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第86話 依頼の達成

 威力の少々高過ぎる魔法を放とうとしたイフリート。イフリート本人としては、驚かすだけだったのかもしれないが、くしゃみと共に結局魔法を放ってしまった。そんなイフリートに、魁人はお仕置きをした。


 「ほんと、気を付けてよ? イフリート。」


 「わ、分かった!」


 イフリートへのお仕置きを終えた俺は、イフリートをそっと床に立たせ、最後に顔をしっかりと見て注意を促す。するとイフリートは、ルビアルカの髪色に似た紅く綺麗な髪を、少し乱しながら大きく頷き、了承してくれた。


 「まぁ、力を見せてっていう、俺のお願いを聞こうとしてくれた際の失敗だから、今回はこれ位にしとくよ。」


 「んっ。 そなたに頭や尻を触られると、何だか気持ちが良いな。 ふふっ。」


 俺は少し困った様に、イフリートに笑い掛けながら、頭を優しく撫でると、イフリートは嬉しそうに目を細め、感想を口にして来た。


 『良いな~・・・。』


 「えっ?」


 『な、何でもありません!!』


 エメリィ達がこちらを見ながら、羨む声を小さく上げた様な気がした。そんなエメリィ達へ、聞き返す反応を見せた俺だったが、エメリィ達は、一様に両手を左右に振る仕草をして否定して来た。


 「そ、そう?」

 「さ、さて、ハプニングがあったけど、続けようか。」


 俺は、エメリィ達の様子を見るに、深く追求する事は避けようと判断し、先程の話題を早急に忘れるべく、メルサリア達の居る方に目を向け、勝負の続きをしようと、声を掛ける事にした。


 「いいえ。 私達は貴方様に従います、カイト様。」


 「へ?」


 しかし、突然、メルサリアがそう発言して来たかと思うと、《魔族》側の皆が俺に向けて片膝を突き、頭を垂れる様な姿勢を取って来た。俺が考えていたメルサリア達の反応とは、全く異なる反応に、俺は面食らっていた。


 「先程の、炎の《精霊》様の攻撃を防ぐ手段は、我等には有りませんでした。 カイト様はそれを防がれて尚、まだまだご健在の様子。 到底、我等では敵いますまい。 カイト様のその強さに、我等は敬服致しました。」


 「ただ・・・、1つだけお願いがございます。 私達上の者は責任ある者として、奴隷になれと、慰み者になれと、命を差し出せと、どの様な事を言われても必ず従います。 ですが、私達の眷属達は、上の者の(めい)に従っていただけ、どうか、皆の命だけはお助け下さい。」


 『メルサリア様・・・。 リルドミナ様・・・。』


 その上、メルサリアとリルドミナが陳情の言葉を述べて来た。どうやら、俺がイフリートの魔法を防いだ一見で、戦う意思はとうに無くなっていた様だ。そんな2人の様子を見ていた、2人の眷属達は、悲しそうな顔をして、メルサリアとリルドミナの名前を口にした。


 「2人もだけど、《魔族》の皆って、極端すぎない!?」


 俺は、メルサリアとリルドミナにというよりも、これまでに出会った《魔族》の女の子達全員に対する様に、驚きを表しながら突っ込みを入れた。


 「メルサリア。 リルドミナ。 顔上げて?」


 『は、はい!』


 俺は2人の名を呼んで顔を上げさせた。俺は、俺達が互いに顔を見て話せる様にしたかった為だ。


 「正直言うと、従順に付き従ってくれる女の子とか、男としてはちょと嬉しく・・・、すごく嬉しくはあるよ?」


 「言い直したわね。」

 『言い直しましたね。』

 「言い直したわねぇ。 ふふっ。」

 「パパ?」

 「マスター?」


 俺が素直な気持ちを口にすると、エメリィ達はそう口々にした。


 「けど、俺が欲しいと言ったのは、こんな事を言い出す前のメルサリアだ。 もちろん、リルドミナにも初めてここで会った時のままでいて欲しい。 だって、2人共、勇者に凄く興味があって、楽しそうに勇者の事を話す2人が、俺は可愛くて魅力的だと思ったから。 そう思った俺が、今更感情を押し殺し、ただただ俺の力に対してだけに仕える2人に、側に居られても嬉しく無い。」


 『・・・・・・。』


 しかしながら、俺は先程のエメリィ達の言葉はとりあえず聞き流す事にし、今の自分の考えを、メルサリアやリルドミナ達に向けて伝える事を優先した。すると、皆は黙って聞く姿勢を取ってくれた。


 「だから俺は、俺の力にだけ仕える様な2人ならいらない。 けど、今までの2人のままで俺と居てくれるなら欲しい。 あっ、もちろん、嫁とかじゃくても、友達でも良いからね。 それに、一緒に居たくないと思ったのなら拒否してくれても構わない。」

 「安心して欲しいのは、どの選択をしたとしても、ここに居る者を誰一人殺すつもりは無い。 その代り、必ず自分の意志でどうしたいか決めて欲しい。 自分できちんと決めてくれた事なら、俺はどんな選択でも受け入れようと思う。 今から少し考えて、決めたら教えて?」


 『・・・・・・。』


 俺の考えを伝え終えると、メルサリアとリルドミナの2人は、しばらくの間少し俯いて黙っていた。どうやら、きちんと考えてくれている様だ。


 「わ、私は・・・。」


 そんな中、メルサリアが最初に切り出してくれた。


 「私は貴方のお嫁さんにして欲しい。 いや、なりたい! 私の事を欲しいと言ってくれた事が、すごく嬉しかった。 貴方の命を狙った眷属の皆を殺さずにいてくれた。 そんな優しい貴方の側に居たい。 貴方に、奴隷の様に扱われるんじゃなく、一緒に歩んでみたい。 私はそう思う。」


 そしてメルサリアは、俺に自身の思いの丈を打ち明けてくれた。


 「勇者カイト。 1つ聞きたいのだが、良いか?」


 「うん。 何?」


 メルサリアに続き、リルドミナが自身の思いを伝えようとしてくれているのか、俺に何かを尋ね様として来た。


 「我はこの様な姿だが・・・、それでも貴様は、我を欲しいと言ってくれるのか?」


 「もちろん! リルドミナって《サキュバス》のアブリルと肌の色が違うだけでしょ?」


 俺は、リルドミナからの問い掛けに対し、アブリルとリルドミナを見比べた上で、自身の考えを素直に伝えてみた。


 『な、何て大雑把な認識!?』


 「うん?」


 リルドミナからの問い掛けに対するそんな俺の回答に、皆は何故か驚いていた。


 「さすがに《魔物》とかの様な、もう完全に動物って見た目だったら、男として愛する事は、正直難しい・・・というか無理かもしれない。 けど、リルドミナは、俺から見て顔、綺麗だと思うし、スタイルも良いと思う。 俺からはすごい美人に見えるけど?」


 俺は、皆からの指摘の意図が良く理解出来てはいなかったが、自身の容姿を気にしているであろう、リルドミナに向け、俺がリルドミナの姿を見て感じたままに伝えてみた。


 「っ!!」


 すると、蒼い肌をしていても分かる位に、リルドミナは頬を紅く染めた。


 「あはっ! あはははははっ! リルドミナ、貴方のその様な顔を、私は初めて見たよ。」


 「メ、メルサリア!」

 「あ~、そ、その・・・。 貴様が良いなら、我も嫁に貰って欲しい・・・。 ふ、不束者だが、宜しく頼む・・・。」


 メルサリアは、そんな様子のリルドミナを初めて見れた事が、心より嬉しいと言わんばかりに、大きく笑い声を上げる。すると、リルドミナは、1度メルサリアに向かって咎める様に呼び付けたが、すぐに俺の方を向き、恥ずかしさからか言葉に時々詰まりながらも、自身の思いの丈を伝えてくれた。


 「うん。 これから、宜しく、2人共!」


 「宜しく。」

 「あぁ。」


 こうして俺達は、互いに笑顔で挨拶を交わした。


 『あ、あの! カイト様!』


 「どうしたの、皆?」


 メルサリアとリルドミナとの話が終わる頃合いを窺っていたのだろう、2人の眷属達が俺に声を掛けて来た。

 

 『わ、私達も、お2人と一緒に付いて行っても宜しいでしょうか!?』


 「うん、良いよ。」


 2人の眷属達は、メルサリアとリルドミナに同行する許可を得ようと、俺に恐る恐る伺いを立てて来た。特に問題無いだろうと考えた俺は、そんな2人の眷属達に向け、笑顔でさらっと許可を出した。


 『もちろん反抗などするつもりはありませ・・・。 えぇぇぇぇっ!? 良いんですか!? そんなあっさり!?』


 すんなり許可が出るとは思って居なかったのか、2人の眷属達は、驚きを露わにしている。


 「え? だって、皆2人の事好きなんでしょ? それはここまで皆と居て、何となく分かるしね。 それに、俺達を襲って来た《魔人族》の皆。」


 『っ!!』


 俺に付いて来ていた10人の《魔人族》達を呼ぶと、俺に付いて来ていた10人の《魔人族》達から、息を呑む声が聞こえた。


 「エメリィ達を襲わず、俺だけを狙って来てたしね。 意外と気さくな人達も多そうだし。 だから、2人に付いて来るのは構わないよ。 でも、皆が卑怯な人達じゃなくて良かったよ。 俺の大切なエメリィ達を狙ってたら、俺もさすがに怒ってたかもしれないしね。」


 「ちなみにだけど、以前私を襲って来たデビルクラーケンを、一瞬で真っ二つにしてたわ。」


 『ひぇぇぇぇぇぇ!? あ、あの海の怪物を!?』


 「ははっ。 まぁ、ここに居る《魔族》の皆には、自分の身を守る必要がある時か、自分の大切な人が危険な時以外は、誰かれ構わず襲わない様にする事。 それを約束してくれれば問題無いかな。」


 『わ、分かりましたーー!!』


 俺がすんなりと許可を出した理由を説明した上で、更にエメリィが助言を加えてくれた事で、より一層、2人の眷属達に対して、良い注意喚起が出来た様だった。


 「ふふっ。 本当にありがとう、勇者カイト。」


 その様子を傍から見ていたメルサリアが、嬉しそうに俺に感謝の意を伝えてくれた。


 「魁人で良いよ。 その方が親しい感じがして嬉しいから。 それにメルサリアは嫁候補になってくれたんだ。 いずれ嫁になるって人から、勇者カイトって呼ばれるのは何か変! でしょ?」


 「確かにそうだね。 分かったよ。 カイト。」


 こうして、《ヴァルグヘイム天空城》では思い掛けない出来事が色々とあったものの、ロアギルからの依頼は、思いの外上手くいく事となったのであった。

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