ツンデレ魔術師
今回も少し短めです。
「………すごい。」
先ほどまでの喧騒はどこえやら。静寂に包まれ、風に吹かれる高台の上で一つの声が聞こえた。
その声は相変わらず天使のささやきのようで、心安らぐ甘い声だった。
俺は思わずその声のほうを振り向く。
すると、アメリアはハッと表情を変え、
「ふっふん。私の魔法があれば、このぐらいできて当然よ!それより、あんた大丈夫?」
……………………え?
突然の変わりように一瞬俺は呆気にとられ、ぽかんと口を開けていたが、
ーーーああ、そうなのね。
と、理解して、俺は答えた。
「おう。おかげ様で、な。サンキュ!」
すると、アメリアは少し頬を赤らめて、
「そ、そう。なら、良かった………。ねぇ!」
と話を進めた。
「あんた、なんでこんなところにいたのよ?」
「なんでって………」
ーーいや、特になんの理由もなく寄っただけだしなぁ。
「逆にここなんかあんのか?」
俺は聞き返す。
「何かあるって………ここ、街では誰もが知るチンピラ達の溜まり場よ。知らないの?」
ーーこんな絶景の人気の無い楽園が?
知らなかったわ。
つか、だからここ人いなかったのか。
てっきり読書に適した楽園かと。
「………あんた、どこ出身?」
「あーーー。」
(めんどくせぇなぁ………まあ、説明するしか無いか。)
「んと、俺実はこの世界の出じゃないんだ。さっきなんでか分からんけど、別の世界から来た。信じてもらえないだろうけど。」
アメリアは、少し驚き、考えている。
やはり、簡単には信じてもらえないよな。
現実世界でももし、”異世界人です”なんて言ってくる人がいれば、よほどこの世界では考えられない見た目や能力でない限り、単に頭のおかしいやつにしか思われないだろう。
さっきのチンピラも全く信じてくれなかったし、ひどい話だが興味すら示してくれなかった。
当然この世界でも異世界から来た奴がいるなんて考えれるような人はそうそういないのだろう。
ーー”ありえない”。これが共通認識のようだ。
だが、意外にもすぐ考えるのをやめ、
「ーー信じる。見たこと無いもの持ってるし、この世界、もうこの町しか人類の町ないのに、こんな事も知らないのはおかしいし。
まぁ、魔法とか、さらに上位の精霊術とかもあるから、そういうのも可能なんだろうし。」
「…………え?マジで?信じてくれるの?」
「ええ。信じるといったでしょう?」
ーーめちゃくちゃさらっと信じてくれた。
「…………ありがとな。」
別に信じてくれようが信じてくれなかろうがどちらでもよかったのだが、まぁ信じてくれるのはありがたい事だ。素直に感謝した
「………あんた。名前は?」
「霊園 天飛」
「レーエン=アマト、ね。じゃ、アマトでいい?」
文字に起こすとカタカナになってそうだが仕方あるまい。
「おう。あ、じゃあ、俺もお前呼ぶ時アメリアでいい?さっき勢いで呼んじゃったけど。」
すると、また少し頬を赤らめ、
「い、いいわよ!あぁ、あんたは………その、これからどうするの?」
と、恥ずかしがりながら答え、そして聞いて来た。
ーーー可愛い奴だな。と思いながら、
「んー。ぶっちゃけこの世界の事何も知らないからな。とりあえず、寝るとこ探しの旅。」
と、答えた。少しの沈黙。
「んじゃ、その………今困ってるんでしょ?良かったら……家来る?」
ーーー!まじか!
そりゃ願っても無い事だ。だが、
「………本当にいいのか?俺まじで無一文でどうすれば働けんのかも分からないからさ。結構お世話になると思うけど………。」
それでも本当にいいのか、気になった。
「い、いいわよ。どうせ一人暮らしだったし。
あっ!勘違いしないでよね!決して寂しいとか、そういうのじゃなくて、ただ困ってるあなたを見捨てたら後味が悪いからなんだからね!」
もうお分りいただけただろう。
ーーーそう、こいつツンデレなのだ。
優しいし、いい奴だと思うし、天使だけど、ツンデレなのだ。
これがラノベなら、きっとこいつがヒロインなのだが、ヒロインがツンデレってどうなのよ?
と、内心ツッコミながら、
「分かった。ありがとう、な。これからよろしく!」
と答えた。
「う、うん。よろ………しく。」
かなり頬を赤く染めて、アメリアは答えた。