人生終わったら始まりそうな件 2
本日3話目です。
明日からは切りの良いところまで一日一話更新です。
多分すぐそれも終わるでしょうが。
それでは、童女(/・ω・)/
スキル
それは男たちの夢。
それさえあれば何でも出来る。
ゴブリンを雑魚扱いして、オークを集団で灰塵と化し、竜を一撃で殺す。
敵と戦えば戦闘チート、素材を叩けば鍛冶でチート、食料使えば料理でチート、スキルがあれば何でもできる。
いくぞォォ、1,2,3、
「もういいですかね?」
みっちーさんはツレナイ奴だ。
「みっちーさんって、もしかして私のことですか?」
もしかしなくてもあなた以外いないでしょうよ。
導き手のみっちーさん。うん、中々良い名付けだな。
「みっちーさん、みっちーさん早くスキル決めましょう!」
「分かりました。それでは、説明しておきます。まず、貴方がファンタジーな世界に持って行けるスキルの数は4つです。そのうち3つは既に固定されており、変更することは不可ですのでご了承ください」
ななな、4つ!?
そのうち3つは既に埋まっていると!?
「み、みっちーさんスキル枠をもう1つや2つ増やしたりなんかは」
「無理です」
ぎゃぴーん
一刀両断とは正にこれですよ。
「はぁ、しょうがないかぁ。それじゃあ、その3つについて教えてもらっても?」
「はい。異世界言語翻訳、アイテムボックス、鑑定の3つになります」
おお!
異世界言語翻訳は兎も角アイテムボックスと鑑定つけてくれてんのか!
「因みにアイテムボックスは魔力量に応じて収納できる量が変わります。そして時間停止機能付きです」
なんと、これは嬉しい大吾さんならぬ大誤算だ。
喜びの舞だぜ、ヒャッホウ!
「お喜びの所申し訳ありませんが、4つ目のスキルを決めてもらっても?」
又もや目の前に画面が現れた。
そこにはたくさんのスキル名がズラリと上から下へと続いていた。
「了解です、ボス!」
今俺に手があったら間違いなくみっちーさんに敬礼していただろう。
さ~て、どれにしようかな。
◇
結論
無理っす、もうお腹いっぱいです。
どんだけスキルあんだよ。
オーソドックスな剣術スキルだったり体術スキル、属性魔法スキルは分かる。
けど、酔拳スキルだったりツッコミスキルってなんやねん!
画面の下にはまだ見ぬスキルたちが出番まだか?と待っているに違いない。
「それなら、スロットで決めたら如何です?」
ん、みっちーさん今なんと?
スロットという言葉が聞えたような
「はい、スロットです」
そうですか・・・
ここまで来てスロットですか。
凄くもったいない気もしますが、ゆとりの私にはこれ以上のスキルロールは苦行ですし、今の所これぞと言ったものでもないので。
「お願いします」
「分かりました。では、どうぞ」
ボンと白い煙と共に現れたのは四角い機体。
と言っても、天辺は半円状でその弧には《Skill Slot》の文字が。
いざ、押そうとなると尻込みしてしまう。やっぱり自分で選ぼうかなと思い掛けた時だった。
「スロットだとスキルロールにないレアなスキルも出ますよ?」
ポチッとな。
俺の右手は動いていた。
それは最早脊髄反射と言えた。
機体からロール音が鳴り響き、その画面中央に一つの球が現れた。
その球が開いたかと思うと、レシート口のような所からジジジと紙が出て来た。
それを機体から引き抜くとスロットは消えてしまった。
残念。
「連打されては困りますので」
邪念がバレバレのようです。
まぁ、気にせず行こう。
そして、紙にはこう書かれていた。
【全自動素材変換】
なんでしょうね、これ。
卵割るスキルじゃないですよね?
「あっ」
みっちーさんなんですか、そのやっちまった的な声は。
ちょっと、これヤバいんですか?ヤヴァイんですか?
「はい、ヤヴァイ奴です、はい」
やっちまったァァ!
ここで主人公補正持ってる奴ならとんでもなスキル手に入れるのに。
そっかぁ、俺の異世界ライフはお先真っ暗だぁぁ
「いえ、途轍もないほどのスキルという意味です」
な、なんですとォォ!
まさかのみっちーさん逆転満塁ホームラン!
これでかつる!
「ど、どんなスキルなんです?」
ワクワクワクワク
「あ、スキルも決まりましたし、これから送りますね」
え、ちょっと
「では、異世界で良い生を送られることを祈って」
天の恵みに感謝していただきます、じゃないんだからさ!
てか、アンタ祈られる側だろうが!
「いってらっしゃい」
片道切符でいってらっしゃいは「帰ってくんな」と同義だからな!!
眩い光に包まれたかと思うと俺の意識はゆっくりと消えて行った。
□■□■
「ふぅ、なんとかなりましたね」
「ホント、勘弁してよ。みっちーさん」
今し方送り出した魂が付けた呼び名で自称《魂の導き手》を呼ぶ声には明らかに意地の悪さがあった。
「すみません、それについては謝罪と感謝を。助かりました」
「いいよ、いいよ。みっちーさんのとこは初めてだし。でも、まぁ、彼もまさかみっちーさんのくしゃみが原因で死んだとは思わないよねー」
声色は明らかに笑っている。
片方の声はそれに返事をすることはない。
今回の進藤陽太の死の発端が己であるのは事実だからだ。
「それにしても偶々みっちーさんが視ていたチャンネルで、偶々みっちーさんがくしゃみをして、偶々みっちーさんと波長を合わせられた青年が、そのくしゃみに驚いてコケて、偶々頭を強く打って死ぬとか、これもう悲劇通り越して喜劇だよね?」
笑いを堪え切れなくなったのか、その声はしばらく笑い続けた。
一方責められた方としては黙って耐えている様子が窺える。
一頻り笑い終えるとその声は告げる。
「まぁ、僕らって存在は彼らにとってすれば不条理なもんさ。それに僕らにとっても彼ら一人一人は気に掛けるほどの存在ではないのもまた事実。言い方は悪いけど魂一つの為にそこまで落ち込む必要は皆無だと僕なんかは思うよ」
厳しくもそこには確かに思いやりが込められていた。
何だかんだ言いながらも、声の主はみっちーさんを嫌ってはいなかった。
「ありがとうございます。こんな私が言うのも可笑しい話です。自分の不始末を貴方に放り投げるのですから。それでも、どうか、あの魂の行く末を見届けてはもらえませんか?]
それでも、地球の神は祈った。
他の理を持つ世界の神に。
沈黙があった。それは一瞬にも思えたし、もしかすると千秋もの時間が流れたかもしれない。
溜息を一つつくと、神は言葉を発した。
「君は頑固だよね~ホント。分かったよ、こっちでも様子は見ておくから。くれぐれも引きずって自分の責務を怠ったりしちゃいけないよ?ただでさえ、減っている神力を彼の為に費やしたんだ。無理もしない。いいね?」
「はい、ありがとうございます。どうか、彼を、私の子をよろしくお願いします」
その声には深い感謝と安堵が篭っていた。
「はいよ~、んじゃ、またね~」
こうして神々の会話は終わった。
そして此処より一人の青年の物語が幕を上げる。
みっちーさん人格崩壊してないかと思うかもしれませんが、あれは恥ずかしがり屋が一生懸命演技をして真実を隠そうとしたぐらいな感じで軽~く流して下さると助かります。