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ラナ markⅢ  作者: ススキノ ミツキ
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第38話 反撃の狼煙 前編

・・数哉は落ち着いて眠るエリーの身体をそっと持ち上げて、セレーナを支えているヘンリーへ近付きながら話す。


--「ラナ。」


『はい。』


--美奈さんが育てていた、この庭を元の状態へ密かに戻せるか?


『お任せ下さい。深夜の人の居なさそうな時に、元の状態に戻しておきます。』


--「頼んだ。」


 数哉が傍に来るとヘンリーは、はっと、焦る様子で執事に振り向いた。


「早く救急車を!エリーが重傷だ!」


「はいっ、旦那様!」


 数哉が、それを聞いてヘンリーへ 話す。


「ヘンリーさん、大丈夫です。刺された様に見えましたが、刺さってなかった様です。」


「冗談を言ってる場合じゃない!血まで吐いてたんだ!」


「本当です。誰か女性の方に部屋で確認して貰って下さい。傷一つ有りません。血を吐いたのさ精神的なショックで吐いたのかも知れません。今は、ただ寝ているだけですから。」


「そんな筈は・・??」


 ヘンリーがエリーの様子を見ると、血色の良いエリーの服には、血の一滴も付いておらず、服も破れていない。


「一体どういう事なんだ・・?」


「それよりも、説明します。中に入って良いですか?」


「あ、ああ。そうだな。」


 数哉とヘンリーは、エリーとセレーナを居間のフカフカの高級ソファに寝かせた。その後、ヘンリーの書斎に移動する。執事は付いて来ていない。外で、今後の庭の直しを庭師と話している。転送されたボディーガード達は、倒れていた暴漢達と共に、いつの間にか消えていた。


 書斎は木を多く使われ落ち着いた感じで、大きな屋敷の割りには、そこまで広くない。本棚には、ヘンリーの持つ会社のグループ関係の専門書がずらり並んでいる。木机の上には写真立てが端に置いてあり、美奈とヘンリーとセレーナが大きな木の下で笑いあっている写真が写っていた。部屋に二人が入るなり、ヘンリーが机に何か思う所があるのか、両手を付いて目を閉じて顔を伏せたまま、数哉に問い掛ける。


「カズヤ。それでミナと、襲って来た奴らはどんな関係なんだ?」


「・・美奈さんが亡くなる前に、UKAグループ傘下の会社と土地開発で揉めていた事が有ったのは覚えていますか?」


「ああ・・ミナが亡くなって、私は心底落ち込み、何もする力が失くなって、それも撤退したがね・・やはり、そうなのかっ!ミナを害したのはUKAなのかっ!?」


「そうです。正しくは、UKAグループに所属する戦闘集団にです。奴らは殺しや誘拐、有りとあらゆる罪を犯しています。今回の事件はヘンリーさんの会社が再度、UKAグループの会社と特許の件で裁判になり、負けそうな為に殺害計画を立てた様ですね。」


「ミナが亡くなった原因は、私だったのだな・・。」


 ヘンリーが顔を伏せたまま、涙を流した。数哉がそれを聞いて反論する。


「それは違います。悪いのはUKAで、ヘンリーさんでは決して悪くありません。」


「だが、私がUKAと揉めていなければ!私の、ちっぽけな自尊心を守る為にミナがっ!くそっ!私のせいで!私のせいで!私のせいだっ!!・・」


 やりきれない気持ちで机の上に拳を握り悔やむヘンリーを前に、数哉が決意を表明した。


「ヘンリーさんは通常の企業努力をしていただけです。俺は美奈さんや、俺がUKAに居た時の仲間達を殺した奴らを見つけ出して、必ず後悔させてやります。UKAグループも全て潰すつもりです。社会的にも物理的にもです。」


 ヘンリーが顔を伏せたまま、橫に顔をふり話す。


「不可能だ・・UKAグループは、超世界的企業で殆どの国の政府とも繋がりがある。UKAグループは先進国全てに、最先端の戦争兵器を大量に生産、販売を許された企業だ。初めは裏で各国と取引していたが、今では堂々と取引しているらしい。UKAに反対すれば敵対国に兵器を大量に流すと言ってな。日本にも兵器を卸しているし、下手をするとカズヤまで危険に曝される。悔しいが、これ以上セレーナと私を悲しませる事はやめてくれ。」


「大丈夫です。先程の俺の力を見た筈です。頼もしい相棒も居ますので。」


--「ラナと言う名のな。」


『!?そろそろ相棒(あいぼう)とかいて、相棒(ふうふ)と読むのでは!』


--「読まない。」


--『ガクッです・・。』


「・・確かに人間離れした力だったが、あれは一体?」


「え~と、長い間UKAに復讐しようとして発明した強化服の力です。」


「なるほどな。しかし、それでもUKAには敵わないだろう。」


「あれでも、殆ど力を出していません。美奈さんの庭園を出来る限り、壊したくなかったので。」


「あの消える程に走れる速度で力を出しておいて、殆ど力を出していないと・・?」


「はい。それで、セレーナには悪いのですがUKAグループを潰すまでは危険ですから、ここには近寄らないつもりです。」


『数哉様、セレーナがこの部屋に近付いて来ています。』


--?


バタン!


「今の話!どういう事なのっ!?一カ月に一回私に会いに来るって約束したじゃないっ!嘘つきっ!だったら私!数哉に付いていくからねっ!」


 数哉がどう説明しようか悩んでいると、ヘンリーがセレーナへ美奈の事件と、数哉はその復讐をしようとしていると話しだした。


「・・と言う事だ。数哉は、私とお前に危害が加わらない様に、仕方なく近付かないと言っているんだ。」


 セレーナは、涙を流し怒りの表情を見せる。


「何よっ、それ!それなら!余計に付いて行くわ!ママの仇は私が討ちたいものっ!」


 ヘンリーがセレーナを抱き締める。


「セレーナ!本当に危険なんだっ!もう私は家族を失いたくない!私だってミナを殺した奴を八つ裂きにしてやりたい!・・だが、UKAだけは駄目だっ!危険なんだよ!」


 セレーナは、ヘンリーに抱き締められ自身もヘンリーを抱き締めた。その後、ポンボンとヘンリーの背中を叩いて、ヘンリーを押して放す。


「ごめんなさい、ダッド。心配してくれる気持ちは分かるけど、どうしてもっ!そいつを捕まえたいの。ママを殺した奴が今も楽しそうに生きているなんて!許せないのっ!」


 ヘンリーが押し黙り、数哉は一度軽く目を閉じた後に、目を開けてヘンリーに話した。


「ヘンリーさん。こう言うのは、どうでしょう?美奈さんを害した奴を俺が見つけだして、ヘンリーさんと、セレーナの下に連れて来ます。それで、永遠に苦しむ罰を俺が与えます。奴らを調べた所、犯罪を犯して警察に捕まってもUKAの奴らは裁かれる事もなく、秘密裏に解放されている様子です。最近では奴らが犯罪する所を見ても、人目が無ければ見てみぬ振りをする警察も居る様ですので。」


「そんな馬鹿な。そこまでUKAの力は強いのか・・。」


「はい。ですから、法が裁かないのであれば俺が裁きます。その為の力なら充分に身に付けましたから。」


「警察に無実の罪でカズヤが追われたら、どうするつもりなんだ?UKAが、そこまで力が有るならば考えられる事だろう?まさか警察をも倒すつもりか?」


・・数哉が、安心させようか悩んでいるとラナが提案を勧める。


『数哉様の力の一端を見せてあげればいかがでしょうか?丁度、今テレビの生放送が始まった様です。』


--なるほどな。


「ヘンリーさん、俺の力の一端を見せます。居間のテレビまで移動しましょう。」


 ヘンリーとセレーナが不可思議に思ったが、数哉が真剣な表情で話した為に素直に付いて行った。居間に入ると数哉は居間の長机の上にあるテレビのリモコンを手に取り、テレビをつける。そして、そのまま生放送の番組に切り替えると、シルクハットを頭に着けた背の高いモデルがマイクを手に、開園間近と言う巨大テーマパークを他の芸能人と共に紹介していた。


「これが何の力って言うの?カズヤ。」


 数哉は、し~~っと人差し指を自身の唇に当てる。


「テレビを見ていてくれ。」


--「ラナ、転送だ。行き先は分かるな。」


『勿論です、転送。』


 数哉の姿が目の前から消える。


「えっ?うそ!」


「カズヤが、消えた?」


 二人がキョロキョロと部屋の中を見渡すが、ソファに寝かされたエリーの姿しかない。急にセレーナが驚いた様子で声を上げた。


「ダッドッ!あれ見て!カズヤだわっ。」


 ヘンリーがセレーナの指差す方に振り向くと生放送の中で映る開園間近の放送を見ようと集まった野次馬の中に、手を振る数哉の姿を見る。


「バカなっ!あり得ない!ここから、どの交通手段を使っても五時間以上は掛かる場所だぞ!もしかして、この番組は生放送ではないのか・・?」


「ううん。これ、エリーが今度施設が完成したら行きたいって言ってたから、私も見てみようと思ってた生放送番組よ。間違いないわ。」


「だったら何故?」


 その瞬間、モデルの頭にあった黒く艶光りするシルクハットが消えて数哉の姿も消えた。モデルは風に飛ばされたと上を見るが、何処にも見当たらない。


「「えっ!?」」


「セレーナ、ヘンリーさん。」


 背後にヘンリーとセレーナが振り向くと、モデルの被っていたシルクハットの帽子を右手の人差し指で回す数哉を確認して、セレーナが声を上げる。


「カズヤッ!?どういう事!?その帽子はっ!」


「ああ、帽子を返して来てから説明する。」


 再び数哉が数秒消えると、帽子を諦め放送を続けていたモデルの頭上からシルクハットが落ちて来る。ビデオカメラが何事かと空を探すが、何も写らなかった。数哉は既に、居間に転送されている。


「これが、俺の力の一端です・・最近、可能になったのですが、俺は地球の何処にでも一瞬で移動出来ます。」


「そんなっ!まさか!?確かに、そんな力が有れば奴らに捕まる事はないかも知れない。だが、気付かない内に狙撃されたらどうするつもりだ?」


--「ラナ、悪い奴らから奪った出来るだけ威力のある銃を出してくれ。」


『畏まりました。』


 数哉の右手にコルトパイソンマグナムが握られる。銃の中では威力が非常に強い物で、猛獣をも一発で仕留められる威力を持つ。その銃を不意に数哉は、左手に向けて撃ち放った。


バァンッ!!


「なっ!?」


「きゃっ!!」


 硝煙の臭いが部屋に立ち込め、ヘンリーが驚いて声を上げる。セレーナは驚き過ぎて顔を背けていた。


「何と言う事をするんだ!カズヤ!早く病院へっ!」


 セレーナも心配で顔を戻して、数哉に詰め寄り数哉の左手を持った。


「何してるのよっ!バカッ!」


 数哉が左手をゆっくり開けると傷一つない手に銃弾が乗っている。


「この通り、突然狙撃されても俺は頑丈なので大丈夫です。強化服の効果で、緊急時を察知して薄いバリアが張られます。特殊な素材を使っていますので、この一着しか有りません。ヘンリーさんと、セレーナには強化アンドロイドのボディーガードを付けますので安心して下さい。」


 ヘンリーとセレーナが数哉が傷付いておらず、ホッとして声を出した。


「・・驚き過ぎて心臓が止まるかと思ったよ。」


「本当よ・・。」


「すみません。ですが、こんな感じでUKAグループを相手にしても問題ありませんから安心して下さい。」


「セレーナ。悪いが、待っていれくれ。必ず・・必ず!」


「無理だし。」


 数哉が説得していた途中で、セレーナに断られて、数哉は止まってしまう。


「え?」


「何勝手に私が待つみたいな流れに持っていこうとしてるのよ。危険だろうが、何だろうが付いて行くから。」


「困ったな。だったら、こう言うのはどうだろう?イギリスでUKAグループから嫌がらせされている人達を救って欲しい。」


 ヘンリーがセレーナの身の危険を感じて声を上げた。


「何て事を言うんだっ!それが、どれだけ危険か!」


 ヘンリーに右手を出して待ったを示し、数哉は話を続けた。


「勿論、情報収集と実行部隊は俺の部下のアンドロイドが行います。ヘンリーさんと、セレーナは部隊に指示を出してイギリスでUKAグループから罪の無い人々を救って下さい。俺のUKAグループ破壊計画イギリス支部として。そして、私達で美奈さんの復讐を果たしましょう。」


 セレーナがテンションが上がって来たのか、力強く拳を握り右手を前に出す。


「オッケッ~~~!UKAを潰してやるわっ!でも、カズヤは毎日会いに来るのよ。」


「え?」


「え?じゃないわよ。だって、瞬間移動出来るのだもの。」


--失敗だったか。


「俺も忙しいんだ。だから、月1だ。」


「週5日!」


「月1だ。」


「月30日っ!」


「増えてるじゃないか。」


「騙されないわね。週1日!」


「月、1日だ。」


「月2日!これ以上は譲れないわよ!」


「・・分かった。」


「あと、カズヤは直ぐに約束破るから、約束を破ったら・・一つ、何でも私の命令を聞く事!」


 最後の方でセレーナの頬が少し朱くなっていた。


「ああ。俺に叶えられそうな命令ならな。」


「よしっ、決まりね。」


--ラナ、出来るだけ二人が危なくない様にアンドロイドの部下を出せるか?


『問題ありません。部下と共に、イギリス軍が纏めてきても、問題ないよう処理しておきます。』


--「ああ、宜しく頼んだ。」


『それと、数哉様。』


--「ん?」


『佐熊教授の手術が無事に終わり、目を覚ましました。今、横野真南とコーヒーを飲んでいます。』


--「そうか。大手術なのに、もう動いて大丈夫なのか?飲み物も飲んでいるみたいだし。」


『問題ありません。力が元より強すぎるので、そこだけは慣れて貰わないと駄目ですが。』


--「そうだな。」


「どうした?カズヤ。考え事かい?」


「ヘンリーさん。日本に用事が出来たので、少し行って来ます。夕食までには戻ります。」


「少し日本へか・・本当に瞬間転移装置を発明したんだな。この発明は、ノーベル賞所の話じゃない。」


「内密で願います。まだ、地球で発表するつもりは有りません。この転送ですが制限や条件など、非常に多く有ります。また世界が混乱する可能性も有りますから。」


「・・そうだな。何処かで誰かが死んだとして、イカれた頭の連中は都合良くカズヤを犯人として仕立てるだろうしな。自身の物を売っておいて、カズヤが盗んだ犯人と言い出す連中も居るだろう。」


「何よ、それっ!完全に冤罪じゃない!そんな奴らが出て来たら、ぶっ飛ばしてやるわっ!」


「セレーナ、落ち着きなさい。余計な面倒は起こさない方が良い。この事は内密にしなさい。カズヤに迷惑掛ける事になるから。」


「分かったわ。」


「でも、カズヤ!それって私も付いて行けるのっ?」


「無理だ。この唯一出来た強化服を着てない者は無理なんだ。」


「もう一着作ってよ。」


「偶然、運良く出来た物だから次に何時(いつ)出来るのか分からないな。」


「なぁ~んだ。海外旅行に無料で行けると思ったのに。」


「それじゃあ、ヘンリーさん。2時間後に戻って来ます。」


「ああ、今回こそ食べきれない程に夕食を用意しておくからな。」


「ヘンリーさん、俺は別に無限に食べれる訳では無いので。程々で大丈夫です。」


「ん~・・そうだな。分かった、程々にしておくから楽しみにしてくれ。」


 ヘンリーが何を企んでいるのか、ニヤニヤとしながら返答した。


「分かりました。では、後程。」


 数哉が再び二人の前から消えた。二人で呆然として見合い、少しだけ笑いが起きる。


「何回見ても驚いてしまうな。」


「自身が映画の世界に入ったみたい。」


・・数哉は佐熊教授のいるビルの前に瞬間移動した。佐熊教授がビル地下の部屋に付いた監視装置で、その姿を確認する。


「数哉が戻ったみたいだな。」


「はい。」


 シャッターは、開かれた状態で黒のスーツとサングラスを掛けたアンドロイドの男二人が扉の前で数哉を待っていた。数哉が近づくと、片足の膝を地面に着いて忠誠のポーズを取る。


「ああ。そんなのは良いから、危険な侵入者が来たら排除しておいてくれ。」


「「畏まりました。」」


スーツ姿の男達は、スクッと立ち上がった。数哉は、その間を通りドアをノックする。


コンコン


 扉が開かれて、満足そうな表情を見せる佐熊教授と横野が立っていた。横野は数哉の姿を見るや深々とお辞儀する。


「数哉君、本当に感謝します!ありがとう!」


 そう話した横野は顔を上げない。数哉が話さなければ永遠に、お辞儀するのではないかという勢いである。


「顔を上げて下さい、横野さん。もう気持ちは伝わりましたから。」


 横野が顔を上げると、佐熊は右手を開いたり閉じたりしながら話した。


「数哉。俺の身体は、どうなっている。暫くぶりにコーヒーを飲もうと思ったら、軽く握っただけでカップが砕けたぞ。」


「手術前に話した通りです。成人男性の3倍の力が出る筈ですから、慣れて下さい。」


「凄いな・・これならUKAの施設を又襲える。」


 その発言に横野が決死な表情で抵抗する。


「教授っ、もう止めて下さい!こんな思いするなんて耐えられません!大学も教授の席を開けてくれています。もう、教授は頑張りました・・。」


「・・お前には、悪いと思ってる。だか、ここで止めれば俺を守ろうとして、UKAが放った暗殺者の毒を浴び、目の前で血を吐き苦しみながら倒れた啓吾に言い訳が立たない。夢に出て来るんだ。教え子の啓吾が苦しみながら、仇を討ってくれと・・何度も言っているが、お前は付き合わなくて良いんだぞ。」


 夜中、佐熊教授が悪夢で苦しむ姿を思い出して、横野が静まりかえる。佐熊は話を続けた。


「数哉。お前に紹介したい組織がある。」


「?・・組織ですか?」


「ああ。UKAに大切な者達を殺された連中が集まって出来たレジスタンス組織、コールマンだ。助けを求める者達と言う解釈で創始者が名付けたらしい。そのコールマンは俺の身体だったロボットもそうだが、比較的警備の弱いUKAの施設から兵器を奪って、それを利用しながらUKAグループと戦っている組織だ。お前もUKAグループと戦っているならコールマンに参加したらどうかと思っている。」


 数哉は、それを聞いて直ぐに顔を橫に振り話す。


「いえ、俺は一人で戦います。自身の手で仇を討ちたいので。」


「お前が優秀なのは知っているが、一人の力では限界が有る。それにレジスタンス組織に、もしかすると数哉の仇の情報も入っているかも知れないぞ。」


--「・・外に居るアンドロイドや、身体を治した者達を教授は何故知らない?それに、ラナが簡単に調べられないものを、調べるのは無理じゃないのか?」


『二人が寝ている間に、身体を治したのと、現在外の監視装置にアンドロイド達が映らない様にしています。数哉様が後で、説明するのに困るかと思いまして。』


--「確かにな。」


『美奈様を害した犯人に関してですが可能性は有ります。現在は、過去の記録を消されない為に、調査証拠を残さずハッキングしていますが、レジスタンス組織が昔から上手く敵のコンピューター内部に入っていたり、スパイをUKAに入れていれば可能性も有ります。UKAグループで念入りに消されてしまった記録がレジスタンス組織に有るのならば、その組織のコンピューターを、探る事で美奈様を殺した犯人の居場所が特定出来るかも知れません。』


--「分かった。」


「・・教授。」


「お?その顔は、参加するって顔か?」


「はい。但し、俺は自由に動かさせて貰いますが、宜しいでしょうか?」


「情報共有やUKAに対して兵力が必要な時以外は自由に動けると思ってくれ。UKAグループは、巨大グループだ。組織の者達の仇は、それぞれ違うから皆が基本的には殆どが組織の力を使いながら自由に動いている。」


「なるほど。」


「今晩、早速向かおう。新富士駅に深夜2時に来られるか?」


「分かりました。」


--まだ、夕食に戻っても食べてきても時間あるしな。


「佐熊教授に渡したい物が有ります。少し時間を下さい。」


「ん?何をくれるつもりだ?もう十分な程にして貰ったが。」


--「ラナ。二人に寝て貰った後に、頼んだ件はどうなっている?佐熊教授でも、使えそうか?」


--「このビルの脇道に設置済みです。数哉様と二人しか入れない次元をずらした広場が用意出来ております。更に、遺跡で今までに見つけた遺跡物を解析し、魔法陣とオストラルエネルギーを封入出来る魔法具も製作出来ました。試験管型武器で、地球でも使用可能な物です。身体を強化した教授に渡せば、UKAの脅威となる筈です。但し、込められるエネルギーには限界が有ります。」


「・・教授の使える武器です。このビルの脇道から入れる秘密の広場があります。そこで渡します。」


「俺の使える武器?」


「はい。身体能力は上りましたが、格闘技は素人ですよね?」


「まぁな。」


「ですから、教授用の遠距離でも使える武器を用意しました。危険もありますから、それの威力をそれぞれ確認して貰います。」


「了解した。良いだろう。」


・・二人は数哉と出て、夏以外で光が殆ど届かない細い脇道を歩く。先頭の数哉が小さな換気扇が見える場所を過ぎた所で止まった。


「教授、その換気扇の下に手を置いてみて下さい。」


「?こうか?」


 教授が手を壁に当てると、見た目よりツルツルとした感触で違和感を覚える。そして、そう思えたのは一瞬で、目の前の壁がある筈だが手に何も感じなくなった。


「ん?」


 教授は不思議に思い壁をより触ろうとして、掌を押すと手は壁にめり込んだ様に消えていく。


「ふむ、面白い。3D画像の様なものか?」


 助手の横野も目を見開き驚いていた。


「えっ。」


「教授、横野さん。もう中に入れるので入って下さい。」


 教授は黙って頷くと、足を進めた。横野も続けて恐る恐ると入り、最後にカズヤが続いた。中は真っ白な床と壁の七人程乗れるエレベーターとなっている。天井にある円盤状の照明以外は何もない。カズヤが乗り終えると自動的に扉がしまり、微かに降下している違和感を覚えた。地球上には無いエレベーターなのか動く音が全くしない。


・・十秒程すると、扉は音もなく開いた。佐熊教授はエレベーターから降りると目の前の光景に言葉を漏らした。


「おいおい・・嘘だろう?地下にこれ程のものを作るのに幾ら掛かると思ってんだ?」


 教授が見た物は、地下であるのに全体に光の当たる広大な草原を見ている。天井を支える柱さえ見えず、空があり太陽も見えた。


「お前が、小さい頃稼いでいたのは知っていたが、まさかここまで稼いでいたとはな。それと・・映像による、このリアルな実現度。本当の広さはどのくらい何だ?」


「そうですね。」


--「ラナ?」


『はい。今のところ、このエレベーターを中心に1平方キロメートル程有ります。境界線には赤い花を咲かせています。護衛用のアンドロイド執事も居ますから安全かと。因みに下の草原と土は本物です。』


「・・大体、1平方キロメートル程です。」


「まさか俺が逃げ込んだ近くに、こんな場所を作っているなんてな。」


「これから数年は、ここを好きに使って頂いて構いません。エレベーターの扉は俺の近しい仲間しか入れないようになっていますから。あのスナックがあった隠れ家よりも良いでしょう。後ろを見て貰えますか?」


 エレベーターの直ぐ傍に白髭を生やす初老の執事の姿が見える。二人が振り返ると、執事は優雅な深くお辞儀をした。


「誰なんだ?数哉。あの人は?」


「ここでの生活を支えてくれる執事です。名前は・・。」


『ラナ、あのアンドロイドの名前は何だ?』


『先程作られ転送したばかりなので、名前はまだ有りません。宜しければ数哉様が付けて頂ければ。』


--「そうか。」


安藤(アンドウ) 一執(イチシツ)さんです。安藤さんも教授の様に強化された身体を持っている上に、元々は軍隊にいた方ですからボディーガードとしても優秀です。後で、この平地に建物二つを用意しておきます。その小さな建物の方に安藤さんは居ますから、何でも頼って下さい。」


 佐熊教授は、宜しくお願いしますと安藤に近づき話す。安藤は柔らかな笑顔で右手をさしだして握手しながら話した。


「数哉様から、十分な報酬を貰っております。食べ物の材料や、簡単な買い物でしたらお申し付け下さい。」


「いやぁ、悪いですね。大学を暫く休んでいたから経済的に厳しくて。」


「数哉、すまないな。身体も治してくれたし大学にも仕事復帰する事にした。金は後で返す。身体を治してくれた金額がどれだけか分からんが。」


『佐熊を治した費用は、現在の地球の科学を進める金額も含めると、約5兆1200億円程ですが、請求なさいますか?』


--「しない。」


『畏まりました。』


「・・大丈夫です。有り余る程に財産が有りますから。」


「そうか、まぁ余裕が出来たら飯でも奢らせてくれ。」


「ええ、ぜひ。話しは変わりますが、まずこの白衣とマスクと眼鏡をどうぞ。」


 数哉がラナが転送してきた装備を佐熊に差し出す。


「ん?普通の白衣みたいだが何なんだ、これは?白衣は大学に何着も置いてあるが。」


「その白衣は、防弾となっています。刃物にも、かなり強い物です。マスクと眼鏡も同様で身体を守ってくれます。失くさない様にして下さい。更にマスクには、毒ガス等の中和剤も含まれています。二時間程度ならば防いでくれます。危険な任務の際は装備して下さい。」


「ほうっ。それは助かるな。」


「あと、これを。」


 数哉は再び手を自身の背中にまわして、ラナに転送して貰う。数哉の手に革ベルトとベルトには、魔方陣の描かれた試験管が5本程装備されている。各々の蓋には炎、石、岩、風、光と書かれていた。


「これは?」


「ズボンのベルトとして普段から付けておいて下さい。今から、使用方法を説明します。まず、炎の試験管を取って向こうに向けて下さい。」


「こうか?」


「そうです。蓋は飛ばない様に固定されています。試験管は頑丈ですから、思い切り握っていて下さい。現在の佐熊教授の握力でも割れません。蓋を試験管を持った親指で開けて下さい。」


パカッ。ゴオ!!オオ~~~オオ~~~!


 試験管から直径2メートル程の真っ赤な炎が吹き荒れ、炎は15メートル先の草原も焼いていた。その勢いに試験管を離して飛ばしそうになり佐熊は焦っていた。


「おう!おう!危ねぇ!」


 数哉は一瞬で教授に近付き、上に開いた試験管の蓋を閉じた。すると炎が嘘の様に収まる。佐熊教授は試験管を見ながら固まっていた。


「数哉、どうなっているんだ?この試験管の燃料で、あの炎の量は有り得ないだろう?」


 数哉は何の表情も変えずに話す。


「企業秘密です。取り敢えず、その魔方陣が完全に消えるまでは使えます。使用毎に魔方陣は薄くなるので気を付けて下さい。執事に預けて貰えれば再度補充しておきます。」


「石の試験管は、最新式の片手で一般人が持てる機関銃の様な威力と速度で、石を飛ばせます。」


「岩は自身から離れた50m以内に、高さ10mまでの壁を一瞬に作れます。」


「風は台風を越える風速40m/s超えの風を出す事が出来て、光は自身の周りを閃光弾の様に照らせます。目眩ましの様に使って下さい。」


「・・これは、大量生産出来るのか?出来るならコールマンに渡したいのだが。」


「残念ながら、不可能です。教授に渡した物と俺が持っている物のみです。使われている材料が希少で、地球で他に発見されていません。」


「そうか、それは仕方ないな。」


--遺跡で発見した数的に、改良型のこれを作るのは難しいだろう。ラナが独自に作れば別だが、空になる度にオストラルエネルギーを注ぎ込むのも面倒だからな。


「・・一応、一通り試しておいて下さい。俺は、これから少し用事があるので失礼します。新富士駅で後程、会いましょう。」


「おう、後でな。」


・・数哉は佐熊教授達を置いて外に出ると、そのままイギリスのヘンリーの大きな屋敷前に転送された。黒いスーツを着た二人の守備アンドロイドが数哉を見て深くお辞儀をする。数哉が軽く頷くと、二人は屋敷の扉を開けた。既に料理が出来ているのか、玄関にまで料理の匂いが流れている。目の前にはニヤけたヘンリーと普通のワンピースを着てヘンリーのニヤけ顔を呆れた表情で見ているセレーナが立っていた。数哉を見るなりヘンリーが声をぶつけて来る。


「カズヤ!今日こそ、お腹いっぱいと言って貰う。ミナの分までセレーナとカズヤには幸せになって貰うからなっ!」


「・・ダッド・・あれはやり過ぎよ。いくらカズヤでも食べられる訳がないじゃない。食材が勿体ないわ。」


 呆れた表情のままセレーナが横に居るヘンリーへ話した。


「いやっ、カズヤならば食べられるかも知れないぞ。さあ、行こう!」


・・3人が広い居間に入ると、七面鳥の丸焼きや新鮮な野菜や肉、チーズを載せた大きなピザ巨大スープの鍋、極めつけは牛肉の全ての部位を載せた巨大な皿で適当に見積っても10kg以上は有るようであった。これで満足して貰えるだろうとヘンリーは数哉を見る。


「カズヤっ。いくらでも食べてくれよ。」


--全て食べたら、次回また増えても困るしどうするかな。半分ぐらい食べて、お腹いっぱいの振りでもしておくか。


「・・ヘンリーさん。これは流石に多すぎます。」


 セレーナが自然に数哉の傍に座りながら、それ見たことかとヘンリーへ話す。


「ほら~、ダッド・・。」


「そうなのか?前に食べた時も異常に食べていたのに・・まぁ、食べられなかったら近所の方々に、持っていって貰うから大丈夫だ。」


「では、すみません。頂きます。」


 まず数哉は1kg以上ある目の前の大きな七面鳥の丸焼きを骨しか残さずに食べる。それを5匹分丸ごと食べると、次々に巨大な皿を冷静に食べていった。12kg程を食べた時点で、ヘンリーがそれを見て空笑いをしながら声を掛ける。


「ハハ・・ハハハ、美味しく食べてくれて嬉しいが、数哉のお腹の具合は、どうなんだ?」


 数哉はヘンリーの狼狽え具合から想像した。


--もしかして、食べ過ぎてしまったか?同級生から聞いた話しでは、テレビに出ている大食いの人は6kgはペロリと食べると聞いた事があるのに。だったら10 kgは余裕じゃないのか?修正が必要だな。


「・・え~と、もう満腹過ぎで食べられそうにないです。すみません、こんなに残してしまって。」


 ヘンリーが応える前に、セレーナが数哉の発言に言葉を返す。


「やっと満腹って何よっ!?明らかに人間が食べられる量を超えてるわよ。お腹は大丈夫なの?まったく・・。」


「ああ、少し食べ過ぎてしまったかも知れないが大丈夫だ。見てくれ。」


 不意に数哉は海の絵柄の黒Tシャツの裾を不意に上げる。セレーナは、何を思ったのか驚いていた。


「キャッ。」


 見ても大丈夫な筈の数哉のお腹を、セレーナは両手で顔を隠して可愛い声を出し、指の隙間から見ている。ヘンリーもセレーナの反応を流しつつ、数哉の腹を見た。数哉のお腹は、12kg程食べたとは思えない、有り得ない細マッチョの完璧な筋肉が見えている。


「カズヤの身体は・・いつも思うがブラックホールだな。本当にお腹は満足したのか?全く腹が膨れてないのに?」


「ええ、食べ過ぎて少し(つら)いぐらいです。美味しそうな料理が並んでいたので、食べ過ぎました。」


「・・そうか。それなら次回は減らそう。カズヤならアメリカのフードファイト大会でも簡単に優勝しそうだな。」


「そうですか?」


「ああ・・そうだっ。話は、変わるが今日は泊まるだろう?」


「すみません。まだ、仕事を残していて日本に帰る必要が有ります。」


 セレーナがそれを聞いて機嫌が悪くなり、数哉の右腕にしがみついて来た。


「えぇ~~!仕事は又今度にしなさいよっ。」


「すまない。その代わり、明日朝食時に戻ってくる。今は急ぎの仕事だから行かないと。」


 仕方なさそうにセレーナが離れる。そして、頬を赤くして両手を広げた。


「じゃあ、はい。」


「え?」


「ハグよっ、ただのハグっ。」


「あ、あぁ。」


 数哉は、より顔を赤くしたセレーナに近付いて背中に両腕を回す。セレーナは、数哉の胸の中で嬉しそうに笑顔を見せて、ギュッと身体を押し付けた。数哉の身体全体で、セレーナの全てを感じる。数秒後・・ヘンリーがまだその先は早いと、見かねて二人の肩を持ち引き離す。


「はいはい、そこまでっ。セレーナ。数哉も仕事で忙しい様だから、そろそろ行かせてあげよう。」


 セレーナは数哉の顔を見つめながら、名残惜しそうに離れた。ヘンリーが、数哉に向かって話す。


「明日は、2階のバルコニーで朝食を食べよう。待っているからな。」


「分かりました。」


・・・数哉は夕食を食べた後、直ぐに新富士駅まで転送した。日本はイギリスより8時間程時差がある為である。街の灯りは少し残るが静寂が満ちていた。


「あそこだな。」


 駅ロータリーの傍に立っている佐熊教授を数哉は見つけた。左手に数哉が渡した白衣等の装備を入れたアタッシュケースを持っている。数哉はゆっくりと佐熊教授に近付いた。


「・・来たな。」


「横野さんは?」


「今日は来ない。俺の身体が大丈夫になって緊張の糸が切れたのか微熱を出してな。数哉が用意してくれた秘密の草原でテントを張って寝ている。」


「そうですか。」


--「ラナ。教授達の住む場所を早く用意出来るか?」


『3時間程頂ければ。』


--「分かった。」


「・・後、3時間程で教授の住む建物を用意出来ますから電話して上げて下さい。」


「おいおい、数時間で家を建てるつもりか?もしかして、プレハブ小屋か?」


「いいえ。日本家屋ですよ。教授、確か盆栽好きですよね。」


「ああ。そう言えば、話した事があったな。」


「家屋は出来ていて、移動するだけですから。」


「そうなのか?分かった。電話しておこう。」


・・佐熊教授は横野に電話した後に、数哉へ振り返った。


「安藤さんが、お粥を作ってくれたそうだ。3時間後には建物に移ると言っていた。」


「そうですか。では、そろそろ行きましょう。」


「ああ。」


・・教授は新富士駅の関係者用入口の倉庫の鍵を開ける。ガラガラと鉄扉を、スライドさせた。


「ここ以外にも、入口があるんだが日本支部の基地まで遠くてな。」


『数哉様。』


--「ああ、居るな。二人か?」


『流石です。』


 数哉は真っ暗の倉庫内に居る人間の気配を感じた。教授が内部に進むと鉄道の警備員らしい格好をした二十代の男が前に現れる。


「ここは立ち入り禁止だ。出て・・ん?佐熊さんじゃないですか!?その身体は・・?」


「ああ。後ろにいる昔の研究仲間に治して貰った。」


「どうみても、学生ぐらいにしか見えませんが。」


「ああ、小さい頃から活躍してたからな。知らないか?日本のスーパーサイエンティストと呼ばれた佐藤数哉を。」


 二人が数哉を思い出して怪訝な表情に変わる。そして数哉に向けて警棒を向けた。警棒は改良されていて強力なスタンガンになっている様でバチバチと青白い光を発している。


「その者はUKAグループに所属していた奴ですよねっ。」


 佐熊教授は、右手を伸ばし落ち着く様に掌を上下に動かす。


「待て!待て!数哉は、騙されてUKAに入って、非人道的なUKAグループを訴えようと頑張ってた奴だぞっ。まぁ、仲間を殺されてから、UKAグループを辞めて、暫くは大人しくしてたみたいだがな。俺達と同じ境遇って訳だ。」


 警護の二人が顔を見合わせる。


「どうする?」


「そうだな・・佐熊教授。そいつがUKAグループと本当に敵対しているかを証明出来る何かがないと、お通し出来ません。こちらも皆の命を預かっていますから。」


 佐熊教授は困ったと右手で頭の後ろを搔く。


「弱ったな。」


・・数哉は困っている佐熊の後ろで、美奈を殺された事や、仲間達を殺された証拠を出せと言われてイラついた。仲間を守る為とは言え、大事な思い出や苦しいかった過去を共有する必要がないと、思っている。


--コールマン支部の大体の場所は分かったんだ。後は、ラナに調べて貰おう。コールマンとは縁がなかった様だ。


 数哉が佐熊教授に話そうとした時、突然床にある木の扉がバンと開かれ、白髪交じりで寝癖頭の丸眼鏡を掛けた持澤という名前の男が飛び出して来た。


「おぉ~~~、監視カメラで見ていたが、やはり佐熊さんじゃないかっ。早く儂と来てくれ!UKAにコールマンの制御システムをハッキングされそうなんじゃ!緊急に防御システムを新たに構築せねばならん!儂らだけでは、難しそうなのじゃ!」


「なんだって!?それはマズイぞ!数哉!手伝ってくれっ。数哉ならUKAのハッキングなんか余裕で撃退出来るだろう!」


 警護の者が再び出て来る。


「だから、まだ、駄目だと」


 佐熊教授が、二人へ怒りを見せた。


「馬鹿野郎っ!それどころじゃない!UKAにハッキングされたらっ、日本支部だけじゃない!全世界のコールマンの支部の場所が知られて、コールマンは全滅するぞっ!」


「「ええっ!?」」


「どけっ!数哉なら、この状況も何とか出来る。なにせ、暇潰しに世界中のコーピュータに潜りこんでは、今までバレなかったんだからな。」


 二人は顔を見合わせて、道を開ける。数哉の背中を押そうと、佐熊教授が背中に強く掌を押し当てた。


--仕方ないな。


 数哉はコクりと頷いた持澤に、付いて行く。男は初老にしては素早く階段を降りていった。その後に数哉、佐熊と続く。焦る二人を見た数哉が、後ろを走る佐熊に提案した。


「・・佐熊さん。教授が前の方を背負って走っては、どうでしょうか?力の加減が難しい様ならば俺が背負って、教授に誘導して貰えればと?」


 数哉の提案にハァハァと、息を切らす持澤が無謀な提案だと否定する。


「あと千三百メートルもあるし、成人男性を担いだら余計に遅くなる!ハァハァ!阿保な事言っておらんで、黙って付いて来んかっ!」


 そう持澤が話した。だが、余裕で走る数哉が佐熊を見ると、教授は真剣に頷いて数哉を追い越すし、走っている持澤を姫様だっこで担いで走りだす。


「うわぉ!何するんじゃ!?」


「持澤さんっ!数哉の言うとおり、今は一刻を急ぐ!舌を噛まない様に口を閉じておいてくれ!」


タタタタタタ・・・!!


 二人の速さに驚く持澤と共に、迷路の様な廊下と階段を駆け抜けて行った・・。


・・数十秒後、ある鉄扉の前でキキキ~!と靴音の摩擦音を出して佐熊が止まる。まだ力に慣れていない佐熊が持澤を慣性で放り投げてしまいそうになり、焦りを見せた。


「・・おっととっ。」


 ギュンと数哉が目の前に現れて、持澤の頭と尻横を抑える。両足が前に行くが何とか魚の水揚げにならないで済んだ。佐熊が、持澤を下ろして、直ぐにガチャリと素朴な鉄扉を開く。五名程のYシャツを着た男達が、腕まくりをして必死にパソコンを叩いている。


 一番左手の、この部屋のリーダーがキーボードを叩きながら叫ぶ。


「光原っ(みつはら)!まだか!第二関門突破されたぞっ!」


「まだです!高本(こうもと)さん!3人が掛かりでも二時間は掛かります!高本さんと梶さんで、時間稼ぎ願います!」


「くそっ!駄目かっ!?」


『私が防ぎましょうか?』


--「いや、俺がやる。良い機会だ。UKAをからかってやろう。情報も、ある程度ならば取れるしな。」


 数哉が佐熊を見て頷きながら、光原と言う男に近付いた。佐熊が光原の肩を叩く。光原は止めろとばかりに肩を回す。


「誰だよっ!邪魔しないでくれっ!今、大変なんだ!」


「光原、佐熊だ。そこを変わってくれ。」


 光原がブラインドタッチでキーボードを叩きながら、驚いた様子で佐熊を見た。


「さっ!佐熊さんっ!無事で何よりですけど

、佐熊さんでも今の状況は厳しいッスっ!変わっている暇も無いですからっ!」


 佐熊は光原の両脇に手を伸ばして、軽々と持ち上げ椅子から離した。


「気でも狂ったんですかっ!?佐熊さん!」


 光原が離れたと同時に数哉が、椅子に現れる。数哉は脳にエネルギーを集中すると、微かに目の奥が光っているように見えた。手の無数の残像と共にキーボードから、有り得ない程の音が聞こえてくる。


カタタタタタタタッ・・・・。


「えっ!?そんな!速すぎる!?頭で考えながら、その速度で!」


--遅すぎるな。この処理速度では、これが限界の速さだ。


 数哉の考えとは正反対に、あまりの速さを見て光原が驚く。数哉は真剣な表情で画面を見つめてキーボードを叩いていたかと思うと、突然手は叩くのを止めずに表情を和らげた。


「・・ふん、それな。いくらでも対処方はある。そ~ら・・道を開けてやるから、やって来い。」


 リーダーの高本が自身の画面を見て、数哉を非難する。


「お前!何してるっ!わざと3関門を突破させやがってっ!」


 数哉が冷静に受け流した。


「相手を騙すには、先ず味方から。よ~く、見て下さい。突破されているのは本当に3関門ですか?」


 高本は、画面を見るとコールマンのシステムが急激に正常に戻っていく。


「えっ?何が起こった?」


「相手のハッキングを、今作った仮システムの第三関へ誘導した後に、UKAグループのシステムと仮システムを関連付けしてやりました。今頃、自身が送り込んだ大量のウイルスが戻って来て大慌てでしょう・・もうすぐ、面白い物も見れます。楽しみにしておいて下さい。」


ーーーーーーーー


・・・その数十分前、アメリカのニューヨークにあるオフィス街の高層タワーにある15階では、UKAに雇われた天才達が23人で、コールマンのシステムを、攻撃していた。


「IQ200 以上もある俺達がやるべき仕事なのかねぇ。一人でも十分なのに、これだけ集めるなんてな。」


「UKAのトップがそろそろ、コールマンとの遊びを止めようと思ったみたいだな。奴らはゴキブリみたいに増えて、相手にするのも面倒になって来ているみたいだ。」


「これは仕事だ。やるべき事を皆がやれば良い。」


「へえへえ・・言われなくても、やってますっての。」


「・・第二関門突破だ。第三関門を突破する。恐らく、そこを抜ければコールマンの全てが、曝け出されるだろう。」


「第三関門突破!」


「はい、THE ENDだ。」


 最後のハッカーがカタリとリターンキーを押した。


≪ケケケケケケケケ・・・・・・!!≫


 それぞれの巨大モニターに小悪魔が映し出され、室内にモンスターの笑い声が響いた!


「「「「「「「「何だっ!?何が起こったっ。」」」」」」」」


「まずいぞ!ここからUKAグループのあらゆる情報がコールマンへ流れている!速く全員緊急ウイルス対策プログラムを作動させろ!」


 それぞれのハッカーが分かっているとばかりに無言でキーボードを叩く!


「これで・・何とか・・・おいおいおいおい!今度は俺らが作ったウイルス消去プログラムが、UKAの技術的なプログラムを破壊していってるぞ!早く止めろ!」


・・この時、UKAグループの世界各地のコンピューターで制御された1/3の照明が消え、エレベーターは止まり、扉は動かなくなる。非合法の研究も電力が届かなったり、作成ロボットが異常な動きで施設を破壊し、一からやり直さなくてはならない研究もあった。現時点で、UKAグループの損害が日本円にして1200兆円を超えている。それぞれの施設担当者、管理者達はパニックに陥っていた。


「何が起こっている!?」


「私の研究がぁぁぁあ~~!!」


「こらっ!壊すな!その容器の中身は繊細なんだぞ!」


「ウイルスが漏れた!早くシャットアウトしろ!」


・・UKAのハッカー集団にも、どうにもならない様子でリーダーは部屋にあるコンピューターの電源をワイヤーカッターで切っていく。


「グループへのプログラムが、ここから発信されている様だから全員急いで線を切れっ!切る物がなければ引きちぎってでも!コネクターのネジを緩めてでも外せ!兎に角、早くしろっ!」


 全ての断線を終えた頃、ハッカー集団のコンピューター室にサングラスをした三十代前半と思われる黒スーツ姿の男 とマシンガンライフルを持った軍隊装備の者達20人が入って来る。黒スーツの男が叫んだ。


「マーイクッ!」


 ハッカーのリーダーが黒スーツの男に近付いて応える。


「申し訳ない!管理監!コールマンの防御システムを倒した筈のプログラムが突然、ウイルスにやられてUKAのコンピューターネットワークへ攻撃しましてっ。」


「で?それに対して、お前らは何もしなかったのかね?年間200万ドル以上貰っている自称天才達が?」


 それを聞いてリーダーの後ろから、一人の男が勢いよく出てくる。


「自称だと!?お前達みたいな凡」


バンッ!


 管理監と呼ばれた男が、いつの間にかスーツの何に忍ばせていた拳銃を取り出して勝手に発言しようとした男の眉間を撃ち抜いた。男はゆっくりと後ろに倒れて動かなくなる。リーダーを含めて、ハッカー達は恐怖を感じて震えていた。管理監が続けて何事もなかった様に話す。


「それで?」


「は、はい。緊急対策プログラムで対抗しようとしたのですが・・それも味方と勘違いさせられ、潜り抜けられてしまい。本当に申し訳ございません!」


「・・既に、入り込んだウイルスをどうするつもりなのかね?」


「3日頂ければ、ウイルスに犯されたシステムを初期化して、失ったメモリーのインストールを行います!」


「3日?」


 黒スーツの男がマイクの眉間に拳銃の先を当てる。マイクは死が迫り、暑くもない空調の効いた部屋で、冷や汗を大量に流した。


「ふっ、2日でやります!本当にそれが限界なんです!ここにいる者達、全てが寝ずにやっても!」


 黒スーツの男は拳銃を下ろす。


「・・良いだろう。直ぐに取り掛かれ。」


「はい!了解しました!」


 全員が、ウイルスに感染していない緊急用の予備パソコンに移り、作業を開始した。黒スーツの男は無言でコンピューター室を出ていく。亡くなった男は二人の戦闘員に足を持たれ、 引き摺られていく。血痕はコンピューターが復帰するまで残された。


--------


・・数哉のコンピューターにUKAグループから送られてきた施設の情報が大量に送られてくる。


「ふむ。良い感じだな。」


--「ラナ、この情報に美奈さんを害した奴の居場所が特定出来ないか調べておいてくれ。ここなら情報を消される懸念も無いだろう。」


『畏まりました。』


「それと、イギリスでUKAに迫害されている企業や人達の情報を、ヘンリーさんに知らせてくれ。」


『畏まりました。』


 数哉が他のコールマンのコンピューターにも、データを流していく。


「凄いっ!現在のかなり多くのUKAグループ施設情報が満載だぞ!これで、施設を襲う際の成功率も上がる!」


 佐熊教授が満足な表情で、数哉の右肩に左手を置いた。


「お疲れさん。ここも落ち着いた様だし、コールマンの日本支部を案内しよう。」


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