初めての・・・ではなく
タイトルは何となくです。
深い意味はないです。
それでは、どうじょ(/・ω・)/
じ、実は俺、初めてじゃないんだ。
恥ずかし気に言ったらぶん殴られた。暴力反対!
気持ち悪いこと言ってんじゃねぇ、とおっさん大激怒。
本当の事言っただけなのに。
ホーンラビットとの激闘を話した所、再度殴られた。
「確実に勝てる算段がないなら退け、このアホが!」
はい、ご尤も。
しかし、あの時はあれしか選択肢がなかったと思うのもまた事実。
反省はするが悔いはない(二枚目風)
ボゴッ
はい、ちゃんと反省します。
だから、お願い、た、ひゅけて。
それから、角兎の短剣を見せた。
アイテムボックスから出すと目を見開いて驚かれてしまった。
お約束とばかりに拳骨をもらった。
【アイテムボックス】はとても稀有なスキルなのでバレないように細心の注意を払えと怒りながら言われた。
というか当分は使うなと厳命された。
便利なのに。
そして短剣の方、というより【全自動素材変換】については彼曰く、これも隠すべき類のものだと真顔だった。その顔で真顔になるのは怖いから止めて欲しい。
最悪、生産するためだけの奴隷にされるぞ、と脅されれば何となく危ないことだけは理解できた。
ということで、俺は保持するスキルの内、鑑定以外のスキルを当分封印することになってしまった。
使って良いのは自分の身に命の危険が迫った時のみ、というどこかの縛り系主人公みたいな約束をさせられてしまう悲劇。
なので、実戦にはおっさんのおさがりで臨むことになった。
本物の剣という奴は木刀とは全然重みが違うので、正直不安だが、おっさんもついていてくれるので、何とかなりそうではある。
「なに、無理なら逃げればいい。それを責める奴なんか何処にもいねぇんだ」
このおっさん、やはり気遣いの人だな。顔は怖いけど。
「お前は考えてることが顔に出てんだよ!」
拳骨をもらった。
ポーカーフェイススキルでもあるならそれを取っても良いかもしれない、そう思った。
◇
「お、早くもお出ましだぞ」
村から少し離れた所で再び奴は現れた。
種族:ホーンラビット(白黒)
性別:雌
スキル:刺突
以前に倒した奴とは別の個体だ。
白い毛が主で所々に黒いブチが魅力的だ。額に立派な角がなければ、だが。
ホーンラビット:鑑定者の宿敵。
鑑定さん、以前と説明が違うんですけど。
すごい簡潔なのは良いと思うんですがね、ちょっと変じゃないかなぁ、なんて。
ホーンラビット:鑑定者の宿敵。戦闘力は一シンド。
釈然としないが、決して間違いではないから反論しづらい。
だが、俺の名前は単位なのか?
色々と納得いかないが、とりあえずやるか。
剣を構える。
ホーンラビットも気付いたようで、こちらに視線が向いた。
互いに敵に向かって走る。
ホーンラビットという魔物の戦闘能力は魔物の中でも最底辺に位置するものらしい。
それと同等な俺とは、と思わなくもないが、気にするよりは伸びしろがあると前向きに捉えよう。
ホーンラビットは額の角が全てだ、そうおっさんは言っていた。
角を折ってしまえば、戦意を失い、動きも鈍り、最悪死ぬ、と。
「まぁ、凄腕じゃなくとも、大抵の冒険者なら一撃だけどな」
この一言に俺の目に見えないHPが半分は削られたものだ。
要はお前は雑魚だと言われたに等しい。
しかし、俺は鍛錬を積んで来た。
おっさんに殴られ、打たれ、蹴られ、投げられ
おかしい、酷い目に遭った記憶しかない気がする。
そうこうするうちに宿敵は俺という敵に向かって詰め寄っていた。
「だけども、だっけ~ど、あまぁ~い!」
一閃。
俺の振り下ろした剣は空を切る。
え?
「キュキュキュー!」
一拍早かったか!と思うと同時にホーンラビットが凶器を差し出して突っ込んで来る。
「きんきゅーかいひっ!」
安定の横へのローリングダイブで紙一重。
「おい、シンドォォ!遊んでんじゃねぇぞぉぉ!」
いかんな。ありゃ本気だ。後ろから殺気を感じる。
でも弁解させて欲しい。あれは決してふざけていた訳じゃないんだ。
ホーンラビットが最初の勢いのまま突っ込んで来ていれば間違いなくカウンター出来ていた筈なんだ。
ということは奴が突進の速度を緩めたということだ。
更にスピードアップしてたら確実に一突きにされてただろうしな。
というか、ホントにホーンラビットって弱い部類の魔物なんだよな?
「キュ、キュキュ!」
多分、「チッ、避けられた!」的なことを言ったのだろう。
何となくわかる。
(で、こっからどうすっかだよな)
と、考えはするが、俺には先程の振り下ろししか術がない。
ということは選択肢は強制一択のルート固定。
「もいっちょこいやぁぁ!」
彼女(?)に来てもらいやしょう。
都合の良いことに奴さんもヤル気のようだし。
「キュイッ!」
Uターンして休まず向かって来るホーンラビット。
体勢が良くないが、その程度でビビっていては凄腕には程遠い。
構えは上段、イメージは剣の届く範囲に神経を張る感じ。
胴をがら空きにするのは正直、内心ガクブルだが、贅沢なこたぁ言ってられないんす。
「キュッ!」
その掛け声の後、凶器が俺に向かって飛んで来た。
「でりゃっ!」
それに向かって剣を振り下ろす。
手加減はなかった。というより手を抜ける要素がない。
下手にそんなことしたら待っているのは「GameOver」というバッドエンドのみなのだ。
ただ
「ギュパ」
気持ちの悪い感触とともに声にもならない声が聞えた。
だが、手は止めない。二度、三度、と剣を上から下へ振り下ろす。
「・・・い・・・おい・・・・おい!」
どれぐらい経ったか、おっさんに止められた。
何度も呼ばれていたようだが、気づかなかった。
そして、ホーンラビットは既に事切れていた。というより言うも悲惨な感じになってた。
「倒して油断するのは三流だが、恐怖に負けて素材を無駄にするなんざ、それ以前だぞ?」
ご尤もで。お恥ずかしい限りです。
前回は異世界転生キタァァー!でテンション可笑しくなってたから、そんなに感じなかったけど、今回はキチンと御膳立てされての戦いというのもあってか緊張しっぱなしだった。
手の平はじっとり汗かいてるし、膝だってケラケラ笑ってやがる。
「終わったぁぁ~」
その場に尻餅つく俺は悪くない。
極度の緊張から解放されると体中から力が抜けるもんだ。本日初体験だけどな。
「見た感じ悪くはなかったぞ、まぁ、良くもなかったけどな」
このおっさんは人をちゃんと褒められないのだろうか。
俺は自身が褒められて伸びるタイプだと自己分析しているのだが・・・
「こんなもんで褒められようと思ってるようじゃあ凄腕なんてホラ吹きも良いとこだぞ?」
はい、一層精進して参ります。
はぁ、それにしても疲れた。
主人公さんが魔物やらモンスターやらを息もつかずにコロコロしていくってのはありゃ、彼らが特別なんだと、初めて理解したが、悔しい。
「おっ、悔しいか?その気持ちは忘れるなよ。そんで、常に考えろ?例えば、こういった弛緩し切った時こそ狙ってくる奴がいるって、なっ!」
そう言っておっさんが何かを俺に向かって投げた。
因みにスローイングは目で追えなかった。マジ超人。
そしてそれは俺の顔の横を綺麗に通り過ぎる。
これも当然目視できず。色々とオカシイと思うのだが、これ如何に。
「ギャッピ!」
振り向くと茶白い見た目のホーンラビットにおっさんの投げたであろう短剣が突き刺さっていた。
そしてパタリとそれは地に落ちた。ホーンラビットはピクリとも動かなかった。
一撃必殺とはこれか、と驚愕である。
「な?」
ドヤ顔ではなく、さも同然と言った顔で尋ねてくる強面なおっさん。
不覚にもそのカッコよさにキュンときてしまった俺は吊り橋効果を実体験しているのだろう。
「ま、まぁまぁかな」
「何で上からなんだよ!」
殴られた。
やはり暴力は反対の所存である。