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魔装の冒険者~素材が採れねぇ、このスキル~  作者: うまひ餃子
新米冒険者頑張りま章
37/37

ゴブゴブ~おかわり!~

 それでは、どうじょ(/・ω・)/




 爆弾幼女キャスリーによる大規模殲滅により、ゴブゴブ集団に大きな初撃を打ち込めたのだが、こちらの雰囲気は余り良いものではなかった。


 主な原因は三つ。


 一つはそれでも出て来るゴブゴブたち。

 彼奴らは何処に隠れているのかと思うほどにわらわらと湧いて来る。

 台所に出没する奴みたく。

 これには最初威勢が良かった者達も次第に厭戦気分があちこちで漂い始めている。


 二つ目は魔法士部隊の前衛と後衛の意識の差。

 前衛は後衛の魔法士が気兼ねなく魔法を使えるよう体を張って踏ん張るのだが、その魔法士も無限に魔法が放てる訳ではない。従って、ローテーションで順を追って魔法を行使するのだが、懸命に体を張っている前衛からするとそれは怠慢に映るようで、


 「おい、援護まだかよ!」

 「早くしろよ!」


 との怒声が上がり、かと思えば


 「うるさい!集中を削ぐな!」

 「こっちだって、ギリギリなんだ!」


 と売り言葉に買い言葉で。

 まぁ、そんな如何にも脆そうな部隊を何とか支えるのが、”翡翠”ナナシ、”焼滅”キャスリーの両翼なのだが、この二人が悲しくも三つ目の原因となっている。


 この二人、流れるような見事な援護で、幾度となく味方の危機を潰してはいるのだが、実力もあってか余裕が見られる。

 で、このような状況でそんな様子を見ると気分を悪くするのが常人の性であるからして、「チッ、さっさとお得意の魔法で敵をぶっ殺せ」だの「こっちが必死でやってるのに上位冒険者様は気楽で良い事だ」と言ったようなやっかみを始める始末。


 ナナシの方は正に泰然自若と言った様子で全く気に掛けていないのだが、爆撃幼女はと言うと、


 「・・・・・・」


 無言で敵を焼きまくっている。

 しかし、その小さな体からは明らかに憤怒の炎が漏れ始めている。

 おい、お前らガソリンスタンドで煙草吸うような真似してんじゃねえよ!

 巻き込まれるこっちの身にもなれ、と声を大にして言いたい。


 こう言った時に人を纏められるゴリアテ氏のような人材が欲しいのだが、彼は今この場にはいない。

 この隊の指揮官も決して無能な人ではないのだろう。

 恐らく、腹を痛めながら必死に指揮している筈だ。


 しかし、現状は好ましくない。

 後詰めとして来ていた騎士殿たちは、正義感か将又欲か、それ以外かの何れかに駆られて別行動を始め、未だ戻って来ていない。

 実力はあるのでそう簡単に全滅などはないと思うが、彼らが向かったのは未だゴブゴブやって来るゴブリンどもの中心地。

 当てずっぽうだが、彼らも手古摺っているのだろう。

 ただ、状況を悪化させるような事態を引き起こすのだけは勘弁して欲しい。



 「ハァッ、ハァッ」


 セルティさんも頑張ってはいるが、体力には限界がある。

 事実、彼女の持っている剣は息が荒れるのと同時に揺れ、美顔を滴る汗は目に見えて多い。


 「セルティさん、一旦下がって息を整えて下さい。拙者がその間頑張りますさかいに」


 「ハァッ、そ、そうか。悪い、が頼む」


 かなり疲労の色が濃いようですんなりと強気な彼女は提案を受け入れてくれた。

 はてさて、そいじゃあ、シンドくんいっちょやったりますかぁ。


 いでよ!


 三色団子ぉ~


 パチパチパチ!


 説明しよう、この緑黄赤の三つの団子は自動素材変換スキル大先生が偶然作り上げた、偉大な発明である。

 その効果は緑が疲労回復、黄が身体能力の強化、そして赤が・・・なシンド秘密道具に相応しいバランスブレイカーな存在だ。

 恐らくこれらの効果が知られれば、シンドくんは各国から狙われることになろうかと言うほどの、アイテム。それほどの効果をこの三食団子は持っております。


 え、その素材?

 それはですね、五種類の草花とゴブリン一体とパイソンさん一匹ととっても安上がりで。

 はい?ゲテモノは勘弁?こっちだって好きで作ってるんじゃないからな!

 偶々作ったら、その効果が半端じゃなくて、何かの備えに作っておいただけだよ!


 忍者?

 ふん、知らんな。

 俺はもとより標準体型だ。

 それに副作用らしいものも特にはない。


 「ごっくん、うげぇ、相変わらず苦ぇぇ」


 この団子、効果は抜群なのだが、その代わりなのかすこぶる味が酷い。

 最早、副作用と言って良いほどに。不味いのではなく、酷いのだ。

 凡そ人が食べるものの味ではない。

 しかし、漢シンド、ここは涙を呑んで耐えるぜ。


 「うおおおおおおおおおお」


 やべえ、早速キターーーーー!

 体全体が熱を帯びていき、そこから疲労と言う重みが消えていく感覚。

 脳内物質がドバドバ放出されているのか、気分が高揚するのを抑えきれない。


 「セイヤッ!」


 近くにノコノコ寄って来ていたゴブに殴りかかる。


 「ギョバッ!」


 奴の顔面に俺の拳が刻まれる。

 ああ、舌に残る悲惨な味が辛い。


 「いやっふうぅぅ!」


 兎に角今は跳ねたい気分だ。

 気分は小太りのおっさんだ。


 「おい、なんかアイツヤベェぞ!」

 「他人のことなんか気にしてられっか!」

 「うわ、ありゃ極めてんだろ」

 「おい、あれ雑用じゃねえか?」


 何やら聞えた気がしたが、まぁ良いだろう。

 今は、ちょっぴり無双モードだ。

 この時こそ俺は物語の主人公足り得るのだ!正に至高!


 「らっっっっしゃぁぁぁぁ!」


 蹴りでゴブリンの首の向きを直角に矯正する。

 と、思ったら頭が飛んでった。

 失敗失敗。


 「まだまだァァァァ!」


 いかん、団子の効用で気が昂る。

 これこそが、この団子の長所でもあり短所。

 気持ちを奮い立たせたい時はピッタリだが、このような乱戦においてはあまり好ましくない。


 「おい、アイツヤベェって」

 「拳闘士かよ、武器使わずにゴブリン潰してってるな」

 「俺、もうアイツの陰口言わねぇ」

 「色々溜まってんのかもなぁ」


 又もや誰かが噂している気がするが、気にしたら負けよ。

 そんで、漸く回復熱が落ち着いて来た。

 緑団子の効能が一段落したらしい。

 それでは、参りましょう。

 黄色い団子を持ちましてぇぇ、パックン。


 あいかわらずひっでぇぇぇぇぇぇぇぇ


 俺はこの味覚破壊兵器を食した悲しみを目の前の敵にぶつける。

 それしか俺の深い悲しみを癒す術はなかった。


 「ちょいやっ!ほいっ!んだらば!」


 素人パンチで


 「ギャッ!」


 ヤクザキックで 


 「ギュッ!」


 止めは首絞めで


 「ギョッ!」


 見事な三連()である。

 人に似た生き物を殺める忌避感?

 そんなもの厠に置いて来ないとここでは生きてけないんですぜ?


 「むぁぁだまだぁぁぁぁ!」


 体が軽い~の。

 とっても軽ぃい~の。


 俺が自分のぶっ飛びっ振りと周りの視線に気付くのはもう少し先のことであった。





 個人的に奪還任務編と中忍試験編はモストふぇいばりっとです。

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