可愛い魔術師とめんどくさがり屋の俺
アメリアーーそう名乗る少女は見た感じは、俺と大体同じ年、いや、少し年下かな?
そのぐらいの年の長い青色の髪がとても可愛らしい少女で、顔はだいぶ大人びているが、まだ端々にあどけなさが残っていて、見る者を魅了し虜にする………そんな魅力を持つ天使様だ。
よく見ると胸もそこそこあり、俺の胸囲測定眼によると、Eカップぐらい。
服装は白のワンピースとミニスカートにその華奢な身を包んでいて、素材の良さも相まって、ただそこで息をしているだけで周りの目を釘付けにするほどの魅力を出しており、同時に高貴なイメージも感じさせた。
さて、運のいいことにこちらに味方が現れた。
しかもこの子ーーー”魔術師”と言っていたではないか。
”魔術師”---現実世界ではリアリティが全くないが、ラノベ、マンガ、アニメ、ゲームなどではおなじみのジョブ。簡単に言ってしまえば、”魔法使い”だ。
そのイメージはきっとこの世界でも同じで、おそらく魔法を使うのだろう。
ーー魔法。それは、物理法則に囚われない超常の力。
男子にとっては一種の憧れ。
(ついにその魔法を、この目で見れるのか………!)
俺は初めて、異世界に来てよかったと思った。
いや、実際は転生したときにまずーーー生きながらえる事ができてよかった。と思ったので、正確には二度目だが。
「………あ?魔術師だぁ?てめぇみたいな可愛い子がかぁ?ハハッ笑わせてくれる。いいぜ。相手になってやるよ。」
チンピラの中でも一番背の高いリーダー格の男がいう。
周りの二人も同じ様子で、魔術師と名乗ったにも関わらず、まったくひるみや動揺を見せていなかった。
ーーまぁ俺はこの子はきっと強いと信じているが、少し可愛すぎる。
これでは周りを威圧はできまい。むしろ、本人には悪いが、色仕掛けのほうに向いていると思う。
もちろん容姿だけ見ればね?
事実男たちの視線は、彼女の胸のほうへと向いている。男の俺でも気づくのだ。彼女も気づいているだろう。
だが、彼女はそんな女子から見たら気持ち悪いであろう視線を意にも介さず、
「あまりなめると痛い目見るわよ。私だって、こんな見た目でも一魔術師。魔術師をなめちゃいけないってパパとママに言われなかった?」
と、逆に煽り返す。
だが、その煽っている姿もまたかわいいもので、やはりこの子は敵をひるませたり、粛清したり、怖気づかせたりには向いていないのだろう。
「ハハッ。そうだな。じゃ、やってみろよ!!!」
と、リーダー格の男の野暮な声を合図にチンピラ三人衆が、一斉に襲い掛かってくる。
一人はところどころに棘のついた棍棒を持って。
一人はものすごく厄介なことに、ナイフを持って。
一人はずいぶんと錆びていて、刃こぼれもひどいものだが、それでも少しは強力な鉈を持って。
これに立ち向かうのは現実世界だったら論外。逃げ一択。なのだが、あいにくここは異世界。味方に魔術師。そして、ここは逃げ道もない。
当然彼女は引くことも怖気づくこともない。
それだけで彼女の勇気は証明されていて、彼女はゆっくりと手をかざした。
ーーさぁ、魔法がみれるのか!?
「ボルト!」
次の瞬間アメリアの手から電撃が飛んだ。
その電撃は、まるで雷神の力を纏った龍のようーーー
にはならず、普通の小さな電撃が飛んでいった。
「グッ………!」
チンピラ共が手を押さえる。
ーーいや、見た目は確かにしょぼいけど、奴らは手を押さえてるし、多分かなり効いてーーー
「チッ………!時間稼ぎか!?ちょっと痺れるくらいだろうが!?」
いなかった。
(え………こんなものなの?)
チンピラの味方をするわけじゃないが、俺も想像と違いすぎて、呆気にとられていた。
「ブレイズ!」
直後、アメリアの手から火が飛ぶ。
それもチンピラ三人に当たるがーー
「チッ………熱い。でも、こんなんで倒れるわけねぇ!」
………うん。全然平気そうだった。
「グッ………ブリザード!」
その後も色々な魔法を出すが、どれも威力は微々たるものだった。
「ハァ………ハァ………」
一分程経ったか。
やはり依然としてチンピラはぴんぴんしており、
逆にアメリアは疲れて息を切らしていた。
「はんっ。粋がりやがって………所詮、こんなものか。」
「ハァ………ハァ………」
もはや反発する体力もないのか。
何も言い返さずただ、息を切らしていた。
チンピラ共はもはや勝利を確信している。
それどころか、新たに肉便器が手に入るとすら確信していて、明らかに興奮しているのがわかる表情を浮かべていた。
ーーうざい。心からうざい。弱者をいじめてボコって、それで勝利を確信して、大ヅラかいてる小物共。反吐が出る。虫唾が走る。〇ねばいいのに。
だがこのままでは本当に俺たちは負ける。当初は俺も魔術師と聞いて期待していたが、まさかチンピラのいったことがドンピシャで的中。この子見事に魔法が弱い。
使えるだけでも尊敬に値するが、実戦で役に立てれなければ戦いの為の魔法は役割を果たさない。
何の強化もなしに素手でこいつらと渡り合うのは至難の業だ。すなわち必敗。
アメリアは奴らに犯され、本当に肉便器行き。当事者の俺は口封じで殺される。
(………仕方ない。か。)
こうなった以上、平和的解決もできない。
だが、このまま二人とも最悪の未来に行くのは断じてごめんなので、俺は、めんどくさかったけど、戦うことにした。
「なぁ………アメリア?魔法で俺の足を速くしたり、できる?」
「………う、うん。でき………る。」
「よし。ならOKだ。やってくれ。」
ウォン
ーー効果音をつけるなら、こんな感じか。
俺は、足が速くなったことを確信した。
さっきも言ったように何の強化もなしに戦うのは無理だ。逆に言えば、強化さえあれば戦えるのだ。だからアメリアが魔法で俺の強化ができることにかけたのだ。
(よし………上出来だ!これなら………いける!)
体の奥から力が湧いてくる。
今ならチンピラ三人も怖くない。
「おい………チンピラ。悪いな。この戦い、俺たちの勝ちだ。」
「アァ?そこのガキにかけてもらった魔法で何ができる!?調子に乗んなよ!ボケェ!!」
三人、一気に襲い掛かってくる。
俺は地面を思いっきり蹴った。
ビュオッ!っと風が吹き荒れ、俺は想像を絶するスピードで地面を駆ける。
ーーまさかここまでのスピードを出せるとは。
一瞬でチンピラの内一人の下へ行き、そのまま俺は、
ーーーチ〇コを蹴った。
ガンッ!!!と、鈍い音。
「オッ………オゴアァアア”ア……………」
白目を剝いて男は気絶した。
「…………………………な!?」
残りの二人が絶句する。だが、
「クックソ!ふざけんなよクソがぁ!!!!」
ともう一人の男が突っ込んでくる。
俺はもう一人の下へ一瞬で行き、
走ったスピードでついた勢いをそのまま力に変えて、
相手のみぞおちに拳を入れた。
「ガッ………ガァアァァ……………」
吐瀉物を撒き散らしながら、男は気絶する。
「うっ…………うっ…………チッチクショウ!!!!」
悲鳴ともとれる叫びをあげながら最後の一人が突っ込んでくる。
だが、今度は空高く跳んで、
落下でついた勢いで威力をつけて、そいつの頭に
かかと落としを入れてやった。
ゴンッ!!!
っと鈍い音。
次の瞬間
そいつは何も言わなくなった。
「ふぅ……………勝った。」
---こうして。俺は人生初の喧嘩に余裕で勝利した。