第16話 冒険者魔法学校
・・数哉は歩きながら、ボロボロになった魔法衣を着ている少女に尋ねる。
「・・どうして、あんな性格の悪い奴を好きになったんだ?」
15歳の少女は慌てて言い返す。
「そ!そんな!勘違いされましたけれど、好きなんて言ってません!」
「ん?手紙を送ったんじゃないのか?」
「手紙は送りました。でも!ラブレターではなく!憧れてます的な事を書いただけです!」
「そうなのか?」
「はい。2週間前に魔法騎士学校と冒険者魔法学校の交流としてパーティー戦があったんですけど。魔法も上手で凄く活躍されていたので・・私は、何をしてもダメで自分に嫌気が指してストレス発散で食べ過ぎて、こんなに太っちゃって・・。学校でも皆に馬鹿にされるし。でも・・いつか強い人と肩を並べたいと思う気持ちで、憧れていますと言う手紙を書いたんです。」
「・・・。」
「・・私なんかが強く成れる訳無いのに。ごめんなさい!あなたにも貴重な時間を、こんな私に付き合わせちゃって!」
ムカッ!
数哉は自身を嫌いになっていた引きこもりの自分を少女と重ね合わせて腹立たしく思っていた。
「名前・・なんて言うんだ?」
「え?・・ルセアナです。」
「俺は数哉だ。良いか?今日から暫くお前は俺と特訓するぞ。強さに自信が付く迄、特訓だ!」
「ええ!?でも私なんかが・・。」
「いいな!返事!」
「は!はい!」
「よし!取り敢えず冒険者魔法学校の入学方法を教えてくれ。」
ガクッ。
--入学方法も知らないの?特訓ってこの人、大丈夫なのかな?良くみたら装備も初心者的でボロボロだし。弱い者同士頑張ろうみたいな?
「ふぅ〜。」
「どうした?溜め息吐いて?早く教えてくれ。」
『宜しければ私がお調べ致しますが?』
--「いや、大丈夫だ。冒険者魔法学校に入っている、この少女に聞こう。ついでにこの少女の特訓方法も考える。」
『畏まりました・・。』
--数哉様の美女ハーレム計画に支障が!少しずつ修正しなくては・・。
「冒険者魔法学校に入るには、お金を払うだけで大丈夫です。20歳以上なら、月に4万ディル。20歳未満は月に1万3,000ディルです。カズヤさんは?」
「17歳だ。」
「私より二つ年上ですね。だったら、月に1万3,000ディル払えば通えます。」
「分かった。」
・・ぐるりと塀に沿って歩くと入口が見えた。右手には魔法騎士学校が見えるが4倍以上の広さと大きさで外観も比べるまでもなく綺麗である。数哉が案内されている冒険者魔法学校の入口から見えるのは古い木造建物が二つあった。左側の建物が20歳以上で右側の建物は19歳未満であるらしい。
「・・ここが入口です。事務所は入口を入って直ぐ右側にあるので、そこで済ませて下さい。」
「ああ。」
--・・ここか?
・・中に入ると、冒険者ギルドの受付の様な感じで2人の男性が座っている。
「すみません。」
「はい、何か?」
「冒険者魔法学校に入りたいのですが。」
「歳は20歳未満で、いいかな?」
「はい。」
「では、ギルドメダルか身分証明が出来る物を出してくれるかい?」
--「ラナ。」
『はい・・転送。』
数哉はポケットからギルドメダルを出す。受付係は渡されたメダルを確認して数哉へ戻す為にカウンターへ置いた。
「冒険者ランクはGランクだね。魔法級はF級ライセンス試験を受ける感じかな?」
「上の級も受けれるのですか?」
「受けれるよ。但し、最後の試験は学校の裏手の遺跡の迷宮で行なわれる。例えばF級ライセンス試験であれば各所に設置された魔法を使いながら地下三階まで降りて、三階の奥にあるギルドが設置した証を持って来ないといけない。級が上がる程に地下に降りる事になるが、降りれば降りる程に強力なエルラと戦わなくてはいけないからね。」
--「ラナ、どうなんだ?今の俺は何処まで降りれそうか分かるか?」
『そうですね・・この王都の下に広がる遺跡はブラスドーザルラ遺跡と言って、その一部の遺跡迷宮を冒険者魔法学校と魔法騎士学校向けに利用されているみたいです。A級ライセンス試験は地下12階まで降りる必要が有り、チラホラとAランク級のエルラまで居ます。B級ライセンス試験迄でしたら力業で何とかなりそうですが、A級ライセンス試験はもう少し力を制御出来る様になられてからの方が良いかと・・。』
--「そうか。」
数哉は受付の男性に尋ねる。
「途中から受ける試験を変更するのは可能ですか?」
「出来るよ、試験の級を下げるのはね。上げるのは不可能だ。1年間また学校に通う必要がある。大体はF級ライセンスから受けて、年々級を上げて受けるのが通常だ。死んでしまっては元も子もない。」
「じゃあ、最終試験はA級ライセンス試験でお願いします。」
「え〜と、今迄の話を聞いてたかい?」
「ええ、無理だと思えば級を下げますから。」
「そういう事か、ではA級ライセンス試験で登録しておくよ。1番初めは全員F級ライセンス教室からだよ。F級ライセンスを取得するか、条件をクリアすると上の級教室に入れるから。」
「もしかして、級教室がAまで上がれないとA級ライセンス試験は受けれないのですか?」
「そういう事、頑張るんだね。」
--この子じゃあ、F級受かるのが精一杯だろうけどな。
「ちなみに先程の条件と言うのは何でしょう?」
「そのライセンスの最終試験の証を持って帰り、事前にクリアする事だよ。最終試験の様に先生が付いて来る訳ではないから、死ぬ人が結構いる。君も無理して死なないように気を付けるんだね。」
・・軽く分かりましたと、返事して教育料を払いF級ライセンス教室へ事務員に案内して貰った。
「君の教室は、ここだよ。F級ライセンス担当の先生に話しておくから、空いている席に座っていてくれるかい。」
「分かりました。」
数哉が木の扉をスライドさせて中に入ると、パーティーらしき者達がF級ライセンス最終試験を攻略する為の打ち合わせをしている。先生はまだ来ておらず、数哉が入るとチラリとこちらへ向いた者も数名いたが、見た後でがっかりした態度を見せて他の者達と談議していた。数哉が見渡すとルセアナが誰とも話をせずに静かに1人で座っているのを見つけて近付いていく。
「ルセアナの周りは、誰も座っていないのか?」
「うん・・。」
「そうか、じゃあココに座らせて貰おう。」
数哉の座った場所は、2クラスあるF級教室の1番後ろに居たルセアナの横であった。
「俺の勘違いかも知れないが、俺を見て多くの者ががっかりしていた様なんだか?」
「・・うん。最終試験って同じ教室の4人まででパーティーを組んで行くから強い人とパーティーになれたら試験合格の近道になるの。」
「そうか、俺を見てがっかりしてたのはそう言う訳か。」
「多分・・。」
『何も分かっていないゴミ共ですね。』
--「仕方ないだろう、俺の鎧はこんなだしな。」
『しかし』
--「まぁ、落ち着け。俺は気にしてないし。最終試験で俺と組まなかった事を後悔させてやれば良いさ。その前にF級ライセンス試験を受けるつもりも無いから、どうでも良いがな。最低でもB級ライセンスを取ろうと思う。何年も、学校に通ってられないし。」
『畏まりました。』
「ルセアナは誰かと組んでいるのか?」
「ううん。誰も私なんかとは組みたがらないよ。弱いし、エルラを見たら足が強張って動けないし・・。」
「なら、俺とお前の2人パーティーだな。」
「本当に私なんかと組むの?後で困るのはカズヤさんだよ。」
「良いから、任せろ。それよりも先生が来ないな?」
「もう直ぐ来ると思う。」
ガラガラ。
スライド式の木の扉が開いて冒険者ギルドに雇われた先生が入って来た。魔法を教える授業の先生にしては剣士よりの格好の男である。20代男性でギルドランクDのフランクと言う軽薄そうな男だ。
「よう!落ちこぼれども!今日も新しい魔法を教えるから、よく覚えておけ!」
「先生!」
1番前の女性徒が手を上げている。
「何だ?ロル?」
「今日、新しい人が入って来たみたいですけど?」
「ん?」
フランクは、事務員から渡された手元の資料を見て声を出した。
「おお!本当だ。カズヤ!カズヤは居るか?立ってくれ。」
47人しか居ないが、フランクはカズヤを探し顔をあちこちに向ける。カズヤは仕方無さそうにゆっくりと立ち上がった。フランクが更に続ける。
「よし!彼がカズヤだ!皆、覚えておけ。17歳で冒険者ランクはGランク。お前ら、落ちこぼれの仲間だな。F級ライセンス教室でも、この教室は初心者や出来の悪い者ばかり集められる!F級最終試験も、このクラスは毎回2つのパーティーぐらいしか合格してない!何度も言うが、死ぬのが怖けりゃ冒険者なんぞ辞めて畑でも耕せ!良いな!」
--結構な言い草だな。
ラナが怒りの言葉を出す前に数哉は収める。F級ライセンスが最下級ライセンスと言う事もあり、F級教室を受けるGランク冒険者は多い。冒険者ランクが低い者達が上のランクの者の足を引っ張らない様にF級教室が2つ設けられている。
--「ラナ、落ち着け。学校に居る以上、他の者達と接触する事は多くなる。俺のランクと外見で判断して来る者が殆どだから、弱く見られるのは仕方ない。だが目立ちたくない俺には、その方が好都合だからな。」
『・・畏まりました。』
数哉は何食わぬ顔で、挨拶代わりに少し頭を下げて座った。先生の話しはF級で使ってもいい魔法の説明や、裏手にある迷宮のエルラの説明、冒険者として魔法が役に立った事を教えてくれる。口の悪さにしては良い先生であった。先生が書いた魔法陣を必死に、それぞれがノートに書いて覚えている。
数哉は見て聞くだけで覚え、後は暇そうにしていた。ルセアナは実技がダメな分、学識で頑張ろうと自身の書き溜めた魔法陣のノートを目に焼き付けている。ノートには丁寧に書き順や魔力線の強弱が記されていた。カズヤの事がふと気になり横を向くと、右肘を机に付いてボ〜ッと黒板を眺めている。
「・・はぁ〜・・。」
--この人、絶対やる気無いよね。こんな人とパーティー組んでたら試験不合格になっちゃう。でも、私から断る勇気も無いし・・。
「・・はぁ〜・・。」
・・先生の授業は昼までで終わり、全員学校の食堂に集まり出した。級の高い順から並んでいる。カズヤは知らずに級を追い越して並んだ為に、皆から白い目で見られていた。ルセアナが気付いて数哉の下に走り、話す。
「カズヤさん!ダメ!入口に書いていたと思うけど、教室の級が高い人順なの!級が高い人が並び終わるまで待たないと。」
「そうなのか?」
「うん・・。」
『・・・。』
数哉は素直に戻ろうとするが、E級の列の横を通っている所で急に少年の足が出された。その足は数哉を転ばせようと、足首へ出されている。足を出した数哉より一歳下の少年は、ルセアナをイジメていた取り巻き少女の使用人であった。少年はニヤけながら、足をピンと出している。
『数哉様。』
--「ああ」
ガ!
--「分かっている、幼稚な子供の悪戯だな。」
数哉は足が出て来た事を気付いたが、そのまま気付かない振りをして歩いた。引っ掛けようとした足は、数哉の足を止める事が全く出来ずに逆に大きく引っ張られていく。
「うわっ!」
ズルッ!ドン!
少年は後ろ向きへ派手に音を立てて転倒した。周りの者達がクスクスと笑っている。
「ぐ!・・くそ!」
少年は怒りに顔を赤くし立ち上がって、そのまま列の最後尾へ歩いて行く数哉の前に回り込んだ。ルセアナは少年の様子を見てオロオロとしている。
「待て!この野郎!やりやがったな!」
「何の話だ?お前が非力な足で引っ掛けようとして、勝手に倒れたんだろう?自業自得だ。そこに立たれると邪魔だ、退け。」
「こんのぉぉ〜!!F級ライセンス教室の落ちこぼれ野郎が!調子に乗りやがって!」
ガ!
少年が殴り掛かろうとした腕を、数哉は軽々と掴んだ。そのまま少しだけ数哉が力を入れると手甲が嫌な音を立てて歪んでゆく。少年は腕を引き千切られるかと思う痛みから、真っ青な表情へと変化していった。
ミシ!ギギ!ギギギギ!
「ぐあっ!」
数哉が苦痛に歪んだ表情の少年をそのまま引き寄せて耳元で静かに話す。
「・・誰の命令か分からないが、敵ならば容赦しない。命が惜しいなら俺に近付くな。いいな?腕が千切れない内に返事しろ。」
ミシ!ギシギギ!
「・・分かった!助けて・・。」
少年は折れてはいないが腕を抑えながら床にへたり込んだ。それを見た数名が舌打ちをしながら、教室の他の者達に合図を送る。20歳未満食堂ではAとB級ライセンス教室の者は居らず、C級ライセンスが18人居て他はD級ライセンス以下となっている。急にD級ライセンス教室の多くの者が配給されている場所で大盛りを要求しだした。五品ある筈の昼食が、どんどん少なくなって行く。昼食は、優秀な冒険者を育てる為にギルドが無料で提供している物であり限りがある。F級ライセンス教室の最初の3人は御飯を有り付けたが、そこで無くなってしまった。C級ライセンス教室の執事風の魔法衣を身に着けた男が、数哉を指差して突然叫ぶ。
「F級ライセンス教室の者達よ!よく聞きなさい!あなた達が今日の昼食を食べられなかったのは!F級教室の落ちこぼれ生徒の1人!そこに居るカズヤと言う者のせいです!恨むなら!そいつを恨みなさい!」
執事風の男の思惑通りに、数哉はF級ライセンス教室の多くから睨まれている。
「アイツのせいかよ!」
「・・俺の昼飯を返せよ。」
「昼飯の恨み、覚えてろよ〜!・・。」
数哉が見た覚えも無い執事男へ、多少の怒りはあるが無表情のまま言い返した。
「俺には恨まれる覚えが無いな!今、F級ライセンス教室の者達が食べられないのは俺以外の誰かが、大盛りを食べたからだろう!食べてない俺が原因ではない!それより!俺に罪を擦り付けようとしている、お前が謀ったようにしか思えないんだがな!」
「何の話か?分かりませんね!」
数哉の言い分もF級ライセンス教室の者達は確かにと頷くが、昼食を食べられないのは現実にある。C級ライセンス教室の男が悪くても、数哉が何かで揉めたのだろうと複雑な表情となっていた。数哉は何となくルセアナを助けた件で、この結果になったのだろうとは予想している。数哉が悪い訳では無いが、結果の一端を作った事に悪く思い、ラナに問い掛ける。
--「ラナ、今直ぐ大人数で食べられる食材のストックは無いか?」
『御座います、殆どはロモエの館に渡してしまいましたが。現在、残っているお土産候補外の食材はマグロ、あとゲントウザザミです。』
--「ゲントウザザミ?臭みがあって食べられないと、ホスは言ってたが?」
『多少の臭みでしたので、別のコーリヤと言う惑星の香草を使って燻し、一夜干しにする事で完全に素晴らしい食材に変化させ保管しております。地球の伊勢海老に匹敵する程の美味しさです。』
--「それは良い。どれぐらいの人数分イケる?」
『小さなゲントウザザミでも30人分は有ります。大きい物も合わせると二週間ぐらいは大丈夫です。』
--「毎日、続くと飽きるだろうが・・まぁ、ルセアナの特訓ついでにエルラの別食材も調達しよう。食いっぱぐれた、F級全員分の物を出せるか?出来れば既に料理された物が良い。皆、お腹が空いているたろうしな。」
『畏まりました。本拠地にて急いで調理させます。五分程、お待ち下さい。』
--「分かった。」
執事風の男が数哉が言い返す言葉もないのだろうと、嫌な笑みを見せ付けている。食べられ無かったF級教室の者は、がっかりしながら食堂を出て行こうとする者と、数哉を責めようとする者達に別れた。
「ハァ〜・・腹減った。教室戻るか・・。」
「お前のせいだぞ!俺の昼飯返せ!」
「「「「「そうだ!そうだ!(そうよ!そうよ!)」」」」」
数哉が責められる様子に、足を引っ掛けた少年以外の4名の使用人達が満足そうに見ている。突然、数哉が教室から出て行く者達を止める為に声を上げた。
「皆、待ってくれないか!」
腹ペコのまま、食堂を出て行こうとした者達が一斉に数哉へ振り向く。
??・・・。
「俺を責めてなかった者の食べ物は!俺が用意する!良かったらこれを食べてくれ!」
--「ラナ、俺が机の下に屈んだら料理を出してくれ。」
『はい。1メートル程の、かなり大きな皿に載せているのでお気を付け願います。』
--「分かった。」
『では・・・転送。』
数哉が屈み込み、調理されたゲントウザザミが載る皿を机の下から出した。皿の上には小さなエビ型に加工されたゲントウザザミが山盛りである。また皿の端には、淡いピンク色のゲントウザザミ用の海老味噌を絡めたソースもぐるりと盛られて食欲を唆る。美味しそうな匂いが、湯気と共に広がっていった。数哉は、そのお皿を机に置くと、食堂を出て行こうとした者達を呼び集めた。
「ほら!出来たぞ!食べてくれ!」
周りに居た者達は突然出て来た料理に驚くが、それよりも美味しそうな料理で目が釘付けになっていた。数哉を言葉攻めしていた1人が手掴みしようとして、数哉はその手を払い除ける。
パシッ。
「お前はダメだ。俺を責めていたからな。」
「な!?元はと言えばお前がC級教室の奴と揉めたのが原因じゃないか!食べさせろよ!」
「駄目だ。まだ言ってるのか?確かにアイツ達の関係者と俺が揉めたかも知れない。だったら俺にだけ仕返ししたら良いだろう。お前達を巻き込んだのは、奴らの責任だ。恨むならアイツ達を恨め。」
「う!」
「俺を責めていたお前達も、早くそこを退け。他の皆が食べられないだろう。」
数哉を責めていた別の1人のF級教室の者は、美味しそうな料理を目の前にして我慢出来ずに謝罪する。
「すまん!勘弁してくれ!確かにお前は悪くない!腹が減って、八つ当たりでもしないと気が収まらなかったんだ!この通りだ!すまない!・・食べるのは、ダメか?」
「ハッキリしていて良いな。その代わり、俺を責めてなかった者達が食べてからだぞ。それで、いいか?」
「それで良い!頼む!」
それを皮切りに次々と謝りだした。
「俺もごめん!頼む!食べさせて!」
「「「「申し訳無い!(ごめんなさい!)(ごめん!)」」」」
最初に手を伸ばした1人以外は、素直に数哉へ謝っている。
「分かった。取り敢えず、退いてくれ。後で食べればいいさ。」
「よっしゃぁ!」
「「「「良かった!美味そう〜!」」」」
「怒るのを我慢していたら、直ぐ食べれたのにぃ〜・・ハァ。」
数哉の周りには人だかりが出来て、皿の上にあるゲントウザザミを食べだした。数哉も食べてみる。
パク。
--「確かに、美味い!燻した筈なのに、ジューシーなんだな。」
『はい、燻した時に出た肉汁は風味を壊さない様に臭みだけを消して身肉を付け戻しました。』
--「へ〜、そんな事が出来るのか。」
『はい。喜んで頂けて、なによりです。』
口に入れていた他の者達も、身肉を頬張り一瞬止まると驚きのあまり目が大きく広がった。
「「「「「美味い!!(美味し〜!!)」」」」」
「俺、食堂の飯食べれなくって良かったぁ〜!」
「ホントだな!こんなの食べれるなら、毎日でもいいぞ!」
バク!バク!バク!バク!・・・バク!!
次から次へと手を伸ばし続ける。他の者達が早く代わってくれと、列の後ろから覗き込んでいる者も多くいた。
「おい!早くしてくれよ!食べ過ぎじゃねぇのか!」
数哉は食べ終わると、ルセアナがまだ食べていないのに気付いた。
--ん?アイツ何やってるんだ?
見ると、数哉を責めていない筈のルセアナが責めていた奴の最後尾に並んでいる。
「まったく・・。」
--「ラナ、ステーキ皿サイズの皿を出してくれ。」
『畏まりました・・転送。』
数哉はその皿に山盛りのゲントウザザミを載せ、ソースを取り分けるとルセアナの場所まで歩いた。
「ほら、食べろ。今日の学校が終わったら特訓だ。食べてないと厳しいぞ。」
--特訓??でも・・。
「・・美味しそう。良いの?」
「お前は責めてないだろう。それに俺の出した料理だ、遠慮するな。」
「ありがとう。」
ルセアナのゲントウザザミには、ソースが絡んでいた為に数哉は歩きながらラナにフォークを出して貰っていた。皿とフォークを渡されたルセアナは近くの机に座ってゲントウザザミの身肉を口へ運ぶ。
パク。
「美味しい!・・でも、こんなに食べると又太っちゃうかも。」
「大丈夫だ、全部食べておけ。」
--栄養を付けておかないと、特訓で倒れられても困るからな。
「?・・・。」
--もう太っているから大丈夫って事?
「ハァ・・でも、本当に美味しい・・。」
数哉は溜め息を吐きながら美味しいと話すルセアナに違和感を覚えたが、聴き流して教室に先に戻った。執事風の男は険しい顔をして昼食を取った後、仲間達を校舎の裏に呼び集めている。集まった者は19歳の執事風の男と18歳の剣士の格好をした男、魔法使いの様な服装をした17歳の男と女が1人ずつ。後は、カズヤに足を引っ掛けて転げた少年であった。
「エリオットさん、次はどうする?取り敢えずF級教室の中で孤立させようとしたけど、効果無かったみたいだぞ。」
そう話したのは、剣士風の格好をした男で執事風の男に対して話している。
「・・あの男、何処にあれ程の料理を隠していたと言うのだ・・?まぁ、良いでしょう。罰を与える手段は幾らでもあります。直接痛め付けても構いませんが、それでは面白くありませんしね。我等の主人達の不評を買っては困りますから。ん?どうしました?スフアル君?」
「・・俺は、もう降りる。奴には関わらない。」
「どういう事です?主人の命令に背くと言うのですか?」
「ああ・・。」
「報告すれば、アナタは主人から罰を受けるかも知れませんよ。良いのですか?」
「それでいい、死ぬよりはマシだ。あいつの力、普通じゃない!冒険者ランクGなんて絶対ウソだ!道具も使わず俺の手甲を握り潰すなんて・・主人から罰を受ける方がマシだ。じゃあな・・。」
スフアルは校舎の裏の外壁に凭れ掛かっていたが離れ、そのまま校舎に沿って去って行った。執事風服装のエリオットが話す。
「臆病風に吹かれた様ですね。安物の手甲が偶然壊れただけで何だと言うのです。さて、次は魔法の実技訓練がありましたね。アナタの出番ですよ、モーラ。」
「ええ。何をすれば良いのかしら?」
「魔法訓練は別訓練ですが、遺跡での訓練はE級とF級の合同訓練となっています。地下1階のネガリケ魚の泉横を通る際の注意事項は覚えていますか?」
「もちろん、音を立ててはイケないだったわよね。泉のエルラのネガリケ魚に襲われるから・・まさか!?」
「・・そうです。なあに、死ぬ事はありません。少し、肉を啄まれるだけですから。」
「でも、周りにいる人も巻き込まれるわよ?」
「それは可哀想に・・。」
エリオットはそれだけ答えると、モーラの返事を無言の圧力で待っている。
「・・分かったわよ、やれば良いのね。」
「そう言う事です。我等の主人達が望む楽しい結果を待っていますよ。」
・・・授業で覚えた魔法陣の練習を広い運動場で画く練習を始める。ルセアナは本人がダメと言っていた割には、習った魔法全てを成功させていた。近くで練習している数哉が話す。
「何だ?全部成功しているじゃないか?どこがダメなんだ?」
「見て、あそこ・・。」
「ん?」
そこに落ちていたのは、バラバラになった細い氷のツララが2本だ。
「あんな威力じゃ、エルラに効かない・・。」
「じゃあ、エルラを倒してオストラルエネルギーを吸収して強くなれば良いだろう。」
「小さい頃にエルラに襲われそうになってから、エルラを前にすると緊張して身体が動かなくなるから・・。」
「そうかのか、まぁ何とかなるだろう・・。」
--この人、本当に何を考えているのかな?魔法も、まったく出来ていないし。落ちこぼれが近くに居て良かったみたいな?
「・・はぁ。」
数哉はルセアナの言うように、覚えた魔法陣を画くが成功していなかった。複雑な魔法陣を画こうとすると、魔力を込め過ぎたり少な過ぎたりで魔法が発動していない。魔力線が太過ぎて別の線にくっついたりしているのが原因である。オストラルエネルギーの多い者は、エネルギーを凝縮させる事で太い線を細くし威力を強める事が可能だ。逆にエネルギーを制御し少なくすれば威力を弱める事も。数哉は魔法初心者の上にS級冒険者並のオストラルエネルギーを有している。それ故に他の者達より魔法を発動させる事が難しくなっていた。
「ふむ、初歩魔法なら出来るがこれは難しいな・・。」
・・しかし数哉は何度も何度も繰り返し練習していく。他の生徒達は次の訓練に向けてオストラルエネルギーを温存しようと、イメージトレーニングを織り交ぜながら行なっていた。ルセアナも同様である。数哉だけは、潤沢なエネルギーを使っている為に問題無く繰り返し練習出来た。他の者達とは違い、それは有利に働く事となる。ランクが上がればエネルギーを多く使う必要が有り、高エネルギーを凝縮させる技術を熟練させないと魔法が使えない。つまり、多くの者達が高ランク魔法を練習する際に行なっている訓練を既に数哉は始めているのだ。
・・30分時間が経った所で、笛が吹かれる。
ピィィ〜〜!!
吹いているのは教師のフランクで、注目しろと片手を上げていた。
「よし!次は実地訓練授業だ!いつも通り、E級教室の者と合同で行なう!エルラに出会ったら全員で協力して倒せ!カズヤは何処だ!?」
数哉は呼ばれて近付いて行く。
「・・はい?」
「お前は、始めてだから言っておく。人が多い場合はエルラを攻撃する際、他の者を巻き込まない様に注意しろ。あと、魔法の授業ではあるが魔法以外で攻撃しても良い。魔法を発動させるには時間も掛かる。だから近接戦闘も出来る杖以外も用意しておくんだ。」
「分かりました。」
フランクが数哉の杖を見た。
「ん?もしかして、それは魔棍棒か?」
「そうです。」
「ならば、他の武器は要らないが魔法の威力が断然落ちるぞ。高ランクの前衛を務める冒険者でも、使い易い短杖と近接武器を2つ持っている。いずれお金が貯まれば買った方が良い。」
「分かりました。」
ラナは、数哉に伝えず思う。
--『数哉様のデコピンでフッ飛ぶ者が、数哉様に助言等と一億年早いと知りなさい・・。いや、一兆?いや・・・。』
「それじゃあ!皆!15分後、遺跡の入口エレベーター前に集合だ!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
F級教室の多くの者が緊張の表情をしている。冒険者ランクが低い者や、エルラと直接闘った経験の無い者達もF級教室には居た。全員、傷薬や毒消し薬等を部屋に取りに帰る。
・・遺跡の入口に集まった時には、腰に大きさは様々だがサイドポーチを装着していた。数哉は何も着けていない。剣を腰にある鞘に入れ、魔棍棒を右手に持っている。他の遺跡同様エレベーターで遺跡に入り、エレベーター出口から数分離れた場所にある迷宮へと入って行く。迷宮と言っても地下15階までは完全踏破されていて詳しい者であれば迷う事は無い様だ。それ以上地下へ降りて戻って来た者は居ない。地下深く降りると遺跡の中心部へ近付く為に獰猛で凄まじい力を持つエルラが出る為だ。
・・・数哉もルセアナと共に、迷宮へと入って行く。
「暗いな?」
「ここはね。少し行けば魔法灯が定期的に設置されているから明るいよ。」
洞窟内は、道がキレイな場所と洞窟のゴツゴツとした岩肌を交互にした通路となっている。交差路は整備されているが他は整備されていない。約7メートル四方の通路を歩いて行く。地下五階迄は、同じ様な通路が続いて地下六階からは昔つくられたまま整備された綺麗な通路しか無いと言う。ちなみに数哉達が向かっているのは地下一階の左奥にある大広間だ。
大広間には、定期的に弱いエルラが補充されていてEとFライセンス教室の実地訓練に適している。先頭はE組の先生とギルドの依頼を受けた1人が歩いていた。F組のフランクは最後尾で、欠伸を出しつつ歩いている。数哉とルセアナの位置は大体、真ん中より少し前方であった。数哉は歩きながら斜め後ろを歩く緊張の表情のルセアナに疑問を投げつける。
「ルセアナは何故、冒険者に成ろうと思ったんだ?」
「・・亡くなったお母さんが、若い頃冒険者だったの。」
「すまない・・余計な事を聞いたな。」
「ううん、お母さんの冒険者の話は私に取って楽しかった思い出だから。」
「それなら、動かなくなる程にエルラを怖がるのは可笑しくないか?お母さんの冒険者の話にもエルラは出て来ただろう?」
「うん・・。お母さんね、ある貴族に見初められて無理矢理愛人として囲われたの。」
「?・・。」
「その貴族のお父さんは、お母さんとの子供を作るつもりは無かったみたいで私が別邸で産まれても十年間一度も会いに来なかった。でも、私は幸せだったの。お母さんが一緒にいてくれたから。」
「・・ある晩、私の部屋に急に押し入って来た人達が居て私を縛ると、何処かの遺跡内部に放置された。」
「・・・?」
「目隠しされた状態で、遠くにエルラの鳴き声も聞こえて来た。私は腕を後ろに縛られた状態で逃げ込める建物を必死に探したの。運良く建物に侵入したのは良いけど、怖かった。いつエルラが私を襲うか分からない状態で3日経って・・もうダメだと思った時に聞こえたの。お母さんの声が。大丈夫、もう大丈夫よって。」
「・・・。」
「傷だらけで泣きながら探してくれたお母さんが言ったの。私を遺跡内部に捨てようとしたのは、お父さんだって。だから、もう屋敷には戻らないって・・。」
「そうか。」
「それから間もなくして、その時のエルラから受けた傷でお母さんも亡くなってしまって・・。身寄りも無いし、お母さんみたいな冒険者になりたいって思ったのだけど、その時の記憶がエルラを前にすると身体を縛って来て・・。」
ルセアナは苦笑いしながら話した。数哉は怒りが込み上げて来る!都合が悪くなれば切り捨てるUKAグループを思い出していた。
「・・潰そう。」
「え?」
「そいつ等全員潰すぞ、ルセアナ。」
「ちょっ!ちょっと待って!犯罪はダメよ!」
「なぁ〜に!犯罪に成らなければ大丈夫だ。俺に任せておけ。」
「えぇ!?」
--ど!どうしよう!お母さんの仇は取りたいけど・・・。
「まずは、ルセアナには1ヵ月で冒険者ランクをDランク迄上げて貰う。潰すのは、その後だ。」
--そうか!!俺もやり返せば良いんだ!UKAグループの奴ら、調べたら結構な悪い事をしてそうだったから家族を守る為に仕返しを諦めたが、ラナが居る今なら・・。これからは、やるべき事が満載だな。俺の親しかった人やお世話になった達も・・UKAグループに不都合があると行方不明になったり、亡くなった人達も居た。UKAグループが、それを行ったと分かったら!跡形も無く!ぶっ潰してやる!!
ルセアナは、ルセアナの父ホロワ・ベルナルド准男爵を潰すと怒る数哉を見て不安に思っている。
--この人、怖い人なのかも!・・もしかして、私も衛兵に捕まちゃうのかな・・・。
・・少し進んだ先に、この先ネガリケの泉有りと言う木の看板が通路の真ん中に突き立てられている。更に、音を出すべからず危険・・とも書かれていた。数哉の周りを進む者達は押し黙り、足元を見てゆっくりと進みだす。
--「ネガリケ魚ね・・危険なのか?ラナ。」
『いいえ、音に向かい襲い掛かる習性が有りますが数哉様を傷付ける程の力は有りません。』
--「他の生徒達は?」
『払い退けなければ、噛み付かれて血塗れと言った所でしょうか。更にそれで悲鳴でも上げると一斉に襲われて出血多量で死ぬ事も有り得るかも知れません。』
--「そうか、慎重に進もう。」
数哉とルセアナが丁度泉の半分ぐらいに進んだ際、突然近くの壁でカンと音が立つ!数哉の近くに木の繊維で編んだ子供用の遊ぶ球が転がっていた。その音に数哉以外の生徒達が心臓を掴まれた様に驚いている。泉の側道を離れようと、一斉に駆け出した。
ダダダダダダ!
但し、前にも後ろにも生徒達が居る為に見動きが取れなくなる。ネガリケ魚が獲物と間違えて泉を飛び出して来る!
バチャ!バチャ!バチャ!バチャ!
その数は五十匹を超えている。全員、噛み付かれ血が出るも我慢して声を出さない。数人は、痛さで悲鳴を上げた為に全身に数匹が噛み付いていた。ルセアナに噛み付こうと飛び跳ねて来たネガリケ魚を数哉が掴み、握り潰す。
グチャ。
その隙に、数哉にもネガリケ魚が腕を上げている左脇に噛み付いた!
--「・・ハハハハハハ!くすぐるな!クハハハハ!こ!声を出せないのが辛い!」
バチッ!ポトリ。
数哉の右手の腕輪から小さな雷が走り、ネガリケ魚は静かに地面に落ちた。
『数哉様、ご無事ですか?』
--「ああ、すまないな・・ラナ、俺が派手な音で泉に飛び込めば他の者に噛み付いている魚も俺を襲うか?」
『恐らくは・・。』
数哉は噛み付かれ苦痛の表情を見せている生徒達を見て考えた。
--「よし!行くぞ!」
ドボン!!
近くに居たルセアナが泉に飛び込む数哉に気付いて止めようと手を伸ばすが、間に合わない。他の者達も数哉が飛び込むのを見た。ネガリケ魚が襲う切っ掛けを作ったモーラもネガリケ魚から襲われない場所から、それを見て焦っている。
--嘘!!あいつ!ネガリケ魚に噛み付かれて泉に落ちた!?私、人殺しになっちゃう!
派手な音に他の生徒達に噛み付いていたネガリケ魚も、音を立てた数哉を追って泉に飛び込んでいく!泉の中では数哉を中心にネガリケ魚の巨大団子が出来ていた。
「ゴボッ!ゴボッ!」
--ハハハハハハ!くすぐったい!!
--「ラ!ラナ!こいつらを纏めて何処か被害の無い所へ転送しろ!」
『畏まりました!・・転送。』
数哉の周りのネガリケ魚が全て消える。
--・・ふ〜、あの魚を何処に飛ばした?
『転送保管しています。フライにすると美味く食べられそうです。』
--ふむ、それは良い。奴らが又食堂で仕掛けて来たら、それを皆で食べよう。
『では、調理をしておきます。』
--「頼んだ。」
泉の外では生徒達が静まり返っていた。誰かが1人泉に落ちて死んだと・・。ルセアナは両手で自身の身体を抱え込み、恐怖で震えている。数哉は泉内をゆっくりと泳いで泉の縁に手を掛けた。
バシャ!
その手を近くに居た生徒達が見て、死んだ数哉が化けて出たとネガリケ魚に襲われる事を忘れて高い声を上げた!
「「「「「「「ヒイッ!!」」」」」」」
バシャ!ビチャ!
「ふ〜、ビショビショだな。」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
全く傷も無く、泉から出て来た数哉が鎧を脱いで水を切り出す・・生徒達は数哉が無傷である事を知り呟く。
「「「「「不死身の魔法戦士だ・・。」」」」」
ルセアナも数哉の姿を見て、音を立てずにゆっくりと近寄り数哉の顔の傍でヒソヒソ話をする様に声を出した。
「カズヤさん、大丈夫なの?」
ネガリケ魚を退治した数哉は、普通の音量で答える。
「ああ、全く問題無い。ネガリケ魚も全部処理済みだ。暫くの間は音を出しても安全だろう。」
「そ?そうなの?」
数哉の声は静まり返っていた空間に響き、生徒達が安堵の様子を見せた。しかしモーラだけは怯えている。
--あいつ!!ネガリケ魚を一瞬で全部退治した!?しかも鉄鎧のまま泳いで!化け物じゃない!冗談じゃないわ!私が原因だって知れたら、あのカズヤって化け物に殺されるかも!
ブルッ。
モーラは悪寒が走り自身のパーティーからも離れ、出来る限り数哉から遠ざかって行った。先生には伝言ゲームの様に誰かが問題無い事を伝えて先に進みだす。ネガリケ魚に噛まれた重傷の生徒達はサイドポーチから救急の止血薬を出して処置し、学校へと戻って行った。回復魔法は簡易な物でも、魔法陣が複雑な為にD級ライセンスからしか無い。校舎に戻り、医務室でお金を払って回復魔法を掛けて貰うのであった。