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第78話 ジル=ウォルナット

 ロアギルからの依頼を受ける事となった魁人達一行。今は皆、落ち着きを取り戻していた。


 「すまぬが皆、今からワシらが娘達をここに連れて来る。 それまで、自由にしていて構わぬぞ。 好きに雑談するなり、一休みするなりすれば良い。 ではな。」


 すると、ロアギルが、笑顔で辺りを見回す様にしながら、そう俺達に告げ、3人の后と共に、謁見の間を出て行った。


 「おちゃらけた感じに見えてた王様だけど、とんだ食わせ物だった様だね~。」

 「けど、あたしは、堅っ苦しいだけの王様より、こんな王様の方が良いな。」


 「お、王様ってこんな人だったんだね、ミーネ。」

 「だね~、ファブリ。 意外と良い人?」


 「少しだけ、お兄ちゃんに似てる気がするね、クルル。」

 「うん、姉さん。」

 「将来、カイト様もあの様になるのでしょうか?」


 『それはなんか嫌だ!!』

 「キュィィィィィー。」


 ロアギルが許可を出してくれたので、皆は雑談を始めた。そして、ロアギルに抱いた感想を、口々にしていた女性陣だったが、リリィの言った一言に、大人しくしていたアルカメリルも含め、皆一様に同じ反応をした。


 「こ、こらっ。 皆、陛下に失礼だ。」


 そんな話をしている女性陣に、それを聞いていたカミーラが、苦笑いを浮かべながら小声で注意を促してきた。


 「皆、ごめんなさい・・・。 私の発言の所為で、カイトがメルサリアって《魔人族》の人を、虜にしに行かないといけない事に・・・。」


 そんな時、エメリィが浮かない顔をしながら、俺や皆に向けてそう言って来た。


 「大丈夫。 寧ろありがとうだよ、エメリィ。」


 「え?」


 俺は、そんなエメリィに笑顔でお礼を言うと、エメリィは驚いた様な顔を俺に向けて来た。


 「アブリルが咎められない様にって、俺の手助けになればと、口添えをしてくれたんでしょ?」


 「うん・・・。」


 「エメリィは、アブリルの事を守ろうと頑張ってくれたんだ。 俺は嬉しいよ。 それにどの道、ロアギル陛下は、俺に行かせてた様な気がするしね。 後は、皆の期待に応えられる様に、俺が頑張れば良いだけだよ。 だから、ありがとう、エメリィ。」


 「カイト~!」


 「おっと!」


 俺が、再びエメリィに向けて、笑顔でお礼を言うと、エメリィは俺に嬉しそうに抱き付いて来た。


 「んぅ~。」


 「いつもありがとう、エメリィ。」 


 「えへへ~。」


 何だか気持ち良さそうに俺に抱き付いているエメリィを、俺はそっと優しく抱き締めながら、感謝の言葉を伝えると、エメリィはより嬉しそうな笑みを零した。


 『あー!! ずるい!! 私達も!!』


 「あの・・・、皆? 他の人が、ずっとこっち見てるんだけど・・・そろそろ・・・。」


 俺に抱き付いているエメリィを見た女性陣が、一斉に抱き付いて来た。そんな俺達を、その場に居た他の者達がニヤニヤと、又は呆れた様に、見てきた。


 「お~、良いね、カイト。 モテモテじゃねぇか。」


 すると、そんな俺達の様子を窺っていた者の中から、一人の男性が話し掛けて来た。


 「えーっと・・・、あなたはジル・・・さん? で良かったでしょうか?」


 「ああ、オレは、《ジル=ウォルナット》。 ジルって呼んでくれ、カイト。 あと、言葉遣いも楽なので構わん。 宜しくな。」


 「分かった。 宜しく、ジル。 俺は《黒峰魁人(くろみねかいと)》。 今のまま、魁人って呼んでくれたら良いよ。 それで、ジルはその・・・凄い恰好してるよね?」


 「そうか? これがオレのスタイルなんだけど・・・変か?」


 ジルは、茶髪に無精ひげ、その上衣服の上からでも分かるがっしりとした体躯。そして神父の衣装に加えて、背に背負った巨大な十字架。俺の中にある、温和で何時もニコニコしている様な、神父像とはかけ離れていた。


 「いや、すごく強そうなんだけど、神父の服装にその・・・何かを殴った様に、べこべこで巨大な十字架は・・・。」

 

 「オレ、聖職者だしな。 神父の格好してるだろ? この十字架で殴って、彷徨える《アンデット》達を狩ってるんだよ。 そしたら、王国騎士団の団長さんに声掛けられて、勇者候補になった。 これでも、アンデットストライカーのジルって呼ばれてるんだぜ。」


 俺がジルについて、気になっている点を伝えると、ジルは色々と説明を加えてくれた。


 「俺は・・・」

 「知ってるぜ。 パーティ、勇者と愉快な嫁達のリーダーだろ? 巷じゃ有名だぜ。」


 「えっ!? この名前有名なの!? まじで!?」


 俺は無難に自己紹介しようとしたが、ジルが途中で口を挟んできた。しかし、それによって俺は思いも寄らなかった事実を知り、思わず聞き返してしまっていた。


 「あぁ。 なんでも噂じゃ、色々な種族の綺麗どころを侍らせた、若くて良い男が、とんでもない威力の魔法で《ナミン》の村を救った、ってな。 いいねぇ、嫁さん沢山いて。」


 「何でそんな噂が・・・。 それに俺、実は未だ結婚式挙げれて無いから、皆は嫁候補なんだ。」


 「ん? 嫁候補・・・。 嫁さんじゃ無いのか?」


 「うん。 俺達この大陸に、結婚式を挙げる事と、お金を稼いで家を建てるか、買うかするつもりで来たんだけど・・・。 いつの間にか、こんな大事に・・・。 だから、きちんと結婚出来て無いんだ。」


 俺が発言した事に対して、ジルが口にした疑問に、俺はこの大陸での目的を交えて説明した。


 「カイト・・・、お前色々と大変そうだな・・・。 仕方ない!」


 「ここは俺に任せろ! この騒動が終わったら、お前らの為に結婚式の神父役やって・・・」

 『その言葉を言い切っちゃダメ!!』


 ジルが最後まで言葉を言い切る前に、女性陣達が止めに入った。


 「な、何だよ? 皆して・・・。」


 「ジルちゃん・・・。 世にも恐ろしい、死亡フラグが立っちゃうよ~?」


 「あなたそんなに死にたいの!? 死の宣告の呪いよりも、確実に命取られるわよ?」


 ジルが不満気な目を、俺の嫁候補の女性陣に向けるが、それに対し、ナユカとエメリィが、ジルの発言を止めた理由を教えた。


 「み、皆・・・。 オレの為に・・・。 良ければカイトじゃなく、オレの嫁に・・・」

 『あ、それは結構です。』


 ジルからの提案に、女性陣が一斉に、感情が全て抜けきったお面の様な表情になって、即座に断りを入れた。


 「即答っ!?」


 「はは・・・。」


 そんな女性陣にジルは思わず突っ込みを入れている。俺はそんなジルを見ながら、苦笑いを浮かべていた。


 「ちくしょー、オレだって、姫様の1人くらいモノにしてやるからな!」


 「あ~あ、言っちゃったよ、あいつ。」

 「もうすでに、落ちが透けて見えちゃいそうねぇ・・・。」


 ジルがそう言うと、ルビアルカとアブリルが、可哀想な人を見る様な目でジルを見ながら、しみじみとそう言っていた。


 ガチャッ。


 その様に、魁人達が和気あいあいと雑談していると、謁見の間の扉が、音を立てて開いたのであった。

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