第4話 パラヤユン遺跡 前編
数哉は日も昇るまだ静けさの残る頃に出発した。勿論、馬車は使っていない。
「ラナ、この世界の交通手段って、どんな物があるんだ?」
『そうですね・・馬車が一般的ですが、冒険者が使用している中にはエルラを動力としたノーラと言う車もあります。後は王族や大貴族等が使用している、魔法を利用した飛空艇もある様です。』
「へ〜・・飛空艇もあるのか?一度乗ってみたいな。」
『御希望とあらば宇宙船でも、直ぐに御用意出来ますが。』
「・・景色って言うのはさ。同じ景色でも歩くのと、自転車を走らせる、バイクで走るとか手段によって感じ方は変わるけど宇宙船になんか乗ったら、速過ぎて景色を見れないだろ・・。」
『確かに、まだ今の数哉様で難しそうですね。ですが数哉様であれば、いずれ見れる様になります。』
--それ・・人間ヤメてないか?
数哉は猛スピードで駆けていく!コーネット達もコレだけは、予想だにしなかった。上級冒険者であるコーネットも速度70km/hで走る事も可能である。しかし全力で走り続けて約3分持続すると、スタミナは切れてしまうのだ。数哉は毎回の食事に混ぜられた薬の効果で身体改造され、改造人間に等しき存在となっている。本人は気付いていないが既に数哉は、レリクスの世界の空を駆けていく乗り物以外で、トップクラスの交通手段を身に付けていた。
タタタタタタタタ!!・・・・!!
「最近、疲れる事が無いけど俺・・大丈夫なのか?麻薬とかやってると疲れ無いって聞くけど。」
『数哉様は健康そのものです。私が保証致します。』
--貴重な薬ですが、変な薬は使っていませんから・・それに加え、アッチの方も健康過ぎの筈ですが・・・早く襲って頂きたいものです、ポッ・・。
まだまだ自身の速度に数哉は慣れておらず、よく転げ、よく衝突し、よく傷を負っていく・・。ラナの用意した鉄の鎧の重さも全く感じさせない走りであるが、鎧には歪みや凹みが生じていた。
『・・数哉様、此処に来るまでに、かなり無理をされているので鎧の劣化が激しい様です。鎧としての機能が低下しています。』
「確かにな・・遺跡から戻ったら鎧を買い替えないと。」
・・・馬車で6時間掛かる所を、数哉は休み無く駆け抜け、約2時間程で遺跡の入り口に着いた。遺跡には数哉の想像していた洞窟の入り口でなく、地球で見た事のある物より少し大きい入り口が目の前に建っている。
「ん?・・コレって、もしかして?」
『そうです、数哉様。地球のエレベーターそのものです。』
「もしかして、ハイテクノロジー的な文明が?」
『はい。残っている文献に依れば約二億年前にオストラルエネルギーと、地球のテクノロジーを併せ少し進化した文明が存在していた様です。』
「二億年か・・凄いな。」
数哉は遺跡のエレベーターの扉を眺めている。
『文明が進み、自然を蔑ろにした為に、大気汚染等の理由から地表には住めなくなったみたいですね。遺跡の殆どが地下に設けられています。』
「・・・・。」
数哉は地球の未来を目の前に見ている様で、真剣な表情のまま言葉が出ない・・ラナは続けた。
『地下へ多くの国が移された後も、国と国の争いは続けられました。地表で活動出来ない人間を使わず、エルラを故意に生み出し改造して他国を襲わせたと有ります。』
「何故滅びたんだ?遺跡になってるって言う事はそう言う事だよな・・。エルラぐらいで滅びそうなテクノロジーでは無さそうだけど?」
『仰る通りです。数少ない資源を奪いあって三千年程経った頃、ファングレッタ王国にあったエルラを生み出す研究所で、途轍もない力を持ったエルラ・・破壊神と呼ばれる物を生み出してしまった様です。錬成科学者の装備していた制御機能も全く効果なく、そのエルラは暴れ続けた様でファングレッタ王国は、わずか4日間程で消え去りました。その破壊神は次々と他の国を襲い、5ヵ国が更に消え去り、争い合っていた国々は遂に力を合わせ、その破壊神を倒そうとした様です。オストラルエネルギーを変換凝縮し、結晶化させた強力な神器と言われる7つの武器を使い、破壊神を封じた様ですね。7つの武器を使用した各国の勇者達は破壊神の封印がいつか解かれる事を恐れ、その封印が弱くなった時に勇者達が転生出来る様に当時の賢者と呼ばれる者達の魔法で眠りに着いたと、世界の各地に伝説として残っております。』
「おいおい・・この世界って、そんな危ないのが封印されているのか?」
『まぁ・・危ないと言っても、この世界の人間にとってです。数哉様が御自身の力のみで倒したいと仰らない限り、危険は御座いません。』
「・・前振りみたいに言うのはヤメてくれ。そんな危ないの物に近付くつもりは全く無い・・それで地下から又どうして地表に移ったんだ?」
『破壊神を封印した後、全ての王国同士で話し合われ地表の空気を元に戻す事だけにテクノロジーを使う。そして人間が地表に住める様になれば、全てのテクノロジーを放棄する盟約を立て実行したのです。二度と破壊神を生み出さない為に・・。』
「そう言う事か・・でも、今は遺跡のテクノロジーを色んな王国が利用しようとしているみたいだな。まっ、いいか!それより土産だ、土産。この地下遺跡にある果物を見つけないと。このボタンを押せば良いのか?」
数哉は蔦が邪魔しているエレベーターのボタンを指差す。
『はい、そのボタンです。』
・・数哉がボタンを押すと1分37秒後、目の前にある扉が音も無く開いた。中はツルツルとした大理石の様にも見える。数哉はエレベーターに乗りながらラナに話す。
「これって石?それとも金属か?」
『石でも有り、金属とも言えます。他の星にも存在していますが温度での変化が少なく腐蝕に強い為に、様々な場所に用いられています。地球には残念ながら存在しませんが・・お土産にされますか?』
数哉が乗ると扉が閉まり、エレベーターが下りていく。
「いや・・家族に持って帰っても喜びそうに無いしヤメておく。それにしても、このエレベーター・・静か過ぎて分からないけど、本当に動いてるのか?」
『動いています、現在地下829メートルです。』
「え!?そんな深く?」
『はい、この惑星の大きさは地球の約12倍の大きさです。深く作らないと、大きな国を丸ごと移す事は不可能ですから。あと18秒程で到着致します。』
・・音も無く扉は開いた。そこには確かに、ビル群の聳え立つ景色がある。但し、森とビル群が入り乱れている状態で、エルラや動物達だけの声が聴こえた。研究所の屋上にエレベーターは繋がっていて数哉は外に出た後、ふと空?を見上げる。外と同様に明るいからだ。見上げたが太陽に代わる物は無く、頭上には空が広がっているだけである。
「ラナ、上の空は映像か?」
『そうです。魔法と科学の融合で頭上に映像を映し出しています。』
「そうか・・明かりは?」
『地表の明かりを利用して、光を増幅した物を時刻により拡散させていますね。』
「つまり此処も日が暮れるって訳だ。アチコチから変な鳴き声が聞こえるけど結構エルラも居るのか?」
『はい。地上よりも、うじゃうじゃと。』
「この遺跡には、何故多くエルラが居るんだ?」
『他の遺跡もそうですが、遺跡のテクノロジーを持ち出せない様にエルラを定期的に生み出して大量に放っている様です。遺跡の中央部に近付く程、強いエネルギーを持ったエルラが居ます。』
「ポラの実って、中央部に有るんじゃないだろうな。」
『此処から12km離れた場所に、育っています。中央部へは200km程、離れていますから遺跡でも辺境と言えますね。』
「この遺跡・・かなり広いんだな。」
『他と比べると小さい方ですが。』
「・・取り敢えずポラの実が成っている方向は?」
『数哉様の正面から右14°の方向へ適当にお進み下さい。後は少しずつ修正致します。』
「分かった。」
数哉が歩くと、直ぐに猪の様なエルラ3匹が道路を疾走し向かって来る。
『数哉様。』
「あぁ、分かってる。弱そうに見えるがあれ強いのか?なんかバカになって来たかな?全然恐怖が湧いて来ないんだが。」
『数哉様はバカではありません。例えば道路を歩く時、人はアリを怖がるでしょうか?』
「いや、有り得ないな。」
『それと同じです。あれはボッゴと言うエルラですが、数哉様はボッゴよりもかなり強過ぎて怖さを感じる事が出来ないのです。』
「結構大きいけどな。」
走って来ているボッゴは平均体重240kgでお相撲さんが2人突進して来ている状態だ。このエルラは群れる事が少なく、冒険者ランクで言うと1匹でEランクに相当した。
『大きいだけです。大きい風船を思い浮かべて下さい。』
「・・・。」
『その程度です。』
「分かった。」
数哉は目の前に来ても動かない。勢いよくボッゴが数哉の身体に衝突する!
ゴオ!ズザザザザザ!
数哉は2匹のボッゴの衝突で、体重差により地面を滑って行くがそれだけである。数哉の顔には笑みが少し溢れていた。
「大きな風船か・・確かにな。」
数哉は衝突した2匹の身体を地面に両腕で叩き付ける!2匹のボッゴの背中は凹み、血を吐いて動かなくなった。通り過ぎて次の襲うチャンスを伺っていた1匹のボッゴが勢い良く逃げて行く。
「弱かったけど、鎧がまた凹んだな。避けた方が良かったか?よ!」
ボコ!
数哉が腹筋に力を入れると、凹んだ鎧の一部分が元に戻った。
「取り敢えずは、これで応急処置だ。」
その後・・大したエルラも現われず、数哉は剣も使わずに張り手や蹴り、投げでエルラを倒して行く。まるで埃を払う様であった。
「この調子だとポラの実も順調に採れそうだな。」
キャ〜〜!!
少女の悲鳴が聴こえて来る!
「ラナ?今の悲鳴は何だ?」
『どうやら少女がエルラに襲われ、近くのビルの屋上から落ちそうになっています。』
「ラナ!そこへ早く案内しろ!!」
数哉はラナの返事も待たず、声の聴こえた方へ走り出す!
タタタタタタタタ!!
『畏まりました!・・右にお曲がり下さい!・・そこは左に!・・・・目の前のビルの屋上です!』
数哉が見上げると、高さ152mもあるビルの屋上から小さな少女が片手でぶら下がっている状態であった。数哉はそれを見ると迷う事も無く、そのビルの外壁に手を掛け、重力を無視しながらジャンプを繰り返し駆け上がって行く!・・数哉が到着する前に10歳の少女の手の力は尽きて、手を離してしまう!
キャァ〜〜!!
真っ逆さまに落ちて行く少女を、数哉はビルを蹴って近付き抱きかかえた!
「ラナ!頑丈なロープを出せ!」
『畏まりました!転送!』
数哉は少女を抱えたまま落下し、ラナの出したロープを片手で振り回して、ビルのベランダにある手摺りに飛ばし巻き付ける!
ビュン!パシ!
「よし!掛かった!このまま降りるぞ!」
「きゃあ〜〜〜!!」
数哉は片手でロープを持ち、もう片方の腕で少女を抱えターザン状態となり、地面の傍に来た所で地面に降りた。
ズザザザザザ!
「ふ〜、何とかなったな。」
数哉は少女を見る。少女は冒険者らしい鎧も武器も持っておらず普通のワンピースを着ており、エルラの沢山居る遺跡には不似合いな恰好をしていた。
「君は?誰かと一緒だったのか?」
・・恐る恐る、少女は話し出す。
「・・うん、学校の遠足で山に居たんだけど。いきなり地面が割れて、気付いたら友達とこの遺跡に運ばれたの・・。」
--「ラナ、他にもこの遺跡へ来れるルートはあるのか?」
『・・簡単に分かる範囲で7ルート。この近くであれば・・有りました。此処から873mの場所に隠しルートが有ります。多分そこから来たのでしょう。』
--「そうか。」
「友達は今、何処に?何人居た?」
「3人・・。ボッゴに追い掛けられて逃げてる最中にハグレちゃった・・う・・うぅ。」
「泣くな、俺が友達も探してやるから。」
「でも!お兄ちゃんも冒険初心者じゃないの!?鎧もボロボロじゃない!無理よ!」
「ん?あぁ、これか・・ま、冒険者ランクGであるのは確かかな。だけどな」
「お兄ちゃん!後ろからボッゴが!」
「分かってる。本当にうじゃうじゃいるな。」
数哉の話している後ろからボッゴが勢い良く迫ってくる。数哉は振り向く様子も無い。少女は今まで逃げ続け体力を使い果たし、怖くて動けない。数哉は足音から間もなくかな?と足を後ろへ出して蹴る。
「ビンゴ!」
ドォ!!ゴロゴロゴロゴロ!ドガン!!ガラガラガラ・・。
数哉の蹴りがボッゴの鼻先に当たり、ボッゴは転がりビルの壁に突っ込んだ。衝撃で壁には穴が空いて崩れている。少女は何が起こったか分からない。そんな少女に数哉は笑い掛けながら、一言話す。
「な。」
「なっ・・・て、お兄ちゃん冒険者ランクGの筈じゃあ!何でそんなに強いの!?」
「ん〜・・成り行きかな?それより安心したろ。友達とはどの辺りでハグレたんだ?」
少女の表情に安堵が見てとれた。明るい表情で指を差す。
「あっち!」
「よし、行くか!」
「うん!」
--ラナ、向こうの方向に人は居るか?
『はい・・大人が4名、子供が3名居ます。』
--「大人も?」
『はい、20代の男性4名です。冒険者の格好をしていますね・・エルラの大群に囲まれ、ビルの一階に逃げ込んでいます。』
--「マジか・・俺一人で倒せるか?」
『数哉様でしたら余裕ですが混戦となると、その少女はどうなるか分かりません。』
--「ならば・・エルラの大群に会わずにビル内部へ入る方法は?」
『御座います。隣のビルの屋上から少女を抱えて飛び移れば可能です。』
--「それ以外は?」
『普通の方法では御座いません。急ぎませんとビルの扉を突破されそうになっています。』
--「それを早く言ってくれ!迷ってる場合じゃ無いな!急ぐぞ!案内してくれ!」
『畏まりました!』
「君!名前はなんて言う!?」
「アラルです?・・どうしたの?お兄ちゃん。」
「カズヤだ!悪いが急ぐ必要がある!怖かったら目を閉じてろ!」
「キャッ!」
数哉はアラルを抱えると走り出す!アラルの事を考えて、いつもの様な走りはしていないが、アラルにとっては景色が溶ける様に過ぎて行く!
「キャァ〜〜!!」
「目を閉じて、口を閉じてろ!舌噛むぞ!」
『・・・そこを右に曲がった正面のビルの屋上に昇って下さい!!数哉様!』
--「分かった!」
数哉はビルの扉を蹴り、吹き飛ばすと目の前にあった階段を、階段とは思えない速さで駆け上がっていった!数哉は屋上まで駆け上がると、迷いを振り切り屋上から屋上へ空を飛ぶ!
--南無三!
ラナが飛んでいる数哉に声を掛けた。
『数哉様、もし落ちても数哉様はタンコブ程度で問題ありません。』
--「嫌なフラグを立てんな!」
ダン!
数哉は隣のビルの屋上に着地した。そのまま、今度はビルを駆け降りる!
タタタタタタタ!
・・・子供と居る冒険者達は、話していた。
「どうするよ!リーダー!もうすぐバリケードも破られそうだぞ!」
・・・・・ドン!ドン!ドゴ!ドン!
ビルの扉からエルラの体当たりする音が聞こえる。扉は少しずつ歪んでいた。
「そんな事言ってもな・・急にエルラが大量発生するなんて誰にも予想出来ないだろ!くそ!」
リーダーが頭をかく。子供達は部屋の隅で体育座りし、固まって怯えていた。
「それに子供達なんか連れて来て、どうすんだ!?俺達だけでも死にそうなのに!」
「あの場合仕方無いだろ!・・放っておけば直ぐにでも子供達が喰われそうだったんだから!」
「・・もうすぐ俺達も喰われるけどな。」
・・・数哉は猛スピードで建物内の階段を降りて行く!
『数哉様、この下の階が一階です。』
--「分かった。」
数哉が一階に降りると一斉に冒険者達と子供達が視線を送った。数哉はアラルを降ろす。アラルは他の友達へ走り、抱擁し合った。冒険者のリーダーが数哉の下へ近付く。
「お前もこのビルに逃げ込んでいたのか?」
「ん?まぁ、そんな所です。」
「・・今、考えていたんだが俺達が助かるには誰かが犠牲になるしかない!冒険初心者のお前には悪いが、お前も加えた俺達5人でアミダくじを引いて貰う!当たりを引いた者は音を立てながら走り、あのエルラ共をおびき寄せるんだ!エルラがそっちへ向かった隙に全員このビルから脱出する!」
リーダーが他の者達にも聞こえる様に大きな声で話した。他のメンバーもクジに当たれば確実に死ぬとツバを飲み込む。
ゴクッ。
数哉はそれを聞いて応えた。
「いや、クジなんか引かなくても俺がやりますよ。」
--何処か人気の無い場所まで、おびき寄せて倒せばいいだろう。
リーダーが真剣な表情で、自ら他の者達を救う為に死地へ赴く若者を見る。
「お前・・。」
リーダーは涙目になり数哉の両肩に手を置いた。
「いや!すまん!お前はまだ若いし死ぬのは早い!やはり俺が行く!」
リーダーは数哉の漢気を感じ、自らが囮になると言い出す。他の冒険者達がリーダーを涙ながらに讃えた!
「リーダー!」
「「リーダー!」」
リーダーは一階のなるべくエルラが少ない、遮蔽物を置いた窓に近付いて行く。そこから出て囮になるつもりだ。
「皆!元気でな!たまに、俺の事も思い出してくれ!・・俺はクダン!俺の死に様を見ていろ!!」
「「「リーダ〜〜!!」」」
その時!リーダーと叫ぶ声に反応して、外に居た大きなエルラが壁を叩き吼えた!
ドン!!グォォォ〜〜!!
クダンが立ち止まり、右足の膝を手で抑えた。
「・・あいたたたた!さっき子供達を庇って負った傷が!左足の骨が折れているかも知れん!」
数哉が呆れ顔で膝を指差し、話す。
「それ右足だけど。」
『数哉様・・ご存知だと思われますが、あれは嘘です。』
--「だろうな・・。」
数哉は元々自分が行くつもりであった為に、全員に向けて話した。
「今から俺がエルラを引き付けます!エルラの気配が無くなったら急いで逃げて下さい!子供達を遺跡から出して上げて下さい!」
冒険者達が死地へ赴く勇敢な少年に、真剣な表情で頷く。クダンも頷きながら話した。
「スマン!俺の足が折れてなければ!」
--折れてない・・アンタのメンタルの強さには脱帽だよ。
数哉は全員の安全の為に一階からではなく、3階から出ようと走り出した。クダンが叫ぶ!
「こら!何処に行く!引き付けるって言ったのは、口だけか!!」
全員、お前もな!・・と思った。その時!外から金属音が聞こえて来る。
ガン!ガン!ガン!
あっと言う間に数哉は3階の窓から飛び出して、他のビルの傍に落ちていた鉄パイプを拾うとビルに叩きつけた。
「こっちだ!!エルラ!こっちに獲物がいるぞ!!」
ガン!ガン!ガン!
全員がその音と声を聞いて、クダンがクールな笑みを見せる。
「フッ!信じてたぞ・・少年。」
仲間が言葉を呑み込めず、一斉に突っ込んだ!
「「「嘘言うな!!」」」
エルラ達が数哉を認識し、唸り声をそれぞれが上げながら53匹のエルラが数哉に向かって一斉に走り出した!
ドドドドドド!!・・・!!
「流石にあれだけ迫って来ると、怖いな。」
『大丈夫です・・Bランクのエルラが一匹混ざっていますが問題ありません。数哉様のスキル以外の戦闘能力は既にレベル90となっております。今まで通りの力業で倒せます。』
「よし、遺跡の入り口と反対方向にある広場を探してくれ。」
タタタタタタタ!
『畏まりました。』