女性は強い
それでは、どうじょ(/・ω・)/
「ギャギャッ!」
「ギャ~ギャギャ!」
「ギャッギャギャー」
うん、大体なんて鳴いてんのかは想像がつく。
だってセルティさんを見る目がヤヴァイんですもの。
とりあえず鑑定すっかな。
種族:ゴブリン
性別:雄
スキル:繁殖
種族:ゴブリン
性別:雄
スキル:繁殖
種族:ゴブリン
性別:雄
スキル:繁殖
うん、以前見た奴と違いはなさそうだな。
欲を言うならレベルとかヒットポイント的な数値が欲しいよな。
高望みなのだろうか、いや、しかし、欲しいのは事実。
いや、今は置いておこう。奴さんも本気だし。
「セルティさん!」
「ブーストッ!」
早速、十八番の身体強化魔法を使って飛び出した彼女。
俺は何のために声を掛けたのだろうかと思わなくもない。
「ああっ、もう!」
孤立させないように彼女の後を追う。
装備ボーナスで俺自身かなり身体能力上がっているから、離されはしないもののカバーが大変だ。
「せやぁぁぁっ!」
複数の内の一匹に上段から剣を振り下ろすセルティさん。
「ぐぎゃっ」
情けない声ともつかぬ音を発し一匹は倒れ込む。
あれはもう動けない筈だ。
しかし、残りの奴らは怯むことなく、一瞬硬直した雌の隙を逃さない。
動きが以前見た奴とは異なる印象を受ける。
何と言うか恐れを感じていないというか麻痺しているというか。
もしかすると、雌の生物に対してのみ狂暴化するとか野生化が促進するとかそんなのだろうか。
だとすると、途轍もない特性であり、やはり女性の敵すぎる。
となると俺がやるべきなのは、
「はいはい、がっつく男は嫌われる、ぞっ」
彼女に飛び掛かろうとしていた前方の二匹に懐からあるものを取り出しすぐさま投げつける。
それを顔に受けた二匹は途端に叫び声をあげる。
カラミ玉:カラ草を主とした投擲用アイテム。その辛みは目鼻口、何れから体内に入っても耐えがたいが、肛門に入ると生死の狭間を彷徨う。
中々ドギツくそして有用なアイテムだ。
ただ、フレンドリーファイヤには十分に気を配る必要がある。
因みに素材費用ゼロ、人件費ゼロ、魔力チョビットで出来上がるとてもリーズナブルな代物なのでアイテムボックスには幾つもストックがあるのは秘密である。
「セルティさん!一旦さがt」
「てやぁぁ!」
俺の指示は空しくも彼女の声に掻き消される。
そして横一文字に振り抜かれる剣。
純粋な欲望にて突き進んで来た雄二匹だったが、あえなく沈んだ。
同情はしない。
前世で勇ましい同級生がこんなことを言っていたのを思い出す。
「右手には右の玉を、左手には左の玉を生殖器には性SHOCK危機を」と
そんな彼女は靴や制服や鞄と至る所に金属板を仕込んでいた。
それがナニに使われるのかは想像に難くない。
結局、何が言いたいかと言うと、欲望を制御できない獣は淘汰されるのみ、ということである。
そこには一寸の憐憫もあってはならないのだ。
倒れた三匹の後ろには更に二匹のゴブリンが残っていた。
これらに関しては詳細は分かっていない。
つか、なんか構えてるって!急いで鑑定!
種族:ゴブリン
性別:雄
スキル:繁殖 弓術
種族:ゴブリン
性別:雄
スキル:繁殖 弓術
まさかのゴブリンアーチャー的な?
兎に角一旦身を隠すべきだ。
咄嗟に近くの木の陰に飛び込む。
と、同時にヒュンと風を切る音が通り過ぎて行った。
危なかった、と溜息をつく間もなくセルティさんの様子を窺う。
どうやら彼女も避けられたようで木の陰にいるのが見えた。
ホッとしたのが正直な所だ。
そしてこの状況の打開策を考える。
単純なのは一方を囮とし、もう一方がその隙に二匹の内の一匹を始末する策。
そうすれば二対一の構図に変わり、後は然程苦労せずに残りの一匹を倒せる筈だ。
しかし、この場合囮の一人にそれなりの負担が掛かる。
何しろ二匹の注意を引き続なければならないのだ。
もし、少しでも動きを止めようものなら、残りの一人が動けなくなってしまう。
この場合俺が囮になるべきなのだろうが、正直逃げ切れる自信はある。しかし、セルティさんに奇襲突撃は不可能なのではないかという疑念が残るのだ。よく叫ぶし。
かと言って囮を彼女に任せられるかと言うとこれもまた不安しかない訳で。
と、今の状況はかなり分が悪いというのが俺の考察である。
カラミ玉を投げてもいいが、恐らく当たらない気がする。
ゴブリンアーチャー(仮称)だし、投擲くらいは警戒しているだろう。
それにあまりにブツを投げると一体何処にそんなものを仕舞っているのかという疑問をセルティさんに抱かれてしまう。
なんか、考える度に泥沼に浸かっていくな。
これは悪循環だな、止めどがない。
んだらば、取るべき手段は一つっきゃねぇ。
「セルティさん、ここは一旦退きましょう!」
「何を言っている!討つべき魔物を前にして逃げるなどあり得ん!」
オウ、マジでこの人中位冒険者か?
状況判断が滅茶苦茶すぎる。
「この状況では無傷とはいかない!悔しいかもしれませんが、ここは堪えるべきです!」
「冒険者が怪我を恐れてどうする!」
ハイリスクローリターンなんて有り得ないっつうの。
「危険に対しての見返りが割に合わないから提言しているんです!」
「我々は商人ではない!冒険者だ!益、不益で物事を計るな!」
これは駄目だ。
どうやったって彼女は動くまい。
もうどうすりゃええねん。
「ぎゃぴっ」
「ぎゅぽっ」
頭を掻き毟っていると突如そんな音がした。
音の根源を探ると弓矢を構えていたゴブリンたちが倒れていた。
「な、新手か!」
セルティさんは身構えているが、やった所で俺は無駄だと判断した。
なんせ全く気配を感じなかったのだ。
二匹に刺さった矢の音も、矢が飛んで来た方角も、射た人物の場所や存在すら全く。
立ち上がって両腕を上げた。
馬鹿と言われようが何だろうが、ここは合図を出すべきだ。
人がいると、敵意はないと。
「あら、シンド君だったの?大丈夫だったかしら?」
その穏やかで優しい声には聞き覚えがあった。
「ローザさん?」
歩いて来たのは金髪巨乳人妻鑑定士エルフことローザさんだった。
こう考えてみると彼女、属性過多な気がしなくもない。
皆さんはセルティ派、シンド派どちらでしょうか。
うまひは酢醤油派です。ラー油はなしで。




