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魔装の冒険者~素材が採れねぇ、このスキル~  作者: うまひ餃子
新米冒険者頑張りま章
14/37

ミクラムのお助け人

 それでは、どうじょ(/・ω・)/




 冒険者になってもう一月ほど。

 今日も冒険者シンドの朝は早い。

 

 「お二人ともおはようございます」


 「はい、おはようさん!」

 「おはよおございますぅぅ」


 マーシーさんの豪快な返事にサリネちゃんの夢見心地な返事と、リア充宛らの素晴らしい朝の始まり。

 コークさんの作った上手い朝食をがっついて、エネルギーチャージは完了。


 「それじゃあ、行って来ます」


 マーシーさん一家のお見送りを受けて朝早くから冒険者ギルドへ。

 案の定、依頼板と受付前には人の波ががが。

 やはりこの時間帯はグスタフさんの受付にも列が出来上がっている。

 いつも通り、ちょっと待つか。


 数十分ほど経つと人の波もだいぶ落ち着いてきたので、ギルドの中にある店で買った飲み物を片手にグスタフさんの元へ行く。


 「お疲れ様です。これどうぞ」


 「おう、ありがたくもらっておこう」


 そう言って腰に片手を置きぐびぐびと飲んでいく姿は正に熊。

 川に入ったら素手で楽々と鮭を掬いあげられそうな、そんな風格がある。

 グスタフ熊が飲み終えると、今日の依頼についての話し合いが始まる。


 「で、今日もか?」


 「はい、何か良い依頼はないですか?」


 「ああ、あるぞ。選び放題だ」


 そう言って出された紙を見る。


 庭の草抜き

 家の引っ越し手伝い

 荷物運び

 etc...


 相変わらず気の抜けそうになるほどの穏やかな依頼内容。

 しかし、これらが俺の生命線なので決して粗雑には扱えない。


 はてさて、如何しよう。



 ◇



 「ありがとね、シンドちゃん」


 「いえいえ、仕事ですから」


 そう言いつつ俺は物が入っているであろう木箱を抱える。

 ぐぬぬ、重い。


 今やっているのは引っ越しの手伝いで、荷物を馬車に運ぶ途中なのだ。

 依頼主のお婆さんは元々旦那さんと暮らしていたらしいのだが、今から一年前にその旦那さんも亡くなり一人暮らしをしていたそうだ。

 そんな母親を心配したアヴィス王国の王都に住む実の息子から一緒に暮らさないかと誘われ、この家を引き払うことにしたとのことだった。


 「ふふふ、無理しなくても大丈夫よ」


 そうは言いますが、こちとらお金掛かってるしな。

 その分はしっかり働きませんと、こっちも落ち着かないってもんだ。


 「シンドちゃんは真面目ねぇ、冒険者なんて思えないわぁ」


 これでも下位十級、立派な冒険者で御座い。

 おっと、まだ荷が残ってるな。



 

 なんとか荷を運び終えると依頼書にサインをもらう。

 依頼料は既にギルドに支払っているというのに手間賃と言って銅貨数枚を手に押し込まれた。

 この甘やかしっぷりまるで孫扱いだ。

 

 「シンドちゃんは私の孫も同然よぉ」


 今日、初めて会ったのにもかかわらず、この好感度の高さは如何なる訳か。

 皆目見当がつかない。


 それからギルドに戻りグスタフさんに書類を提出し、依頼完了。

 

 「ほれ、次のだぞ」


 差し出された紙を持って次の現場へ。

 次は、おぅ、荷運びか。

 腰痛なんてなんのそのだ、こんちくしょーが。




 これを日に数度繰り返し、日が落ちる頃に漸く俺の冒険者業務が終わりを迎える。

 最後の依頼を終え、ギルドに戻る。


 「お疲れさんよ。ほれ、預かっていたものと、今日の報酬だぞ?」


 そう言ってグスタフさんがカウンターに上げたのは行く先々で貰う依頼主たちのお気持ち(・・・・)とギルドから支払われる報酬代金だ。グスタフさん、笑い事じゃないって。【アイテムボックス】使えりゃ楽勝だけど、周囲に人の目があるこの場で使うことは出来んのだから。

 最近、やたらと食材やら物やらをくれる皆さん。しかし、日に幾つも掛け持ちして仕事をする下位十級冒険者にとってその気持ちは足枷になる。なので、グスタフさんにお願いしてその日の依頼が終わるまで持ち帰った物を預かっていてもらっている訳である。

 朝の飲み物プレゼンツにもこういった事情が裏にあるのだ。


 「はいはい、合わせて銀貨一枚と大銅貨一枚、確かにいただきます」


 これが今日の俺の稼ぎだ。

 中々稼いでると思うかもしれないが、このほとんどが宿代と食費に消えていくのだ。

 はっきり言ってその日暮らしもいいところなのである。


 「お疲れさん、明日はどうする」


 「明日は、お休みします。明後日ってグスタフさんは?」


 「おう、いるぞ。それなら明日はしっかり休んでおけよ。冒険者は休むのも立派な仕事だ」


 「ういーっす。んじゃ、失礼しまーす」


 俺もだいぶ慣れて来たもので、今ではこんな口調だ。

 目が合った受付のフロイライン方にも頭を下げながら、ギルドを後にする。




 ◇




 「これ、いつものです」


 そう言ってマーシーさんに依頼人の方から頂いた食材の入った袋を渡す。


 「ホントよく貰うね~」


 「何ででしょうね?あ、何時ものようにお願いします」


 「あいよ!食費分は引いとくよ」


 これが値引き戦術、食材持ち込みである。   

 もちろん依頼人の方にも許可は貰っている。

 ありがたやありがたや。



 「へぇ、明日はお休みかい」


 マーシーさんに明日の予定について伝えると意外そうな顔をされた。

 何故だろう。


 「そりゃ、働き詰めだった《ミクラムのお助け人》が休むって言うんだから驚くよ」


 オタスケニン?

 俺は針の入った筒を指でクルクル回したりしないし、昼行燈の方でもないのだが。


 「何です、それ?」


 「知らぬは本人ばかりとは言ったものだねぇ。アンタこの街に来てから、住民たちの依頼片っ端から受けてるだろう?それで噂が広まって誰が言ったのか、そんな風になってんのさ」


 へー、そうなのかぁ。

 だけど、《ミクラムのお助け人》よりも《便利屋シンド》とかの方が格好良いよな。

 でも、便利屋って呼べるほど技能もないから「お助け人」の方が俺には気楽で合ってるか。


 自室のベッドに背中からダイブする。

 ちょっと硬いが、慣れたものだ。

 目を瞑る。


 「にしても、お助け人とはなぁ」


 金の為に働いていたのにそんな風に呼ばれているとは思いもしなかった。

 ギルド内では一向に討伐・採取系の依頼を受けないから変人扱いだし。まぁ、変なのは事実か。

 底意地の悪い奴なんかはワザとぶつかってきたり、陰湿な奴だと荷物を持ってる時に足を掛けて来る。

 そういう奴らにはまぁ、しっかりと後でお返しをするのだが。


 「悪くないな」


 冒険者になった当初は、ランクアップだ、フラグは何処だと急いたものだが、今ではこの生活にすっかり慣れてしまった。


 「今日の分を合わせたら、五日分ぐらいはあるか・・・・・よし、久し振りに行くか!」


 コツコツと食費と宿代以外は貯めてきた全財産。

 恐らく、生活費五日分くらいは貯まっている筈だ。

 この生活も決して悪い訳ではないが、これを生涯続けていくつもりかと訊かれると答えは否だ。

 あくまでも目標は凄腕冒険者。

 その為には少々の危険は仕様がないだろう。


 「んじゃ、さっさと寝ますかぁ」


 早寝早起き、これぞ資本よ。



 

 人に好かれるって羨ましい、、、

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