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魔装の冒険者~素材が採れねぇ、このスキル~  作者: うまひ餃子
新米冒険者頑張りま章
19/37

思いの外あっさりと

 ほんとあっさりと




 「おらあぁぁぁ!」


 おい、ちょっと待て。

 まだ鹿頭巾被ってねぇ。

 つか、お前が持ってるその獲物、何か金属っぽくて先が尖ってないか?


 頭巾を被り、危ないのでとりあえず横に避ける。


 「なっ!」


 何を驚くことがあるんだよ。

 刃物持って襲い掛かれたら普通避けるだろうよ。


 「避けてんじゃねぇぇぇ!」


 「ふざけてんだろぉぉぉ!」


 コイツの言動はちゃんちゃらおかしい。

 凶器避けなかったらdieな未来しか待ってないだろうが。


 右へ左へステップステップ、なんか反復横跳びを思い出す。

 こんな命懸けの体力テスト俺は知らんがな。

 にしても体が軽い。やはり、これは装備のおかげだろう。いや、本当にスンバらしい!


 「何笑ってやがる!」


 いやね、全力で足踏みすると自然と笑っちゃうだろ?

 階段ダッシュとか。

 つまり、


 「自然と笑っちまうんだよ!」


 こういうこと。


 「最下級が調子乗ってんじゃねぇぞぉぉぉ!」


 断じて乗ってない。

 いくら避けられているといってもローブの下に着ている装備は感覚や身体能力を強化してくれるが、着用者の体力までは底上げしてくれない。

 つまり、激しい運動をして自身のスタミナが減って行けば、自然と動きの質も低下していくという訳だ。


 「ハァ、ハァ、クソがッ!」


 「お下品ですよ、先輩」


 剣を全力で振り回していたせいで早くもデジレの息が切れている。

 見た目は中肉中背だが、あまり鍛えていないのかもしれないな。

 

 そんなデジレの攻め方は主に二種類。

 上段からの振り下ろしと横払い。

 振り方を見る限り、扱いに慣れてはいるが、熟練さは感じられない。

 足捌きも洗練とは到底言い難く、雑な印象を受ける。


 「チクショウがぁッ!」


 これは、もしかすると焦っているのか?

 最下級に落ちるのがそんなに嫌なのか。

 なら、悪いことしてんじゃねぇよと言いたい所だが、後の祭りだな。


 「おいおい、あれが下位十級の動きかよ!」

 「単に、デジレの野郎がへぼいだけじゃないか?」

 「にしたって、【雑用】の動きのキレは明らかだろうよ」

 「俺にはどっかあの動きが歪に見えんだがなぁ」

 「てか、何被ってんだ、アイツ?」


 ギャラリーたちが盛り上がっている、のか?

 やいのやいの好き勝手言っている。

 鹿装備のおかげで筒抜けですぜ、グヘへ。


 やっぱり着といて良かったな。

 一家に一式、、鹿シリーズ。

 そこの貴方も如何?


 「・・・・・・」


 グスタフさんは沈黙状態だ。

 何かすごぉ~く視線を感じるが、気のせいに違いない。

 

 「ッ、オラッ」


 気を抜いていたのが悪かった。

 突然、デジレが胸の内から取り出した何かをこちらに投げて来た。

 顔面直撃コースだったので、腕を出して庇う。


 ガン!


 いってぇぇぇ。恐らく投げられたのは石だろう。だって、硬かったもの。

 硬いもん投げて来やがって、と思ったら奴が近付いて来ていた。

 相手の視界を奪ってからの奇襲。単純だが、嵌れば効果的な手だ。


 「死ねぇ、雑魚がっ!」


 あ、そう言うこと言っちゃうんだ。

 ふ~ん、そっか~。

 これは君の罰の重さを決める闘いのはずだよね?

 それなのに顔面投石からの殺意の籠ったその目。

 こっちもね、かなりイラッとはしてるんですわ。

 変に絡まれて、金せびられるわ、今の所は実力を隠して後々、実はツエー奴でした、みたいにしたかったのに。

 分かった、よぉ~く分かった。

 アンタがそのつもりならこっちもその気でヤるけど構わないよね?


 剣筋ギリギリに体を逸らし、左足を後ろに引き、もう右足に力を入れる。

 狙うはもちろん顔面。


 「オメェはちったぁ反省しろやァァァ!」


 右膝を軽く沈めてその反動で引いた左足を引き戻す。


 バシィィィィン!!


 見事に顔から吹っ飛んでいく。

 カンフー映画でも滅多にお目に掛かれないふっ飛び方だ。

 デジレが跳ねる、転がる、そして止まった。

 鹿シリーズの一番の売りはやっぱりこの脚力強化だよな、うんうん。

 転がった奴はビクンビクンしてるけど、死んでないからオールオッケーモーマンタイ。

 

 「ん、勝者、シンド」


 グスタフさんがデジレの様子を確認してから決着を告げる。

 あーいむうぃなー、いぇーい。


 「約束通り、デジレは下位十級に降格とし、シンドを下位七級に昇格とする」


 ホワッツ?

 聞いてませんぜ、どゆこと?




 ◇




 「それにしても、お前結構やれたんだな」


 「ガルボロのおっさんにも散々扱かれましたから」


 半分嘘です。

 鹿シリーズのおかげっす。


 現在グスタフさんにドナドナされてギルド内にある個室で対談中。

 個室にガタイの良いスキンヘッドなおっさんと二人っきり、即ちマントゥーマン。

 

 「そうか、まぁ、アイツならそうだろうな」


 以前聞いたのだが、二人は旧知の仲らしい。

 強面で美人なお嫁さんを持つという共通点ありありな二人は仲が良いのも頷ける。

 因みにグスタフさんのお嫁さんもナイスバディな方だった、とここに添えておく。チッ


 「それで、昇格についてなんですけど、あれは一体」


 「ああ、仮にも中位の冒険者に完勝したんだ。そんな奴を最下級で燻らせておく訳にもいかないだろう」


 「でも、勝手に昇格決めちゃって良いんすか?こういうのって正式な手続きとかいるんじゃ」


 昇格は嬉しいけど、悪代官と越後屋みたくなるのは勘弁願いたい所だ。

 まぁ、グスタフさんのことだし大丈夫だとは思うが。


 「下位の級位に関しては職員の裁量で融通が利いたりもするんだよ。まぁ、色々と条件はあるがな。兎も角お前の昇格には不正の類はなく歴とした評価によるものだということは理解しておけ」


 ラジャー。

 まぁ、棚からぼた餅っぽいけどここは素直に頂いておこうか。


 「で、あれほどの動きができるお前が昇格しようとしないのは何故だ?」


 「採取したものが片っ端から物に変わるからです」とは口が裂けても言えない。

 流石にスキルに関わることについてはお口をチャックしないとガルボロのおっさんから今度こそ”撃滅の右”を頂戴しなければならなくなる。

 あの人頭おかしいんだ。なんで人間が素手で石を割れるんだよ。


 話が逸れた。


 それでも、グスタフさんは信頼できるマッチョだし、スキル内容については黙っておいて、それとなく話しておくか。


 「持っているスキル関係でちょいと問題がありまして、すいませんこれ以上は」


 「なるほど、スキルか。分かったこれ以上は何も聞くまい」


 ほっ、話の分かる人だなぁ、顔は完全に盗賊の頭領だけど。


 「ん?」


 ギロリと睨まれてしまった。

 勘が鋭いな。自重しとこう。

 

 「級位が上がったんだから、今度は依頼で(・・・)街の外へ出ろよ?」


 あ、やっぱりちょくちょく出てたのは知ってたか。

 バフのおっちゃんにでも聞いたんだろう。


 「善処します」


 級位が上がった所で【全自動素材変換】大先生に掛かれば、採取しようが討伐しようが、大差ないのだが、ホントどうすっかね?





 この主人公はツッコミ系です。

 ボケ系ではないですのでご注意を。

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