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ラナ markⅢ  作者: ススキノ ミツキ
39/41

第39話 反撃の狼煙 中編

 光原に御礼を言われながら、数哉は頷いて立ち上がる。他の者達は、突破されたセキュリティ強化と、流れて来る情報の処理で未だ忙しくしていた。その部屋を出て廊下を進むと、左手に大きな石の階段がある。


・・教授と数哉がそこを降りると、線路の廃路線を利用したプレハブ住居が乱立していた。深夜でも住居の前には木の机上やブルーシート上に、中古の拳銃や何に使うか分からない鉄のロボットアーム等、得体の知れない液体まで売られている。食材も売られていて、暮らすには問題ない様だ。


 ロボットアームを売っている髭もじゃの佐熊と同年輩らしき男が、教授に話し掛けて来る。


「おうっ。佐熊さんじゃないか?どうしたんだ、その身体は?人間の身体の損傷が酷くてロボットの身体を売って調整してやったろう?」


「ああ、暫くぶりだな。どうやらリンクが上手くいかずに死にそうになってな。新しい身体に替えたんだ。」


「何っ?儂以外にそんな事が出来る者なんかおるのか?どれどれ・・。」


 佐熊教授に、両手をワキワキ動かしながら近付く男性に慌てて佐熊教授は話した。


「大木さんっ、今日は時間が無い。今日は

色々あって疲れていていてな。また時間がある時にしてくれいか?」


「そうなのか?仕方ない・・。」

 

 大木と呼ばれた生体学の元教授は残念そうにしているが、両手をワキワキだけは止めていない。佐熊は苦笑いしながら遠ざかる。


「・・ハハハ。」


 佐熊は約300人程の住居を抜けると、突き当たりの鉄梯子をカツカツカツと降りて行く。


「今から行く所は、戦闘員達の訓練所だ。家族や友人を殺されたりしていて、復讐しようと訓練を続けている。気が荒い者が多くいるから、発言だけは気を付けておいてくれ。数哉は戦闘も出来るみたいだし、一緒に戦う事もあるだろう。紹介しておこうと思ってな。」


--「ラナ。」


『はい、数哉様。』


--「俺がUKAに居た事もあって、俺を害しようとする者が居るかも知れないが、決して手を出すな。」


『それは・・。』


「良いか・・美奈さんを殺された俺と同じ境遇の人達だ。だから、何かしたら絶対に許さないからな。」


『畏まりました・・。』


 少しずつ降りて行くに連れて、訓練の音が耳に響いてくる。数哉自身は既に把握していて、無表情で降りて行った・・ビル建設三階分を降りた所で、たどり着いた。50人程の人間が相手を替えたりして、模擬訓練を続けている。義手の者や義足の者、顔や身体に深い傷を負った者もいた。端の防音室では射撃訓練をしている20人がいる。


 左手が義手の筋肉ムキムキでハゲ頭の中年男性が、目の前の32歳ぐらいの黒いスーツを着たショートカット髪の女性に訓練途中で待ったを掛けた。女性は両手に刃渡り約35cmの良く研がれたサバイバルナイフを持っている。女性は訓練を途中で止められたせいか機嫌が悪いようだ。中年男性は、こちらに近付いて佐熊に話し掛ける。


「おう!久しぶりだな。佐熊さん。また、新たな身体を貰ったのか?弱そうだが使えるのか、その身体は?」


「久しぶりだな、木豪(きごう)さん。身体は問題ない。前より、動けるぐらいだ。」


「ほう・・。」


 木豪は、不意に義手のパンチを佐熊に伸ばす。コンクリートを砕く強烈な鉄の拳を佐熊は右の掌でダン!と受け止めた。ニヤリと木豪は笑い話す。


「どうやら本当の様だな。後で手合わせしてくれ。」


「ああ。」


「で?そっちの小僧は?」


--『数哉様の事を、小僧!?お前の身体を頭から足元までペチャンコにします!!お前の身長は小僧どころか、1cmになる。フフフ・・はっ!?私は今、何を考えていたのでしょう。数哉様の命令を遂行しなくては・・。』


 佐熊教授は数哉を見ながら応える。


「ああ、彼は佐藤数哉だ。落ち着いて聞いて欲しいのだが実は」


 数哉の名前を聞いたスキンヘッドの男の背後でサバイバルナイフを両手に持つ女が反応した。


「ユーケーエー!・・死ねっ!」


 女は右手に持ったサバイバルナイフを投げる。ビュンと数哉の眉間に向かってナイフは飛んだ。佐熊がナイフを叩き落とそうと前に出る。佐熊へ到達前に、木豪が義手を素早く前に出して義手を飛ばした。鎖で繋がれた義手はナイフを掴むと、シャラシャラと音を立てて木豪の腕に戻った。女に振り返り木豪が咎める。


「落ち着け!嬢ちゃん。佐熊さんが連れて来たんだ。問題無い奴なんだろう。」


「私は、三咲。嬢ちゃんて呼ばないで。そいつはUKA。昔、テレビで見ていたので間違ない。そこを、退いてっ!」


 それを聞いた佐熊が、()めろと右掌を差し出した。


「三咲嬢の気持ちは分かるが、数哉も大事な人を殺された被害者だ!UKAに復讐する為に、ここに来たんだから仲良くしてくれないか?」


「UKAなんかと仲良く出来ないっ!退()いて!」


 佐熊が悲しそうに首を振る。


「数哉は、もうUKAじゃない。UKAに何もかも奪われて放り出されたからな。」


 そう話しながら、佐熊が数哉へ向いた。


「すまない、数哉。余計な事を言ったな・・。」


 数哉は表情を変えずに話す。


「大丈夫です。俺がUKAを潰し、破滅へと追いやりますから。」


 それを聞いた三咲は持っていたサバイバルナイフを下ろした。


「ふんっ。UKAなんかに入るから、そうなるのよ。それにUKAグループを破滅・・?はっ、あんたみたいなモヤシ小僧に何が出来るのよ・・せいぜい頑張るのね。ただ、私の前では気をつけなっ。邪魔になる様なら、背中を刺して潰して上げるから・・。」


 三咲は木豪からサバイバルナイフを受け取り、クルリと背を向けて他の訓練に向かった。佐熊は数哉に話す。


「どうやら・・紹介は少しずつの方が良さそうだな。」


 木豪も、それに同意して頷く。


「それが良い。だが嬢ちゃんの言う通り、戦闘が強そうには見えないがな。」


 佐熊が否定する様に首を横に振るだけである。それは数哉から、数哉の戦闘能力は隠す様に言われていた為だ。


「いや、数哉には俺の戦闘補助をして貰うつもりでな。俺の身体も数哉が作ってくれたから。」


「後方支援か・・コールマンとして役に立ってくれるのならば良いだろう。」


 木豪は視線を佐熊から、数哉に移した。


「すまないな。詳しくは言えないが、さっきの嬢ちゃんは、三年前程に自身の生後 8ヵ月の赤ちゃんをUKAグループに殺されていてな・・目の前で・・UKAの猛獣使い野郎に。兎に角、俺がその現場に行った時には、嬢は涙を流しながら発狂していた。なんせ、目の前で(たてがみ)が炎の様に燃え盛るライオンの様な獣に、赤ちゃんを飲み込まれていたらしい。俺達は、奴を追ったが縦横無尽にライオンもどきに乗って逃げるアイツを捕まえられなかった・・。」


「そんな事が・・。」


 数哉は、UKAに更に怒りを燃やし、両手拳を強く握った。


「ああ。嬢はその後、コールマンで保護し、廃人の様に暮らして来て約一年程たった頃、気が狂う程の特訓を始めて、復讐に命を燃やしている。子供の辛さを味わうかの様に、左の太ももに獣から噛まれた様な傷を、塞がる度にナイフで自ら付けていてな・・。誰が何を言おうと止めない。」


 数哉は、殺された美奈と重ねて強い怒りが込み上げて来る。


「UKAっ・・」


 佐熊は重苦しい雰囲気の中、そろそろ引き上げようと話した。


「コールマンとして、行動している度に馴染むだろう。今日は、もう帰ろう。ここからなら梯子より、あの扉から出た方が早く外に出られる。」


 佐熊が出ていこうとする扉から、二人の男が現れた。一人はエリート営業マンと言える30代半ばの男で、もう一人は若く筋肉ムキムキだが、エリート営業マン風の男に耳を引っ張られていた。 エリート営業マン風の男はコールマン日本副支部長 である。


「 大変だ ! みんな集まってくれ!」


 血相を変えたその声に、何事かと皆が集まって来た・・。


「皆、聞いてくれ。この高久(たかく)の話だが、UKAに支部長の息子の勇都が拐われて、緒方支部長は一人で助けに向かったらしい。家族に被害が無い様に、念入りに離婚までして離れて暮らしていたのに。」


「それよりも!早く俺達も行かないと!」


「それが・・向かったのが大井町にある日本支部らしい。それで口止めされていたそうだ。」


 若い男が申し訳なさそうに、俯いている。


「すみません。」


「そんな!よりによって大井町の支部だと!あそこにはUKAの特殊部隊ベータも居る。自殺しに行く様なものじゃないか!」


「だったら、どうだって言うんだ!あの人が居なかったら俺や俺の家族の命はなかった!俺は行くぞ!例え、殺されてもだ!」


「そうだ。俺も行くぞ!支部長を助けに行くんだ!」


「俺も!」


 約半数以上が賛成して、覚悟を決めた所でその話を聞いていた佐熊が数哉に振り向きながら話した。


「数哉。悪いが数哉の力が無いと今回は」


 佐熊が振り向くと、そこに数哉の姿は見えない。


「フッ・・。」


 佐熊は何かを察して少し笑った。


・・全員、急いで戦闘準備に入る。佐熊も更衣室で数哉特製の対炎防弾白衣と夜間用赤外線機能もある大きめの防弾黒縁メガネ、普通のマスクにしか見えない防弾であり防毒マスクを付けた。隣で重い防弾チョッキ等を着ている二十代の男が佐熊の装備を見て驚いている。


「まさか、その格好で行くつもりですか?街でも、目立ちますよ。防弾チョッキも着ないと。」


「ああ、これか。これは俺の秘密の仲間が作ってくれた防弾白衣でな。ほら、こうすると・・。」


 佐熊が右手を白衣の内ポケットに入れた。白衣が高級コート柄に一瞬で変化する。


「凄いっ!でも、秘密の仲間って誰ですか?」


「ん?約束があるから言えないが、その仲間が居る事で、今回のミッションは上手く行くかもな。」


「その人は今、何処に居るんですか?」


「そうだな。彼なら既に、大井町支部に着いているかも知れない。」


「いやぁ、流石にそれはないでしょ。UKAの大井町支部の傍にでも居たんですか?」


「いや。少し前迄、この近くに居たな。」


「からかわないで下さいよ。緊張を解してくれようとしているのは分かりますけど。」


--本気なんだか・・まぁ、伝わる訳ないか。


「・・すまんすまん。只、その彼が強いのは確かだ。UKAの特殊部隊ベータよりもな。」


「本当ですか!それは心強いっすね。」


--あの技術力ならば、歩く核兵器と言われる噂のエンドにも対抗出来るかもな。


「・・ああ。」


・・一方、数哉は皇居の敷地に近い広さのUKA大井町支部の中心にある48階建てのビルの屋上に立っていた。屋上には深夜の闇を切り裂く様に風が強い。台風並みに強い風の中で、二人の人物が平気で立っている。一人は佐熊と同仕様の白衣を着ている数哉であった。変装の為に顔にはサングラスとマスクも浮き上がらせている。もう一人は、某名門女学院の可愛いセーラー服を着たラナであった。ラナは長い髪とミニスカートを靡かせている。数哉がラナに問い掛けた。


「何故、腕輪化を解いたんだ?」


「寝ている時以外にも、数哉様に私の色々な姿を見て貰いたいと思いまして。キャッ。」


 突然、更に強い風が吹いてラナのスカートを捲り上げる。純白の下着が露わになり、ラナはスカートを抑えるが、本気で抑えてはいない。少し丸みを帯びたデルタ部が見えていた。


--『これが、研究したチラリズムです。男性はチラリズムに弱いとの統計結果。これで、数哉に襲われる筈!』


「ラナ。」


--『来ましたっ!』


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 その私の秘所を見た数哉様は、クールな顔で近付いてスカートを私に握らせて両手を取り、上げさせる。私の小さな花柄模様の白の下着は、数哉様から全て見える状態となった。それを見て、表情を変えずに数哉様は話す。


「隠すな。」


「え・・?」


 数哉様が私の秘所に、右掌を伸ばしてくる。


「今から、お前の富士山と言う世界文化遺産にも(まさ)るデルタ部を噴火さ」


----------------------------------


「・・・ナ?ラナッ!?」


『はっ!はいっ!』


「遊んでいないで緒方支部長と、その息子を早く探してくれ。」


--『ガクッ。』


「・・畏まりました。」


 ラナは何もない空に顔を向けて話す。


「直ぐに超小型偵察アンドロイドを転送して、送った情報の二人を探しなさい。」


 ラナが顔を向けた先の宇宙には、母星船から移動していた宇宙船があった。母星船からすれば豆粒の様な大きさだが、日本の長さを直径とした円盤型の宇宙船である。母星船が太陽系に留まると、重力の調整に膨大なエネルギーを消費してしまうからだ。


 宇宙船の管制室の中央には、ラナの指示なのか日本の軍服を着て、下はミニスカート姿の女性アンドロイド指揮官が椅子から立ち上がりラナに応えた。


「了解致しました、ラナ様。」


「大至急!敷地内へ、船にある超小型偵察機を全て転送し、送られてきた情報の二人を探しなさい!隠された地下施設も全てです!」


「「「「「「了解しました!」」」」」」


 管制室の20人が一斉に返答して、目の前の空中にあるパネルを操作しだした・・僅か、数十秒で一人の男型アンドロイドが手を上げて叫ぶ。


「見つけました。」


 指揮官は、それを聞いて命令を下す。


「直ちに、ラナ様へ正確な位置情報と周囲の映像を送りなさい。」


「畏まりました。」


 返事を返して直ぐに男は、パネルを操作しだした。ラナが頷いて、それに応える。


「数哉様にも見える様に、映像を送りなさい。」


 真面目な表情で話すラナのスカートはどういう構造なのか、今は強風に靡いていなかった。そして、数哉の前に大きく映しだされる。二人共に、椅子にロープで固定されていて息子の勇都は布の猿轡を付けられていた。


 緒方支部長の服はボロボロで、足も折られ両手の生爪も剥がされて血を流していた。顔も血を流し腫れ上がっている。その場所は、数哉の立つビルの32階の一角の部屋で拷問部屋らしく、おぞましい器具が並べられていた。


 緒方の傍に立つ血の付いた白衣を着ている中年のバーコード頭の男がサドッ気の表情で特殊なオーブンで熱された鉄棒の柄を持って緒方の胸に当てる。


「早くコールマンの支部の場所を吐け!」


「ぐぁぁぁぁぁあ!」


 ジュウウウウウウと言う音と共に、肉の焦げる嫌な臭いが部屋に広がった。中学1年生の勇都は、涙を床が濡れる程に流しながら叫び続けるが、猿轡のせいで上手く声が出せない。


「ううう!ううっ~!!ううううっ!・・・・・っ!!」


 それを見た数哉はラナに命じる。


「ラナ、腕輪化して早く転送しろ。あのイカれ野郎の背後にだ。」


「畏まりました・・腕輪化。」


 ラナが数哉の傍に寄って淡く光出すと、ラナの姿は消えて、数哉の右腕の腕輪と化した。


『転送。』


 サドのイカれ研究員が次の手段に移る。


『ふむ・・自白剤で話させては面白くないからな。次はお前の大事な息子が、苦しみのたうち回るのを見てみるが良い・・カハハハハ!最高だっ!くふっ。』


 緒方は既に苦痛で気絶しそうになっていたが息子の危機に、心の声を上げた。 


「やめろっ、む・・息子に手を出したら・・お前・・を殺してや・・る。拷問・・するなら・・俺にしろ。」


「はぁ!?聞こえないなぁ?拷問するなら息子に毒を刺せっ!?俺には、そう聞こえたぞ!ははははっ!良かったな!お前っ!お父さんが、お前を拷問して欲しいらしいぞ!」


 緒方は今まで、あらゆる苦痛を与えられようと耐えてきたが、涙を流していない。それが、目の前で毒の入った注射器を息子に刺そうと、笑いながら取る男を見て涙を流した。


「わ、分かった・・コールマンの日本支部の場所を話す・・頼む。息子には手を出さないでくれ。」


 研究員はニヤリと笑い、話す。


「クワハハハハハッ!・・いや~だねっ!お前を自白させるのは、俺が特別に調合した苦しみながら自白する薬を注入すれば良い事。今はね・・私の楽しむ為にやっている事なんだよっ!さぁ、最愛の息子が毒で苦しむ姿を見るといい!カハハハハハハッ!」


 バーコード頭のサド研究員は、自身の研究した人間がより苦しめる猛毒の注射器を手に取って勇都の首に、緒方の反応を見て楽しむ為に、近付けたり離したりしていた。


「ほらほらほらっ!お~う!後、1cmで刺さりそうだったな!刺そうかなっ、止めよかなっ?刺そうかな?止めよかなっ?・・・ククク」


 緒方は最後の魂を絞り出すように話す。


--みんな、すまん・・。


「・・コールマンの日本支部の場所は」


 緒方が話終える前に、サド研究員がニヤリと笑い注射器を動かす。


ブスリ


「へっ?」


 サド研究員の背後に転送された数哉は、注射器を持つサド研究員の右腕を掴み、サド研究員の首に刺した。サド研究員の血管が浮き上がり、皮膚が黒く変色していく。


「ぐあぁあ・・ぐぁあああ!た、助けてくれ!ぐ、ぐるじぃ・・・・。」


 サド研究員は床にドサリと倒れ込み、勇都の傍で床をのたうち回る。


「ゴミが邪魔だな。」


 苦しんでいるサド研究員を数哉は軽く蹴り飛ばした。ドンと音を立てて、壁に当たり男は落ちる。壁際で泡を吹きつつ更に苦しんでいた。数哉は緒方を落ち着かせようと勇都の拘束ロープを簡単にブチブチと引きちぎり話す。


「緒方支部長ですね。コールマンの佐熊さんに頼まれて助けに来ました。今から二人を安全な場所迄、移動させます。」


 緒方は息子の拘束を解かれた様子を見て安心するが、数哉の提案を首をゆっくり横に振り拒否する。


「俺は、ここに残る。両腕、両足とも折られて動けない。逃げようにも足手まといだ。」


 それを聞いた勇都は、涙を流しながら父親の肩にしがみついた。


「いやだ!いやだよっ!父さん!父さんが一緒じゃないとっ、僕は絶対に動かないっ!」


「我が儘を言わないでくれ。私は、お前とお前の母さんさえ元気でいてくれさえば幸せなんだ。」


 数哉は、それを聞きつつ緒方の拘束も解いた。


「安心して下さい、二人共助けます。」


--『数哉様。戦闘員7名が、この部屋に入って来ます。6名はマシンガンを装備しています。』


--ここで治す暇は無さそうだな。


--「ラナ、窓の外に飛び移れそうなヘリコプターの転送用意だけしておいてくれ。窓を壊した後に転送だ。」


『畏まりました。』


 7名の戦闘員が部屋に入って来て、右手に黒包帯を巻いた男を中心に広がった。マシンガンを構え様とした瞬間、オストラルエネルギーを脳に回して数哉が動く。机に並ぶ危険と英語で書かれた注射器を7本両手の指の間に挟むと、脳裏に描く計算された動きの通りに、スナップを効かせて前に出した。訓練された6名の戦闘員のマシンガンを撃つよりも早く、時速300kmにも及ぶ注射器が首元に深く突き刺さる。6名の戦闘員は首元の注射器を抜こうとするが、少し身体に毒が入ったのか苦しみ出して床に倒れ呻き出した。中心の黒包帯の男は、黒包帯で余裕で跳ね上げて高速で放たれた注射器は、天井に刺さっている。


「ふん!こんな物がUKA特殊部隊ベータの私に効くものかっ。誰か知らんが・・死ねっ。」


 男が落ち着いた様子で右手を数哉に向けると、強烈な炎が数哉へ向かった。数哉は、二人に炎が当たらない様に、炎を別つように受けてベータ戦闘員へ迫る。戦闘員は自ら焼かれにくる数哉を見て笑った。


「自殺しに来るとはな。」


 しかし数哉は焼かれるでもなく、熱がるでもなく扇風機の風でも当たる様に軽く突き進む。戦闘員は、いつもの焼け苦しむ人間を期待していたが違う結果に焦り出した。


「このっ、熱量を上げてやるっ!」


 数哉は戦闘員に近付くと、勢いを増そうと右腕をより前に向ける右腕の射出口に、強烈なパンチを埋め込む。


ゴガ・・バキッ!


 壊れない筈の特殊合金の一部が数哉の右拳に膨れ上がり、強化されている筈の戦闘員の右肩の関節が外れる。


「ぐぁっ!馬鹿なっ。」


 右拳の燃料チューブが光りだし、戦闘員の背中のタンクへ光が向かう一瞬、数哉は左腕を取り、防弾ガラスの窓へ放り投げた。残像も見えない程の速さで動きつつ、ラナに命じる。


--「ラナっ、両刃剣を転送してくれ!」


 戦闘員は左関節も外れ、防弾ガラスに飛んで行く。数哉は目の前に現れた頑丈なだけの剣を手にしながら、一瞬にして二人の下へ移動し、炎と衝撃に備えた。


 ガソリンよりも燃焼性の強いタンクの燃料は、ミサイルが地面に落ちたかの如く爆音と衝撃、そして光と炎を放つ!数哉はオストラルエネルギーを剣に特殊な状態で纏わせ、淡く青色に光る剣を上段から一気に斬り下ろした!


--ラグナルーガ式奥義・・。


空裂(くうれつ)っ!」


 数哉の前に近付く強烈な炎と衝撃が空間を裂くように別れた!ベータの戦闘員は弾け飛び、防弾ガラスどころかビルの鉄骨まで剥き出す爆発力を、数哉は縦に引き裂いている。部屋の壁は壊れ、2部屋先のUKA社員達までに爆発と炎は届いていた。 爆風に巻き込まれた社員、戦闘員と共に倒れている。


 数哉は背後の2人が無事な事を確認して指示を出した。


--「ラナ。丁度窓も開いたし、ヘリコプターを転送してくれ。」


『畏まりました、転送。』


 割れた窓と壁の外に、アンドロイドの男が運転するヘリコプターが現れる。スライドドアをビル側だけ大きく開けているが、この日の強風でビルから20mは離れていた。数哉は有無を言わさず67kgの緒方を背負い、43kgの勇都を右脇に抱える。これから自身に起こる体験を想像して、無い力を振り絞り話す。


「ちょっと待ってくれ。まさか、あのヘリにって。おいっ!」


 数哉は緒方の発言の途中で、軽やかに走り出す。息子の勇都は恐怖にジタバタ手足を動かすが数哉のホールドは解けない。


「うわぁぁぁぁぁ~~~。」


 二人は迫り来るビル際に、身体が膠着していった。それもその筈、オリンピックの金メダルの選手でも10mをも飛べない。ましてや、数哉は二人を持っているのだ。


ダンッ!


 数哉は力強く踏み込むと、三人は強風を物ともせずに宙を舞った。オストラルエネルギーの脳強化で計算された通りに、三人は弧を描いて見事ヘリコプターへ到着する。緒方も勇都も血の気が引いていて、パクパクと口を動かすが声も出ない。数哉はヘリコプターの運転手と補助員の男型アンドロイドに直ぐに指示を出した。


「このビルから離れて二人を治療しろ。その後は新富士駅の近くまで護送してくれ。」


「畏まりました。」


 ビルからヘリコプターが離れて行く200m程離れた所で、何かを感知した数哉はヘリコプターのサイドドアを開けて外に出る。ヘリコプターの着地する為のスキッドに足を掛けて逆さまにぶら下がった。数哉の見据える先には、数哉と同じくヘリコプターの底に足を張り付けた数哉より少し若い少年が、日本刀を手にして逆さまに立っている。


--「ラナ、もう一度両刃剣を出してくれ。」


--『畏まりました、転送。』


 数哉の右手に両刃剣が現れる。少年が、それを見て笑い出した。


「ハハハハ!エンドの刀鬼(とうき)と呼ばれてる僕と、そのナマクラの剣でやり合うつもり?」


キンッ!キッキキキキッキンッ!


  突然、数哉と少年の間に激しい金属音と火花が散る。数哉は逆さまにぶら下がった状態で、少年に答える様に剣を振ったのだ。少年がニヤリと笑う。


「へぇ~、少しはやるじゃない。」


「それよりも、お前が特殊部隊上層部の者ならドミトルと言う奴が何処に居るかを知らないか?」


「ドミトル?・・ああ、あの運良く力を身に付けてエンド入りしたハリネズミやろうね。さ~て、何処に居るのやら。なんだ?お前の大事な人でも刺されたのか?ハハハハッ!おもし」


 数哉の表情が沸騰したかの様に怒りそのものに変わる。


ブオン!ガンッ!!


 数哉は剣を無造作に横凪すると、少年は刀で弾こうとしたが刀と共にビルへ飛ばされた。


ドガンッ!!


 少年はビルの25階の壁に受け身も取れずに当たり、派手に壁を壊して部屋に転がる。部屋にはUKAの事務作業をノートパソコンで仕事をしている者達がいた。壊れた壁が散乱しているが運良く誰も死んでいない。一人の女性が転がる少年を気遣い近寄る。


「刀鬼様っ!大丈夫ですかっ!?」


・・ゴト。


 少年の改造され尽くされた強化身体は無事な様子で一瞬で立ち上がり、気遣った女性の首を斬り落とした。


「「「「「きゃあああ~~!」」」」」


「「「「「うぉ!」」」」」


 阿鼻叫喚している部屋の人間全てを少年は次々と斬り殺す。平均以上の身体能力を持つ者が逃げるのも不可能な速さで斬り殺すと、ゆっくりと穴の開いた壁まで歩いた。


「お前らごときが、僕を心配するなんて有り得ないんだよ。」


 そう話しながら、数哉の乗るヘリコプターへ睨み付ける。数哉は魔法で、ヘリコプターの下に大岩を出現させて飛び乗り、大岩がヒビ割れる程の強い力で蹴ると、一直線に25階の少年の方へ飛んでいた。それを見た少年は自身もビルから飛び出す!普通の人間であれば、確実に即死する高さだ。それを何の躊躇も無しに二人共に飛んでいる。


ダンッ!


 ビルから15m程離れた所で、数哉と少年は再びお互いの刃を鳴らした。


カンッ!カカカカカキンッ!


 ビルの窓から、UKAの戦闘員達が数哉と刀鬼と呼ばれる少年を見ている。その中には特殊部隊のアルファとベータもいた。


「刀鬼様と打ち合える人間が居るなんて・・。」


「刀鬼様が、また遊んでらっしゃるのだろう。」


「お前には、あれが手加減している様に見えるのだな。だから、お前達はベータになれないんだ。ベータの俺が行っても、一瞬で殺されるだろう。まぁ、それでも刀鬼様は負けないだろうがな。それよりも、コールマンの者達が此処へ向かっていて、もうすぐ此処に着くと聞いた。あの侵入者は、刀鬼様に任せて俺達は、そいつ達を片付けるぞ。」


「はい!」


「ドミトルは何処だっ!?何処に居る!」


カカカカカッ!キンッ!


「それよりも、自分を心配した方がいいよ?ここの高さから落ちれば、どんなに強化された身体でも無事ではすまないのに、ククク。部屋までたどり着けなくて、残念だったね!」


カカカッ!キンッ!キン!


「お前も同じだろう!」


「いやっ、違うね!」


 地上から30mと迫った所で少年は、ビル傍にある現在建てられている途中の鉄骨に左手を向ける。2トンを超える鉄骨の1本がギュン!と少年の足下に来て浮かび、その上に乗った。グラグラと揺れる鉄骨の上で、落ちていく数哉を見て笑う。


「ほらほらっ、どうする?」


 数哉は少年の笑う姿を見ながら、科学者として疑問に思った。


「ラナ。あいつは、どうやって鉄骨を操っている?」


『あの者の周りに、強力な電磁力が発生しております。』


「なるほどな。」


『機能を停止させて落とす事も可能ですが、落としますか?』


「いや、いい。ドミトルの場所を聞く為に加減しているからな。まだ、死なれては困る。」


『畏まりました。』


 数哉は、地上へ勢い良く落下していく。冷静に表情も変えずに腕組みしながら落ちた。地面の少し手前で腕組みしたままクルリと宙返りして着地する。地面が凹み土煙を立てるだけで数哉に被害は無い。そして、上空に立つ刀鬼と呼ばれる少年にこっちへ来い、と余裕の表情で見上げて手招きした。刃鬼の少年は数哉の余裕にプライドを傷付けられたのか、数哉を睨め付けると足下の鉄骨を使って急降下する!


ギュン!


 数哉の脳天目掛けて鉄骨は、落下速度を上げる。数哉に当たる前に、少年は建造中ビル内の鉄骨を利用して、そこに張り付いた。常人では避けられない鉄骨と思われたが、数哉は軽く頭を傾けるだけで避けた。鉄骨は数哉の近くの地面に刺さる。


ズドンッ!


 地面が振動している瞬間にも、少年は鉄骨を死角に素早く移動しつつ、鉄骨と共に数哉を斬ろうと刀を振る。


スパッ!キンッ!


 頑丈である筈の鉄骨は見事に斬れているが、数哉の両刃剣は刀鬼と呼ばれる少年の刃を受け止めていた。ビルからアルファやベータ、その他の戦闘員達が窓から、その姿を見て更に驚いている。


「あいつ、刀鬼様の刀を止めたぞ!信じられん!刀鬼様の刀は、UKAの最新特殊合金で出来ていて鉄骨でさえも豆腐の様に切り裂く。どうなっている!まして、その刀を持っているのがエンドの近接戦闘のトップクラスの刀鬼様であるのに!」


 そう話した瞬間、刀鬼の少年はアルファやベータでも全く見えない速度で刀を振りだす!他の者には腕も剣も刀も全く見えない。超速度で振られた刀を、数哉は悉く打ち返していく。刀鬼の少年は鋭いステップを使い、フェイントを入れ残像だけが見えていた。


カカカカカッキン!!・・・・・・・・・・キキキキン!!


 その様子を見た戦闘員は、固まっている。


「ばかな・・。」


「うそだろ・・。」


「あるはずがない・・。」


 現実を受け入れられない者達のオンパレードだ。数哉は受け止めるどころか、少しずつ手加減を緩めて、少年の頬や腕に傷を付けた。少年の身体から血が飛び、数哉と離れて回避し着地する。


「くそっ!なぜ、お前如きにこの僕がっ!?」


「それよりもドミトルの場所を吐くんだな。これ以上痛い目を見たいか?少年?」


「少年だとっ!?僕は今年で37歳だっ!絶対に、お前の四肢を切り離してやるからなっ!」


 ビュン!と、37歳の少年?は消えて再び数哉を襲った。刀鬼の速さに馴れた数哉は、刃を弾きながら刀鬼の身体に傷を付けていく。UKAの戦闘員が今後の行動を決めかねていた。


「助けに行かなくていいのか?」


「刀鬼様より強い相手に、俺達が参加出来る訳がない。巻き込まれて闘っている二人に切り刻まれるのがオチだ。」


「確かにそうだか、このままだと刀鬼様が負けそうだぞ。」


「なぁに・・。刀鬼様には、まだ出していない特殊能力がある。それを使えば勝てる筈だ。」


「ああ、あれか。そうだったな・・それよりも俺達の遊び相手がやっと来たぞ。」


「クククク・・コールマンか。おうおう、これまた大勢で。明日は死体処理班が大変そうだな。」


 強度と日本で走れそうな程度に改造した大型トラック5台で、UKAの門を破壊して突破したらトラックが入って来る。


ズガ~ン!!


 荷台にはコールマンの戦闘員が全員防弾ヘルメットを被り、トラックが止まるやいなや降りて、それぞれの銃を構えた。ビルから数哉と刀鬼を迂回して戦闘員が走り、あっという間に銃弾飛び交う戦場と化す。数哉が剣を振りながら、肝心な事を思い出した。


--ふむ・・ 佐熊教授に緒方支部長を助けた事、伝えてなかったな。


--「ラナ、佐熊さんの眼鏡の通信機に繋げてくれ。」


『畏まりました・・どうぞ。』


「・・佐熊教授、聞こえますか?」


「ああっ!聞こえるぞっ!今、ドンパチで忙しいがなっ!」


「緒方支部長と息子の勇都は無事です。既に救出して治療を受けています。数日すれば、支部に戻れますので。」


「おいおいっ!そう言う事は、早く言ってくれ!UKAの敷地内に乗り込んぢまったぞっ!くそっ!」


「奇遇ですね、俺もです。今、UKAの特殊部隊エンドの一人と、やり合ってる最中です。」


「マジかっ!特殊部隊のベータどころか、エンドが居るだとっ?!勝てるのかっ!?」


「今の所は余裕です。そちらは?」


「良くないな、既に取り囲まれて殺されそうだ。」


「佐熊教授には、秘密兵器を沢山渡したでしょう。銃ではなく、それを使用して下さい。少し時間を貰えれば、そちらも片付けますから。」


「まだ、慣れていないのだが。そうも言ってられないか・・了解した。」



身体でも

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