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第85話 イフリート=ローズレッド

 精霊召喚しようとした魁人だが、当初は失敗に終わったと思われた召喚は、成功する事となった。そして、呼び出された精霊は、炎をその身に纏う、1人の女性だった。


 「わらわを呼び出したのは、そなたか? 人の子よ。」


 「うん、そうだけど・・・。」


 魔法陣の1番近くに居た俺に、召喚によって現れた女性が、召喚者であるのか問い掛けて来る。俺はその問い掛けに対し、素直に頷いた。


 「まさか召喚魔法を使える者が居たとはな。 ましてや、わらわの名を知っている者が居ようとは・・・。」

 「それで? そなたの願いは何だ?」


 「俺と友達になろう!!」


 召喚によって現れた女性の言葉から推察するに、名はイフリートで合っているのだろう、召喚がすぐに発動しなかった理由も教えてくれたが、俺は願いは何かと尋ねられて、友達という選択をする事にした。


 『えぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なんでっ!?』


 「えっ!? だって精霊だよ!? いや~、この世界にも居るんだな~!」


 「あ~・・・。 駄目ね。 カイトの目、すごくキラキラしてる。」


 その場に居る数人が、俺の言葉に、驚きの声を上げた。その時の俺の顔は、精霊に出会えた事が嬉しい事を、あからさまに表す様な満面の笑みになっていたのだろう、エメリィが、俺の顔を見て、何かを悟った様に言って来た。


 「ともだち・・・。 とは何だ?」


 「お互いに心を許し合って、対等に交わっていく人かな? 一緒に遊んだり、しゃべったり、そんな親しい関係。 そういうのが友達かな。」


 イフリートの質問に、俺は持っている知識で、友達について簡潔に答えてみる。


 「ふむ。 そんな事を言う者は、わらわがこの世に生を受けて初めてだが・・・。 良いだろう。」


 「ありがとう! 俺は《黒峰魁人(くろみねかいと)》。 魁人って呼んでくれて良いからね。 君はイフリート・・・で良いのかな?」


 すると、イフリートはどこか不思議そうではあるものの、真面目な顔で了承の言葉をくれた。俺は友達になってくれたイフリートにお礼を言い、呼称はどうすれば良いか尋ねてみた。


 「ああ、構わないぞ、カイト。 だが、そなたに、わらわから1つ願いがある。 わらわの名に、そなたのクロミネの様な名を付けてもらいたい。 それで対等な友達としよう。」


 「そう? なら、イフリート・・・ローズレッド・・・。 《イフリート=ローズレッド》でどうかな? イフリートのその体に纏った紅い炎は、炎で形作られた薔薇が紅く綺麗に咲いている様に見えるから。」


 するとイフリートが、俺に名前を付け加える様に願って来た。俺はそんなイフリートからの願いに対し、俺が初めてイフリートを見た時から感じていた事を、そのまま名前に反映させてみた。


 「うむ。 カイトが付けてくれたその名、わらわは気に入ったぞ。 《イフリート=ローズレッド》・・・。 ふふっ。」


 イフリートは今まで崩す事の無かった、ずっと真面目な顔をしたままだったその美貌を綻ばせ、嬉しそうに俺がつけた名前を、自身に刻み込む様に呟いてくれた。


 「あっ、そうだ。 もし良かったら、あの人達にちょっとだけ力を見せてくれる?」


 「良いだろう。 友達であるカイトの頼みだ。 跡形も無く燃やし尽くしてやろう。」


 『ひっ!?』


 俺がイフリートに力を見せる様に頼むと、イフリートは自信ありそうに了承してくれはしたが、物騒な事を言い始め、《魔人族》と《悪魔族》の皆は、息を呑む様に小さく悲鳴を上げた。どうやら、皆にとって《精霊》とは、自分達よりも高位、もしくは力の強い存在なのかもしれない。


 「ちょっとだけって言ったよね!? それはダメだって・・・。」


 「なっ!? カイト。 そなたは、わらわに触れる事が出来るのか!?」


 俺はイフリートの発言に驚き、突っ込みを入れつつ、イフリートの手を取りながら、首を横に振って、先程のイフリートの発言を否定する。するとイフリートは、俺がその体に触れる事に、大きな驚きを見せた。


 「えっ!? 何か問題が?」


 「ふふっ。 ははははははっ。 良い。 良いのだ。 人の子だと思っていたが、どうやら違うのかもしれないな。」


 そんな様子のイフリートに驚いた俺は、慌てて手を放し、その理由を尋ねた。しかし、イフリートは嬉しそうに笑いながら、1人何かを納得した様に呟いた。


 「それってどういう・・・。 まぁそれは後で良いや。 ちょっとだけ、ちょっとだけ凄いところを見せるだけだよ? ちょっとだけだよ? 良いね?」


 「う、うむ。 分かった。」


 イフリートの言葉が、少々気になりはしたが、俺はその事よりも、力を見せる様にお願いした手前、きちんと手加減出来るのかどうかの方が心配だった。何故なら、召喚で呼び出された、精霊達や神々の攻撃と言えば、強力無比な能力で以って敵を葬り去るのが、一般的なイメージだろう。俺も例に漏れず、そのイメージを持っている。その為、念を押して加減をする様に伝えたのだ。イフリートはそんな俺からの強いお願いに対し、少々戸惑いを見せながらではあったが、同意してくれた。


 「深淵より来たりし、灼熱の業火よ、精霊イフリートの名の元に集い、敵を滅せよ。 インフェルノ・・・」


 ゴォォォォォォォ。


 イフリートが呪文詠唱を始めると、一瞬にして、超高温の炎の球体が空間に現れ、それが次第に大きくなっていく。そして、イフリートが呪文を終わり迄唱えようとした時。


 『ゆ、勇者カイト~!?』

 「わぁー! イ、イフリート! 中止! 中止ー!」


 《魔人族》と《悪魔族》の皆は、イフリートが放とうとしている、明らかに強力そうな魔法に、慌てふためきながら、一斉に涙目になっている視線を俺に向け、懇願する様にして俺を呼んで来る。そして、俺は慌ててイフリートが、魔法を発動してしまうのを止めに入った。


 「ああ、わへっ、へぷちゅんっ!!」

 ゴォォォォォォォ。


 しかし、イフリートが何かを言おうとしてくれた時、何の前触れも無く突然くしゃみをした。すると、無情にも、すでに巨大な塊になって空中に浮かぶ超高温の炎の球体は、メルサリア達|《魔族》側の皆が居る方へ向かって行った。


 「い゛っ!?」


 『えぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 何でそこでくしゃみ出るのっ!?』


 その光景を見ていた俺達は、思わずイフリートへ突っ込みを入れていた。


 『ひっ・・・。』


 「くそっ!」

 タッタッタッタッ。


 しかし、《魔族》達の方は咄嗟の事で、皆体を硬直させ、小さな悲鳴を上げるのが精一杯の様だった。俺は思わず悪態をついて、《魔族》達の元へと駆け出した。


 「皆どけーー!!」


 『痛っ!? ゆ、勇者カイト!?』


 俺は、イフリートの魔法の進行方向に居る、メルサリアとリルドミナの所に先回りし、2人を突き飛ばして、俺の眼前に来ているその魔法を、腰を落として両腕を広げ、受け止める体勢に入った。


 「フレイムレジスト、ブースト!!」

 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 「うおりゃっ!!」


 ゴガガガガガガァン。 ボォォォォン。


 俺は、火属性の耐性魔法に特化したレジスト魔法を発動し、イフリートの魔法を体で受け止めた。そして、勢い良く全力で上空へ放り投げると、超高温の炎の球体は、玉座の間の黒いクリスタルの天井を突き破ったのを皮切りに、次々と天井や壁を突き破って行き、恐らく天空城の外まで飛んで行った後、爆発した様な音が外で響いた。


 「あちちちちちちっ。 ふぅーっ。 ふぅーっ。 ふぅーっ。」

 「み、皆大丈夫!?」


 「あ、あぁ・・・、ありがとう、勇者カイト。」


 「あぁ。 お蔭で我らは皆無事だ。 助かった。」


 流石に、イフリートの魔法で自身の肌が熱くなってしまった俺は、ついつい息を吹きかけて冷まそうとする。しかし俺の事よりも、《魔族》側の皆の安否が心配になった俺は、《魔族》側の皆に視線を向け、状況を尋ねた。すると、《魔族》側を代表する様にして、メルサリアとリルドミナが、みんなの状況を伝えてくれた。


 「さて、イフリート・・・。 ちょ~~~っと良いかな?」


 「な、何だ!? カイト、そなたの笑顔が何故か怖いのだが・・・。 く、来るな!」


 「あはははっ。 捕まえたぁっ!!」


 《魔族》側の皆の安否を確認できた俺は、イフリートに向き直ると、満面の笑みをわざと作り出しながら、イフリートににじり寄って行く。そんな俺の様子に、どこか怯えを見せるイフリートは、少しずつ後ずさりするが、俺はすかさず飛び掛かり、イフリートの腰を掴んで持ち上げた。


 「はい。 今からお仕置きね。」


 「ひぃぃ、は、離せ、カイト! 力強っ!?」


 そして俺は、じたばたと暴れて抵抗しようとするイフリートを、左腕だけで抱え、右手を上空へ向け振り上げた。


 パーン! パーン! パーン!


 「痛っ!? 痛っ!! 痛い!? な、何だこれは!?」


 「え? お尻ぺんぺんだけど、知らない? 悪い子にはこうやってお仕置きするんだ、よっ!」


 そして、スナップを利かせながら、勢い良くイフリートの尻を右手で叩いた。所謂お尻ぺんぺんの形だ。訳が分からないといった顔をしながら痛がっているイフリートに、俺は説明しながら、再び同じ様に繰りすべく、右手を上空へ向け振り上げた。


 パーン! パーン! パーン!


 「痛っ! あんっ! 痛い! わらわが、悪かった! 悪かったから、もう許してくれー!!」


 こうして、天井に穴の開いてしまったままの玉座の間に、魁人がイフリートの尻を叩く音と、それに連動する様にイフリートの叫び声が、しばらくの間響いたのであった。

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