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魔装の冒険者~素材が採れねぇ、このスキル~  作者: うまひ餃子
新米冒険者頑張りま章
25/37

うっかりシンドBAD

 そいでは、どうじょ(/・ω・)/




 「つまり、おいどんはセルティさんの肉壁という解釈でいいのでしょうか?」


 「違う、相棒を兼ねた盾だ」


 「あんまり大差ないんじゃないですかねぇ?」


 あの黒歴史直行な敗戦の翌日。

 俺はグスタフさんに説明責任を果たしてもらうべく彼の下に押しかけていた。

 本人の知らない所で勝手に話が進められているという、もし某訴訟大国であったならば、担当弁護士が「勝ったも同然だからハンバーガー食いに行こうぜ」などと終始余裕に満ちているであろう案件について私シンドは声高に異を唱えた。

 そして簡単に説明を受け、己なりに解釈すると上記のような考えでまとまる。


 「俺より強い人なんていくらでもいるんじゃないですか?」


 「強いだけならな。そこに「心配のない」ってつく奴がいないからな」


 冒険者という輩はやはり信頼に欠ける者たちの集まりなのだと実感する。

 大抵は男、しかも見た目はまぁ堅気じゃないし、礼節なんて欠片もないし、挙句学もないときている。

 中には人生経験を得て、洗練されていったニュータイプ冒険者なる存在も確認できているが、一般人からするとあまり大差ないという印象なのである。

 

 「お前は嬉しくないのか?あいつは中々の美人だろ?」


 「さっきの話をした上で、よくそんなこと言えますね」


 何が面白いのか、小さく「くくく」と笑うスキンヘッドマン。

 その頭にニガ草を植え付けてやりたいが、ここはクールに我慢だ。


 「そう言えるお前だからだ。まぁ、地力で言えば嬢ちゃんの方がお前より上だ。はっきり言ってお前は弱い。それでも、お前には何と言うか緩みがある。逆に、嬢ちゃんにはそれがない。張り詰めっ放しなんだ。上手く手助けしてやってくれ」


 褒められたのか貶されたのか今一つ理解に苦しむが、兎に角、彼女─セルティさんには仲間が必要だというのは何となく理解した。


 「それで、あのー、もしかしてなんですけどね?彼女ってもしや貴い御身分の方だったりします?」


 ネトゲでリアルについて詮索するのはNGというのは最早常識と言っても過言ではないが、お生憎様、ここは現実という訳でして、情報収集やっちゃいまーす。


 この質問についてだが、彼女の名前を見た際に名字を持っていたことを宿に戻ってから気付いたことに起因する。マーシーさんに尋ねたところ、基本は貴族しか名字は持たないそうだ。例外もあるそうで、自称で名乗ったり、一定の地位を築き上げた商人が自信の店名からつける兼屋号の意味合いがあったりと必ずしも名字持ちが高貴な身分という訳ではないらしい

 


 「・・・それは本人に訊け。俺が言う事じゃない」


 もうそれ答え言っちゃってないか?

 ま、彼女は多少お肌や髪が荒れてはいたものの、それでも十二分に整った容姿に崩れは見られなかったし、佇まいが何処となく洗練されているというか、浮世離れしているというか、普通じゃないということは一見すればすぐに分かった。


 「そうっすね。失礼しました」


 漢シンド。

 引き際は心得ている。

 この話題はこれまで、と。


 「そいで、パーティ組むのは良いんですけど、具体的にどんな感じでやって行けばいいんですか?」


 そう、何を隠そう俺はこれまでボッチでやって来た訳だ。

 雨の日も風の日も晴れの日も。


 好き勝手にやっていたので団体行動というものに若干の忌避感すら覚えている現状。

 俺は一体どうすれば良いのだろうか。


 「はぁ。期待していなかったが、そこまでだったとは」


 溜息酷い。

 新社会人に「見てたよね?それじゃあ、明日から同じことやってね?」って言うぐらい酷い。

 え?ゆとりですが何か?


 「まずは会って話をしろ。それで目先の仕事の話ではなく目標を決めろ」


 「目標?上位冒険者になるとか?」


 「そうだ。そしてその目標の前にどういった壁があるのか。それらを乗り越えるために必要なのは何か。その必要な何かを手に入れるためにはどうすれば良いのか。そういったことをしっかりと話し合うことが大事だ」


 すごく合理的と言うか現代チックなセオリーだな。

 ただ、


 「それを実践している人って、ここの冒険者にいます?」


 「・・・・・・」


 無言の沈黙程分かりやすい答えはない、そんな下らないことを考えてしまった。

 冒険者という奴らはその日の飲み食いする金を稼げればいいと考える者が大半であり、何らかの目標や目的意識を持った者など俺は今までに一度も見たことがなかった。


 「それに、彼女と連絡を取る手段が俺にはないんですけど」


 これは俺の不手際と言える。

 連絡手段の確認を怠ったのは不覚だった。

 しかし、俺は開き直る。

 決して自分が悪いとは言われないように。

 

 え、なに?

 ゆとりですがなにか?


 このフレーズが便利すぎて怖い。


 「それなら向こうにお前の宿泊場所を教えてある。お前の依頼を受けている大まかな時間も一緒にな。だからそれについては問題ない」


 ほうほう、う?

 ちょいと抹茶

 それはアレかい?

 俺のこじぃーんな情報をリークしたと?


 「それ以外にどうする。お前に嬢ちゃんの情報を知らせた方が良かったか?」


 「いいえ、結構です」


 それはそれでイケない気がする。

 しかぁし、それにしてもシンドの扱いが雑な気がする。

 ここは断固たる抗議をせねばなるまい。


 「なら、もういいだろう。ほら仕事しろ、仕事」


 何か依頼書押し付けられた。

 あ、シッシッって酷い。


 

 えーっと、内容は”お話”・・・これだけ?

 一体どういったご用件?



 ◇



 うへー、デケーや。

 何がって?そりゃあもちろんアレだろう。


 (この家半端ないな)


 俺が今居るのは貴族が多く居を構える地区である。

 セキュリティ固い上に雰囲気が独特で少々気が重い。

 例えるなら上流階級のパーティーにに一人だけ平民が放り込まれたような、あの感覚。

 まさか己の身を以て実感するとは思わなかった。

 

 一応、フードは脱いでいるけど、それでもローブ姿は目立つ。

 さっさと依頼をこなしてバイナラさっさと退散したい所である。


 「あのー、冒険所ギルドからの依頼で参りました、シンドと申します」


 「それを証明できるものは」


 門番さんは愛想がなかった。

 依頼書と冒険者カードを差し出す。

 俺はこの二つを生贄に「信用」を召喚!


 「ふんっ、待っていろ」


 そう言って門番さんは家の中に走って行ってしまった。

 そう、冒険者カードを持ったまま。


 ノオオオオオオオオオオオ


 ああいうのって見たら返すものじゃないのか?

 それとも俺が不用心なだけか?


 まぁ、何を愚痴ってもどうしようもないし、とりあえず待つか。

 



 

 

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