面倒は大概まとめてやって来る
本日二話目です。ご注意ください、
それでは、どうじょ(/・ω・)/
「だ・か・ら、何で態々声出して突っ込んで行くんですか?さっき言いましたよね!」
「ぐ、ぐう」
「セルティさん、今回の依頼内容は何ですか?」
「・・・」
「薬草の採取でしたよね?
どうして魔物に突っ込んで行くんです?」
「・・・(プイッ)」
美人の膨れっ面は悪くない、寧ろご褒美だが、それとこれとは話がセパレイトだ。
先述の通り、俺と彼女は薬草採取の依頼を受けてセルムの街近くの森に足を運んでいた。
成功報酬は正直物足りないが、依頼自体はそれほど難易度も高くないので、難なく終わると思っていた過去の俺をぶん殴って電気あん摩してやりたいほどの激情に今は駆られている。
何を隠そう、このセルティさん、魔物を見ると一目散にそちらに向かって駆け出す無鉄砲振りなのだ。
「嬢ちゃん」というタイトルで俺は彼女の伝記を書こうかと思ったほどである。
そして、彼女、更に余計なことに大声を出し、音を立てながら向かって行くもんだから、大抵の場合奇襲が成功することはない。
そのまま魔物が逃げてくれれば御の字だが、そんな気の優しい奴らばかりではない。
怒りの眼差しで睨まれ、途端襲い掛かられるのだから俺としてはたまったものではない。
そして愚直にそんな行動を繰り返すもんだから、本題の依頼は一向に進まず、紳士さに定評のあるシンドも遂には我慢の限界が来た訳である。
「あのですね、我々は薬草を採りにいている訳です。それなのにやたらと魔物に喧嘩吹っ掛けてたら何時まで経っても依頼がこなせないでしょう?」
「・・・分かっている」
不承不承と言った様子だ。
これはちゃんと反省、出来てないだろうなぁ。
俺も転生者故の間抜けっぷりを晒すことは偶にある。
でも、彼女のは違う。何と言うか、地に足が着いていないという表現がぴったりな気がする。
兎に角危なっかしいのだ。
まぁ、お嬢だから仕方ないと言えばそれまでなのだが。
(にしても、こりゃあとんでもない地雷押し付けられたな)
セフカトーレさんの所に行った日から色々と考えていたが、あのババ、老婦人は孫娘を本気で引き戻そうとしているのだろうか?
本気なら有無を言わさず引っ張って帰ればそれで済みそうなもんだが、やはり体面を気にして手が出せないのだろうか。
いや、あの食えなさそうな老婦人なら難なく実行できそうな気がする。勘でしかないが。
ということは今現在セルティさんを家に戻せない事情があると見た方がいい気がする。
それが何なのかは全く見当がつかないが、とりあえずそれまでの間は面倒看よう。
これ、普段全く縁のない親戚の子を預かった感じだろうか。
酷く面倒臭い。
ホント、最初の喜びを返して欲しい。
手の平クルックルしてるって?
馬鹿野郎、冒険者シンドは風見鶏、風の吹くまま気の向くままがモットーなんだよ。
綺麗な花には棘がある?
ふざけんな!自爆装置の間違いだろうが!
美女(地雷持ち)なんかクーリングオフに決まってんだろ。
チキショウ、ああ、俺の心のオアシスはルセナさんとローザさんだけじゃあ。
二人とも人妻だけど。
へ、悔しくなんかないからな!本当だからな!
なんてったって俺にはあのおっかない婆さんとこのメイドさんがいるからな!
ああ、そう言えばガルセナ元気かなぁ~
・・・・・・
いかんいかん逃避するところたった。
「だったら、まずは依頼達成のために動きません?もしも、その後で余裕があれば魔物狩りお付き合いしますから」
「・・・(コクリ)」
どうやら拗ねて無言モードに突入してしまったらしい。
ただ、ちゃんと反応はしてくれたので大丈夫だと思いたい。
◇
「な、何故私が!」
「いや、説明したでしょう。自分は持っているスキルの特性上採取は無理だから、セルティさんにそこはお願いしたいと」
これも依頼受ける前に前以て言った筈なんだが。
「それは確かに聴いた。しかし、」
何やらはっきりとしない語尾。
何かあるのか?
「セルティさんは採取については問題なく行えますよね?」
「・・・い」
「はい?」
小さくてよく聞えなかった。
「・・・・・ない」
何がないって?
「どれを採って良いのか分からないのだ!」
ああ、さいですか。
そんな事でしたら多分大丈夫っす。
「えーっと、あったこれですね。あとは、そっちの、そう、それです」
結局、俺が目当ての物を探し、見つけたらセルティさんがそれを採るというなんとも効率の悪い方法で薬草を採取していた。
それでも、流石お嬢様。
虫が怖いのかおっかなびっくり草花を触る仕草は大層萌えであった。
若干涙目だったのもポイント高い。
これって、ちょっと考えると俺が仕事を押し付けるクズ男のような役回りに見えるかもしれないがそれは大いに誤解である。
俺は《全自動素材変換》大先生のせいで己の意思に関係なく素材を物に変換してしまう奇妙なボーイなのだ。
とどのつまり不可抗力でどうしようもないということだ。
決して自らの欲望の為とか、憂さ晴らしでは断じてない。
そうして薬草を採り終えると、セルティさんは酷く疲れた顔をしていた。
これは即帰宅コースに違いない!
「セルティさん、今日はもう戻ります?」
「そ、そうだな。正直今日はもう休みたい」
よっぽど精神が削れたらしい。
可哀想に。この一日、というよりここ一、二時間でだいぶやつれたようだ。
全く、誰がこんな酷い真似を!
よし、帰ろう!
今すぐ帰ろう!
え?
これは決して喜んでいる訳ではないし、進んで帰ろうとしている訳でもないぞ。
わたしはひじょーにざんねんだ、悔しくて欠伸が出そうなくらいには。
「ギャギャギャ!」
しかし、そんな喧しい声が俺の甘い幻想を打ち砕いた。
薄汚れた緑色の肌を晒した醜い小鬼が姿を現したのだ。
そう、ゴブリンである。
俺は心底思った。
(空気読めや!!)
そんな心の叫びが通じたのか、彼らは襲い掛かって来た。
単体ではなく団体のお客様であった。
(団体で来るなら予約しとけ!)
非常に迷惑な御客様であった。
なんか筆(?)が乗りました。




