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第90話 魔族迎撃戦(2)前編

 《レルムンガルド》に火の手が上がっていると、突然凶報を知らされる事になった魁人達。


 「そ、それで、今分かって事教えてくれる?」


 俺は未だ動揺を引きずったままではあったが、すぐに詳しい報告を聞こうと、玉座の間へ駈け込んで来た《悪魔族》の女戦闘員に声を掛けた。


 「は、はい。 私が針路の確認を行っていたところ、前方に見えた《レルムンガルド》の街の東部辺りから、火の手が上がっているのを確認しました。 また、ハッキリ何であるかの確認は出来ませんでしたが、その東部辺りに、非常に大きな動く者も確認しました。 恐らく、《グヴェルギュオス》率いる《魔獣》や《魔物》達が攻め入ったのではないかと。」


 「なるほど・・・。 教えてくれてありがとう。」


 「い、いえ。」


 「報告ご苦労。 引き続き針路の確認に当たっていてくれ。」


 「はいっ!」


 報告を終えるのを見計らって、リルドミナが《悪魔族》の女戦闘員を再び任へ当たらせた。


 「メルサリア。 この城に何か武装? とか備わってる?」


 「残念ながらこの天空城には、武装の類は無いんだ。 なにせ天空城に来た者等、今までほとんど居なかったものでね。 まして来たとしても極少数。 城の武装に頼らずとも私達でどうにか出来た。 だから武装の類は置いていないんだよ。」


 「そっか。 ありがとう。」


 この天空城からでも戦う術が何かあればと思ったが、メルサリアからの回答は、残念ながら俺の思いとは裏腹なものだった。


 「なら、下に降りてなんとか撃退するしかないな・・・。」

 「この場でこの戦いに参加出来る人が居れば手を上げて欲しい。 もちろんこれは命令でも強制でも無い。 参加不参加は自由。 だから、きちんと自分で考えて決めて欲しい。」


 『・・・・・・・・・。』


 そう伝えると、皆は静かに考え始めてくれた。


 『はい。』


 すると、自身の中で考えがまとまったのか、複数人が手を上げてくれる。


 この場で手を上げたのは、エメリィ、リリィ、アルカメリル、ファブリ、ミーネ、アブリル、クロム、イフリート、メルサリア、リルドミナの10人に加え、《魔人族》と《悪魔族》のメイドと戦闘員がそれぞれ10人と6人。


 「ありがとう、皆。」


 参加の意思を示してくれた皆に対し、俺は自然と笑顔で感謝の言葉を伝えていた。


 『・・・・・・・・。』

 『かわいいっ!!』


 参加の意思を示したエメリィ達は、魁人に笑顔でお礼を言われた事で、一瞬、時が止まったかの様に体を硬直させる。しかしそれも束の間、魁人の見せた笑顔に頬をほんのりと染め、興奮気味に嬉しそうにはしゃいだ。


 『や、やっぱり私達も参加します!』


 すると、先程手を上げていなかった《魔人族》と《悪魔族》のメイドと戦闘員達が、一転して参加の意思を示してくれた。


 「えっ!? 良いの!?」


 『は、はい!』


 「ははっ。 ありがと!」


 『きゃあっ。』


 改めて参加の意思を示してくれた皆へ、俺は嬉しさを表す様に再び笑顔で応えると、嬉しそうにはしゃいでいた。


 「戦いに行く前から、女達がどこか浮ついているが、大丈夫か? カイト。」


 「ははっ。 皆可愛いよね。」


 「ふふっ。 こやつは大物だな・・・。」


 イフリートの問い掛けに対して、俺がしれっとした態度で素直な気持ちを伝えると、イフリートは苦笑いを浮かべて少し噴き出す様に軽く笑った後、一言そう呟いた。


 「よし、じゃあこれから4つの組に分けよう。」

 「1組目は、《魔獣》や《魔物》を撃退する魁人組。 これは、俺とメルサリア、リルドミナ、クロム、イフリートで。 俺は《グヴェルギュオス》をなんとかするから、皆は街に入って来てる《魔獣》や《魔物》を撃退していって欲しい。 」


 『分かった。』

 「分かりました、マスター。」


 《レルムンガルド》へ攻め入っているであろう、《魔獣》や《魔物》達への対応について、俺は考えを皆に伝えていく。


 「2組目は、街の人を助ける救助するエメリィ組。 これは、エメリィ、リリィさん、アルカメリルにやってもらいたい。 そして、3人に加えて《魔人族》と《悪魔族》のメイドさんと女戦闘員の人は、それぞれ各8人づつ、計16人の人達。 お願い。」


 「わ、分かったわ・・・、カイト。」

 「分かりました、カイト様。」

 「はい、パパ。」

 『はい!』


 「3組目は、ロアギル陛下とルビアルカ達へ俺の帰還報告と、現状を聞いてくるファブリ組。 これはファブリとミーネ、それにアブリルでお願い。 先ずフィドラを返すついでに、《アルシェント城》へ向かってもらって報告。 その後、ファブリとミーネはエメリィ組に合流。 アブリルはルビアルカ達と合流の予定でお願い。」


 『分かりました、師匠!』

 「分かったわ、カイトちゃん。」


 「最後に4組目、この天空城で待機する《魔族》組。 3つの組に未だ指名してない《魔族》の皆、お願い。 ここの事は、やっぱり《魔族》の皆が詳しいしね。 ここで何時でもこの城を動かせる様にしておいて欲しいのと、もし何かあった時に、力を合わせて対応して欲しいかな。」


 『はい!』


 「一先ずこの組分けで行くけど、状況次第では自分の考えで行動してもらっても良い。 ただし、これだけは絶対。 自身の身が危なくなったら、街の人達よりも自分自身を優先して欲しい。 薄情かもしれないけど、俺は街の人達より、皆の事の方が大切だから。 もちろん、出来るだけ助けられる様には頑張るけどね。 俺からは以上かな。」

 「他、意見とかある人居る?」


 最適かどうかは分からない。だが、今俺の中で考えられる最善の配置と、当該地における大まかな行動内容を、皆に伝えた。


 「カイト。 我等は今回、街の西側から《魔獣》と《魔物》達を迎撃する形を執る方が良いかもしれん。 現状は、幸いな事に襲われているのは未だ街の東側だけだ。 西側から迎撃していき、万が一逃げられる様な事になっても、東側を開けておけば、街への被害は少なくなるはずだ。」


 「リルドミナ。 それなんだけど、《魔族》達への反攻作戦に向けて、人数は分からないけど冒険者達が街に集まって来ているはずなんだ。 それに騎士の人達も居るしね。 だから、街の中で迎撃している人達と、東側から俺達が、攻めてきている《魔族》達を挟撃する形が良いと思うんだけど、どうだろ?」

 

 「ふむ。 不確定要素も多いが、カイトの言う通りならば、カイトの案の方が良いかもしれんな。 ただ、挟撃は真東からではなく、南東から挟撃する形にし、北東に《魔族》の逃げ道を多少なり作っておくのが良いだろう。」


 この場に居る者達から、組分けや行動方針についての反対意見等は無かった。けれども、リルドミナが迎撃方法について助言を加えて来てくれた事で、これからの方針を更に密に決める事が出来た。


 「分かった。 ありがとう、リルドミナ。 なら、天空城は街から少しだけ離れた南東側辺りに下ろそう。」

 「他は何かある人居る?」


 『・・・・・・・・・。』


 「よし! じゃあ行こうか、皆!」


 『はい!!』


 再び何か意見が無いかと皆に問い掛けるが、皆からは新たな意見は無い様で、静かに黙っていた。その為、皆が俺の考えた方針で合意してくれたものと判断した俺は、行動開始の合図を送る。


 こうして、天空城を下ろす作業に入っていった。


 「カイト・・・。」


 「おっと!?」

 「エメリィ? ははっ、大丈夫。 少しの間離れるだけだから、そんな顔しないで? 俺の頑丈さ知ってるでしょ? エメリィこそちゃんと無事に俺の元まで戻って来てよ? 俺は超美人なエルフのエメリィと結婚するんだから。 ね?」


 「うん・・・、カイト。 えへへっ。」


 不安や少しの悲しみを孕んだ様な、そんな複雑そうな顔をしてエメリィが俺に抱き付いて来た。そんな様子を見せるエメリィを、俺はギュッと抱き返しながら、優しい口調で語り掛けると、エメリィは表情を和らげてくれた。


 ズゥゥン。


 「到着しました。」


 天空城が地に着いた音と衝撃が身に響く。そして、《悪魔族》の女戦闘員の1人が、《レルムンガルド》の南東側に到着した事を知らせに来てくれた。


 「よし! 行こう!」


 こうして、天空城を街の南東側に下ろした魁人達は、天空城からそれぞれの役割を持って街へと向かって行く。


 タッタッタッタッ。

 「そうだ。 メルサリアとリルドミナ。 もし知り合いとか居て、説得とかで何とかなりそうならそうしてくれて良いから。」


 「お人好しだね、カイトは。」


 街の東側へ走りながら、2人に顔を向け、身内が居た場合への配慮の言葉を投げ掛けた。すると、メルサリアがどこか優しい顔をして、そう言って来た。


 「そう? 俺は嫁候補の皆が幸せになれるなら、俺の出来る範囲で何でもしようと思うけど?」


 『・・・・・・・・・。』

 『あっはっはっはっはっ!』


 あっけらかんとした俺のそんな態度に、束の間魁人組の皆はポカンとした顔をした後、盛大に笑い声を上げた。


 「大笑い!?」


 『ふふっ。』


 戦いに行くにも拘らず、俺達はリラックスした雰囲気で駆けていく。緊張したまま体を強張らせ、咄嗟に行動に移せなくなるよりは良いだろう。


 「グゥオオオオォォォォォーーーーー!」


 そうして街の東側に近づいた時、《魔獣》もしくは《魔物》の一際大きい咆哮が、魁人達の耳に届いたのであった。

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