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ラナ markⅢ  作者: ススキノ ミツキ
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第40話 反撃の狼煙 後編

 佐熊教授は、迷彩色のコートの裏側に右手を入れた。魔法陣の描かれた試験管を取り出す。


--声を出してイメージした方が、上手くいくと言っていたな。恥ずかしいが仕方ない。


 佐熊教授は立ち上がり、左手のUKA戦闘員達の手前の地面に試験管を向けて蓋を開いた。


「出でよ!そびえ立つ、岩壁(いわかべ)よっ!」


 佐熊近くで銃を乱射しているコールマンから、非難の声が上がる。


「何しているんだ!佐熊さんっ!魔法使いごっこは()めて、早く銃を撃ってくれっ!」


 その瞬間、佐熊の前に魔法陣が描かれる!ゴゴゴゴゴゴ!と言う地鳴りと地震が発生して、左手のUKA戦闘員達を妨げる様に岩壁が地面から10m盛り上がった! それを見たコールマンの戦闘員とUKAの戦闘員が驚嘆する。


「「「「「「「「えっ?何が・・?」」」」」」」」


 再び佐熊は立ち上がり、素早くトラックの後ろを利用して銃弾を避けつつ、右側へ移ると同じ様に、試験管を突き出して叫んだ。


「出でよっ!そびえ立つ、岩壁よ!」


 こちらもUKAを妨げる10mの岩壁が立つ。UKAの銃弾は正面からのみになり、多方面からの銃弾を防いだ。しかし、ケンタウルスの様な下半身が4本の獣の脚を持つベータが、10mある右側の壁を登り、銃弾を避けつつ特殊な長いスタンガンを持ち、勢い良く迫って来る!佐熊は、岩の試験管をコートへ入れ、 別の試験管を二つ取り出す。右手の試験管を向けて蓋を開いた。


「出でよっ!凍てつく空気と、氷の矢じりよっ!」


ゴオオオオ~~!!


 勢い良く氷の矢じりを含んだマイナス80度近い強風でさえも、凄まじい速さで避けて迫って来る。


「当たるかよっ!」


 佐熊は右手の試験管を開いたまま、左手の試験管も開いて叫んだ。


「出でよっ!全てを飲み込む竜巻よっ!」


 佐熊の試験管の前に魔法陣が描かれて、暴風が吹き荒れる!高さ20m近い高さの竜巻が冷風と氷の矢じりを飲み込み、ケンタウルス戦闘員へ走り出した。それを見たケンタウルス戦闘員は、危険を感じて離れようと強い脚力で地面を蹴ったが、竜巻の吸引力が勝る。


「うわぁぁ~~~!!」


 ケンタウルス戦闘員は浮いて足をバタバタさせながら、極寒の竜巻の中をグルグルと回った。氷の矢じりが次々と戦闘員の身体を傷付けるが、出る筈の血も一瞬で凍りつき地面へ落ちる事はない。 ケンタウルス戦闘員の表情も、息も出来ない冷たさの中で苦痛のまま凍りついていた。だが、味方のコールマン戦闘員達も竜巻に引っ張られトラックにしがみついて耐えている。それを見た佐熊は、二つの試験管の蓋を急いで閉じた。


 白く凍りついたケンタウルス戦闘員は、地面に落ちると、粉々に砕け散る・・。佐熊自身も驚いていた。


「・・数哉。何と言う恐ろしい武器を作ったんだ・・。」


 飛び出そうとしていた正面のUKA戦闘員達は、それを見て動かない・・いや、動けない。銃を撃ちまくるだけで迫って来ようとはしなかった。コールマンの戦闘員は、士気を上げた。


「ベータもやっつけるなんて、凄い!佐熊さん!やるぅ~!」


「勝てるぞっ!うおおお!」


「緒方さんを絶対助けてやる!」


 士気の上がる中で、右側の厚い岩壁の一部が砕ける。数哉と刃を交わしていた刀鬼が、数哉の剣撃で吹き飛ばされて岩壁を突き抜けていた。服がボロボロの刀鬼の表情は怒りに満ちている。


「くそっ!くそっ!くそっ!もう、許さない!建物を無闇に壊すなと言われてたけど関係ない!殺してやる!」


 刀鬼が両手を建築途中の建物に向けた。建物の周りにあった鉄骨7本と、建物の鉄骨のボルトが弾け飛び、宙を舞う。計32本の鉄骨を抜かれて、建物は崩れていった。刀鬼が両手を数哉に向けると、2トンを超える鉄骨が次々と数哉へ迫る!数哉は地面に両手剣を深く突き刺し、その剣の腹に右足の踵を合わした。


「俺も、もういい。時間の無駄だったな。どうやら、ドミトルの居場所は知らないらしいから。人間でないクズ野郎は解体だ、来い。」


 数哉はエネルギー鎧を両手拳に展開する。力強い藍色のオーラが両手拳に現れると右腕を引き、左手はピンと伸ばし右腕の上に置く独特の構えを取った。その姿に刀鬼は笑いを堪えられない。鉄骨を避けると思われた数哉が向かい合おうとしているからだ。


「ハハハハ!鉄骨を(なぐ)って勝つつもりか!戦場のビルの鉄骨を使って、戦車二十台一気に潰した事もあるのになぁ!粉々に潰されるが良いっ!」


 数哉は鉄骨が迫るが構えのまま動かない。


--ラグナルーガ式奥義改・・牙突(がとつ)っ! 連っ!


「ラァッ!!ラァ!ラァ!・・・・・・ラァッ!」


 数哉の右拳を剣の突きの様に突き出すと、凝縮したエネルギーの巨拳が2m近く飛び出した!


ズドンッ!ドッ!ドッ!・・・・・ドンッ!


 2トン以上ある鉄骨にエネルギーの巨拳が当たると、全ての鉄骨は方向を変えて刀鬼の下に戻っていく!


「なっ!止まれっ!早く止まれって言ってるのに何故止まらないっ!」


 物理力が超強力な磁力を上回り、その速度は刀鬼が動かした鉄骨の速度を軽く凌ぐ程に速い。次々と襲いかかる鉄骨を避け様とするが、数哉との死闘で身体が上手く動かない!二本目の鉄骨が頑丈な身体の腹を貫いた。刀鬼が口から、人間とは思えない真っ黒な血を吐く。


「ぐぼぁっ!」


 上半身と下半身は千切れ掛けていた。その周りに鉄骨が次々と突き刺さる。その異常な程の光景にコールマンの戦闘員達が固まっていた。


「いや、俺夢でも見ているのか?鉄骨を簡単に飛ばす奴はいるわ、それを(なぐ)って撃ち返す・・?もしかして歩く核兵器と言われてるエンド同士で喧嘩か?」


「あんなのが敵で向かって来たら、俺達一貫の終わりだぞ!」


 それぞれが不安を抱く中で、佐熊が安心させようと、戦闘員に大声で話した。


「大丈夫だ!あれは味方だっ!」


「マジかっ!」


「すげぇ~ぞ!」


「「「「うおお~~!!」」」」


 佐熊の近くの若い戦闘員が興奮気味に話す。


「佐熊さん!佐熊さんの知り合いですか!?」


「ま、まあな。」


「凄い!名前はっ?名前は何て言う人ですか!?」


--名前は内緒にする約束だからな。


 佐熊は、空を見上げてヘルメットがあるのも忘れて頭をかいた。


「え~と・・マッドサイエ、マッディ・・い、いやっMS(エムエス)1だ!MS1!」


「エムエスワンッ!かっ!・・こい~~!俺らコールマンのヒーローっすね!」


「おい!俺らコールマンのヒーローだってよ!名前はMS1!」


「「「「「「「「「うぉおおおおお~~~!」」」」」」」」」


「「「「「「「「「MS1!MS1!・・・・MS1!」」」」」」」」」


--数哉、スマン・・まあ、マッドサイエンティストよりはマシだろう。


 数哉は歓声の中、自身の事とは思わずに居ると突然ラナから警告を受ける。


『数哉様、大変です。』


「どうした?」


『ビル内の全階に設置された時限爆弾が全て動き出した様です。5分後には爆発します。』


「?誰の仕業だ?」


『刀鬼が死ぬ直前に電磁波がビルに向けられたので、刀鬼の仕業かと。』


「最後まで迷惑なクズだな。爆弾は止められないのか?」


『既に機械式に任せられているので、遠隔では不可能です。』


「被害予想規模は?」


『半径2kmは焼け野原と化すでしょう。転送されますか?』


「いや、犠牲を出す気はない。覚えたてで上手くいくか分からないが、新たな技を試すぞ。爆弾と真っ向勝負だ。ビル内に善人はいるか?ドミトルは、ここに居ないのは間違いないな?」


『はい。このUKAの敷地にドミトルは居ません。あと、この敷地には全員非人道的な件に関わっている者達ばかりです。』


「分かった。」


 UKAの高層ビルを見上げる。


「屋上に転送してくれ。」


『畏まりました・・転送。』


・・まだ明けていない深夜の屋上で数哉はラナに話した。


「急いで佐熊教授に連絡を繋いでくれ。」


『畏まりました、どうぞ。』


「・・教授、聞こえますか?」


「あ、ああ。スマンあれは」


「何を話そうしているのか分かりませんが今は時間が有りません。後数分後にはエンドが発動させたビルの爆弾が爆発するので急いでここから出来るだけ離れて下さい。」


 佐熊は事を理解して早口で話す。


「分かったが、外には警察がバリケードを張っている!門から出たら全員捕まるぞ。警護が手薄な壁に突っ込んで壊して出るしかない!爆発するまでに間に合うか分からんが!」


「それでは、時間が掛かり過ぎます。車に取り付ける迷彩装置を使ってバリケードを突破して下さい。」


「そうか!それがあったな!数哉はどうする!?」


「俺は何とか爆発の被害を最小限にしてみようと思っています。時間が有りません。連絡を切ります。」


「おい!数哉っ!」


--どうするつもりだ。


 佐熊は戦闘員達の各チームリーダーへ既に緒方支部長はMS1が助けた事と、ここから離れる必要を話す。チームリーダーがそれぞれに話すと、急いで車に乗り込んだ。荷台の運転席に近い者がトラックの端に上がって屋根に佐熊から渡された装置を取り付ける。


「取り付けたぞ!スイッチを入れる!」


カチャ。


 車にモザイクが掛かっていく・・最終的に景色に溶け込んで見えなくなった。


「行け!行け!」


ブオオオン!


・・数哉はビルの屋上からジャンプして300mも飛び上がっていた。そのまま両手剣を真上に掲げて宙に浮いている。剣の表面を大量のオストラルエネルギーが伝い、剣の先には青白く凝縮された直径30m程の巨大な球が耀いていた。その球は少しずつ大きくなり重量波が発せられているのか、数哉にも強烈な圧力が四方八方から掛けられている。凝縮された球から発する強烈な光が周辺を照らして大井町へ仮初めの夜明けを呈していた。警察もUKAの戦闘員達も何が起きていると、空を見上げている。


「・・一体あれはなんだ?」


 数哉は身体に掛かる圧力を必死に耐える。


--・・くっ!本来ならエネルギー鎧と両立して発する技だから厳しいな!まだ、俺はそこまで出来ないし・・。


 戦車ですら平らにする程の重力を、数哉は生身で耐えていた。


「ぐあ!くっ・・。」


 数哉の鼻の右穴から鼻血が流れる。


『数哉様っ!お身体が持ちません!もう、(はな)って下さい!』


--「だ・・まだだ・・。」


「ぐ!」


ミシミシ!ミシミシ!


 身体に更なる圧力が掛かった所で、数哉よりビルの限界が来る。


『数哉様っ!もうビルが爆発します!』


--ラグナルーガ式奥義・・


落日(らくじつ)っ!ラァアア~~~~~~!!」


 数哉が身体の圧力を抗いながら、剣を一気に下方へ振り下ろす!それと共にエネルギー球が、一気にビル方向へ突っ込んでいく。その瞬間!ビルの爆弾が全て爆発し、ビルは一瞬で粉々に弾け飛ぶ!更に燃え盛る炎と衝撃を周辺に届け、辺り一帯を焼け野原に変えようとしていた。そこへ特殊に作られたエネルギー球から発する強烈な重力波が広範囲に襲い掛かる!炎と衝撃が、方向を変えて地面へ抑えつけられていく!重力波から逃れた、ほんの少しの衝撃が警察と、バリケード直前のコールマンのトラックを背後から襲った!


 各チームリーダーは走る改造トラックの荷台で指示を出す。


「姿勢を低くしてトラックをしっかり持てっ!衝撃が来るぞっ!」


 重いトラックが20 cm程浮いて、コールマンの戦闘員は、必死に落ちない様に堪えている。


「くっ!」


「うおおっ!」


「くあ!」


 それぞれが堪えている中、バリケードの警察の車や人間も、衝撃で地面を滑っていく!バリケードに空間が出来た各所を見てトラックは、それぞれ警察の車に当たりながら突破した。


「よし!抜けたぞ!」


 警察はビルがあった場所から来た衝撃でパトカーに何かが当たったと思っている。只、深夜に起こされた上にUKAグループの敷地には入れず、不満を募らせている様であった。政府へUKAグループからの圧力が有り、警察が引き上げていく。

・・UKA調査団が到着するが、ビル跡地には何も残っておらず、円柱型に地下15mまで深く掘られていた。大井町周辺で地震も起きたが、テレビではビル爆発が地震の原因ではなく、東京沖の震源が原因とされている。


・・コールマン支部では、お祭り騒ぎであった。日本のUKA拠点としては最大の場所で、そこを潰せたのは最大の成果と言える為である。佐熊を中心に盛り上がっていた。


「俺達のヒーロー、MS1に乾杯っ!!」


「「「「「「「乾杯っ!」」」」」」」


--数哉、スマン・・。


 勝手に付けてしまったアダ名が広がり心の中で謝罪する佐熊に、多くの者が話し掛けて来た。その中には三咲嬢もいる。佐熊の前に来ると急に土下座を始めた。佐熊が戸惑い話す。


「おいおい、三咲嬢土下座なんかするな。一体どうした?ほら、早く立ってくれ。」


 三咲嬢は土下座したまま話す。


「お願いだ!佐熊さん!MS1様を紹介してくれ!あの方が力を貸してくれればUKA沖縄支部に居る私の子供の仇が討てる!お願いします!お願いします!」


 三咲嬢は必死に頭をガンガンと床にぶつける。


「やめろ、やめろ。紹介は難しいがMS1には協力して貰えるように頼んでみるから。」


「本当ですか!」


「ああ、だからもう立ってくれ。」


 三咲嬢は立ち上がり、佐熊の手を取る。


「本当にありがとうございます!宜しくお願いします!」


 再び頭を深く下げた。佐熊は、三咲嬢に話す。


「但し、条件がある。」


「何でも構わない!金なら借金してでも用意するし!身体を差し出せと言うなら、MS1様に差し出しても良い!」


「そんな条件じゃない。」


「ならば、何を?」


「前に連れて来た数哉と仲良くしてくれ。それが条件だ。」


「この私に、元UKAのモヤシ小僧と仲良くしろって!あんな役立たずの小僧と仲良くなんか出来ません!MS1様の爪の垢を飲ましてやりたいくらいですっ!」


「・・だったら協力の件は無しだ。悪いが力になれない。」


--数哉自身を悪く言う者に、数哉も力を貸したくないだろう。間接的に褒めてもいるが・・。


 三咲嬢は少し葛藤するが、仇を討つチャンスを逃せないと話した。


「分かりました。小僧と程々に仲良くします。」


「おいおい。小僧も止めてくれ。」


「・・さ、佐藤君と仲良くします。」


「良いだろう。次に連絡が取れたら話してみる。あいつも忙しい奴だからな。」


「ありがとうございます!お願いします!」



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