみ出されない内に早く出るが良い。それとお前が雇った冒険者の費用はお前が出せ。私は知らん。」


「・・く!」


バタン!


・・一方数哉は、アルトデルト公都に日本の露店通りの様な物があると聞いてお土産になりそうな物は無いか、そこへ向かっている。

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