転生
俺は、霊園天飛。18歳。高校三年生。帰宅部。
運動も勉強もできるほうだが、めんどくさがり屋で、
友達も多くはない。それでも、仲の良い奴とはすごく仲がいい。
部活がない分暇な時間を使って鍛えているからか、割と筋肉質なほうで、握力は60ぐらい。
そして、今日、1月16日は冬休み最後の日。
俺は一人街を散策し、ラノベを買って、家でゲームをする。
ーーそんないつも通りの平和で大したことない予定を立てていた。
俺はベッドから起き上がり、親におはようを言って、
用意された飯を食い、身支度を整え、外へ出た。
すると、冬の乾いた冷たい空気が俺の鼻腔と肌を刺激する。その刺激に心地よい気持ちになり、深々と息を吸って俺は歩み始める。
俺は、冬が好きだ。
冬の澄んだ、この冷たい空気が好きだ。
息を鼻で吸うと、冬のおいしい空気が鼻の奥に届き、
快感を与える。
冬のおいしい空気が、普段の生活で鼻の奥に溜まってしまった、うざったく、息の詰まるような淀んだ空気を浄化してくれる。
だから、冬は好きなのだ。
ーー二十分程経っただろうか。
無事本屋について、ラノベコーナーを見る。
俺は大のラノベ好きで、正直ラノベは外れが無いとさえ思っている。
ラノベとは現代の日本において、一つの立派な文化なのだ。どの作品も面白くて、読み応えがあって、ワクワクして、一つ一つに決して軽くなどない、作者の個性、感情、内心、考え、色々なものが約300ページある一つの本に詰め込まれているのだ。
残念なことは表紙やタイトルだけをみて、勘違いして、ラノベを愛す者たちを馬鹿にする奴らがいることだろうか。
そういう奴らに俺は行ってやりたい。
文句つけようが馬鹿にしようが読んだ人の勝手だし、感想なんて一人一人違うだろう。
だが、なにか言うならちゃんと全部見てから言えと。
タイトル、表紙。ぱっと見だけでごちゃごちゃ言うな。ちゃんと中身を見てから言え、と。
「1978円です。」
ーー五分程経ち、俺は今読み進めているシリーズの未読の巻を二巻と、新シリーズ一巻を買い、外へ出た。
さぁこのラノベ。今ここで読んでもいいのだが、ちょっと待ってくれ。ここで皆に聞いてみよう。
今日は何の日と言った?
さぁシンキングターイム!
読み進める前に考えて見てね!
チッチッチッチッチッチッチッチッ
はいでは答え合わせ!
正解はーーーーー冬休み最後の日でした!
では、学生の皆さん。質問です。
学校に持って行けるものは!?
そりゃ教科書だのノートだの筆記用具だの勉強に関するものは持って行ける、と言うか、持ってかないとダメ。
では後は?
カバンにつけるストラップ?それもある。
でもさ、でもさ、ゲームとかさ、漫画とかさ、携帯………は持って行けるか?高校なら。
でも使えないよな。
そう、だいたいの暇つぶしツールが使えないのだ。
友達いるからいいじゃん!とか言う陽キャもいるかもしれない。
確かにそう言う奴はそれでいいだろう。
でもね、世の中陽キャだけじゃないんだよ。
俺みたいな陰キャはね?友達ちょっとはいるけどね?
暇つぶしツールが必要不可欠で、なかったら生きていけないの!
だーかーらー小説を学校に持って行く。
みんなの学校にはないだろうか。朝読書、とかね?
小説なら持っていっても問題になりにくい。
ということで、このラノベは明日からの暇つぶしツールに使う。
もう街には用がない。ゲットホーム。帰る。
(………帰ってゲームでもするか)
そう思い歩き出した時だった。
「………ん?」
ーー暗い。昼なのに。ーーーなんで?
周りを見る。どうやら暗いのは一部らしい。日食とかではない。ーーーてことは影か?
(………なら、上になんかあるのか?)
そう仮定し、俺は空を見上げる。すると、
ーー空の上に、ミサイルが浮かんでいた。
「…………え。」
直後ミサイルは落下。
目にも留まらぬスピードでの急降下。だか、時が止まって見えていた俺の目には、一コマずつ、1メートルずつ、少しずつ、徐々に、徐々に落ちているように映った。
1秒が永遠にも感じられた。
だか、実際は永遠ではない。
ただ呆然と立ちすくみ、身動き一つ取れない俺に構うことなくミサイルは地面に衝突り
たちまちミサイルは大爆発。
俺は一瞬で視界が真っ白に染まった。
ーーー目がさめると、俺は、空を見ていた。
空は曇って、黒い灰が、雨のように降り注いでいる。
さっきまで、あんなに青かった空が、ビフォーアフター。地獄のような空へと変わっていた。
(………吹き飛ばされたのか。)
俺は今、上を見上げているわけではない。
体が仰向けになっているだけなのだ。
つまり、俺はミサイルの爆風に吹き飛ばされた。
理解して、とりあえず周りを見渡そうとするーーーが、体が動かなかった。
「…………え」
直後、全身に堪え難い激痛と熱を感じた。
「………グッ!ガァァァァァア!!!!」
声を上げて叫ぶ。
痛い、痛い、痛い痛い、痛い痛い、
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
熱い、熱い、熱い熱い、熱い熱い、
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い
ーー嫌だ、嫌だ。死にたくねぇ。死にたく…ねぇ。
嫌だ。なぜだ。なぜ、なぜなぜなぜ、こんなところで、死ななきゃ、ならねぇ。
嘘だ。認めるか。認めるものか。
だか、そんな思いに体も心も応えてくれず、だんだん意識が遠のいていく。
手足ーーーーなくなった。
痛みも、熱も、あるけどない。分からない。
何もわからない。
脳が死んで行く。
肺が死んでいく。
血が濁り、緩やかに安らかに眠って凍って死んでいく。
心臓が動きを止め、鼓動が止まる。
電池切れの時計のように、動かなくなる。
もう何も、分からない。世界が白く染まり、自分が無に帰り、魂は別のところへ、体は朽ちて、
その日、俺はーーーーーーー死んだ。