第9話 オークの異変
「ねぇ、エメリィ。 あの後、あの戦場? で良いのかな・・。 あれはどうなったのかな?」
朝この世界のことを聞いた俺は、ここに来たばかりの頃に遭遇した戦闘について、聞いてみる事にした。
「今はとりあえず、収束は・・・したかな・・・。」
エメリィは少し不安そうに言う。
「最近、オーク達の様子がなんだか変なの。 少し前までは言葉が話せなくても意思疎通は出来てたから交流があったんだけど・・・、急に襲ってくるようになったり、森を荒したりね・・・。」
「私達エルフだけじゃなく、他の種族も襲われて・・・、それでやむを得ず、他種族共同で自衛軍を結成したんだよ。」
「この前キミを見付けた時の戦闘は、さっき言った自衛軍とオーク達とのものだったんだけど、今までで規模は一番大きかったかも。」
「へ、へぇ~・・・。 そっかぁ~。」
(もし、あの時投げ返した剣が、もしオーク以外の種族に当たっていたら・・・。 俺は今頃エメリィ達とは仲良くなれず、自衛軍からも追われていたかも・・・。 いや、これ以上は考えるのをやめよう!)
俺はエメリィが教えてくれたことに対し笑顔で相槌を打ちつつ、若干の冷や汗を掻いて内心は焦っていた。
「コホンッ。 とすれば、この状況を変えるには、オーク達を倒しきるか、原因を特定して解決するしかないな。 オーク達の変貌の理由は、分からないんだよね?」
俺はわざとらしく咳をして気持ちを落ち着け、話を先に進める。
「う~ん・・そうね、原因は今のところ未だ判明してないみたい。 オーク達の住処に行って調べる必要があるわ。 だから調査するには~、住処にこっそり忍び込む、潜入調査が王道だよね!」
「へっ?」
「あっ、でもオークを全員倒しちゃうのもありかな・・・ふふっ。 あいつら、私達を襲ってきたし!」
「ちょっ!」
「あ~究極の2択だー。 私には選べないよ~!」
エメリィは楽しそうにコロコロと表情を変え、俺が口を挟むよりも早く矢継ぎ早に物騒なことを口走っている。
「もうっエメリィったら・・・しょうがないわね。」
「カイトさん。 私達は出来るだけこの騒動の犠牲を最小に、かつ早急に解決したいと考えています。 それは自衛軍を結成した他の種族も同様です。 ですので、オーク達を討伐してしまう、というのはできれば避けたいのです。 先ほどエメリィは冗談のつもりで言ったようですが、オーク達の住処に行って調査する、と言うのが現状では一番かと・・。」
エメリィと俺の会話を聞いていたエメラルドが、そう助言を加え、話に混ざって来た。
「それでカイトさんに1つお願いがあります。 エメリィと一緒に、オークの住処へ調査に行って下さいませんか?」
エメラルドが何故か俺に、エメリィに同行するように頼んできた。
「分かりました! と、言いたいんですけど・・・。 俺なんかで大丈夫なんでしょうか?」
この世界での自身の強さも未だ分からず、さすがに不安に思った俺は、エメラルドの問いに質問で返してしまう。
「はい。 今のオーク達の住処に行って無事に帰ってこられるのは、エルフの集落にいる者の中では恐らく、カイトさんだけです・・。」
「話を聞いた限りだと、カイトさんはとても強い魔力をお持ちの様。 魔法やオーク達の攻撃がほとんど効かなかったのは、無意識のうちに自身の魔力を使って、体を強化しているためでしょう。 ご自身で覚えは有りませんか?」
「た、確かに・・。」
エメラルドからの尤もな問いかけに、俺はこれまであったことを、思い出し納得して頷いた。
「分かりました。 ただ、出発は少し待って下さい。 1日でも良い、身を守る手段として基本的な魔法の使い方だけでも学んでおきたい・・・。 何故なら俺が頑丈と言うだけではエメリィをちゃんと守れないかもしれないから・・。 相手を無力化する方法が必要です。 だって、俺とエメリィが無事に一緒に帰って来てこそ、調査は成功と言えますよね!」
エメラルドに理由を説明しながら、俺はエメリィに笑顔を向けた。
「カ~イト~。」
エメリィは嬉しそうに俺の名を呼び、飛び掛かってきた。
サッ。
ドサッ。 ズザーーッ。
「・・・。」
俺は笑顔のまま、エメリィをサッと避けてみると、エメリィはコケて滑ったままの体勢で沈黙した。
「ええっ!? 今回はこんな落ちなの!? カイト~。」
そして、ガバッと起き上がったエメリィは、少し涙目で魁人に突っ込みを入れたのであった。




