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ラナ markⅢ  作者: ススキノ ミツキ
3/37

第3話 辺境の町ベロルドナ

・・・・4日間、数哉は剣を振り続けた。モルグの鱗はかなり削れ、その下にある皮を斬りつけている。


「・・ハァ・・ハァ、もうすぐだ!ラァ!」


ズバッ!


 数哉のミドルソードが肉に食い込む!モルグが悲鳴を上げた!


「グエェェ!」


『あと一撃です!ご主人様!』


「ラァッ!」


ズバッ!


「グエェェェ!・・・。」


 モルグが地面に落ちる!


ボトッ。


 モルグの身体から薄っすらと輝く緑色のオーラが抜けていく。


『今です!・・エネルギー吸収!増幅変換!』


 数哉の身体がオストラルエネルギーのオーラに包まれ、三十秒程経ち・・やがて消えた。数哉の身体に異変が起きる。


「え?なんだこれ!?凄く身体が軽いし!これ・・?」


ビュン!ビュン!シュ!シュ!シュ!・・・!


 数哉は今まで重い鉄剣を一回振るだけで息切れする様な状態であったが、まるでダンボールで作った剣を扱うが如く鋭い連撃を見せた!


「これ?・・今まで使ってた剣か?」


『間違い無く。』


はしよりも軽いんだが?」


『現在の数哉様のレベルは87となっています。当然かと。』


「87!?この世界で例えると!?」


『プチ英雄レベルでしょうか。ある程度の有名人がいるぐらいです。』


「そんなに強くなってるのか!?」


『はい。数哉様が倒されたモルグは非常に貴重で約300年に一度、見つかるかどうかと言うエルラの上に、そのエネルギーを私が増幅変換致しましたので。』


「・・・・・。」


 数哉は身体の変化を確かめる様に手をギュッギュッと握り、足踏みをしている。足踏みをする度に地面が凹み、揺れ動いた!


ダン!!ダン!!


『ですがご主人様は87としての技量をまだお持ちで無いので、お気を付け下さい。気軽に子供と握手すれば手を潰しかねません。』


「それは怖いな・・。」


『大丈夫です・・時期に慣れます。』


「・・だと良いけど・・。」


『まだ、気を付ける事がございます。』


「何を?」


『レベル87とは言え、ご主人様は魔法の使用方法も剣技もまだ身に着けていません。油断なさらない様にお願い致します。』


「ああ、そっちは心配ない。俺も慎重な方だから全く油断するつもり無いし。・・で、まずは近くの町に行きたいんだが一番近い町って何処だ?」


『はい・・ここから東に217km離れた場所にベロルドナと言う町がございます。一つ、山脈を越える必要がありますが。』


「遠いな・・。」


『瞬間移動も出来ますけど?』


「出来ればそういうのも無しで行こう。普通の冒険者らしくな。」


『畏まりました。もうご出発なさいますか?』


「ああ。」


『では・・転送。』


 近くにあった数哉の部屋が消えて無くなる!


「え!?何処に消えたんだ!?」


『ご主人様の星、惑星デアラールにある本拠地です。』


「俺の星って、どういう事?」


『ご主人様の代わりにトラール星雲の全ての星を支配したのですが、その中の星の一つですね。現在は、この惑星の直ぐ傍に存在します。』


「・・そう。」


--何か怖いな・・これ以上聞かない方が良さそうだ・・・。


 数哉は冒険初心者の鉄鎧を着て何も言わず、そのまま歩き出した・・疲れも無く5km歩いた所、数哉から130m離れた場所で、3匹のエルラが協力して仕留めた1匹のエルラを一心不乱に食べ続けている。


「ラナ、あれってエルラか?」


『そうです。狼型のエルラでタレデックと言います。動きは素早いですが、今のご主人様なら、それさえも遅く見える筈。簡単に倒せるかと。』


「狼にしては大きいな。」


『体長2.2m程です。どうやら、こちらに気付いた様ですね。』


 1匹のタレデックがこちらを見ると、獲物が増えたと1吠えしてこちらへ向かって来る!


「グルル!」


・・見る見る内に近付いてくると数哉の首を目掛けてジャンプした!数哉は剣を構えて集中する。その瞬間・・タレデックの動きがハッキリと捉えられ、その事に驚きながら剣も振らずに身体を少し動かしヒョイ!と避けた。


「え!遅い!?」


『いいえ、遅くはありません。ご主人様の動体視力も強化されておりますので。遅く見えた先程のタレデックの速度は時速37kmです。』


 他のタレデック2匹も獲物を食べ終えて、こちらに向かって来る!・・呆けていた数哉は3匹のタレデックに囲まれた!


「・・しまった!く!ラァ!」


 数哉は囲みを何とかする為、1匹を倒す事に集中して剣を振り上げ飛び跳ねる!


ギュン!


 数哉は跳び過ぎて、狙っていたタレデックを跳び越し上空15mまで跳ねていた!


「え!?ウワァ〜!」


 数哉は空中を走る様に足を動かしながら、倒そうとしたタレデックを越えて離れた128m先に着地する。


ダン!!


「あれ?」


『ご主人様、落ち着き下さい。跳び過ぎですしタレデックに万が一に咬まれても、今のご主人様でしたら仔犬の甘咬み程度にしか感じませんから。』


「マジで?」


『嘘でしたら私の身体を好きになさって下さい。嘘で無くともお願い致します・・ポッ。』


「ポッて、説得力無いんだけど・・言ってる内に来たぞ!ラナ!信じたからな!」


『どうぞ。』


 数哉は3匹のタレデックが一斉に飛び跳ねたのを見て剣をしまうと、両手を広げて3匹のタレデックの頭をタンバリンを叩く様に閉じた!


ゴキン!


 タレデック3匹の頭が凹み、空中で身体と共に留まる!そのままタレデック達の身体から緑色のオーラが抜け、モルグの時と同じく、ラナはエネルギーを変換増幅して数哉の身体へ吸収した。数哉が力を抜くとタレデック達はドサリと地面に落ちる。


『お見事でございます、ご主人様。』


「ふ〜・・上手く行った。これ食べれるのか?」


『モルグは食べれるので保存していますが、この世界でタレデックを食べる人は居ません。まぁ、他の星の食べ方であれば食べれない事もありませんが。」


「そうか・・じゃあやめとくか。」


『食べるのであれば南東に少し行けば湖の近くに美味しいエルラがいます。どうやら一年の内の産卵時期みたいですね。』


「エルラって、卵から産まれるのか?」


『この世界のオストラルエネルギーが凝縮して自然に出現する事もある様ですが基本は卵からの様です。成長と共にオストラルエネルギーを蓄え、卵を産みます。』


「・・やっぱり、このエルラも食べようかな。俺が殺したんだから食べないと。」


『殺そうと襲って来たのは向こうからですし、気にする事はございません。食べれても、かなり酸っぱい料理となりますが。』


「・・それは厳しいな。」


 数哉は合掌して、そのまま放置する事とした。


「行こうか。」


『はい。』


・・そのまま一時間程歩くが、荒野が続くだけで何も無い。ちょっとした植物やエルラでは無い小動物を見つけるぐらいであった。エルラと動物の区別は、死んだ際にオストラルエネルギーのオーラを出すかどうかで区別されている。


「慎重に進もうとして歩いていたけど、疲れも全く無いし走るか。」


『そうですね。危険な魔物や罠等は私がサーチしておきます。』


「頼む。」


『畏まりました。』


 数哉は走り出し速度を上げて行く!


「おお!軽く走っているのに速い!ラナ!今、どのくらいのスピードが出てる?」


『現在の速度は時速75kmですね。』


「そんなに!?もしかして夕方には町に着くのか?」


『ご主人様がこのペースで進めば確実に着くかと。』


「それにしても全く疲れないな。オストラルエネルギーって、凄いよな。」


--{それも有りますが時々、食事に混ぜている薬の効果も出ている様です。これで重傷を負っても命に問題ありませんね。よし!よし!}


「ラナ?どうかしたのか?」


『・・は!はい!沢山エルラを倒せば、もっと強く成れます!』


「これ以上、強くならなくても良いだろ。お土産持って帰るだけなのに。」


『いいえ!凄く美味しい食材を見つけて、ご家族のお土産にされれば皆様!お喜びになられる筈です!かなり危険な場所にも食材がありますから、もっともっとレベルアップが必要です!』


「そうか・・それならもっとレベルアップするか。」


『はい!補助はお任せ下さい!』


--『これで良し!・・ご主人様には究極!いいえ!それをも越える成長をして頂き!私と共に永遠を生きて頂きます!』


「そうだ、ラナ。」


『・・はい、ご主人様。』


「夕方に町に着くのだったら、そのご主人様って言うのをやめてくれ。」


『何故でしょうか?私のご主人様ですので、そうお呼びしたいのですが。』


「居るかどうか分からないけど、他の貴族みたいなのが居たら勘違いされても困るからな。」


『しかしご主人様は、貴族など遥かに超越した宇宙皇帝の呼び名が御座いますから問題無いかと。』


「・・・・・。」


--聞こえない!何も聞こえないぞ!


「まぁ、それは置いといて・・名前で呼んでくれないか?」


『畏まりました、超数哉様。』


「そのラップみたいなチョウを付けるのヤメてくれる?」


『畏まりました、究極合体数哉様。』


「ロボットみたいな呼び名もヤメようか・・。」


『畏まりました、アルティメット』


「英語もダメ!」


『畏まりました、ユルティム』


「フランス語!」


『ディフィニティーヴォ』


「イタリア語!もういいって!数哉で良いから!」


『・・畏まりました、数哉様。』


「そんなに凹んだ言い方しなくても。」


『数哉様は素晴らしい御方なので、普通の呼び名というのが・・。』


「・・ありがとうな、ラナ。でもラナがそう言ってくれるだけで俺は嬉しいから。」


『・・感激です!感動です!数哉様にそう言って頂けるなんて!!今直ぐ○ックスしますか!?』


「しない!どうしてそうなる!?」


『今のはご褒美で○ッチして頂ける流れなのですが・・。』


「しないから!・・でも本当に感謝はしてるからな。」


『はい!・・でもハグぐらいして下さっても・・・。』


ズザザザザ!


 数哉はラナの声を聞いて急に立ち止まった。


「ラナ・・実体化してくれ。」


『畏まりました?・・実体化。』


 数哉の前にオーロラが煌めき、ラナが現れる。


ガバッ!


 数哉はラナが現れる也、抱き締めた!


「本当にありがとうな・・ラナ。」


『ご主人様!?・・うぅ!』


 ラナが幸せの涙をポロポロと流す!


「ハハハ!何でハグしてって言ったラナが泣くんだよ!・・でも本当に!本当に!ありがとうな!・・ラナ。」


 数哉は再び感謝の気持ちを胸に一杯にして抱き締めていた。家族を救ってくれた!心を救ってくれた!ラナには感謝しきれない程であり、ハグをして欲しいと言ったラナに精一杯応えたい思った行動である。数哉の身体にラナの柔らかな胸の感触が伝わった。ラナの髪から、ほんのりフローラルなシャンプーの香りも漂って来る。


「もう!ご主人様!・・あ!申し訳ございません!数哉様でした!・・ラナはもう!幸せ過ぎて!・・幸せ過ぎて!一瞬で星3つ破壊出来るぐらいのエネルギーが溢れてます!!」


 数哉は、それを聞いてそっと離れた。ラナは名残り惜しそうに声を出す。


「あ・・。」


「よし!行こうか!」


「もしかして・・星5つの方が宜しかったでしょうか?」


「逆、逆。意味無く星を破壊しない様に・・。」


「・・畏まりました・・・。」


 再びラナは腕輪化し、数哉は走り出した・・景色はいつの間にか山中に変化して木の葉がチラチラと舞い散る中、35度以上の傾斜や大岩、遮る木々も何のそのと駆けていく!エルラも山中には沢山居たが数哉は剣で危険も無く倒し、エネルギーをラナが増幅変換して吸収した。倒したエルラの殆どはラナが転送して保管している。


『数哉様、少し右手にある木の高い所を御覧下さい。』


「ん?何かあるのか?」


 数哉は立ち止まった。かなり高く育った木で7mはあり上の部分に緑色の葉に隠れて実がなっている。


『はい、あの木になっている白い実ですが中々貴重な実の様です。どうやら、ある種の毒を中和させる効能を有しています。』


「そうなのか・・町に行けば売れるかもな。よし!」


 数哉は身体能力を活かしてジャンプし、木の枝を利用しながら駆け上がった。ジャンプを繰り返し直径3cmの実を28個穫る。跳び過ぎて身体をあちこちと打ったり、身体に擦り傷を負った。実を採る事に熱中した数哉は気付いていないが、実を穫っている少ない時間で傷や痛みが消える。他にも小さな実であれば付いていたが、未来の為を考えて数哉は穫るのをヤメた。


「これで良し。」


 穫った実はラナが転送保管し、再び数哉は走り出す。木々や植物を掻き分け、小川を跳び越し崖を駆け上がり駆け抜けて行った。


「ラナ、こっちで間違い無いか?」


『少しずつ南にズレていますので方向修正願います。』


「分かった。」


 方向修正を何度か繰り返すと山を抜けたのか木々の間から平野が見える。


「ラナ・・もしかしてあれがベロルドナ?」


『そうです。まだ25km程、離れています。』


「25km!?俺の視力って、どうなってるんだ!」


『地球標準で申しますと、町の大きさと距離からして視力は15ですね。』


「1.5じゃなくて15・・何処かの部族も真っ青の視力だな。」


『この速度でしたら、約20分ぐらいでベロルドナに着きます。』


「何とか日が暮れる前に着けるな。」


『はい。』


 ・・数哉は町の近くまで来た。町の周りには高さ2m程の丸太で柵を設けられている。数哉は門を探しその柵を伝って歩いて行く。少し歩くと門が見え二人の槍を装備した門番が立っていた。数哉は少し頭を下げて通り抜け様としたが槍で進行方向を遮られる。


「「待て!身分証をみせろ!」」


 ラナが門番に対し、怒りを見せた!


『数哉様の道を阻むとは!直ぐに排除し、拷問にかけて殺します!!』


「かけるな!」


 兵士二人がラナとの会話と思わず身構える!


「なんだと!」


「いや!すみません!独り言です。」


 数哉が頭を下げると門番は槍を降ろした。


「変な奴だな・・それで身分証は?」


「すみません・・有りません。」


「ならば町に入れられない、帰れ。」


『やはり拷問を!』


--「だからするなって!・・ラナ、それより何とかならないか?」


『畏まりました、少しお待ち下さい・・ズボンの右ポケットに、お手を・・転送。』


「ん?・・。」


 数哉がポケットに突っ込むと直径5cmの白いメダルが入っていた。それを見た兵士が話す。


「何だ?持ってるじゃないか。それを早く見せろ。」


 兵士は数哉の手から、それを奪う様に取ると腰にぶら下げた一回り大きなメダルに重ねた。映像が宙に映し出され、それを確認している。


「冒険初心者か・・良く一人でここ迄来れたもんだ。いいぞ、通れ。」


 メダルを返され、数哉は頭を下げて木で作られた門をくぐった。町の中は木の建物が殆どで土系で作られた物は少ない。


--「ラナ、このメダルは何?」


『このレリクスの世界でギルドが発行している身分証明書です。』


--「偽造だけど大丈夫なのか?」


『はい、ギルド本部のデータバンクをチョチョイと書き換えさせて頂きましたので抜かりはありません。』


「・・そう。」


--まぁ、仕方無いか。


--「その何でも屋のギルドはこの町にもあるのか?」


『はい、この道を真っ直ぐ進んだ右手にあります。』


--「分かった」


「・・ここの住人って、男は甚平で女性は浴衣に似た服を着てるんだな。」


『メインは、その様ですが辺境の町ですから。王国の中心部にある王都等ではタキシードやドレスを着た人間も居ます。』


「へ〜。」 


『あ!この建物がそうです!』


「・・なんか西部劇みたいな扉だな。」


ギィ!


 数哉が中に入る。左は6人机が8つあるレストランで、右手にはカウンターがあり、3つのパーティーが並んでいる。その後ろに数哉は並んだ。


--「一番後ろの3人組は強そうだな。」


 2つのパーティーはエルラの皮を加工した物を羽織っている。3つ目のパーティーは持ち物や装備からして高価と見た目で分かる物だ。二十代前半の女性は魔法使い専門であるのか輝く玉の杖を持ち、中年男性は大剣を背負い、一番前の二十代前半の金髪イケメン男性は装飾の施された豪華な鞘と剣を腰に身に着けている。3人共焦りを見せ、地面を足でタップしていた。


『どうやら、ある程度の有名パーティーみたいです。リーダーはあの金髪の男でコーネットと言う者らしいですね。魔剣オライアルと言う剣を持っています。』


--「へ〜、あの派手なのがそう?」


『はい。』


・・前に居る有名なパーティーの順番となり、金髪の男が急いで受付の女性に話していた。


「・・この近くでドユマの実が成っている情報を得たんだ!頼む!特別なこの実を早く手に入れたい!何でもいい!情報を売ってくれ!早くしないと俺の仲間がゴルヤダードの毒で死んでしまう!頼む!」


--「ラナ。ドユマの実って何?」


『山の中で数哉様が穫られた白い木の実です。貴重な木の実ですから市場に出回る事は殆どありません。』


--「あれか。」


『はい。』


 受付の女性は木の実の情報を話すが数哉の乗り越えた山にあると言うだけで本当にあるか分からないと話す。高い木の上に実が成る為に、それ専用に穫るハンターでないと見分けがつかない。目撃情報があるものの本物かどうか分からないとの事であった。


「ちょっと良いですか?」


 数哉が後ろから話し掛ける。パーティーが後ろを振り返った。中年の大男が数哉に反応する。


「何だ?坊主。悪いが今取り込んでんだ。ちょっと待ってな・・それともドユマの実が成ってる所でも知ってんのか・・?」


 男は癖であるのか、顎の無精髭を触りながら数哉を上から下をジロジロと見た。数哉の装備や雰囲気を見た中年男性は一言呟くと、ギルドのカウンターへ向き戻る。


「んな訳ねぇか・・。」


 他のメンバーもカウンターへ向き直る。数哉は再び後ろから声を掛けた。


「どのくらい必要なんですか?」


 3人は再びバッ!と、数哉に振り向いた!魔法使いであるらしい長い黒髪の女性が数哉に問い掛ける!


「あなた!持っているの!?」


「少しであれば。」


--「ラナ。」


『はい、ご主人様。お手を後ろに・・転送。』


 数哉が右手を背中に回すとドユマの実が入った袋が現れ、そのまま数哉は前に出して袋を開いて見せた。


「これです・・困っている様なら持って行って下さい。」


「本当だわ!これでレモルが助かる!これ程大きなドユマの実なら一つで十分!でも念の為に2つ分けて頂戴!」


 中年男性はリーダーの男に向くと喜び、ハイタッチをしている。更に中年男性は腰袋から貴金属の入った小袋を出して数哉に差し出した。


「ありがとうよ!坊主!釣りは要らねえから受け取れ。」


ジャラ!


『ご主人様・・その袋には相場の二十倍の貴金属が入っています。ただ・・。』


--「ただ何?」


『この町の宿屋に、猛毒に侵されたレモルと言う女性は居ますが、かなり衰弱が進んでいてドユマの実薬を飲ませても手遅れです。』


--「ラナなら何とか出来るか?」


『はい・・ですが、知らない者ですし放っておけば宜しいのでは?』


--「ラナ、悪い人達じゃ無さそうだし俺が救って上げたいんだ。」


『数哉様の望みとあれば是が非でもございません。』


--{しかしレモルと言う小柄な緑髪の少女・・私程ではありませんが中々の美少女ですね。は!これはハーレムチャンスでは!}


『数哉様・・出来ればその者達に付いて行って頂けますか?』


--「なるほど・・治すにはそれも必要か。分かった。」


 数哉は中年男性の出した袋を受け取ると、条件を更に出した。


「2つ実をお譲り致しますが条件があります。」


「何だ?報酬が足りねぇのか?」


「いいえ・・その病気の人が助かる所を見たいだけです。助かった所を見たら、この袋の中身半分をお返し致します。」


 中年男性は訝しげな表情をして数哉を睨み付ける!


「オメェ・・何考えてる?俺の仲間に変な事してみろ!タダじゃおかねぇからな!」


「何もしませんから、ご安心下さい。」


 黒髪女性の魔法使いが中年男性に話し掛けた。


「オッド!それより早く実を!この子の事は貴方が見張っていて!」


「そうだな!時間がねぇ。」


 三人はギルドを出ると、高レベルを証明する様に時速32kmの猛スピードで宿に走って行く!普通の者であれば確実に置いていかれるが数哉はそれに付いて行く。リーダーがパーティーの女性に走りながら話し掛けた。


「ネリス、気付いているか?」


「ええ・・町の中だから危険だし本気では走ってないにしろ、付いて来れてるわね。あの格好と雰囲気だから、冒険初心者と侮っていたわ。どうする?リーダー。」


「何もしないと言ってるんだ。実を貰う条件だから、仕方無いだろう・・念の為に俺も見張る。」


「なら、安心ね。」


「何話してんだ?ハァ!ハァ!」


「何でもないわ、オッド。」


・・宿に着くと急いでネリスはレモルが寝ている部屋でドユマの実の加工を始める。レモルは苦しそうに目を閉じてベッドに寝ていた。身体全体が猛毒により、青黒く変色している。毒の効果を弱める為に設置された魔法陣から緑色の光が注がれていた。・・オッドはレモルの額の布を取り、水桶に浸して絞り再びレモルの頭に乗せる。


「・・どうだ!?ネリス!まだか!?」


「丁度出来たわ!」


 茶色の液体が注がれたコップを持ち、ネリスはオッドと交代した。レモルの身体を少し起こすとコップをレモルに近付ける!


「レモル!お願い!飲んで!」


 ネリスが口にコップを当て傾けるが液体は口の外に溢れていった。


「ダメ!衰弱が激しくて飲み込む力も無いんだわ!」


 オッドもリーダーのコーネットも心配そうにそれを見ている。ネリスはコップの薬を口に含み、レモルに口付けして飲ませた。


ゴク・・。


「飲んだ!お願い!効いて!」


 レモルの身体を寝かせ、身体の状態を調べる。杖を構えると、その杖の先端が少し光り出した。杖を動かし魔法陣を描く!魔法陣の前にレモルのステータスが現れた。レモルの青黒さが少しずつ薄くなるが・・5秒もすると再び青黒さがレモルの身体を占領していく!


「そんな!薬は完璧なのに!生命力が0に近付いてる!」


 オッドが叫んだ!


「何だと!?早く何とかしろ!!」


「薬が間に合わなかったんだわ・・。」


「・・そんな!レモル・・ぐぐ!・・・。」


 ネリスは地面に膝を落とし、コーネットは悔しい表情で俯く。オッドは力強く拳を握り、目を閉じて涙を流した。数哉は焦り、ラナに心で話し掛ける!


--「ラナ!早く助けてやってくれ!」


『助けるのは可能ですが、その為にはご主人様の意識と身体をお借りする必要がございます。』


--「幾らでも貸す!!早く頼む!」


『畏まりました。』


--{嘘を付いて大変申し訳ございません・・数哉様。}


 意識をラナが乗っとり、部屋の端で数哉ラナは話し出した。


「まだレモルさんは亡くなっていませんよ。心臓は止まっていますが脳死状態ではありません。」


--{脳死状態でも、脳が破損しておらず直ぐに処置出来れば救えますがね。}


「てめぇ!こんな時に何!訳の分からねぇ事を言ってやがる!」


 オッドは泣きながら数哉に掴み掛かろうとしたが、ラナは数哉の身体を動かし余裕で避けた。再びオッドが数哉ラナに向かおうとするが、数哉ラナの発言にオッドは止まる。


「わた・・いや、俺ならまだ救えます。」


 オッドがそれに反応した。


「何!?」


 ネリスが少しだけ首を振り、それを否定する。


「無理よ・・生命力が0で助かった人は居ない。」


 コーネットは少し考えた後、ハッ!とした表情で数哉に話した。


「まさか!君はレモルを禁断魔法で生きる死体に変えようと言うんじゃ!?そんな事は絶対させない!!」


シャキ!


 コーネットは魔剣オライアルを抜いて数哉に向けて構え、部屋に不穏な空気が流れた!それを壊したのは意外にもオッドである!数哉とコーネットの間で両手を広げて立ち尽くす!


「・・コーネット!オメェは黙って坊主を見てろ!」


「何を言ってる!オッド!?分かっているのか!!意識があっても生きる屍だぞ!禁断魔法を使えば世界中から命を狙われる事になるんだ!」


「それでもだ!!」


ガン!


 オッドは葛藤しながら壁を力強く殴り、この町では数少ない建物の頑丈な土壁が壊れる!


ガラガラガラ・・。


「レモルはな・・亡くなった俺の親友の娘だ・・小さい頃に俺が引き取ってずっと一緒なんだ!もう!俺の娘でもあるんだよ!意識が戻るなら!・・戻るなら!世界を敵にしても俺は救いてぇんだよぉ!!」


 オッドは鼻水と涙を垂れさせながらコーネットに訴え掛けた。コーネットはオッドの様子を見て、剣をゆっくりと降ろす。コーネットにもネリスにも、どうすれば良いのか分からなくなっていた。数哉ラナはスタスタと横たわったレモルに近付き抱き起こすと、そのまま顔を近付け口付けた!


--{生命蘇生システム作動!細胞活性化・・心肺再生・・・毒消去・・・。}


 オッドは数哉がキスした所を見て、数哉を殺そうと走り出す!


「騙しやがったな!この変態野郎!!」


「待って!!オッド!!これを見て!生命力が!レモルの生命力が増えてる!」


 ネリスは膝を落としたまま、レモルのステータスを宙に映していたがそれを見て驚いていた。コーネットとオッドはステータスを確認する。レモルの肌は見る見る内に正常に戻った。コーネットが呟く・・。


「これで俺達はお尋ね者って訳か・・仕方無い!オッドもレモルも大事な仲間だからな!」


「あら!私は?リーダー。」


「当然ネリスもだ!」


「あと、リーダー。勘違いしている様だけど、生きる屍に生命力なんて無いわよ。」


「どういう事だ?」


「レモルは生きてるって事。」


「まさか!」


「私も信じられないけれどね・・見て、生命力はもうすぐ満タン。」


 それを聞いて、オッドが泣きながら叫んだ!


「う・・ぅうう!うぉぉぉ〜!!!」


 オッドが数哉とレモルを抱き締め様として、今度はコーネットが止めた!


「待つんだ!オッド!まだ何か必要なのかも知れない!彼の邪魔をしてはレモルが危険かも知れないぞ!」


 オッドは立ち止まる。


--{もう健康過ぎる状態ですけどね・・これで終わってはハーレム計画が台無しですから。}


 数哉ラナは口付けしたまま、最後の仕上げを行う。


--{意識覚醒!}


 レモルはピクリと動く・・そのままゆっくりと目を開けて驚いた!誰かに口付けされていると分かったレモルは悲鳴を上げながら数哉ラナの肩を両手で押した!


「キャァ〜!!」


 数哉ラナは蹌踉めかず、上体を起こし直ぐ傍に立った状態である。ラナは数哉へ意識を戻した。レモルは近くにあった魔杖を手にすると、杖の先に紅い光を灯し炎の攻撃魔法陣を画いて行く!意識の戻った数哉がレモルに微笑み掛けた。


「・・良かった!治ったんだな!」


「え!?」


 レモルは変質者?から、そう話され困惑する。周りを見ると仲間も全員居た為に、キスされていた事が不思議過ぎる状況であった。レモルの困惑を他所に、オッドは泣きながらレモルを抱き上げる。ネリスは抱えられたレモルに、状況を説明しだした。


「フフ・・レモル。命の恩人に攻撃したらダメよ。貴女、オッドを守ろうとしてエルラの体当たりで、ゴルヤダードの毒沼に吹き飛ばされたのは覚えてる?」


 レモルはオッドの肩に跨がったまま、小さく頷き返事をする。


「・・ええ。」


「私が魔法で貴女を沼から出したのだけど、かなり多く猛毒の水を飲んでしまったみたいで、毒消しの魔法も毒に侵される進行を弱める事しか出来なかったの。」


「一番近かったアルトデルト公都でドユマの実を手に入れようと手を尽くしたんだけれど、タイミングの悪い時にエルラのレボッサが公都の付近で暴れまくったお陰で、何処にもドユマの実は無かったわ。」


「・・・。」


「情報屋の伝手でようやくベロルドナの町付近で見たと言う情報を仕入れて藁をも縋る思いで、この町に来た・・貴女はいつ死んでもおかしくない状態で、折角この子から貰ったドユマの実も効かなかったわ。でもね・・ここからは私にも分からない?この子が」


 ネリスの話しの途中で、部屋で騒ぎ立てているのを宿屋の主人が気付いて扉を開けて入って来た!


ダン!


「こぉらぁ!何を騒いどる!?」


 宿屋の主人は勢い止まらず、あーだこーだ!と捲し立てている!4人はひたすら謝っていた。数哉は役目を終えたとラナに話す。


--「ラナ、さっきの小さい袋を出してくれ。」


『袋ですか?畏まりました、どうぞ。』


 数哉はラナの出した袋にオッドから貰った半分の貴金属を移すと近くのテーブルに置いた。そのまま静かに部屋を出て行く。


『数哉様?何処に行かれるのですか?』


--「ん?これ以上俺が居る必要無いだろ。」


『レモルを救った礼を貰ってませんが・・。』


--{ハーレム計画が!}


 ラナの妄想が頭の中を、走馬灯の様に走って行った。


ーーーーーーーーーーーー


 薄暗い部屋でレモルが数哉を見つめながら話す。


「命を助けて下さり有難うございます・・数哉様。」


「当然の事をしたまでだ。」


「数哉様・・それでは私の気が済みません。数哉様が助けて下さったこの身体と心は数哉様のもの。」


 レモルが魔法のローブをスルリと脱ぎ捨てる。下着姿のレモルを前に数哉様は欲望を抑えようとしたが、ラナも傍で下着姿へと服装変化させた為に抑えが効かなくなる。


「・・いいのか?」


 レモルのショートカットの髪を数哉様は左手で優しく触りながら、ゆっくりと抱き締めた。


「はい・・ラナ様と一緒に、私の初めてを受け取って下さい。○ックス致しましょう!」


ーーーーーーーーーーーーー


--{・・の筈だったのにぃ〜!!}


--「別に御礼が欲しかった訳じゃない。ただ・・大事な人を失くす気持ちが俺には痛い程、分かるから。」


『数哉様・・。』


--{仕方ありません・・別のハーレム要員を探すしかない様ですね。}


『ではまずギルドでその貴金属を換金致しましょう。』


「そうだな。」


 数哉はギルドに向かった・・・到着すると直ぐにカウンターに向かう。受付の50代のオバさんに話し掛けた。


「換金をお願いします。」


「どれだい?」


ジャラ。


 数哉はカウンターにオッドから受け取った報酬を置いた。受付の女性はそれを袋のままカウンター越しにある大きな台に置いていく。・・暫くして台の上に映像が映し出された。そこには貴金属の名前と金額が記入されている。合計金額は83万ディルであった。


「はい、83万ディルね。」


 受付の女性は数哉に紐で括った札束を差し出す。


「え?そんなに!?」


「なんだい?要らないんなら、アタシが貰っちゃうよ。」


「いえ!頂きます。」


--「・・20倍の報酬としても、ドユマの実って本当に高いんだな。」


『はい。地球でも薬は高価ですが、このレリクスの世界は薬一つで死亡する可能性があるので、貴重な材料は高価になりがちの様ですね。』


--「なるほどな。」


「それで、他にも用はあるのかい?」


「ん?あぁ・・この町の名産品とか有れば教えて下さい。」


「この辺境の町にそんな物無いさね!ま・・強いて言えば町の南にあるパラヤユン遺跡には、この遺跡にしか育たない貴重な果物があるけど・・危険だよ!まぁ何処の遺跡も危険は付きものとは言え、果物に命を張るのもねぇ・・。」


「良かったら、その果物の収穫依頼が来てるから依頼を受けてみるかい?」


 オバさんの後ろから中年男性が声を挟んだ。中年男性はコーネット達が情報を得ようとした若い女性に話す。


「ミーナ、依頼書を取ってくれ。」


「はい、マスター。」


「これだがね。」


 ここのギルドマスターである中年男性はミーナから依頼書を受け取りカウンターへ置いた。数哉はその書類に目を通す。


--・・全然読めない。


 そこにはレリクスの文字で書かれていて数哉には読め無かった。


--「ラナ。」


『はい。この依頼書に書かれているのはポラと言う果物の採取依頼です。報酬はグラム15ディル・・1個が大体9千円ぐらいです。後、書かれているのは依頼ランクでEです。』


--「依頼ランク?ゲームで言う難しさ?」


『その様です。』


--「俺って今、何ランク?」


『ギルドへの貢献度でランクは上がって行く様ですが数哉様のランクは現在、最低ランクのGランクです。冒険初心者らしくと仰っておりましたので。書き換えますか?』


--「いや、いい。」


 数哉はギルドマスターに問い掛けた。


「Eランク以上じゃないと受けれませんか?」


「何だ?それさえ知らないって事は、もしかして冒険初心者か?」


「ええ、まぁ。」


「だったら勧めるんじゃなかったな。依頼はランクに関係なく受けれるが、死んじまうぞ。」


「そうですか。でもその依頼を受けます。」


「ん?高ランクの仲間でも居るのか?」


「まぁ、そんな所です。」


「分かった。では依頼書の下の空欄に冒険者メダルを近付けてくれ。」


 数哉がメダルを近付けると、受けたと言う意味の文字が依頼書に記入される。


「もう良いぞ、カズヤと言うのか。依頼破棄する場合はちゃんとギルドに来てくれ。たまに居るんだよ!キャンセル料金をケチって受注した状態のままにする奴が。」


--依頼を破棄するとキャンセル料が要るのか。


「そうですか、分かりました。後・・宿屋ってここの近くに有りますか?」


「宿屋か、そうだな・・・。」


『数哉様・・数哉様の簡易部屋に何時でも泊まれますが。』


--「あれって、露天風呂だろ。他の人に見られるし。」


『見られません。部屋と部屋から10mの空間は別空間となっています。万が一に巨大なエルラに踏まれようと摺り抜けます。その上、数哉様と私以外には認知も出来ません。』


--「そうなのか?それなら景色の良い露天風呂が良いな。ただ・・もう聞いてしまったし、取り敢えず聞くだけ聞いて今日の食材を買ったら町の外で泊まろうか。」


『畏まりました。』


--「遺跡の場所は聞かなくていいのか?」


『場所は把握しております。』


 数哉達はギルドマスターから聞いた宿屋には泊まらず、食材を買って町の外に出た。


・・数哉達がギルドを出た2分後、ギルドにコーネット達が慌てた様子で入って来る。


「もう!何で!誰も私の命の恩人を引き留めてくれなかったのよ!」


 レモルが3人に話し、コーネットとオッドは困った様子でネリスは私のせいでは無いと顔を背けていた。オッドがレモルに応える。


「そう言うけどな!あの宿屋のオヤジの剣幕みたろ!謝ってる内に坊主がどっか行っちまったんだ、仕方ねぇって。」


「それはオッドが宿屋を壊すからいけないのよ!」


 ネリスがレモルを咎める。


「そんな事を言ったら駄目よ!オッドはレモルの父親だから世界中を敵に回してもレモルを救うって言って、力が入り過ぎて壁を壊しちゃったんだから!」


 レモルがオッドを見るとオッドは照れ臭そうに頭を掻いている。


「オッド・・ありがとう。私もオッドの事を父親みたいに思ってるよ。」


 オッドが目をウルウルとさせ、レモルに抱き着こうとした。


「レモル〜!」


ヒョイ!


「それより、あの人よ!」


 レモルはオッドの抱き着きを躱してカウンターに走って行く。オッドは悲しそうに声を出した。


「レモルゥゥ〜・・。」


 コーネットがオッドの肩をポンポンと叩く。レモルは急いでカウンターの受付女性に尋ねた!


「すみません!あそこに居る私のパーティーが、私を救う為にドユマの実を探していたのを覚えていませんか!?」


「え?あぁ!あの時の!」


「その時、ドユマの実を持っていた男の人を探しているんです!」


「え〜と・・多分さっき、確かマスターと話していた人ね。」


「本当ですか!その人は何処に!?」


 レモルが表情を明るくする。


「バラヤユン遺跡にポラの果物を採取する依頼を受けていたわ。」


 ギルドマスターが後ろからフォローした。


「あぁ!さっきの話してた男な。何だ?知り合いだったのか?」


「はい!私の命の恩人でして!」


「そう言う事なら。確かにポラの果実を取りに行ったぞ。今日は遅いから、この近くの俺が紹介した宿に泊まるんじゃないか?」


「それは何処の宿ですか!その人の名前は!?」


「オイオイ・・落ち着け。地図がここにあるが・・此処だ。歩いて5分ぐらいかな?名前はカズヤだ。」


「カズヤさん・・。」


「冒険者ランクはGランクで、仲間とポラの果実を取りに行くって言ってたが大丈夫かね。」


「その依頼!ランクは?」


「Eランクだ。仲間が居る様には見えなかったがね。」


「大変!ありがとう!これで失礼するわ!」


 レモルがパーティーに話すと四人は宿に急いで走る。宿に着くと、そこの主人に尋ねたが2日前から宿の予約で一杯の為に訪ねて来た者、全て断わっていると言れわた。


「私、ここでカズヤさんを待つから皆は宿に戻ってて。」


 オッドが呆れて話す。


「オイオイ、もう日が暮れているんだ。坊主も此処にはもう来ねえって。」


「でも、来るかも知れない。」


 ネリスも呆れた感じで手を広げて話した。


「あらあら、まるで恋人を待つ少女みたい。キスもしたしねぇ。」


 レモルは顔を赤くして、否定する。


「そんなんじゃ無いってば!GランクなのにEランクの依頼を受けてるのよ!止めなきゃ危ないじゃない!」


 オッドもネリスの言葉に反応してレモルに話す。


「俺は、そんな弱い奴と交際するなんて許さねぇぞ!」


 レモルの顔は更に赤くなり話す。


「何の話をしてるのよ!違うってば!」


 ネリスが笑いながら、今度はオッドを否定した。


「フフフ、本当の親子みたいね!でも、私はあの子が弱いなんて到底思えないけど。歴代の勇者や賢者でさえ、人を生き返らせる事は出来なかったのよ。Gランクなんて何かの間違いじゃないかしら?」


 コーネットが言葉を重ねる。


「俺もネリスの言う通りだと思う。レモルの病気を治そうと走った時も彼は余裕で付いて来たしな。遺跡に向かうと言ってたのなら明日、俺達も向かえば良い。遺跡までは普通の馬車でも、まる一日掛かる。俺達の特別なノーラなら、先に着けるだろう。」


「いいの!?」


「勿論だ。彼に俺達も礼を言ってないからな。」


 ネリスが頷いた。


「そうね。それよりも一週間以上レモルは寝たきりだったんだから、今日はゆっくり休みなさい。」


「う・・・。」


 パーティーには、毒に侵され迷惑を掛けた認識がレモルにあった為に、仕方無く頷く。


コク・・。


・・・一方の数哉は、ベロルドナの外に宿を設置した。そしてラナの料理に舌鼓を打ちながら明日の冒険に備えて露天風呂で身体を癒し、眠りに付いていく。


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