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魔装の冒険者~素材が採れねぇ、このスキル~  作者: うまひ餃子
新米冒険者頑張りま章
36/37

ゴブゴブ

 とりあえず、どうじょ(/・ω・)/




 今回のゴブリン軍団殲滅におけるそれぞれの部隊分けが済み、俺達は休憩地点より出立した。

 しかし、俺の気分は晴れない。


 「最悪だ」


 今の俺の気分を例えるならばそうだな、朝飯が茄子炒めとグリーンピースご飯と酢の物オンリーだった時と言えば、好き嫌いが多い人なら分かってもらえると思う。


 その根源は三名。


 妖怪”付き纏い”に”癇癪女”そして”理不尽幼女”である。

 奇しくも、この三人と同じ部隊に俺とセルティさんは配属されてしまった。


 ここでちょいと説明。

 ゴブリン大大大家族殲滅作戦には三つの主力が存在する。

 一つは”強撃”ゴリアテ率いる精鋭部隊。

 こちらは主に近接戦闘に長けた者たちを集めた遊撃部隊で、ゴブリンの将を狙うらしい。

 また話が逸れるが、ゴブリンの将というのは、小鬼の饗宴(ゴブリンカーニバル)が起こると必ず出現する、ゴブリンの上位種のことだ。

 俗に言うゴブリンナイトやゴブリンメイジ、ゴブリンジェネラル、そして彼らの王であるゴブリンキング、これらがそれである。

 本当に稀にゴブリンカイザーという究極種なる存在が誕生することもあるようだが、今回に限ってはその心配は必要ないらしい。もし、ゴブリンカイザーが誕生していれば、ミクラムの街はとっくに攻められ滅ぼされているらしい。カイザー半端ねぇな、おい。


 話を戻そう。

 二つ目つの主力部隊、それが俺達が配属された”焼滅”キャスリー、”翡翠”ナナシの双璧を配する魔法士部隊である。

 これは文字通り、魔法士の火力攻撃で効率よく雑魚を間引いて、もとい圧倒的な殲滅を狙ったものだ。


 ゴリアテの部隊が点ならば、こちらは面と言った感じだろうか。

 そして、そんな部隊に何故、魔法が使えない俺や強化魔法しか使えないセルティさんがいるかというと、まぁ、早い話が壁である。

 何に対する何のための壁かなどは言わずもがなだろう。


 魔法というのは言ってしまえば奇跡を起こすものらしい。

 何もない所に火を点け、水を生み出し、地面を操る、

 そんな力を使うのには集中できる環境が必要なのだそうだ。

 貧弱なと思うことなかれ。ちょっと考えてみて欲しい。

 前に壁も何もない状態で何百匹のゴブゴブたちが向かって来る光景を。

 集中など出来る筈もない。出来る奴は天才かぶっ壊れた奴だけだろう。


 その為の我々壁である。

 これについては、まぁ、諦めはつく。

 俺たちは確かに危険に晒されるが、それこそゴリアテの遊撃部隊も損害は免れないだろうし、少数でゴブゴブの海に突っ込むとかそれを想像しただけで軽くショック死できる。


 魔法士部隊を更に分けるのならば、魔法士班と護衛兼前衛班と言った感じだろうか。

 ふざけた部隊編成に見えるが、兵士のように集団訓練などを積んでいない冒険者にとって連携は鬼門である。ならば、出来る者に出来ることをさせるスタイルで行くのが単純且つ最適なのである。


 だが、そのチームメイツに因縁のある輩と電波さんがいる状況など、俺にとっちゃ地獄である。

 不幸中の幸いか悪の御三家とは距離はあるが、油断は出来ない。


 「シンド殿、そんなにキョロキョロと大丈夫か?」


 セルティさんはどうやらこの事態をそんなに重く見ていない。

 いや、寧ろ、意図的に思考の外に追いやっているのかもしれない。

 何にしろ気負いがないというのは好材料だ。

 だから、落ち着くんだ俺。カームダウン、カームダウン。

 オーケー、心音もだいぶ落ち着いて来た。

 これなら行けるだろう。


 鹿頭巾装着!


 これで、準備は万全。

 何処からでも掛かってこいや!


 

 「前方、ゴブリンの集団が見えたぞ!各員、戦闘態勢を維持!」


 奴さんがきよったで!

 んじゃ、ボチボチ気張って行きましょうかね。



 ◇



 「ウギャギャギャギャ!」

 「死ねや!」

 「ウギィー!」

 「どりゃっせい!」


 ついに衝突。

 世紀末もかくやと言わんばかりのデスゲーム感。


 「ひゃははははは!」


 あちらからは楽しそうな声が。

 おかしい、ここは殺し合いの場なのに。


 「いやっほぅ!」


 向こうからも何だか年甲斐もなくアスレチックにはしゃぐ大人のような声が聞えて来る。


 どうやら、皆さんハイテンションらしい。

 

 「ウギィー!」

 「グッバイ」


 とりあえず、五割くらいの力で寄って来たゴブゴブの側頭部を蹴る。

 ゴブゴブの顔がコの字になり、そしてそんな彼は隣のゴブゴブの方へ凸撃!最期の晩御飯が如く飛んでいく。ぐっばい。


 それにしても体がかなり柔らかくなったな。

 この世界に来て、取り組み始めた柔軟が地味に効果を発揮しているのだろう。

 日頃の努力、大事。 


 それにしても鹿さんシリーズは有能だ。

 明らかに能力が補正されているが、その補正がとんでもないのだ。

 鹿さんたち、ありがとう。君たちの貴い犠牲はちゃんと役に立ってます。


 「てやぁぁ!」


 近くではセルティさんがゴブゴブを斬り切り舞いしている。

 見た感じ身体強化の方は今の所セーブしているようだ。


 「前衛下がれデカいのいくぞ!」


 誰の声だったかは分からなかったが、その声に前衛に居た冒険者たちは一斉に後退し始める。

 それとほぼ同じタイミングで後方から火の玉やら石の礫やらがそんな俺達の頭上を通過し、ゴブゴブたちに襲い掛かる。


 その凶悪とも言える魔法はゴブゴブたちを悉く無惨なものに変えて行った。

 慈悲なきとはこういうことを言うのかもしれない。憐れなゴブたちに合掌。


 「消えるのじゃ、灼熱の業火(マグマ・カルマ)!」


 とても物騒で、且つ何処となく経典的な響きを持った技名が叫ばれた。

 声の主はもちろん


 「”焼滅”の魔法だ!早く逃げろぉぉ!」


 電波幼女である。

 俺たち前衛への被害を考えているのか甚だ疑わしい。

 指示を出すやつの声もかなり慌てている。


 超有能だが、暴走気質のある若手社員が平々凡々なその他大勢の社員と対立するのを腹痛と格闘しながら必死にカバーリングする中間管理職の如き哀愁と悲鳴が、彼の声には十二分に含まれていた。


 なので、俺は後退する。


 気付くと何だか熱い。

 暑いのではなく、熱いのだ。

 ふと、後ろをみると、そこに広がっていたのは業火と言って相応しい光景だった。

 あれほどゴブゴブしていたゴブリンたちの姿が火に呑み込まれて姿が全く見えない。


 「やっべ」


 「す、凄まじいな」


 何時の間にか隣に来ていたセルティさんが戦慄している。

 まぁ、足は動かせているようだから問題はないだろう。


 「くはははは、見たか、魔物どもよ!」


 世紀末覇者幼女である。

 俺は彼女に逆らわないと誓った。


 というか、ゴリアテさんらは巻き込まれていないだろうな?


 兎に角そんなバーニングな一撃で誰も敵に近付けない。

 そして、後ろに控えているであろうゴブリンたちの姿も未だ見えてこない。


 「どけっ、下郎ども!」


 そんな時、魔法士たちの後ろから新たな一団が現れる。

 一人一人が高そうな鎧を身に纏い、腰に携えた剣がそれらと動く度にぶつかってガシャガシャとうるさい。まるで、彼らそのものを表しているようだ。


 彼らこそ、今回の討伐における最後の主力部隊、騎士部隊である。

 と言っても、その多くは歩兵で、身分は大抵の者が貴族の私兵である。

 しかし、曲がりなりにも貴族の看板を背負うのだから、相応の実力はあるし、尚且つ面倒臭い性格の者は多い。

 つまり、関わりたくない部類の方々だ。


 今回も、冒険者たちに露払いをさせて、美味しい所を掻っ攫おうとしているのだろう。

 しかし、それに反抗する者はいない。だって、皆目を付けられたくはないから。

 一名を除いて。


 「なんじゃ、貴様、今儂に向かって言ったか?」


 幼女がオコである。

 噴火警報が発令される。

 おいおい、敵を前にして味方で揉め事起すなよ。

 どんな舐めプだよ、全く。


 「チッ、冒険者風情が、ちょっと魔法が使えるからと調子に乗りおって」


 軽口を叩いたつもりかもしれんが、騎士さんや、君は死亡フラグを自ら立てたんやで。


 「消す」


 悪、即、Burn!とか止めて!


 「口論するのは良いけどさ、行くなら早く行ってくれないかな?」


 そこで口を挟んで来たのは意外なことに全身ローブの変質者”翡翠”ナナシだった。

 その声は思いの外若く、軽い口調だった。


 「言われんでも、そのつもりだ!」


 騎士サマの一団はぷんすかしながら未だ燃え続ける火を避けて行ってしまわれた。

 キャスリーには突っかかったのにナナシの言葉には随分あっさりと引いたのが印象的だった。


 「フンッ、いずれ消し炭にしてやろうぞ」

 

 何処からか物騒な呟きが聞えた気がしたが、とりあえず幼女山噴火の危機はとりあえず先送りにされたのだった。

 




 戦闘開始!

 どれぐらい続くかなぁ。


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